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38 アオザメ 全水域

Shortfin Mako, Isurus oxyrinchus

                                                                       
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最近の動き

2015年3月に北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)において、アオザメ北太平洋系群の資源状態を把握する試みが行われた。ヨシキリザメを漁獲対象としている気仙沼の近海はえ縄漁業において、年間のアオザメの水揚げ量の上限を600トンにすること、1 m以下のアオザメをできるだけ放流することなどの取組を定めた管理計画が2016年1月1日より5年間実施されている。


利用・用途

肉はソテーやみそ漬け、練り物原料として、鰭はフカヒレ、脊椎骨は医薬・食品原料、皮は革製品として利用される。肉質が良いため、さめ類の中でも商品価値が高い。


図1

図1. 日本の主要漁港へのアオザメ水揚量


表1

表1. アオザメの年齢と尾鰭前長(Senba et al. 2009)


図2

図2. アオザメの分布(Compagno 2001)


図3

図3. アオザメの年齢と成長(尾鰭前長)雄(a)、雌(b)(Semba et al. 2009に加筆)


図4

図4. 北太平洋におけるアオザメの標準化CPUE


図5

図5. 大西洋におけるアオザメの標準化CPUEと漁獲量の年トレンド(a:北大西洋、b:南大西洋)(ICCAT 2012)黒線は上下とも漁獲量を示す。CPUEを示す線は、北大西洋ではオレンジ(細線)が米国、オレンジ(太線)が日本、紫がスペイン、水色がポルトガルのはえ縄データを基に相対化した値で、南大西洋では緑がウルグアイ、オレンジ(太線)が日本、紫がブラジル、青がスペイン、水色がポルトガルのはえ縄データを基に計算した値を意味する。


図6

図6. 大西洋のアオザメにおいてBSPによって推定されたバイオマス(黒実線)と各国の提出したCPUE(マーカー)のトレンド(a:北系群、b:南系群)(ICCAT 2012)
CPUEを示すマーカーは、北大西洋では黒が米国、赤が日本、緑がポルトガル、青がスペイン、南大西洋では黒がウルグアイ、緑がブラジル、青がポルトガル、水色がスペインを示す。いずれも1971年を開始年とし、CPUEに国別の重み付けをしていない。


図7

図7. 大西洋のアオザメにおいて、CFASPMで実施した北系群(a)と南系群(b)の全ての感度解析結果から得られたF2010/FMSYとSSB2010/SSBMSYの推定結果(ICCAT 2012)
マーカーは、各国のCPUEの重みづけや系群の減少(仮定)の有無、使用するデータの種類等の様々なシナリオ下における推定値を示す。
北系群(a)では上から順に、重みづけあり(CVで割る方法)、重みづけなし、重みづけありかつ1956〜1971間に系群が20%減少と仮定、重みづけなしかつ1956〜1971間に系群が20%減少と仮定、米国のデータを除いて解析、日本のデータを除いて解析、アメリカのデータのみで解析、日本のデータのみで解析、階層的な指標を使用して解析、1971年の時点で処女資源であり1971〜1986年の間に系群が20%減少と仮定、南系群(b)では、上から順に、重みづけなし、重みづけあり、のシナリオ下での推定値を示す。


図7

図8. 日本のミナミマグロ漁業オブザーバーデータを基に標準化したアオザメのCPUE(松永ら 2012)


図7

図9. インド洋(全域)において日本のはえ縄で混獲されたアオザメの標準化CPUE(Kimoto et al. 2011)
各折れ線は様々な報告率で抽出したデータに基づく解析結果を示す。


漁業の概要

我が国において、アオザメは主にまぐろはえ縄や沿岸流し網で混獲されている。遠洋はえ縄漁船は冷凍、近海はえ縄や沿岸流し網漁船は氷蔵で水揚げしている。日本の主要漁港におけるまぐろはえ縄等によるさめ類の種別水揚量は、水産庁による委託事業「日本周辺高度回遊性魚類資源調査委託事業(平成12〜18年度)」及び「日本周辺国際魚類資源調査(平成19年度〜)」によって調査が行われている。1992〜2014年におけるアオザメの総水揚量は554〜1,479トンで、その内はえ縄による水揚量が447〜1,308トンと大部分を占めており(アオザメ総水揚量の約83%)、流し網が続いて多かった(アオザメ総水揚量の約16%)。2011年の水揚量は、東日本大震災の影響から前年に比べて減少し、約550トンであったが、2012年には約850トンまで回復した。その後は、2014年の696トンまで緩やかな減少傾向を示している(図1)。過去10年さめ類の合計値に占める割合(2005〜2014年)は5.7〜7.2%であった。

