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35 ホホジロザメ 日本周辺

Great White Shark, Carcharodon carcharias

                                                                                   
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最近の動き

世界的に特に目立った動きはなかった。


利用・用途

鰭はフカヒレスープの原料に、肉は食用になる。歯や顎は工芸品として高価格で取引されるが、日本ではほとんど利用されていない。


図1

図1. 日本周辺と世界のホホジロザメの分布(手島1994 一部改変、Last and Stevens 1994)


表1

表1. ホホジロザメの年齢と全長


図2

図2. ホホジロザメの成長曲線


表2

表2. 日本周辺におけるホホジロザメの年別出現記録、括弧内は発見頭数


漁業の概要

世界的にホホジロザメを対象とする漁業はないが、定置網に迷入し漁獲されることがある。その他、刺し網、底びき網、カニ籠、小型はえ縄などの沿岸漁業でもごく稀に漁獲される(Nakaya 1994、内田・戸田 1996)。本種は沿岸性が強いと考えられており、まぐろはえ縄などの遠洋漁業による漁獲はきわめて珍しい。


生物学的特徴

【分布・回遊】

ホホジロザメは、全世界の温帯から亜熱帯にかけての沿岸域に広く分布する大型のサメである(Last and Stevens 1994)(図1左)。世界各地で行われている電子標識を使った標識放流調査の結果によると、本種は沿岸域の好適な場所に長期間とどまる一方で、公海域まで数千kmの距離を移動すること(Boustany et al. 2002、Bonfil et al. 2010)、沿岸に沿って長距離を移動しながら決まった場所に頻繁に戻ってくること(Bonfil et al. 2005、Bruce et al. 2006、Weng et al. 2007a,b)が明らかになっている。

本種の日本周辺の分布域は、沖縄周辺から北海道周辺海域に及び、水温の季節的な変化に伴って日本周辺海域を南北回遊していると考えられている(Nakano and Nakaya 1987、手島 1994、Nakaya 1994)(図1右)。雌は、胎仔の出産などに関連した季節回遊を行っている可能性がある。

本種の系群構造については、ミトコンドリアDNAの調節領域とD-loopを解析した研究が報告されている。調節領域に基づく研究では、米国西海岸のホホジロザメは、オーストラリア・ニュージーランドの個体、南アフリカの個体とは遺伝的に異なっていること(Jorgensen et al. 2009)、D-loopに基づく研究では、日本周辺のホホジロザメは、米国西海岸、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカのホホジロザメとは別の単一系統の個体群であることが示唆されている(Tanaka et al. 2011)。


【繁殖様式】

ホホジロザメの生殖様式は、卵食型の非胎盤型胎生であり、受精卵は子宮内で発生する。卵殻からふ化した後、卵黄を吸収した胎仔は、母体の卵巣から排卵される未受精卵を食べて成長する。妊娠期間は1年以上と考えられている。

出産間近のホホジロザメの胎仔の観察結果(全長130〜150 cm)によると、腸内から胎仔の皮膚の破片及び歯が多数発見されており、子宮内における胎仔間の共食いや胎仔期における歯の生え替わりが生じている可能性がある。出産直後のホホジロザメはすでに機能的な歯を有していると考えられる(Francis 1996、内田・戸田 1996)。

出産時期は、沖縄では2〜3月頃、九州以北では4〜5月と推定されている(内田・戸田 1996)。本種の出生体長は120〜150 cm、一腹当たりの胎仔数は2〜14尾である(Compagno 2001)。出産場は妊娠個体及び出生直後と思われる遊泳幼体の出現が沖縄から近畿地方以西の海域に限られていることから、沖縄から近畿地方までの海域に存在すると考えられる(図1右)。


【成長・成熟】

本種の成長は米国西海岸、南アフリカ及び日本周辺で採取された標本に基づいて推定されている(Cailliet et al. 1985、Wintner and Cliff 1999、Tanaka et al. 2011)(表1、図2)。得られた成長式を以下に示す。

