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36 ジンベエザメ 日本周辺

Whale Shark, Rhincodon typus

                                                                                   
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最近の動き

2012年12月の中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)年次会合及び2013年5月のインド洋まぐろ類委員会(IOTC)年次会合において、ジンベエザメを視認した際の付近でのまき網操業の禁止措置が採択された。2015年12月のWCPFC年次会合において、まき網漁具にまかれたジンベエザメを安全に放流するためのガイドラインが採択された。


利用・用途

鰭はフカヒレスープの原料に、肉は食用になるが、日本ではほとんど利用されない。まき網、竿釣り漁業のさめ付き操業の指標となっている。近年、定置網で混獲された個体が、いくつかの水族館で飼育・展示が行われるようになってきた。また、近年ではマンタと並んでダイビングツアーで出会える魚種としても人気が高まっており、観光産業での重要性が増している。


漁業の概要

我が国では本種を対象とした漁業はない。定置網への迷入は相当数あると思われるが、水族館による需要も限定的であり、放流または廃棄されるのが普通である。市場に水揚げされる例はほとんどない。定置網への迷入は、主に沖縄本島から九州、四国太平洋沿岸で発生している(内田1995)が、千葉以西の本州太平洋沿岸や能登半島以西の日本海沿岸でも確認されている。


図1

図1. 日本周辺と世界におけるジンベエザメの分布(内田 1995、Last and Stevens 1994)


表1

表1. 日本周辺におけるジンベエザメの年別出現記録


生物学的特徴

【分布・回遊】

ジンベエザメは、全世界の熱帯海域及び温帯海域の沿岸から外洋まで分布する。概ね赤道を中心に南緯35度から北緯30度の帯内に分布し、暖流の存在によってはさらに高緯度にも出現する(図1)。夏季の太平洋の北海道沖(北緯43度)や大西洋のニューイングランド沖(北緯42度)における出現がその例である。適水温帯や餌料生物の状況によって移動するが(岩崎 1970、Clark 1992)、回遊生態や生息深度などはよくわかっていない。近年、衛星追跡による本種の回遊経路の解明が試みられ、北米バハ・カリフォルニア沖で放流された個体が37か月後に西部太平洋赤道域まで移動したことが確認された(Eckert and Stewart 2001)。太平洋では長期にわたる東西方向の移動が知られている。

本種の系群構造についてDNAマイクロサテライトを用いた研究から、大西洋に分布する系群と太平洋及びインド洋に分布する系群は別系群とされた(Vignaud et al. 2014)。なお、太平洋、インド洋、大西洋におけるそれぞれの系群構造は不明である。


【産卵】

本種の繁殖生態については長い間謎であった。1995年に台湾で体長11 mの雌の妊娠個体が漁獲され、両子宮内で300個体の胎仔と卵殻が確認された(Joung et al. 1996)。この胎仔のうち1尾は日本の水族館で143日間生存した。これにより、本種は卵胎生であることが明らかになった。本種の小型個体に関する報告は世界に9例あり、いずれも体長55〜93 cmである事から、出生時の体長はこの範囲にあると推察されるものの特定されていない(Joung et al. 1996)。


【成長・成熟】

本種は世界最大の魚類と言われている。本種の最大体長として13.7 mがよく用いられるが、その後の正確な計測で12.1 mであることが報告された。また、最大体長を17〜18 mあるいは21.4 mとする説もある(Compagno 2001)。飼育下の本種の年間成長(体長の伸び)は、搬入時に全長3.65 mの個体(飼育期間5年7か月間)では29.5 cm、搬入時に全長4.4 mの個体(飼育期間1年9か月間)では46 cm、搬入時に全長4.1 mの個体(4年4か月の飼育)では45.5 cmであった。年間成長が29.5 cmの個体は飼育期間の後半に体調不良が長く続いたため、年平均成長率が低くなったと推定される。これらのことから、全長3〜6 mくらいの若齢個体では、少なくとも年間45 cm程度成長すると推定される(内田 1995)。


【食性】

ジンベエザメは大きな口を開けて遊泳し、主にコペポーダなどのプランクトンを捕食する(この他のプランクトン食性の大型板鰓類はウバザメ、メガマウス、オニイトマキエイなど)ほか、イワシ、カタクチイワシ、サバ、小さなまぐろ類、ビンナガ、イカなども捕食する(Compagno 2001)。


資源状態

現時点で3大洋のいかなるまぐろ類地域漁業管理機関においてもジンベエザメの資源評価は実施されておらず、資源状態は不明である。

1970〜2013年までの文献情報等から収集したジンベエザメの日本周辺での出現記録を表1に示す。ジンベエザメは毎年数尾〜20尾程度の定置網等への迷入が確認されており、日本周辺海域には毎年一定程度のジンベエザメが来遊してくると考えられる。

1970〜2015年までの文献情報等から収集したジンベエザメの日本周辺での出現記録を表1に示す。ジンベエザメは毎年数尾〜20尾程度の定置網等への迷入が確認されており、日本周辺海域には毎年一定程度のジンベエザメが来遊してくると考えられる。