大西洋においては、大西洋まぐろ類保全国際委員会(ICCAT)事務局が公表する漁獲統計によれば、1990〜2014年の北大西洋の個体群の漁獲量は774〜5,174トンで、1990〜2004年にかけて785トンから5,174トンまで増加した後は、2014年の2,899トンに至るまでおよそ3,000〜4,000トンの範囲で推移している。1980年代は、遊漁とはえ縄漁業による漁獲がほぼ同程度であったが、1990年以降はほぼ9割以上がはえ縄による漁獲となっている。国別では、スペイン・ポルトガルによる漁獲が全体の約半分を占める。南大西洋においては、1992〜2003年にかけて493トンから3,801トンまで増加した後は、2008年にかけて1,880トンまで減少し、その後はおよそ2,000〜3,000トンの範囲で推移している。1990〜2014年にかけてほぼ全ての漁獲がはえ縄によるもので、国別漁獲量はスペイン、ナミビア、ポルトガルによる漁獲が全体の6割以上を占めている。日本のはえ縄の漁獲成績報告書の報告率で選別したデータに基づく分析から、大西洋全域において、1994〜2010年の期間に3,340〜11,120個体(平均5,730個体)、150〜500トン(平均260トン)のアオザメが日本のはえ縄漁船によって漁獲されているものと推定されている(Semba and Yokawa 2012)。

インド洋においては、本種は遊漁、沿岸小規模漁業、準産業規模の漁業によって漁獲されるほか、まぐろ・かじき類を対象としたはえ縄漁業において混獲されている。インド洋まぐろ類委員会(IOTC)事務局が取りまとめる統計資料によれば、2012〜2014年の漁獲量(報告値)は1,458〜1,683トン(2010〜2014年の平均値:1,538トン)であるが、未報告の漁獲があるため、実際の漁獲量はこれよりも多いと考えられている(IOTC 2015)。


生物学的特徴

まぐろ類の地域漁業管理機関では、本種の系群は南北太平洋・インド洋・南北大西洋の5つからなるという仮定のもと、資源評価が行われている。しかしながら、生物学的特性値の多くは、個々の系群毎に明らかにされていないため、ここでは各系群の断片的な情報を統合したものを示す。


【分布】

本種は全世界の熱帯及び温帯の沿岸から外洋まで広く分布する(図2、Compagno 2001)。温帯域での分布豊度が比較的高く、ヨシキリザメと同様に温帯域出現種と考えられている(中野 1996)。系群構造については、ミトコンドリアDNAを用いた解析が行われ、北大西洋の系群は、その他の海域(南大西洋、北太平洋、南太平洋)の系群とは異なる遺伝組成であることが示された(Heist et al. 1996)。より詳細な系群構造については現在研究が行われているところである。また、本種は成長段階や性による棲み分けを示すことが示唆されているが(Mucientes et al. 2009)、成熟個体の分布に関する知見が少ないこともあり、詳細な分布様式の把握のためには今後の調査における知見の収集が必要である。


【産卵・回遊】

本種の繁殖様式は卵食型の非胎盤型胎生であり(Wourms 1977)、産仔数の範囲は4〜16、出生時の全長は約70 cm(Stevens 1983)である。本種の繁殖サイクルは、妊娠期間とともに休止期間を伴うと推定されているが、妊娠期間については研究によって推定値の幅が15〜25か月と大きく、休止期間の推定値は得られていない(Mollet el al. 2000、Joung and Hsu 2005、Semba et al. 2011)。北大西洋で行われた標識放流調査の結果によると、本種の適水温は17〜22℃であること、これに従って環境水温の変化に伴い回遊を行うことが示唆されている(Casey and Kohler 1992)。北太平洋においては、幼魚は亜寒帯境界付近を生育場にすると推測されているが(中野 1996)、成長段階を通じた性別の移動の詳細は不明である。近年は、PSAT(ポップアップアーカイバルタグ)を用いた移動・回遊の研究が盛んに行われている(Loefer et al. 2005、Abascal et al. 2011、Rogers et al. 2015)。

交尾期、交尾場、出産場等についての知見は乏しいが、いずれの海域においても、出産期は晩冬から盛夏にかけてと推測されている(Compagno 2001)。


【成長・成熟】

脊椎骨に形成される輪紋から年齢が推定されており、北東太平洋(Cailliet and Bedford 1983、Ribot-Carballal et al. 2005、Wells et al. 2013)、中西部北太平洋(Semba et al. 2009)、南太平洋(Bishop et al. 2006、Cerna and Licandeo 2009)、大西洋(Pratt and Casey 1983、Natanson et al. 2006)、インド洋(Groeneveld et al. 2014)から報告されている。図3はこれまでに報告されている成長式の比較を行ったものである。研究により推定結果に違いが見られるが、これには高齢個体の標本の不足や技術的な問題(年齢査定法・モデル式等)に加えて輪紋周期性の仮定の差(年に2本か1本か)が関与していると考えられる。ISCでは北太平洋系群の成長式の再検討が行われている。

