--- 総説 ---

45 海鳥類の偶発的捕獲とその管理(総説)


                                               
PIC
操業中に保護されたハジロアホウドリ

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海鳥類と漁業との間には、鳥群れを利用した魚群探査や鳥による漁獲物、投棄魚、養殖魚の捕食など様々な関係がある(清田 2006)。網漁具や釣り漁具に海鳥類が誤って掛かる偶発的捕獲は、多くの海鳥類個体群に脅威を与えている。海鳥の偶発的捕獲を伴う漁業としては、流し網、底刺し網、定置網、トロール、はえ縄などがある。公海流し網が禁止されるようになった一因は海鳥類や海獣類の偶発的捕獲にあり、トロールでは海鳥の死亡原因となるネットゾンデケーブルの使用が禁止されるようになった。海鳥類など大型海洋動物の偶発的捕獲を適切に回避し共存をはかることが、漁業活動を持続的に営む上で必要条件となっている。近年、はえ縄における海鳥類の偶発的捕獲が世界的に大きな問題となっており、国際連合食糧農業機関(FAO)では1999年に、はえ縄によって偶発的に捕獲される海鳥の削減に関するための国際行動計画(IPOA-Seabirds)を策定し、関係各国が軽減措置の導入、研究開発、教育訓練、データ収集を推進するための国内行動計画を策定するよう求めている。また、各大洋の漁業管理機関は関係国に海鳥の偶発的捕獲発生状況のモニタリングや、偶発的捕獲が多発する水域では回避措置の導入を求めている。ここでは、我が国のまぐろはえ縄漁業を念頭におき、偶発的捕獲の発生が懸念されるアホウドリ類及びミズナギドリ類について、その生物学的特徴と偶発的捕獲の発生状況及びその削減のための漁業管理について概説する。


表1

表1. アホウドリ類各種の個体群の状態(IUCN 2014による)


表2

表2. ミズナギドリ科各種の個体群の状態(IUCN 2014による)


図1

図1. アホウドリ類の営巣地と洋上分布(南大洋の3属の分布域は重複するため、まとめて示している)


図2

図2. トリライン


図3

図3. 投縄中のはえ縄の模式図と海鳥類の偶発的捕獲回避手段を示す模式図


表3

表3. 各水域のまぐろ類漁業管理機関におけるはえ縄漁業の海鳥偶発的捕獲に関する規制状況


表4

表4. 23°N以北の中西部太平洋で操業するはえ縄漁船に適用されたWCPFCの海鳥混獲回避措置。24m以上の船は、少なくともA欄から1つ以上、合計2つ以上の回避措置を使用する。ただし、A欄のバードカーテン及び加重枝縄を併用した舷側投縄を選択した場合には2つ使用したと見なされる。24 m未満の船は、A欄から1つ以上の回避措置を使用する(注:24 m未満船の使用義務は2017年1月1日から)。


生物学的特徴

【分類】

アホウドリ類はミズナギドリ目アホウドリ科に属し、くちばし基部の左右に鼻管をもつことが特徴である(清田・南 2000)。外部形態に基づいて、アホウドリ属12種とハイイロアホウドリ属2種に分ける分類体系が長らく用いられてきた(表1の旧分類)。しかし、アホウドリ類は出生場所への回帰性が強く各営巣集団の遺伝的独立性が高いことから、外部形態や繁殖周期の異なる個体群が亜種もしくは別種として細分化されるようになり、最近では遺伝子分類に基づいてアホウドリ科を4属21〜24種に再編する分類体系が採用される傾向にある(Robertson and Nunn 1998、Tickell 2000、Brooke 2001, 2004)。新しい分類体系はまだ流動的な部分もあるが、本総説では小城ほか(2004)が提唱した和名に準じて記述する。

