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32 カツオ 大西洋

Skipjack, Katsuwonus pelamis

                                                           
PIC

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最近の動き

2014年に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)により資源評価が行われ、東部大西洋では信頼できるMSYが推定されなかったが、乱獲状態に陥っていることを示す指標も認められなかった。西部大西洋ではMSYは30,000〜32,000トンと推定され、B2013/BMSYはおよそ1.3、F2013/FMSYはおよそ0.7であるとされ、乱獲状態ではないと推定された。しかしながら、同年11月に行われたICCAT年次会合では、データ不足に起因する資源評価の不確実性がSCRSから指摘されていることを踏まえ、既存の熱帯まぐろに関する勧告にカツオを追加し、カツオを漁獲する漁船についても漁船登録や禁漁期等が設定されることになった。

2015年10月にICCATの科学委員会(SCRS)が開かれ、漁獲統計の更新が行われた。大西洋における2014年の総漁獲量は23.2万トンであった(ICCAT 2015a)。


利用・用途

主に缶詰など加工品の原料として利用される。


表1

表1. 大西洋におけるカツオの主要国別漁獲量(過去25年分・トン、ICCAT 2015a)


図1

図1.. 東部及び西部大西洋におけるカツオ漁獲量の年変化(ICCAT 2015a)


図2

図2. 大西洋におけるカツオの漁法別漁獲量の年変化(ICCAT 2015a)


図3

図3. 東部大西洋におけるまき網によるカツオ漁獲量(1操業あたり漁獲量)の経年変化(ICCAT 2014b)
FAD France:フランスのまき網船・FADs操業、FAD Spain & al:スペイン・その他のまき網によるFADs操業、Free school all PS:まき網による素群れ操業


図4

図4. 大西洋のカツオの分布域、産卵場及び主な漁場


図5

図5. 大西洋のカツオの年齢と体長の関係(ICCAT 2004 一部改変)
A〜Gの曲線は各海域で報告されたカツオの成長を示す


図6

図6. 東部大西洋(上)及び西部大西洋(下)におけるカツオCPUEの経年変化(ICCAT 2014b)
Azores BB:アゾレス諸島の竿釣り、Brazil BB:ブラジルの竿釣り、Canary BB:カナリア諸島の竿釣り、Dakar BB:セネガルの竿釣り、Larvae GOM:メキシコ湾における仔魚採集データ、PS EU Dak Free:ダカールに水揚げされたヨーロッパまき網船の素群れ操業、PS Free+FAD:まき網(素群れ+FADs操業)、PSVEN:ベネズエラのまき網、US LL:アメリカのはえ縄


図7

図7. Schaefer型のASPICから推定された西部大西洋のカツオにおけるB/BMSYと F/FMSYの歴史的推移(ICCAT 2014a)


漁業の概要

大西洋のカツオの漁場は東西に分かれ、両大陸側に接してそれぞれ分布している。主な漁場は、アフリカ大陸西岸中央部〜北西岸沖(北緯40度〜南緯20度、西経30度〜東経15度)とブラジル南東岸沖、ベネズエラ北岸沖である。東部大西洋の漁獲量は西部大西洋よりも多く、1990年代以降はおよそ80%が東部大西洋で漁獲されている(図1)。主要な漁法は、東部大西洋ではまき網及び竿釣り、西部大西洋では竿釣りである。両海域ではひき縄やはえ縄でもわずかながら漁獲される。主要な漁業国は、東部大西洋ではスペイン、ガーナ、フランス、パナマ、西部大西洋ではブラジルである(表1、図2)。

大西洋でのカツオの年間総漁獲量は、1950年代から1961年までは6,000トン未満であったが、1962年に初めて1万トンを超えた。その後1960代後半には2.3万〜4.8万トン、1970年代には5.0万〜11.7万トン、1980年代には11.1万〜15.5万トンと年代とともに増加した(表1)。東部大西洋のまき網による人工浮き漁礁(FADs)操業の本格化と漁場の西側への拡大に伴って、1991年以降漁獲量が急増し、1991年には22万トン、1993年には20.6万トンを記録した。その後は、主としてまき網の漁獲量が減少し、大西洋での漁獲量は1990年代後半から2000年代にかけて12.3万〜17.8万トンで推移した。2010年に漁獲量は大きく増加し(18.9万トン)、2011年には21.9万トン、2012年は過去最高の25.8万トン、2014年は過去3番目である23.2万トンと近年の漁獲量は歴史的に高い状態にある。これは、2008年以降のカツオの浜値が上昇傾向にあり、まき網船がカツオを対象とした操業を行っているためである(ICCAT 2014a)。タイのバンコクにおける2013年のカツオの相場は、キハダと同等の価値で取引されており、東部大西洋のまき網によるFADs操業での漁獲量は近年増加傾向を示している(図3)。

小型魚の投棄は、2001〜2005年に東部大西洋で操業するまき網船のFADs操業において、カツオの水揚量1トン当たり42 kgと推定されている。コートジボアールのアビジャンに水揚げされるfaux-poisson(カツオ、メバチ、キハダ等を含む小型魚複数種の混獲物として水揚げされる漁獲物)1トンあたり小型カツオ(平均尾叉長37 cm)が235 kg、2005〜2014年に東部大西洋で操業するまき網船では、10,000トン/年がfaux-poissonであると推定された。