           雌雄込み:Lt=764(1-e-0.058(t+3.53))     (Cailliet et al. 1985)
           雌雄込み:Lt=686(1-e-0.065(t+4.4))    (Wintner and Cliff 1999)
          雄:Lt=455(1-e-0.196(t+1.92))     (Tanaka et al. 2011)
          雌:Lt=607(1-e-0.159(t+1.80))     (Tanaka et al. 2011)

Ltはt歳時の全長、tは年齢である。全長(TL)を尾鰭前長に直すとそれぞれ653 cm(764 cm TL)、544 cm(686 cm TL)、379 cm(455 cm TL)、509 cm(607 cm TL)となる。


【食性・捕食者】

ホホジロザメは本来、機会選択的捕食者であり、その生息域内で量が多く利用しやすいものを捕食する。主に捕食するのは硬骨魚類、軟骨魚類、海産哺乳類、海鳥類、軟体動物、甲殻類、海産爬虫類(ウミガメ類)、腹足類などである(Compagno 2001)。一般的に、成長と共に餌のサイズや多様性は大きくなり、2 m以下の個体では硬骨魚類やさめ類を多く捕食するのに対して、3 m以上の個体では海産哺乳類を捕食する傾向がある。ホホジロザメの捕食者としては、カリフォルニア州フェラロン諸島でシャチが3〜4 mのホホジロザメを捕食した例が報告されている(Pyle et al. 1999)。


資源状態

【資源の動向】

日本周辺海域におけるホホジロザメの年別出現数を表2に要約した。過去50年間にわたりほぼ均等な頻度で出現が報告されている。1992年に14件、1993年に7件の報告があるのは、1992年に瀬戸内海でホホジロザメによる事故が発生し、マスメディアの関心が集まった結果、例年よりもホホジロザメの報告例が増えたためと考えられる。2000年以降は、出現記録のない年もあるが、ほぼ継続的に確認されている。定置網を初めとする沿岸漁業で漁獲された個体は、放流されるものもあり、水揚げされる個体は一部に過ぎないと考えられている。また、東日本大震災の影響で、東日本の太平洋側の定置網を初めとする多くの沿岸漁業が壊滅的被害を受け未だに完全な復旧に至っていないことや、国際的なさめ類加工品全般に対する需要の低下に伴って、本種の需要も一層低下した結果として、水揚げされた個体の割合が減少した可能性を考慮すると、日本周辺の沿岸漁業で漁獲される本種の個体数には、明らかな減少傾向はないと考えられる。


管理方策

本種の管理措置はない。我が国には本種を対象とした漁業はなく、積極的な漁獲努力は行われていないので、特に管理方策を策定する必要はないと考えられる。なお、ホホジロザメが絶滅の危機にあるとして、2000年のワシントン条約(CITES)第11回締約国会議では附属書I掲載提案が米国とオーストラリアから共同で提出されたが否決された。その後、2002年の第12回締約国会議では提案はなく、2004年の第13回締約国会議にオーストラリアとマダガスカルから共同で提案され、採決の結果、附属書Uへの掲載が採択された。このことから、ホホジロザメの魚体、鰭などを含む一切の派生物を貿易する際は、輸出国による輸出許可書の発給が必要となり、公海域で採取し自国に持ち帰る行為についても証明書の発給が義務付けられた(海からの持込み)。しかしながら、我が国は、ホホジロザメの附属書Uへの掲載に関して留保を付しており、締約国に輸出する場合には輸出許可書が必要となるものの、海からの持込みについての証明書の発給は不要となっている。

  
     

ホホジロザメ(日本周辺)の資源の現況(要約表)

資源水準
資源動向
世界の漁獲量
(最近5年間)
調査中
我が国の漁獲量
(最近5年間)
年間1〜2個体程度の出現が報告されている
管理目標 なし
資源の現状 検討中
管理措置
管理機関・関係機関 FAO、CITES
最新の資源評価年
次回の資源評価年

執筆者

国際水産資源研究所 国際海洋資源研究員

余川 浩太郎


参考文献

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*和名のホオジロザメは原文のままとした。