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52 ニタリクジラ 北西太平洋

Bryde's Whale, Balaenoptera edeni

                                                                            
PIC
ニタリクジラ(日本鯨類研究所提供)

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最近の動き

本種をめぐる大きな動きはない。なお、国際捕鯨委員会(IWC)科学委員会では、北西太平洋の本種を対象とした2回目の改訂管理方式(RMP)適用試験を2017年より開始する予定である。


利用・用途

刺身、鍋、竜田揚げ、くじらカツ、大和煮など他のひげ鯨同様食用として利用していた。他国では主として鯨油として利用していた。


図1

図1. 日本における西部北太平洋系ニタリクジラの漁業別捕獲量の年推移(Ohsumi 1998に基づく)


図2

図2. 西部北太平洋系ニタリクジラの国別捕獲量の年推移(Ohsumi 1998に基づく)


図3

図3. 本種に特有な頭部の3本の隆起線


図4

図4. ニタリクジラの分布域(網目は主分布域)Kato(2002)より


図5

図5. 我が国周辺におけるニタリクジラ2系群の分布 (Kato et al. 1996より)


図6

図6. 西部北太平洋系ニタリクジラの成長曲線(Ohsumi 1979より)


図7

図7. トップバレルを有する鯨類目視調査船


図8

図8. トップバレルからの目視探索


図9

図9. 目視調査を実施した航跡と西部北太平洋系ニタリクジラの発見位置(1998〜2002年8・9月)(Shimada et al. 2008より)


図10

図10. プログラム(HITTER)による西部北太平洋系ニタリクジラの資源動向(Anon 1997に基づく)


図11

図11. IWCによる西部北太平洋系ニタリクジラの管理海域(Anon. 2000より)


付表

付表. ニタリクジラ北西太平洋系群の捕獲頭数
(Anon. 1997、Fujise et al. 2001-2003、Matsuoka et al. 2008、Tamura et al. 2004-2007, 2009, 2012, Bando et al. 2010, 2013, 2014, 2015、Yasunaga et al. 2011に基づく)


漁業の概要

本種は、江戸時代から和歌山、高知や九州において網取り式捕鯨で捕獲していた(Omura 1966, 1977)。その後19世紀末から近代捕鯨により捕獲するようになった。1940年代末にニタリクジラと識別されるまではイワシクジラと同種として扱われていた(Omura and Fujino 1954)。日本の捕鯨統計では、1955年から両種は区別して記録されており、1976年からは別々に管理されている。なお、高知では、本種はカツオの群の中によく見いだされ、しかも本種がいるとカツオがよく獲れることから、カツオクジラとも呼ばれていた。

沿岸の主な捕鯨漁場は三陸沖、小笠原諸島周辺、和歌山沖及び九州西方沖で、同捕鯨は商業捕鯨のモラトリアムへの異議申し立てを取り下げる1987年まで行われていた。また、本種を対象とした日本の母船式捕鯨は1946〜1952年及び 1971〜1979年まで実施していた(図1、付表)。商業捕鯨以外では、我が国が2000年から開始した第二期北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPN II)において毎年50頭を上限として捕獲していたが、2014年については、国際司法裁判所の「南極における調査捕鯨」訴訟判決に照らし、調査目的を限定するなど規模を縮小して実施することとなり、捕獲上限は25頭となった。高知や鹿児島では、東シナ海系の本種がホエールウォッチングの対象となっている。我が国以外では、旧ソ連(母船式1970〜1979年)、台湾(1976〜1980年)、フィリピン(1983〜1985年)及び韓国(1981年)が本種を対象として捕鯨を行った(Ohsumi 1998)(図2)。漁業による混獲は少ない。


生物学的特徴

本種の形態はイワシクジラに類似しているが、上顎部背面にある3本の稜線によって、洋上で他のヒゲクジラ類との識別が可能である(図3)。

本種は、暖海性の種であり、赤道域から亜寒帯境界域にかけて、年間を通して表面水温およそ20℃以上の暖水域に分布する(図4;Omura and Nemoto 1955、Kato 2002)。

