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42 オナガザメ類 全水域

ニタリ Pelagic thresher, Alopias pelagicus

ハチワレ Bigeye Thresher, Alopias superciliosus

マオナガ Thresher shark, Alopias vulpinus

                                                    PIC PIC
                                                        ニタリ                                                                         ハチワレ
                                                    PIC
                                                        マオナガ                                                                    
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最近の動き

2015年、太平洋共同体事務局(SPC)の専門家グループによって中西部太平洋水域の漁業データを用いたオナガザメ類の資源状態の傾向分析が行われ、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)第11回科学委員会において発表された。2016年には、国際連合食糧農業機構(FAO)によるAreas Beyond National Jurisdiction(ABNJ)プロジェクトの一部として、太平洋に棲息するハチワレの資源評価が行われる予定である。


利用・用途

肉は生鮮食品や燻製、塩干物として消費される。鰭はフカヒレスープの原料、皮は革製品の材料として利用されるほか、肝臓からはビタミン類が抽出される。


表1

表1. オナガザメ類3種の繁殖様式、産仔数、出生時の体長


表2

表2. オナガザメ類3種の体長測定部位間の換算式


図1

図1. 日本の主要漁港へのオナガザメ類の水揚量


図2a 図2b 図2c

図2. オナガザメ類の分布(Compagno 2001より引用)
(上)ニタリ、(中)ハチワレ、(下)マオナガ


図3

図3. ハチワレの日周鉛直移動(Nakano et al. 2003より引用)


図4

図4. ニタリの成長式(Liu et al. 1999、Drew et al. 2015より引用)


図5

図5. ハチワレの成長式(Liu et al. 1998、Fernandez-Carvalho et al. 2011, 2015bより引用)


図6

図6. マオナガの成長式(Smith et al. 2008、Natanson et al. 2015より引用)


漁業の概要

日本の主要漁港におけるまぐろはえ縄等によるさめ類の種別水揚量は、水産庁による委託事業「日本周辺高度回遊性魚類資源調査委託事業(平成12〜18年度)」及び「日本周辺国際魚類資源調査(平成19年度〜)」によって調査が行われている。1992〜2014年におけるオナガザメ類の総水揚量は16〜706トンで、その内はえ縄による水揚量が109〜591トンと大部分を占めており(1992〜2013年:オナガザメ類総水揚量の約89%)、流し網が続いて多かった(オナガザメ類総水揚量の約10%)。時系列で見ると、1992年の706トンをピークとして、水揚げ量は緩やかに減少傾向を続けているが、2014年の水揚げ量は153トンと前年を若干上回っている(図1)。水揚げの多くを占めるはえ縄漁業のうち、近海はえ縄漁業と沿岸はえ縄漁業の隻数を年別に集計した結果、調査期間を通じて減少傾向を示しており、努力量の減少が水揚げ量の減少の一因である可能性が考えられる(図1)。さめ類の合計値に占めるオナガザメ類の割合(2002〜2013年)は0.1〜2.4%であった。

米国西岸では、マオナガを対象とした流し網漁業や遊漁が存在し、流し網漁業では1980年代初期には1,800トンが水揚げされていたが、漁獲対象の転換や資源保護のための規制によって、2008〜2009年には200トン以下となっている。豪州においては、オナガザメ類は遊漁の対象となる他、2011年初期まではインド洋に面する国々では地域的に消費され、欧州のマーケットでも食用として流通していたことが知られている(IOTC 2015a,b)。


生物学的特徴

【分布】

ニタリは主に熱帯〜亜熱帯の外洋の表層域に分布するが、時に沿岸近くに出現することもある。ハチワレは世界の熱帯〜温帯の外洋域及び沿岸域に分布する。マオナガは、熱帯〜温帯の冷水域に広く分布するが、主な出現は温帯域であり、沿岸性が強いとされる(図2)。鉛直分布については、ニタリは表層〜水深152 m、ハチワレが最も深く表層から少なくとも水深500 m(多くの場合、100 m以深)、マオナガは表層〜水深366 m(多くの場合、表層に分布)と報告されている(Compagno 2001)。はえ縄漁具を日中に浸漬した調査では、ハチワレでは水深240〜360 m、水温10〜16℃、マオナガでは、水深160〜240 m、水温18〜20℃の環境で漁獲率が高いことが示されている(Cao et al. 2011)。

メキシコ湾及び太平洋で行われたポップアップアーカイバルタグ及び超音波発信器による行動研究によれば、ハチワレの遊泳深度(図3)は成長段階によらず、夜間(10〜130 m)よりも日中(200〜500 m)の方が深いこと(Nakano et al. 2003、Weng and Block 2004)、これに伴い分布水温は夜間(メキシコ湾、ハワイ:20〜26℃)の方が日中(メキシコ湾:6〜12℃、ハワイ:6〜26℃)よりも高いことが示されている(Weng and Block 2004)。

