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54 イワシクジラ 北西太平洋

Sei Whale, Balaenoptera borealis

                                                  
PIC
図1. 浮上直後のイワシクジラ

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最近の動き

IWCと日本による共同の本種の未調査域における分布密度の情報収集を目的に2010年に開始したプログラムが2015年も行われた。


利用・用途

鯨肉は、刺身、大和煮(缶詰)、鯨かつ、鍋物材料、内蔵は、ゆで物として利用している。ヒゲ板は工芸品の材料として利用される。鯨油はかつて工業原料などに用いられた。


図2

図2. 北西太平洋におけるイワシクジラの漁獲量の推移(1910〜2014年)


表1

表1. 北西太平洋鯨類捕獲調査におけるイワシクジラ捕獲頭数(2002〜2014年)


図3

図3. 北西太平洋におけるイワシクジラの夏季の分布域(青)


漁業の概要

本種の捕獲は、1890年代末に基地式の近代捕鯨により開始した。その後、1940年には母船式捕鯨が開始し、本種も捕獲された。日本では1911年から捕鯨統計が整備されたが、イワシクジラとニタリクジラは分類されず、それが公式に判別されるようになった1954年までは統計上全てイワシクジラとして記録された。北太平洋では日本の他に、旧ソ連、米国及びカナダが本種を捕獲した(図2)。

1910年代から1955年まで年間500頭が継続して捕獲されたが、1967年から捕獲が急増し、1968年には6,000頭を超えた。1968年以後、日米加ソ4か国による北太平洋捕鯨規則によって捕獲割当量が定められるようになり、1970年から国際捕鯨取締条約の附表に北太平洋産鯨類の捕獲枠が明示されるようになった。その後IWCの規制が厳しくなり、1976年から北太平洋全域で捕獲を停止している。商業捕鯨以外では、第二期北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPNII)において2002年〜2003年は年間50頭、2004年以降は毎年100頭を上限に捕獲していたが、2015年については前年と同様、国際司法裁判所の「南極における調査捕鯨」訴訟判決に照らし、調査目的を限定するなど規模を縮小して実施することとなり、捕獲上限は90頭となった(実際の捕獲頭数については表1参照)。


生物学的特徴

本種はナガスクジラ科ではシロナガスクジラ、ナガスクジラに次いで3番目に大きく、北半球産で雄14.0 m、雌14.8 mに達し、体重は雄15.9トン、雌17.8トンである(Masaki 1976、Horwood 1987)。

性成熟年齢は、1925年に10歳、1960年には7歳と報告されている。記録にある最高年齢は60歳である。出産時期は11月とされ、出産海域は亜熱帯・温帯の外洋海域と想定されるが、特定できていない。夏季には摂餌のため、より高緯度の亜寒帯水域へ回遊する(図3)。

本種は魚類(カタクチイワシ、マイワシ、キュウリエソ、サンマ、マサバ、ハダカイワシ類など)、イカ類(スルメイカ、テカギイカなど)、動物プランクトン(オキアミ、カイアシ類)など、さまざまな種類の餌生物を捕食する(根本 1962)。本種を捕食する可能性があるものとしてはシャチがあるほか、繁殖場ではさめ類が仔鯨を襲う可能性もある。


資源状態

本系統の資源評価はIWCで1975年に初めて行われた。資源評価に用いた手法は、CPUEと発見率指数(目視調査)を統合したDe Lury法であった(Ohsumi and Wada 1974、Tillman 1977)。資源評価の結果、初期資源量は42,000頭、1975年時点の資源量は9,000頭であるとされ、当時の管理方式ではMSYレベル(23,000頭)の40%であったため保護資源に分類された。それにより、1976年から北太平洋全域で本種の捕獲を停止し、現在に至っている。日本の目視調査の結果では、1980年代始めから1990年代中頃にかけて北西太平洋海域で増加傾向が見られ、資源は回復しつつあるものと思われる(藤瀬ほか 2004)。

1975年以降、本系群に関する資源評価は行われていなかったが、IWCにおいて、本系統の資源解析を将来の優先課題とすることが2006年に合意され、2015年の年次会合より開始した。本種の資源量推定は、2002年と2003年の調査捕獲時の目視調査に基づいて行われ、調査海域内で4,100頭(CV= 0.281)、非調査海域については過去の目視調査結果から引き延ばし、北西太平洋で68,000頭(CV=0.418)と推定された(Hakamada et al. 2004)。ただし、引き延ばし方法には異論が出され、詳細評価に向けた動機付けの一つとなっている。また、2010年及び2011年に実施したIWCと日本共同の北太平洋鯨類目視調査プログラムの結果から、東経170度以東の中央と東部北太平洋の調査海域内の資源量は、9,300頭(CV= 0.350)と6,600頭(CV=0.420)と推定され(Hakamada et al. 2011, 2012)、さらに2012年も加えた3か年の調査結果から、同海域の資源量は29,632頭(CV=0.242)と推定された(Hakamada and Matsuoka 2015)。