本種の系群構造については、フィリピン近海やソロモン諸島周辺、メキシコ湾内などの沿岸域に見られるものを除き、北太平洋に少なくとも3系群(西経150度以東の沖合に分布する東部系群、東経130度〜西経150度付近にかけて広く分布する西部北太平洋系群、東シナ海、黄海から九州、四国の沿岸に分布する東シナ海系群)が存在すると想定されている(Anon. 1996)。このうち日本周辺には、西部北太平洋系群と東シナ海系群が見られ、両者は黒潮を境に沖合側(西部北太平洋系群)と沿岸側(東シナ海系群)に分かれて分布する(Kato et al. 1996)(図5)。なお、本種は、近年、mtDNA分析と頭骨形態の分析により、B. brydei(沖合ないし西部北太平洋群に相当)とB.edeni(沿岸ないし東シナ海系群に相当)の2種に分類する論文が発表された(Wada et al. 2003)。その後、インド洋の標本も加えた分析でも、これを支持する報告がなされているが(Kershaw et al. 2011)、現在のところ、IWCでは両者の分類を保留し、従来通り1種B. edeniとして管理している。

西部北太平洋系群は、目視調査や過去の捕獲位置、標識再捕(Kishiro 1996)の結果から、夏季にはフィリピン諸島沖合から西経150度まで、南緯2度から北緯43度まで広範囲に分布していることが明らかになっている。この海域は、黒潮、黒潮続流、北太平洋海流、北赤道海流に挟まれた西部北太平洋中央水に該当する(島田ほか 2000)。冬季には、おおよそ北緯30度以南に分布し、北限は表面水温20℃に該当する(Miyashita et al. 1996)。

本種の出産は冬季を中心に行われるが、他種に比べ明瞭なピークはないことが商業捕鯨時代の捕獲物調査から明らかになっている。出産場は特定されていないが低緯度域と想定されている。妊娠期間は11か月、約2年周期で1仔を出産する。出生体長は約4.0 m、性成熟体長は雄が11.0〜11.4 m、雌が11.6〜11.8 m、成熟体長は雄が13.0 m、雌が13.5 mである(Kato and Yoshioka 1993)。性成熟年齢は7〜10歳(Ohsumi 1977)(図6)、最大寿命はおよそ60歳である(Ohsumi 1979)。

餌生物はオキアミ及び魚類で(Nemoto and Kawamura 1977)、魚類ではカタクチイワシ、マサバ、ハダカイワシなどを捕食している(Nemoto 1959)。さらに、2000年から開始されたJARPN IIによって、その食性は季節により変化しており、5〜6月にオキアミ、7〜8月にカタクチイワシを捕食していることが明らかになった(Tamura and Fujise 2002)。索餌場は中低緯度海域である。捕食者としてシャチが挙げられる。


資源状態

【資源量調査の経過及び結果】

西部北太平洋系群の最新の資源量推定には、1998〜2002年夏季に遠洋水産研究所(現:国際水産資源研究所)が実施したライントランセクト法に基づく目視調査のデータを使用した。同調査はRMPで使用可能な資源量データを得るため、IWCの資源調査実施ガイドラインに従って同科学委員会の審査を経て、IWC に指名された乗船科学者による監督の下で実施した(Shimada 1999, 2000, 2001, 2002, 2003)。同調査では全て、鯨類観測用のトップバレルを有する調査船を用い(図7)、双眼鏡を常時使用した目視観測を行った(図8)。また、本種の判別は、頭部の3本の稜線を確認することにより確実に行われた。