カリフォルニア南部で行われたアーカイバルタグ及び超音波発信器による行動研究によれば、マオナガは大陸棚上の浅い海域を避け、沖合の深い場所を好み、日中は水温躍層の下もしくは躍層の上部を遊泳し夜間は躍層の上、混合層に留まることが明らかになった(Cartamil et al. 2010a、Cartamil et al. 2011)。また、未成魚については、多くの時間を大陸棚上で過ごし、個体によっては生息場所に高い固着性を示すこと、鉛直的には表層20 mに分布が限られること、昼の分布水深は夜よりも深いことがわかっている(Cartamil et al. 2010b)。

太平洋における日本のはえ縄調査データの解析によれば、ハチワレのCPUEは熱帯域(北緯10〜15度、南緯5〜10度)で高いこと、低緯度では幼魚や未成魚が多く出現し高緯度になるほど大型個体の割合が高くなることが示唆されている(Matsunaga and Yokawa 2013)。インド洋においても同様の傾向が見られる上、海域や体長階級によって性比が異なることが示されている(Fernandez-Carvalho et al. 2015a)。マオナガについても、インド洋北西部や北米西岸において水平・鉛直方向における性的棲み分けの存在が指摘されている(Compagno 2001)。

系群構造に関しては殆ど研究が行われていないが、近年のミトコンドリアDNA及びマイクロサテライト(核DNA)を用いた研究によれば、ニタリは太平洋の東部と西部で大きく遺伝的組成が異なることが明らかになっている(Cardenosa et al. 2014)。


【産卵・回遊】

ニタリ、ハチワレ、マオナガの繁殖様式はいずれも卵食・共食い型の非胎盤型胎生(Otake and Mizue 1981、Gilmore 1983、Moreno and Moron 1992、Chen et al. 1997、Liu et al. 1999、Natanson and Gervelis 2013)である。産仔数の範囲は、ニタリが2尾(Otake and Mizue 1981、Liu et al. 1999)、ハチワレが2尾(最頻値、レンジは2〜4個体)(Moreno and Moron 1992)、2尾(Chen et al. 1997)、マオナガが平均3.7尾(Natanson and Gervelis 2013)、4尾(Mancini and Amorim 2006) と推定されている(表1)。出生時の体長は、ニタリが全長158〜190 cm(Liu et al. 1999) 、全長130〜160 cm(Compagno 2001)、ハチワレが全長100 cm(Moreno and Moron 1992)、135〜140cm (Chen et al. 1997)、マオナガが全長114〜160 cm (Compagno 2001)で(表1)、妊娠期間はニタリが9か月(Romero-Caicedo et al. 2014)、ハチワレが12か月(Compagno 2001)、マオナガが9か月(Cailliet and Bedford 1983)と推定されている。なお体長について、特に説明がない場合は、尾鰭前長を表す。交尾・出産期及び繁殖周期については、ニタリでは明瞭な交尾・出産期は報告されていないが、妊娠個体が周年観察されていることから、休止期はなく毎年出産している可能性が指摘されている(Liu et al. 1999、Romero-Caicedo et al. 2014)。ハチワレでは、出産は季節性がなく周年行っていると推定されているが(Chen et al. 1997)、東部大西洋では秋〜冬期の出産が他の時期に比べて多いと報告されている(Moreno and Moron 1992)。マオナガでは、東部太平洋において夏期(7〜8月)に交尾後、9か月の妊娠期間を経て春季(3〜6月)に出産すると推定されている一方(Cailliet and Bedford 1983)、大西洋では、5〜8月(Mancini and Amorim 2006、Natanson and Gervelis 2013)の出産期を経て交尾は秋に行われること、休止期を伴うため出産は毎年行われない可能性が指摘されている(Natanson and Gervelis 2013)。

ハチワレではイベリア半島南西部の沖合(Moreno and Moron 1992)が、マオナガではカリフォルニア南部など、温帯域の沿岸域(Compagno 2001、Cartamil et al. 2010b)が生育場と考えられている。

マオナガについては、北米西岸の個体群は季節回遊を行うと言われており、春季にバハ・カリフォルニアからカリフォルニア沖に北上し夏の間沿岸域に高密度に分布する。成熟雄は雌よりも北上しブリティッシュコロンビアまで到達するが、未成魚は低水温耐性が弱いためカリフォルニア中央部より北に移動することはなく、沿岸域の暖かく水深の浅い場所で多く見られる(Compagno 2001)。


【成長・成熟】

脊椎骨に形成される輪紋から年齢が推定されており、ニタリについてはLiu et al. (1999)とDrew et al. (2015)がそれぞれ台湾近海、インドネシア近海で漁獲された個体について(図4)、ハチワレについてはLiu et al. (1998)、Fernandez-Carvalho et al. (2011)、Fernandez-Carvalho et al. (2015b)がそれぞれ台湾近海、北東大西洋の熱帯域、大西洋全域で漁獲された個体を対象として(図5)、マオナガについてはSmith et al. (2008)、Natanson et al. (2015)が北東太平洋、北西大西洋で漁獲された個体を対象として(図6)、成長式を推定している。