系群構造について、目視調査と遺伝解析の結果に、過去の捕獲・標識再捕情報も加えた総合的な解析が行われ、北太平洋に広く分布する本種は同一系統に属するとの可能性が改めて示された(Kanda et al. 2015)。


管理方策

IWCでは、資源状態にかかわらず全ての商業捕獲を停止している。我が国は2002年から捕獲調査を実施する一方、本種を対象とした目視調査を実施しつつあり、それらを用いて資源評価を行う必要がある。また、西経海域を中心とした未調査海域における目視調査を実施する必要があったため、2010年に開始したIWCと日本による共同の北太平洋鯨類目視調査が、IWC太平洋鯨類生態系調査(IWC-POWER)プログラムの下、2015年も行われた。


イワシクジラ(北西太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 (おそらく)中位
資源動向 増加
世界の捕獲量
(最近5年間)
なし(商業捕鯨モラトリアムが継続中)
我が国の捕獲量
(最近5年間)
2014年は捕獲調査により年間90頭
管理目標 商業捕鯨モラトリアムが継続中であり、未設定
資源の現状 北西太平洋では目視調査により増加傾向と判断
管理措置 商業捕鯨モラトリアムが継続中
管理機関・関係機関 IWC
最新の資源評価年
次回の資源評価年

執筆者

外洋資源ユニット
鯨類サブユニット
国際水産資源研究所 外洋資源部 鯨類資源グループ

吉田 英可

国際水産資源研究所 国際海洋資源研究員

宮下 富夫


参考文献

  1. 藤瀬良弘・田村力・板東武治・小西健志・安永玄太. 2004. イワシクジラとニタリクジラ. 鯨研叢書 No.11. 日本鯨類研究所, 東京. 168 pp.
  2. Hakamada, T., Matsuoka, K. and Nishiwaki, S. 2004. Increase trend and abundance estimate of sei whales in the western North Pacific. Document SC/56/O19 submitted to 55th IWC. 9 pp.
  3. Hakamada, T., Kiwada, H., Matsuoka, K. and Kitakado, T. 2011. Preliminary estimation of North Pacific sei whale abundance derived from 2010 IWC/Japan Joint Cetacean Sighting Survey data. Document SC/63/IA13 submitted to 63rd IWC. 7pp.
  4. Hakamada, T., Matsuoka, K. and Kitakado, T. 2012. Preliminary estimation of North Pacific sei whale abundance based on the 2011 IWC-POWER sighting survey data. Document SC/64/IA11 submitted to 64th IWC. 10pp.
  5. Hakamada, T. and Matsuoka, K. 2013. Preliminary abundance estimation of North Pacific sei whale based on the 2012 IWC-POWER sighting survey data. Document SC/65a/IA9 submitted to 65th IWC. 11pp.
  6. Hakamada, T. and Matsuoka, K. 2015. Abundance estimate for seiwhales in the North Pacific based on sighting data obtained during IWC-POWER surveys in 2010-2012. Document SC/66a/IA12 submitted to 66a IWC. 11pp.
  7. Horwood, J. 1987. The sei whale: population biology, ecology and management. Croom Helm, New York. 375 pp.
  8. Kanda, N., Bando, T., Matsuoka, K., Murase, H., Kishiro, T., Pastene, L., A. and Ohsumi, S. 2015. A review of the genetic and non-genetic information provides support for a hypothesis of a single stock of sei whales in the North Pacific. Document SC/66a/IA9 submitted to 66a IWC. 17pp.
  9. Masaki, Y. 1976. Biological studies on the North Pacific sei whales. Bull. Far Seas Fish. Res. Lab., 14: 1-104.
  10. 根本敬久. 1962. ひげ鯨類の餌料. 鯨研叢書 No.4. 日本鯨類研究所, 東京. 136 pp.
  11. Ohsumi, S. and Wada, S. 1974. Status of whale stocks in the North Pacific, 1972. Rep. Int. Whal. Commn., 24: 114-126.
  12. Tillman, M.F. 1977. Estimates of population size for the North Pacific sei whales. Rep.Int. Whal. Commn., (Sp. Is.) 1: 98-106.