ミズナギドリ科海鳥類はアホウドリ類と同様にミズナギドリ目に属し、同目の特徴である鼻管をもつ。ミズナギドリ科海鳥類はフルマカモメ類6属8種、クジラドリ類1属6種、ミズナギドリ類3属25種、シロハラミズナギドリ類2属36種の計12属75種からなる。本総説では、我が国のまぐろはえ縄漁業で偶発的捕獲されるオオフルマカモメ、カッショクオオフルマカモメ、オオハイイロミズナギドリ、ノドジロクロミズナギドリ及びアカアシミズナギドリについて取り上げ、これらを総称してミズナギドリ類と呼ぶことにする。


【分布】

アホウドリ類は南大洋と太平洋に広く分布し、北大西洋には分布しない(図1)。モリモーク属、ハイイロアホウドリ属、ワタリアホウドリ属は南大洋に分布する。営巣地は南緯35〜55度の間に位置し、多くは人里離れた海洋島に散在する(Tickell 2000)。洋上における分布域は、全体としては亜熱帯収束線以南の周極分布を示す。アホウドリ類は飛翔能力に優れており、ワタリアホウドリやハイガシラアホウドリでは種として周極分布を示すだけでなく、非繁殖期に亜南極域に沿って南大洋を周回移動する個体があることが衛星テレメトリーによって知られている(BirdLife International 2004)。具体的な分布域は種や成長段階によっても異なり、ハイイロアホウドリのように南極前線を越えて南極海のパックアイス付近まで分布する種もある。逆に、アムステルダムアホウドリの洋上分布域は南インド洋中部の亜熱帯水域に限定されている。

キタアホウドリ属は北太平洋に3種、東部熱帯太平洋に1種が生息する。ガラパゴスアホウドリは、熱帯域に生息する唯一の種で、洋上での分布域もガラパゴス諸島とエクアドル周辺の近海に限られている。アホウドリ、クロアシアホウドリ、コアホウドリの3種は、北太平洋に広く分布するが、コアホウドリが北西側、クロアシアホウドリが南東側に重点的に出現する傾向をもつ。鳥島で繁殖するアホウドリの海上分布については、目視調査や衛星追跡によって詳細が解明されつつある(Suryan et al. 2006、清田・南 2008)。アホウドリはクロアシアホウドリやコアホウドリに比べると沿岸性が強く、春になり営巣を終えたアホウドリは日本列島、千島列島、アリューシャン列島の陸棚縁辺域に沿って北上し、夏にはベーリング海からアラスカ湾へ移動する。

本総説で取り上げたミズナギドリ類のほとんどは亜熱帯収束線以南の周極分布を示し、南大洋に分布するアホウドリ類と分布域は重複する。オオフルマカモメ属2種は南極前線を境界にカッショクオオフルマカモメが北側、オオフルマカモメが南側に分布の中心があり、オオフルマカモメは南極大陸沿岸にまで分布する。ミズナギドリ類6種のうちアカアシミズナギドリだけが非繁殖期に北太平洋やインド洋低緯度域に長距離渡りを行い、南北両半球に広く分布する。


【生態】

アホウドリ類やミズナギドリ類は細長い翼をもち、風速勾配を利用したエネルギー効率の良い飛行法(ダイナミックソアリング)で長距離を移動しながら、海面付近で魚類、いか類、甲殻類などの餌を食べる表層採食者(surface feeder)である。アホウドリ類は滑翔に適した長い翼を持つため潜水能力はあまり発達しておらず、ワタリアホウドリ属はほとんど潜らないが、モリモーク属やハイイロアホウドリ属の中には5 m以上潜る種もある(Prince et al. 1994)。アホウドリ類は食物のかなりの部分を海面に漂う死んだいか類、甲殻類、魚卵などを拾って食べる拾い食い採食(scavenging)に依存している。種によって拾い食い食性への依存度は異なり、自力で潜水して活き餌を採ることもある(Croxall and Prince 1994)。拾い食い食性の強いアホウドリ類にとって、漁船が投げ入れる餌は格好の食物になる。マユグロアホウドリやワタリアホウドリは漁船に良く付くことが知られており、投棄される漁獲物の屑や不要魚を積極的に食べる。Thompson and Riddy(1995)の推定によれば、フォークランド諸島で繁殖するマユグロアホウドリは、年間に摂取するエネルギーの5.4%をトロールからの投棄物に依存しているという。空中からの餌の探索は主に視覚に頼っていると思われるが、嗅覚も索餌に役立っているようである(Nevitt 2000)。