成熟体長は、ニタリでは雄が144.3 cm(Romero-Caicedo et al. 2014)、全長267〜276 cm(Liu et al. 1999)、雌が151.4 cm(Romero-Caicedo et al. 2014)、全長282〜292 cm(Liu et al. 1999)、ハチワレでは、雄が全長276 cm (Moreno and Moron 1992)、全長270.1〜287.6 cm(Chen et al. 1997)、尾叉長159.2 cm(Fernandez-Carvalho et al. 2015a)、雌が全長332〜341.1 cm(Chen et al. 1997)、尾叉長208.6 cm (Fernandez-Carvalho et al. 2015a)、マオナガでは、オスが全長293~311 cm (Smith et al. 2008)、尾叉長181〜198 cm(Natanson and Gervelis 2013)、雌が全長303 cm(Smith et al. 2008)、尾叉長208〜224cm (Natanson and Gervelis 2013)と推定されている。成熟年齢は、ニタリでは雄が7〜8歳(Liu et al. 1999)〜10.4歳(Drew et al. 2015)、雌が8.0〜9.2歳(Liu et al. 1999)〜13.2歳(Drew et al. 2015)、ハチワレでは雄が9〜10歳(Liu et al. 1998)、雌が13.4歳(Liu et al. 1998)、マオナガでは雄が4.8歳(Smith et al. 2008)〜8歳(Natanson et al. 2015)、雌が5.3歳(Smith et al. 2008)〜13歳(Natanson et al. 2015)と推定されている。

体長測定部位が研究者によって、尾鰭前長、尾叉長、全長と様々であるので、これまで公表されている測定部位間の換算式を、表2に引用する。


資源状態

現在、オナガザメ類の資源水準の推定はどの大洋でも行われていないが、太平洋、大西洋、インド洋において、はえ縄漁業を対象とした生態学的リスク解析が行われている。SPCが行った太平洋の解析結果によれば、オナガザメ類のリスク(脆弱性)は“中程度”と評価されたが(Kirby and Hobday 2007)、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)が行った大西洋の結果では、ICCAT海域で主に漁獲又は混獲される代表的な板鰓類20種の中でハチワレは最も脆弱〜3番目(評価方法によって異なる)に脆弱な種であると推定されている(ICCAT 2012)。大西洋の解析では、ハチワレの生産力が他の種に比べて低いとされていることが本種の脆弱性が高いと推定された主な要因と考えられる(Cortés et al. 2010)。インド洋まぐろ類委員会(IOTC)が行ったインド洋の結果も、ハチワレは非常に脆弱な種であることが示唆されている(IOTC 2012)。

この他、SPCの専門家グループによって中西部太平洋水域の漁業データを用いたオナガザメ類の資源状態の傾向分析が行われており、WCPFC第11回科学委員会に報告された最近年の結果では、はえ縄漁業における主な漁獲は東経170度以東、南緯10度〜北緯20度で見られること、漁獲物の多くは未成熟個体であること、漁獲率は1995〜2001年にかけて増加し、その後2003〜2011年にかけてわずかに減少傾向を示し、2012〜2014年に急激に減少していることが示されている(Rice et al. 2015)。また、2016年には、FAOのABNJプロジェクトの一部として、太平洋に棲息するハチワレの資源評価が行われる予定である。


管理方策

現在、ICCATハチワレの船上保持禁止措置が(Recommendation 09-07)、IOTCにおいてオナガザメ類3種の船上保持禁止措置(Resolution 12/09)が施行されている。この他、全てのまぐろ類地域漁業管理機関(RFMO)において、漁獲されたさめ類の完全利用(頭部、内臓及び皮を除く全ての部位を最初の水揚げ又は転載まで船上で保持すること)及び漁獲データ提出が義務付けられている。加えて、WCPFCでは、2014年の年次会合において、@まぐろ・かじき類を対象とするはえ縄漁業は、ワイヤーリーダー(ワイヤー製の枝縄及びはりす)又はシャークライン(浮き玉又は浮縄に接続された枝縄)のいずれかを使用しないこと、Aさめ類を対象とするはえ縄漁業は、漁獲を適切な水準に制限するための措置等を含む管理計画を策定すること、が合意されている。


オナガザメ類(全水域)の資源の現況(要約表)

資源水準 調査中
資源動向 調査中
世界の漁獲量*
(最近5年間)
9,908〜20,565トン
平均:15,271トン
我が国の漁獲量**
(最近5年間)
16〜186トン
平均:121トン
管理目標 検討中
資源の現状 調査中
管理措置 船上保持禁止(ICCAT(ハチワレ)、IOTC(全種))
漁獲物の完全利用等(ICCAT(※ハチワレ以外)、IATTC、WCPFC)
管理機関・関係機関 ICCAT、IOTC、WCPFC、IATTC
最新の資源評価年
次回の資源評価年
*FAOによる統計資料(2009〜2013年)に基づく集計値。
**我が国主要水揚げ港における水揚げ量(2010〜2014年)の集計値。

執筆者

かつお・まぐろユニット
さめ・かじきユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

仙波 靖子


参考文献

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