50%成熟体長に関して、雄は150〜183 cm(尾鰭前長)、雌は230〜260 cm(尾鰭前長)、年齢では雄は5〜9歳、雌は17〜21歳と推定されている。寿命については定義によって推定値が異なるが、各海域の知見を統合すると、雄は20〜30歳、雌は30〜40歳と推定されている。


【食性・捕食者】

主としてまぐろ・かつお類を含む魚類やいか類を捕食する(川崎ほか 1962、谷内 1984、Strasburg 1958、Preti et al. 2012)。DNAを用いた分析によって、マイルカの捕食も確認されている(Porsmoguer et al. 2015)。海域、成長段階等によって異なった物を摂餌しており、特に選択的ではなく、生息域に豊富に分布している利用しやすい餌生物を食べる日和見食者と考えられている。成魚に対する捕食者は知られていないが、幼魚はホホジロザメによる捕食が報告されている(Compagno 2001)。


資源状態

2015年3月にISCさめ作業部会において、アオザメ北太平洋系群の資源状態を把握する試みが行われた。現時点では、一部の漁業国の漁獲量データが不足しており、また生活史や生態に関する情報が不十分であることから、資源状態の推定は困難であると判断されたため、漁業データから算出されたCPUE、体長や性比の年トレンドなどに基づき資源状態の傾向が包括的に解析された。その結果、日本の近海はえ縄漁業(浅縄)、ハワイのはえ縄漁業(浅縄及び深縄)のCPUEが、本系群の資源状態に関して最も有益な情報を提供することが示された(図4)。しかし、指標によっては最近年のCPUEの年トレンドが矛盾しており、また増加率についても資源の増加をどの程度反映しているかについて不確実性が認められたことから、資源状態は決定できないと結論付けられた。併せて、2018年に予定されている資源評価に向け、未提出の漁獲データを収集すること、漁業データが利用できる各国においても漁獲量やCPUEの年トレンドの変化を引き続きモニターしていくことが勧告された。この結果は同年7月のISC本会合で承認されたのち、8月のWCPFC科学委員会でも留意された。併せて、WCPFC科学委員会においては、漁業の影響を評価する上で重要であるとして、操業活動の変遷に関する文書を提出することが勧告された。なお、南太平洋系群の資源評価は行われていない。

大西洋系群については、最近の資源評価が2012年にICCATのさめ類作業部会において行われた。評価では日本、米国(北系群のみ)、スペイン、ポルトガル、ウルグアイ(南系群のみ)、ブラジル(南系群のみ)のまぐろはえ縄の漁獲量及び標準化CPUEが入力データとして用いられた(ICCAT 2012)。図5に示すとおり、各国が提出したCPUE(基準化してある)は南北系群ともに2000年以降安定もしくは増加傾向を示していた。解析は、ベイジアンサープラスプロダクションモデル(BSP)とキャッチフリーモデル(CFASPM)を用いて行われた。各国の標準化CPUE、年別漁獲量を入力データとして十数通りの感度解析をBSPで行ったところ、北系群では推定された資源量は解析期間を通じて安定または減少傾向を示し、各国のCPUEの傾向と合致しなかった(図6a)。全ての感度解析結果において2010年の資源量はBMSYを上回り、16の感度解析結果のうち13において2010年のFはFMSYの0.5未満となった。南系群では推定された資源量は安定または増加傾向を示し、各国のCPUEの傾向と概ね一致した(図6b)。13の感度解析結果のうち11で2010年の資源量はBMSYを上回り、全ての感度解析結果においてF2010<FMSYとなった。各国の標準化CPUE、体長データから推定した選択性を入力データとして数通りの感度解析をCFASPMで行ったところ、南北系群ともに推定された資源の相対豊度はほぼ一定の傾向を示し、各国のいずれのCPUEの傾向とも一致しなかった。また、2010年のFはFMSYを大きく下回り、2010年の親魚量(SSB)はSSBMSYを大きく上回った(図7)。このように推定された資源量の傾向とCPUEの傾向が合致せず、いくつかの推定値については不確実性が大きい結果となったが、いずれの国のCPUEシリーズも増加・安定傾向を示していたことから、作業部会は、前回の評価で示唆された乱獲状態の可能性は低くなり、現状の漁獲は持続可能なレベルであると結論付けた。他方、同年の科学委員会は、推定された資源量の年変動が資源量指数(CPUE)の傾向と全く合わないことを配慮し、より信頼性の高い資源評価結果が得られるまでは、両系群に対する漁獲圧を増大させるべきではないとの勧告を出した。このような結果が出た要因としては、@1970〜1996年の漁獲量が現在の仮定よりも大きいこと(未報告の漁獲がある)、A近年の各国のCPUE増加傾向は資源量の増加ではなく漁獲効率の変化を反映していること、B生物パラメータの知見が不十分であり(特に南大西洋)、再生産力がモデルの仮定よりも高い可能性があること(現行の生産力の値では観察されたCPUEの増加傾向の説明が難しいため)等が考えられた。本系群の資源評価を更新するに当たり、前回と比べて使用するデータの質、量は向上したものの、沿岸漁業による漁獲量や投棄・放流量の推定値などの解析に必要なデータが十分な精度で得ることができない等の問題は依然としてあるため、引き続き資源評価の精度を高めるための取り組みが必要である。