ほとんど洋上で生活するアホウドリ類やミズナギドリ類の中でオオフルマカモメ属2種だけが陸上でも餌を採り、アザラシなど哺乳類、鳥類、魚類の死肉を食べる。両種は洋上においても海面に漂う死んだ生物や漁船からの投棄物を食べる拾い食い食性が強い。オオフルマカモメ属以外のミズナギドリ類はアホウドリ類よりも小型であり、翼を利用して潜水して採餌する種が多く、ノドジロクロミズナギドリやオオハイイロミズナギドリのように5 m以上潜水して自力で餌を採る種もいる。


【再生産】

アホウドリ類は一般に長寿命で、長いものでは50年以上生きる。成熟するまでに5年以上要し、巣立ってから成熟するまでは営巣地に戻らず外洋で生活するものが多い。産卵から雛の巣立ちまでに要する期間は7〜14か月に及ぶ。繁殖期あたりの産卵数は1つがい1卵で、繁殖周期はワタリアホウドリ属、ススイロアホウドリ属及びハイガシラアホウドリは2年に1回、その他は1年に1回である(Gales 1993)。個体間のつがい関係(pair bond)が非常に強く、同じ相手と毎年つがいを形成する。片方の死亡などでつがい相手と出会えない場合には、その後1〜2年間は繁殖を行わないと言われている。ミズナギドリ類は成熟するまで4年以上要し、繁殖期間も7、8か月に及び、アホウドリ類と類似した繁殖生態をもつ。


【個体群の動向】

アホウドリ類の個体群動向は繁殖地によって違いがあるが、減少傾向を示す個体群が多い。表1は種別の個体群サイズと増減傾向を示したものだが、IUCN(2015)によれば、22種に分類したアホウドリ類のうち、増加あるいは安定傾向を示すものはキャンベルアホウドリ、ニュージーランドアホウドリ、チャタムアホウドリ及びミナミシロアホウドリの南大洋アホウドリ4種と、アホウドリ、コアホウドリ及びクロアシアホウドリの北太平洋アホウドリ3種であり、その他13種は減少傾向を示している。レッドリスト・カテゴリーでは絶滅危惧IA類が3種、IB類が5種、II類が7種、準絶滅危惧が7種として掲載されている。2008年、2010年、2012年及び2013年にアホウドリ類のレッドリスト・カテゴリーが見直されたが、2014年及び2015年では見直しは行われなかった。絶滅危惧IA類であったチャタムアホウドリは、営巣地の縮小がみられないことや個体数が安定あるいは増加傾向であることから2013年に絶滅危惧II類にダウンリストされた。絶滅危惧IB類であったマユグロアホウドリは、全個体数の70%を占めるフォークランド諸島個体群が2000年代で増加傾向にあり、もはや急速な減少傾向を示していないことから2013年に準絶滅危惧にダウンリストされた。絶滅危惧IB類であったクロアシアホウドリは、はえ縄混獲死亡数や減少率が過大評価されていたため、個体群の将来予測が減少傾向から一変して増加傾向を示したことから、2012年に絶滅危惧II類にダウンリストされ、さらに、個体数が急速な減少傾向を示しておらず、むしろ安定あるいは増加傾向にあるため、2013年に準絶滅危惧にダウンリストされた。絶滅危惧II類であったニュージーランドアホウドリは、営巣地が広範囲に分布し個体数が安定していること、また、同類であったコアホウドリは1990年代後期と2000年代初期における個体数の減少傾向から一変して増加傾向を示していることから、2013年に両種ともに準絶滅危惧にダウンリストされた。一方で、絶滅危惧IB類であったゴウワタリアホウドリは、営巣地が狭い範囲にあり個体群の将来予測が減少傾向を示したことから2013年に絶滅危惧IA類にアップリストされた。絶滅危惧II類であったハイガシラアホウドリは、主要な繁殖地、特に全個体数の半数を占めるサウスジョージアにて減少率が高いため2013年に絶滅危惧IB類にアップリストされた。