鯨類目視調査船を用いた合計11航海の総調査距離22,709海里の航跡と326頭の発見位置を図9に示す。この調査の結果から、2000年における西部北太平洋系群の管理海域における資源量は20,501頭と推定された。ただし、本調査は広大な海域を複数年にわたってカバーしたためプロセスエラーを考慮する必要がある。そこで、1988〜1996年までの鯨類目視調査の結果も加えて追加分散を推定した結果、資源量の変動係数は33.6%と推定された(Shimada et al. 2008、Kitakado et al. 2008)。これらの数値はIWC科学委員会における1回目のRMP適用試験において、捕獲枠算出に使用可能であることが合意された(IWC 2008)。その後、日本・IWC共同北太平洋鯨類目視調査プログラム(POWER計画)などの調査によって、引き続き、本種を含む鯨類の目視データ収集等が継続して行われている。


【資源評価・水準・動向】

IWCによる西部北太平洋系群の包括的資源評価は、1996年に終了した。資源評価では、1996年当時の推定資源量と過去の捕獲データから、プログラム(HITTER・FITTER)を用いて過去の資源変動が再現された(図10)。それによると、1996年当時の資源水準は、成熟した雌の割合で見ると、多くのケースで初期資源(1911年)の60〜80%となった(Anon. 1997)。また、近年では増加していることが示された。この結果から、本系群の資源水準は中位から高位にあり、資源動向は増加中であると判断される。


管理方策

IWCの一世代前の管理方式(新管理方式:NMP)が1976年より北太平洋で適用され、西部北太平洋系群は初期管理資源(初期資源の72%以上)に分類され商業的に利用されていたが、商業捕鯨モラトリアムにより1987年漁期を最後に捕獲停止となった。その後、不確実性の下でも資源を安全に管理できる数々の安全策が組み込まれた、ひげ鯨類のためのRMPが1993年に完成した(田中 2002)。本系群の管理海域は、1996年の包括的資源評価を経て、東経130〜180度、北緯10〜43度と、東経180度〜西経155度、北緯 25〜43度の2つのサブエリアに分けられた(図11)。以後、目視調査やJARPN IIなどからの新しい情報が蓄積されたことからRMP適用作業が2005年より進められた。2回の中間会合を経て第59回年次会議(2007年5月)で本系群について3つの管理オプションと1つの調査条件付き管理オプションが了承され、管理方策の適用作業が終了した(Anon. 2008)。また、第60回年次会議(2008年6月)において、捕獲枠算出に使用する資源量推定値が20,501頭(変動係数33.6%)として合意された(IWC 2008)。その後、本種をめぐる大きな動きはない。本種については、2013年に再びRMP適用試験が開始される予定であったが、本種等を対象としたPOWER計画などの調査が現在進行中であり、それらの成果が得られるのが2016年以降であること、また適用試験の早急な実施が必要とされるような資源悪化を示唆する情報もないことから、第65回年次会合(2014年5月)において、適用試験開始は2017年に延期することが合意された。なお、本種を捕獲している北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPNII)の結果について、2017年にIWC専門家パネルによるレビュー会合が予定されており、その評価を踏まえた上で、それらの成果も本種のRMP適用試験に貢献することが期待される。


ニタリクジラ(北西太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位から高位
資源動向 増加
世界の捕獲量
(最近5年間)
なし(商業捕鯨モラトリアムが継続中)
我が国の捕獲量
(最近5年間)
2014年は捕獲調査により年間25頭
管理目標 商業捕鯨モラトリアムが継続中であり、未設定
資源の現状 2000年:20,521頭(CV=33.6%)
管理措置 商業捕鯨モラトリアムが継続中
管理機関・関係機関 IWC
最新の資源評価年 2007年
次回の資源評価年 2017年

執筆者

外洋資源ユニット
鯨類サブユニット
国際水産資源研究所 外洋資源部 鯨類資源グループ

木白 俊哉

外洋資源ユニット
国際水産資源研究所 外洋資源部

宮下 富夫

くろまぐろユニット
国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部

島田 裕之


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