管理方策

2012年12月のWCPFC年次会合及び2013年5月のIOTC年次会合において、ジンベエザメを視認した際の付近でのまき網操業を禁止する措置(2014年1月1日より)が採択された。また、2015年12月のWCPFC年次会合において、まき網漁具にまかれたジンベエザメを安全に放流するためのガイドラインが採択された。なお、ジンベエザメは、2000年のワシントン条約(CITES)第11回締約国会議において米国から附属書IIへの掲載が提案されたが否決され、2002年の第12回締約国会議ではインド、フィリピン、マダガスカル共同の附属書II掲載が提案され、採決の結果、可決された。このことから、ジンベエザメの魚体、鰭などを含む一切の派生物を貿易する際は、輸出国による輸出許可書の発給が必要となり、また、公海域で採取し自国に持ち帰る行為(海からの持込み)についても証明書の発給が義務付けられる。しかしながら、我が国は、ジンベエザメの附属書Uへの掲載に関して留保を付しており、締約国に輸出する場合には輸出許可書が必要となるものの、海からの持込みについての証明書の発給は不要となっている。なお、我が国へ海からの持込みが行われている事実はない。


ジンベエザメ(日本周辺)の資源の現況(要約表)

資源水準
資源動向
世界の漁獲量
(最近5年間)
調査中
我が国の漁獲量
(最近5年間)
年間数尾〜20尾程度が定置網等に迷入
管理目標 なし
資源の現状 検討中
管理措置
管理機関・関係機関 CITES、WCPFC、IOTC
最新の資源評価年
次回の資源評価年

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

岡本 浩明


参考文献

  1. Anon.(鹿児島水族館). 2001. 鹿児島県の海にやってくるジンベエザメ. さくらじまの海 2001年4巻第4号 通巻13号: 2-3.
  2. Clark, E. 1992. Whale sharks. National Geographic, 182(6): 120-138.
  3. Compagno, L.J.V. 2001. Sharks of the world. An annotated and illustrated catalogue of shark species known to date. FAO Species Catalogue for Fishery Purposes No.1, Vol.2. FAO, Rome, Italy. 269pp.
  4. Eckert, S.A. and Stewart, B.S. 2001. Telemetry and satellite tracking of whale sharks, Rhincodon typus, in the sea of Cortez, Mexico, and the North Pacific Ocean. Env. Biol. Fish., 60: 299-308.
  5. 岩崎行伸. 1970. 西部太平洋カツオ漁場におけるジンベイザメの分布と二、三の生活環境条件について. 東海大学紀要海洋学部, 4: 37-51.
  6. Joung, S.J., Chen, C.T., Clark, E., Uchida, S. and Huang, W.Y.P. 1996. The whale shark, Rhincodon typus, is a livebearer: 300 embryos found in one 'megamamma' supreme. Env. Biol. Fish., 46: 219-223.
  7. Last, P.R. and Stevens, J.D. 1994. Sharks and rays of Australia. CSIRO, Australia. 513pp.
  8. 小笠原チャンネル. 2004. 小笠原の日々: ジンベイザメ. 2004年10月27日(水)
    http://www.ogasawara-channel.com/diary/archives 000394.html (2005年11月17日)
  9. 長崎新聞. 2003. 有川港そばの定置網にジンベエザメかかる. In 長崎新聞 (編), 過去のニュース (県内) [2003年7月2日].
    http://www.nagasaki-np.co.jp/news/kako/200307/02.html (2005年11月17日)
  10. 長崎新聞. 2004. 「でかい」ジンベイザメ捕獲 五島若松町沖. In 長崎新聞 (編), 過去のニュース (県内) [2004年7月28日].
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  11. 長崎新聞. 2005. 巨大ジンベエザメ定置網にかかる 五島. In 長崎新聞 (編), 過去のニュース (県内) [2005年11月3日].
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  12. 日本エヌ・ユー・エス. 2006. 平成17年度国際漁業混獲生物調査委託事業報告書. In 遠洋水産研究所(編), 平成17年度国際資源調査等推進対策事業 混獲生物グループ報告書. 遠洋水産研究所, 静岡.
  13. 自然資源保全協会(編). 2002. 平成13年度サメ・海鳥保全管理プログラム作成等調査並びに鮫の利用の推進に関する啓蒙普及報告書(現地調査および資料収集編). 自然資源保全協会, 東京. 74 pp.
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  15. 自然資源保全協会(編). 2004. 平成15年度サメ・海鳥保全管理プログラム作成調査並びに鮫の利用の推進に関する啓蒙普及報告書(国内現地調査および啓蒙普及活動編). 自然資源保全協会, 東京. 34+16 pp.
  16. 自然資源保全協会(編). 2005. 平成16年度サメ・海鳥保全管理プログラム作成調査並びに鮫の利用の推進に関する啓蒙普及報告書(国内現地調査および啓蒙普及活動編). 自然資源保全協会, 東京. 34 pp.
  17. 内田詮三. 1995. 3. ジンベエザメ. In 日本水産資源保護協会 (編), 日本の希少な野生水生生物に関する基礎資料 (II). 日本水産資源保護協会, 東京. 146-153 pp.
  18. 矢野憲一. 1976. 鮫の世界. 新潮社, 東京. 230 pp.
  19. 読売新聞. 2005. 7月22日 ジンベエザメとランデブー. In 読売新聞 (編), 読売オンライン フォトニュース.
    http://show.yomiuri.co.jp/photonews/photo.php?id=7670 (2005年11月17日)
  20. Vignaud, T.M., Maynard, J.A., Leblois, R., Meekan, M.G., Vazquez-Juarez, R., Mamirez-Macias, D., Pierce, S.J., Rowat, D., Berumen, M.L., Beeravolu, C., Baksay, S. and Planes, S. 2014. Genetic structure of populations of whale sharks among ocean basins and evidence for their historic rise and recent decline. Mor. Ecol., 23, 2590-2601.

注:ジンベイザメとジンベエザメの表記は原文のままとした。