ミズナギドリ類の個体群動向を表2に示した。ミズナギドリ類はアホウドリ類に比べ個体数が多く、また、陸上での繁殖が穴居性である種が多いため、正確な個体数を推定することが困難である。IUCN(2015)によれば、オオフルマカモメ、カッショクオオフルマカモメ及びアカアシミズナギドリは増加あるいは安定傾向を示し、ノドジロクロミズナギドリ及びオオハイイロミズナギドリは減少傾向を示す。2015年はミズナギドリ類のレッドリスト・カテゴリーの見直しは行われなかった。レッドリスト・カテゴリーではオオフルマカモメ、カッショクオオフルマカモメ及びアカアシミズナギドリは、絶滅の脅威が低い軽度懸念にリストされている。ノドジロクロミズナギドリが絶滅危惧II類に、オオハイイロミズナギドリが準絶滅危惧にリストされている。

アホウドリ類やミズナギドリ類の減少要因としては、漁業による偶発的死亡の他に、営巣地の荒廃、ネコやネズミなどの移入動物による卵や雛の食害、感染症、プラスチック呑み込み、石油流失や重金属、有機塩素化合物による汚染などがある(Gales 1993, 1997、Tickell 2000)。その中でも漁業による偶発的死亡と移入動物の影響を受けている個体群が最も多いと考えられている。移入動物による海鳥類の被害に対しては、有害獣の駆除が有効であることが報告されている(Donlan and Wilcox 2008、Pascal et al. 2008)。さらに、病気や気候変動などの影響も無視できないとする研究成果も報告されている(Weimerskirch et al. 2003、Weimerskirch 2004、Jenouvrier et al. 2005)。


はえ縄における偶発的捕獲

【偶発的捕獲の発生状況】

アホウドリ類や本総説で取り上げたミズナギドリ類の主な分布域は南大洋と北太平洋の亜熱帯〜亜寒帯水域であることから、海鳥類との競合が起こる主な漁業は、マジェランアイナメを主対象とした南極海の底はえ縄、南大洋のミナミマグロを主対象とした浮きはえ縄、北太平洋のまぐろ・かじき類を対象とした浮きはえ縄、北洋の底魚類(オヒョウ、ギンダラなど)を対象とした底はえ縄である。このうち我が国から出漁しているのは、南大洋の浮きはえ縄と底はえ縄、北太平洋の浮きはえ縄である。南大洋のミナミマグロ漁業では、1992年より科学オブザーバー乗船によるデータの収集を行い、海鳥の偶発的捕獲の実態解明に努めてきた。当初Brothers(1991)により年間44,000羽と推定されていた海鳥類の捕獲数は、回避措置の導入により近年では年間1,000〜4,000羽まで低下したと見積もられている。一方、北太平洋では、国立研究開発法人水産総合研究センターによる調査船、都道府県の試験船や水産高校の実習船によるはえ縄操業調査や、2007年より科学オブザーバー乗船によるデータ収集により、コアホウドリ及びクロアシアホウドリの偶発的捕獲が起こることが確認されている。


【偶発的捕獲の回避手法】

はえ縄における海鳥の偶発的捕獲は、投縄中の漁船の船尾付近の海面で発生することから、ここで海鳥類が釣餌を取ることができないような工夫を施すことにより、偶発的捕獲を削減することが可能である。アホウドリ類やミズナギドリ類の生物学的特徴を考慮した上で色々な回避方法が考案されている(清田2002, 2005、清田・横田 2010)。