インド洋系群についてはこれまで資源評価は行われていないが、松永ら(2012)が日本のオブザーバー調査データ(1992〜2010年)を使って標準化したミナミマグロ漁業で混獲されるアオザメのCPUEの経年変化をCCSBT生態学的関連種作業部会に報告している(図8)。標準化CPUEは多少の変動は見られたものの、顕著な増加又は減少傾向は確認されなかった。また、2011年にはインド洋で操業する日本の遠洋はえ縄の漁獲成績報告書データを用いて標準化したCPUEの経年変化(1994〜2010年)がインド洋まぐろ類委員会に報告された(図9)。標準化CPUEは、年によって飛び値や変動が見られるものの、解析期間中に顕著な増減傾向は認められなかった(Kimoto et al. 2011)。


管理方策

全てのまぐろ類地域漁業管理機関において、漁獲されたさめ類の完全利用(頭部、内臓及び皮を除く全ての部位を最初の水揚げ又は転載まで船上で保持すること)及び漁獲データ提出が義務付けられている。加えて、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)では、2014年の年次会合において、@まぐろ・かじき類を対象とするはえ縄漁業は、ワイヤーリーダー(ワイヤー製の枝縄及びはりす)又はシャークライン(浮き玉又は浮縄に接続された枝縄)のいずれかを使用しないこと、Aさめ類を対象とするはえ縄漁業は、漁獲を適切な水準に制限するための措置等を含む管理計画を策定すること、が合意された。これを受け、北太平洋系群のヨシキリザメを漁獲対象としている気仙沼の近海はえ縄漁業において、年間のアオザメの水揚げ量の上限を600トンにすること、1 m以下のアオザメをできるだけ放流することなどの取組を定めた管理計画が2016年1月1日より5年間実施されている

また、ICCATでは、2014年の科学委員会において、特に南系群について過去の漁獲量の不確実性と生物学的パラメータの不足が依然として資源評価を妨げていることが報告されたため、同年の年次会合において、データ報告の改善を図っていくことが合意された。


アオザメ(全水域)の資源の現況(要約表)

北太平洋 南太平洋 北大西洋 南大西洋 インド洋
資源水準 調査中 調査中 おそらく中位 おそらく中位 調査中
資源動向 横ばい 調査中 安定もしくは増加傾向 安定もしくは増加傾向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
(2010〜2014年)
調査中 調査中 2,899〜4,478トン(水揚量)
平均:3,795トン
1,914〜3,251トン(水揚量)
平均:2,736トン
調査中
我が国の漁獲量
(最近5年間)
(2010〜2014年)
554〜858トン
(水揚量)
平均:753トン
179〜482トン
(水揚量)
平均:299トン
33〜116トン
(水揚量)
平均:66トン
103〜291トン
(水揚量)
平均:165トン
99〜170トン
(水揚量)
平均:137トン
管理目標 検討中
資源の状態 検討中 検討中 B2010/BMSY
:1.15-2.04
F2010/FMSY
:0.16-0.92
B2010/BMSY
:1.36-2.16
F2010/FMSY
:0.07-0.40
検討中
管理措置 漁獲物の完全利用等
管理機関・関係機関 IATTC、ISC、WCPFC WCPFC ICCAT ICCAT IOTC、CCSBT
最新の資源評価年 2015年 2012年 2012年
次回の資源評価年 2018年 2018年 2018年

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

仙波 靖子


参考文献

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