  1. トリライン(吹き流し装置):アホウドリ類は滑空性に優れた細長い翼を持つ代わりに、空中での静止や方向転換が苦手なことから、着水する釣り餌の上に障害物を設けることにより餌の探索や餌取りのための低空飛行ができなくなる。トリラインと呼ばれる装置は、漁船の船尾に取り付けた長い棒(トリライン)の先からおどしを付けたロープを曳航し、鳥が餌に近づけないようにするものである(図2、3)。この装置はもともと日本のはえ縄漁船の乗組員が独自に考案したものだが、今では世界各国で利用されている。トリラインは3種類に大別され、遠洋まぐろはえ縄の大型船が主に使用しているオドシが長い標準型、近海小型船が主に使用している短いオドシが無数に取り付けられた軽量型、また、その両方のオドシを組み合わせた複合型が存在する。回避効果については、投縄中に集まる海鳥の種類や、使用するトリラインのタイプによって変わってくるが、鳥の捕獲率を平均3分の1に減らすことができる。ただし、安全に使用し、かつ十分な鳥よけ効果を得るためには、餌の真上にロープやおどしが来るようにポールやロープを調節すること、漁具やプロペラに絡まないよう各船に合わせてポールやラインの形状を工夫することが必要である。

  2. 加重枝縄:アホウドリ類は潜水能力が乏しいことから、錘の付加や鉛芯入りコードを使用して枝縄を加重し、餌のついた釣鈎を速く沈めることによって餌取りと鈎がかりを防止することができる。加重枝縄は、ミズナギドリ類のような潜水能力の高い海鳥の混獲回避にも効果的である。しかしながら、加重枝縄は、揚縄中に漁獲物から釣針が外れた場合、船員に向かって錘が飛んできて怪我をする危険性があることが問題であった。ワシントン大学、南アフリカ政府、日本かつお・まぐろ漁業協同組合による共同研究では、1 mぐらいのワイヤーの両端に錘を付けた枝縄(ダブル加重枝縄)を使用することで、漁獲物から釣針が外れた場合でも直線的に錘が船員に飛ばなくなり安全であること、また、漁獲効率についても加重と非加重とで差は見られなかったことなどの結果が得られている。ただし、枝縄の収納の際に錘が枝縄に絡まることがあり、今後、改善が必要である。なお、共同研究の実験に協力する過程でダブル加重枝縄を考案した日本かつお・まぐろ漁業協同組合所属漁船の漁労長は、2011年11月、国際環境NGOが主催する、混獲を減らすための環境にやさしい漁具・漁法のコンテストにおいて大賞を受賞した。

  3. 夜間投縄:アホウドリ類の多くは、昼間視覚に頼って餌を探すことから、夜間に投縄作業を行えば偶発的捕獲の発生頻度を抑えることが可能である。投縄を夜間の暗い時間帯に行い、デッキライトは最小限に控え、海面を照らさないようにすると効果的である。ただし、過重な労働スケジュール、投縄作業の危険性、満月時における回避効果の低下という問題に加え、夜間に投縄するため揚縄が日中になることから、低緯度域では漁獲物が高温下のデッキ上にさらされ、長時間の浸漬による漁獲物の品質低下が起こる等の問題がある。

  4. その他の回避措置:現在、上述したトリライン、加重枝縄、夜間投縄の3つの手法が高い混獲回避効果をもち、主要な回避措置として考えられている。その他の回避措置については、他の方法と組み合わせることで効果を発揮する補助的なもの、使用できる船の大きさや海況など水域が限定されているものであり、次に示す方法が存在する。

青色餌は、はえ縄の餌を青く着色して空中から餌を見つけにくくする方法で、海鳥の餌取り行動が抑制され、偶発的捕獲率は10分の1あるいはそれよりも低くなることが洋上調査により確認されている。青色餌は主対象魚種の釣獲率にはあまり影響を与えないことも示されている。普及させるためには着色コストの削減もしくは染色作業の省力化が必要である。サイドセッティングは、元々米国のフロリダやハワイの近海はえ縄船が漁労作業の省力化のために導入した方式で、通常のはえ縄漁船は船尾から幹縄と枝縄を投入するのに対し、舷側から投入する漁法である(図3)。漁具を舷側から投入することでプロペラ後流の影響を受けないために餌が速く沈降する上に、船体の威嚇効果により海鳥が投入した餌に近づきにくく、偶発的捕獲の発生が抑制されることが実験でも確認されている(横田・清田 2008、Yokota et al. 2011)。ただし、一般的には漁労機械の配置や作業形態の変更が必要であり、海況の悪い高緯度海域での実施が可能であるかも含めて、操業の安全性や作業効率を確認する必要がある。水中投縄は、餌つき釣針を船上から水面へ投げ込むのではなく、直接水中に投下する方法である(図3)。底はえ縄では実用化されているが、まぐろ用の浮きはえ縄は漁具構成が複雑で、現在開発段階にある。残渣排出管理は、投縄中の船に海鳥の群れが集まらないように、海鳥の餌となるもの(魚屑、回収した釣り餌、残飯など)を捨てない、あるいは、投縄中に多数の鳥が集まって仕方がない場合には、冷凍貯蔵した魚屑をまとめて投入し、海鳥の注意を釣り餌からそらす方法である。この他にも、これまで様々な偶発的捕獲回避手法の検討や試験が行われてきた。しかしながら、放水装置(waterjet device)は効果はあるが風に対して弱いこと、爆発音などの音、磁気、光、電気などの刺激因子は繰り返しの使用で海鳥が慣れて効果がなくなることが確認されている。

偶発的捕獲の発生状況は、生息する海鳥の種や個体数、漁船サイズや漁具漁法、海況等によって変わると考えられている。南半球の一部の水域では、ノドジロクロミズナギドリなどの潜水性ミズナギドリ類がはえ縄投縄時に沈降しつつある餌を捕獲し水面へ浮上させ、さらに、アホウドリ類がその餌を略奪して偶発的捕獲が発生することが問題となっている。このように、飛翔が機敏で潜水性の海鳥が多数生息する水域においては、トリラインと海面の間に空間ができやすい船尾付近に、長いオドシを取り付けたトリラインを使用することで海鳥の接近を防ぎ、さらに、枝縄に錘を付加して餌を速く沈めることで海鳥の潜水捕獲の機会を少なくすることが有効である。一方、北太平洋のはえ縄操業水域では、潜水性の海鳥がほとんど生息しておらず、はえ縄で競合する海鳥はコアホウドリとクロアシアホウドリの2種のアホウドリで占められる。そのため、北太平洋においてはオドシが短い軽量トリラインの使用でも十分に海鳥の偶発的捕獲を削減することが可能である。このように、偶発的捕獲の発生は水域によって大きく変わることから、世界中で画一的な回避手法を導入するのではなく、それぞれの水域に生息する海鳥や漁業の実態に応じて柔軟な対応が必要である。また、回避方法はそれぞれに一長一短があるため、単独で使用するよりも組み合わせることで効果が高まる場合もある。日本の漁業者がトリラインやダブル加重枝縄を開発したように漁業者が現場で工夫しながら効果的な方法を使うことも重要であり、漁業者との情報交換や漁業者への啓発普及活動も必要である。


【海鳥偶発的捕獲の管理】

はえ縄における海鳥の偶発的捕獲は、まず南極海の底はえ縄において問題になり、南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)は1994年に合意された保存管理措置によって夜間投縄、トリラインの使用を義務づけ、その後、釣鈎沈降速度の改善、残滓の投棄制限も義務化した。CCAMLR水域に隣接する南大洋のミナミマグロはえ縄に関しては、みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)に生態系関連種作業部会が設けられ、1997年にトリラインの使用が義務づけられた。北太平洋では、個体数が少ないアホウドリに対する偶発的捕獲の影響が最も心配され、アホウドリの夏季分布域で操業するアラスカの底はえ縄に対しては、2年間にアホウドリを4羽捕獲した場合には漁業の停止という偶発的捕獲の制限枠を設けて、軽減法の普及に努めている。こうした世界的な流れを受け、FAOは1999年に国際行動計画(IPOA-Seabirds)を策定し、関係漁業国に対策を要請した。これを受けて2001年2月に日本と米国は国内行動計画を提出した。その後ブラジル、カナダ、チリ、ニュージーランド、ウルグアイ、オーストラリア、南アフリカ、ノルウェーなども国内行動計画を策定した。日本の国内行動計画は、早くから規制が導入されている南半球のミナミマグロ漁業に加えて、北太平洋の浮きはえ縄を対象に策定された。全水域において生きて捕獲された鳥の放鳥と魚屑の適切な処理を必須要件として要請し、ミナミマグロ漁場や北太平洋においてトリライン、加重枝縄、自動投餌機と解凍餌の併用、夜間投縄、青色餌、放水装置、サイドセッティングの中から措置を選択するよう要求した。さらに、アホウドリの繁殖地がある伊豆諸島鳥島周辺の重点水域では、10〜5月の間はトリラインと1つ以上の軽減措置を併用することを求めている。また、調査研究の面では、偶発的捕獲回避法の開発と評価、国内のアホウドリ類繁殖地の環境改善、漁業データの収集、海鳥の生態学的情報の収集、国際協力の推進が掲げられている。さらに、後述する各大洋の漁業管理機関における海鳥の保存管理措置に従って、2009年2月に日本の国内行動計画の回避措置の改訂も行われ、ほとんどの水域において海鳥の偶発的捕獲の回避措置が導入されるようになった。

各大洋の漁業管理機関において海鳥偶発的捕獲の発生状況をモニタリングし、回避措置を導入・強化する動きが進められている。各機関は関係国に国際行動計画の実施と国内行動計画の策定を促すとともに、偶発捕獲が多発する水域では回避措置の使用を求めている(表3)。中西部太平洋では中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)において北緯23度以北及び南緯30度以南の太平洋において操業する大型はえ縄船は、表4に示したAとBの2つの欄(2ボックス型の選択肢)から2つ以上の混獲回避措置を使用することが2007年の年次会合で決定された(WCPFC 2007)。インド洋のインド洋まぐろ類委員会(IOTC)や東部太平洋の全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)においてもWCPFCに準じた2ボックス型の回避措置が導入された(IOTC 2010、IATTC 2011)。また、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)では、WCPFCやIATTCの2ボックス型選択という保存管理措置と異なり、海鳥の偶発的捕獲が多く発生する南緯25度以南においては混獲回避効果の高い夜間投縄、トリライン、加重枝縄の3つから2つを選択するという制約を強めた措置が2011年に採択され(ICCAT 2011)、翌年、WCPFCでも南緯30度以南、IOTCでも南緯25度以南においては、以前の2ボックス型選択という保存管理措置が改正され、ICCATと同様の措置となった(IOTC 2012、WCPFC 2012)(表3)。小型はえ縄船についても、WCPFCにおいて北緯23度以北の太平洋水域で操業する船は表4に示したA欄から1つ以上の混獲回避措置を2017年1月1日から使用することが2015年の年次会合で決定された(WCPFC 2015)。同じ大洋内であっても操業水域によって漁船の大きさ、使用漁具、操業形態、海況、出現する鳥の種類と数などが異なる。漁業の地域特性に応じて効果が高く実用性のある方法を選択できるよう保存管理措置を改善していく必要がある。一方で、地域漁業管理機関による規制措置の不整合を解消し、漁業者が混乱することなく使いやすい措置を柔軟に組み合わせられるようにすることが、回避措置の遵守状況の改善につながり、結果的に海鳥混獲問題の解決に近づくであろう。そのような観点から、特定の管理水域をもたないCCSBTでは独自の保存管理措置ではなく、太平洋においてはWCPFCの保存管理措置、インド洋においてはIOTCの保存管理措置、大西洋においてはICCATの保存管理措置を遵守することを求める勧告が策定されている(CCSBT 2011)。

以上、本稿ではまぐろはえ縄漁業と海鳥類の関係について論じた。しかし、海鳥類と漁業との問題は、外洋域のはえ縄だけに限らず、ウミスズメ類、カモメ類、ミズナギドリ類等の海鳥類が沿岸漁業と競合関係にある(小城 1991)との指摘もあるところ、将来的には営巣地環境など漁業以外の影響要因の把握も含めた包括的な調査研究を実施していく必要があろう。


執筆者

かつお・まぐろユニット
混獲生物サブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 混獲生物グループ

南 浩史

外洋資源ユニット
外洋底魚サブユニット
国際水産資源研究所 外洋資源部 外洋生態系グループ

清田 雅史


参考文献

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