東部大西洋では、スペイン、フランス、ガーナによるまき網が主要な漁業である(表1)。2004年以降、パナマによる漁獲が急激に増加し、ポルトガルと同等または多い漁獲量を示すようになり、2011年以降はポルトガルの漁獲量を上回っている。東部大西洋における2014年の漁獲量は20.6万トンとであり、スペイン及びガーナによる漁獲が総漁獲量の44%を占めた。

西部大西洋では、ブラジルによる竿釣りが漁獲の大半を占め、漁獲量第2位のベネズエラ(主な漁法はまき網)を大きく引き離している(表1)。2014年までの西部大西洋における年間漁獲量は、2.1万〜3.3万トン(過去25年間)で推移している。2014年の西部大西洋の総漁獲量は約2.6万トンであり、過去5か年平均からは8%程度の減少となった(ICCAT 2015a)。ブラジルの竿釣りによる漁獲努力量は、1985〜1996年の間に半分に減少したが、その後は比較的安定しており、漁獲努力量が上昇したことは報告されておらず、この漁業の地域的な漁獲変動によるものと考えられている(ICCAT 2014)。

大西洋において、カツオを主対象とした日本の漁業は現在行われておらず、はえ縄にて特大サイズのカツオがわずかに混獲されるのみである。過去においては、1990年代前半まで東部大西洋で現地水揚げの竿釣りが行われ、1976〜1981年のピーク時における年間漁獲量は1.2万〜1.7万トンを記録した。


生物学的特徴

本種は熱帯から亜熱帯にかけて幅広く分布する(図4)。産卵場は表面水温24℃以上の海域で、アフリカ大陸西岸中央部沖(ギニア湾〜東経30度)及びブラジル沖の赤道を中心とした熱帯・亜熱帯域に広く分布する(仔魚の分布からの推定)。産卵活動は水温25度以上の海域で一年中広範囲に行われ、赤道から高緯度海域に向かって産卵期間が短くなると考えられる。成熟開始年齢は満1〜2歳で、成熟開始時の体長は東部大西洋では雄45 cm、雌42 cmであるが、西部大西洋では雄52 cm、雌51 cmと東部よりも大きく、この違いが海域差かその他の要因によるものかは明らかではない。成長は季節や海域により異なることが報告されており(図5)、東部大西洋における標識・再捕結果より推定されたカツオの成長は、熱帯域より亜熱帯域の方が早い(Fonteneau 2015)。本種の寿命は、少なくとも6歳以上と考えられる。大西洋でのカツオの主要な餌生物は魚類、甲殻類、頭足類で、朝から夕方にかけて日中に摂餌活動を行う。捕食者としては、まぐろ・かじき類のほか、カマスサワラ類、外洋性のさめ類、海鳥類が知られている。

近年のFADs操業の増大とともに、これらの設置によるカツオの回遊生態や魚群行動の変化と生物学的特性への影響が指摘されている。カツオは浮き物付き魚群の主構成魚種であるが、素群れ操業とFADs操業での摂餌活動を調べたところ、FADs操業で漁獲したカツオは素群れ操業に比べて空胃率が高く胃内容物量も少なかったことなどから、FADsに付いたカツオ群の餌環境条件は素群れより劣ると考えられた。また、FADsにカツオ群が集まることにより、大型まぐろ類による被捕食率の増大や、漁獲による死亡率増加の可能性が指摘された。FADs操業では、通常カツオとともにまぐろ類の小型魚が混獲され、漁獲物の典型的な魚種組成は、カツオ63%、キハダ20%、メバチ及びその他のまぐろ類17%であることが報告されている。


資源状態

【CPUEの動向】

近年の東部大西洋のまき網(FADs及び素群れ操業を含む)のCPUEは1991年以降ほぼ横ばいの傾向を示している(図5)。また、東部大西洋のセネガル・モーリタニア沖における素群れを対象としたまき網のCPUEは1990年代にかけて上昇し、2000年の前半には減少傾向に転じている。セネガル及びアゾレス諸島における竿釣りのCPUEは長期的な傾向は増加を示している(図6)。西部大西洋の主要な漁業であるブラジルの竿釣り及びベネズエラのまき網のCPUEのうち、ブラジルの竿釣りについては概ね安定している(図6)。


【資源評価】

ICCATにおけるカツオの資源評価は2008年以降行われてこなかったが、2014年7月に実施された(ICCAT 2014a, b)。大西洋における本種の漁業・生物学的な特徴より東部・西部大西洋の2海域に区分して資源評価を実施した。

東部大西洋については、2種類のプロダクションモデル(BSP、ASPIC)及びその他の2種類のモデル(漁獲量のみを用いる資源評価モデル、Gedamke and Hoenig model)を用いて解析を試みた。これらのモデルからは信頼性のあるMSYが得られなかった。ただ、漁獲量のみを用いる資源評価モデルからはMSYは近年増加傾向であり、現在の漁獲量はMSY程度もしくはMSYを超えておらず、漁獲量及び平均体重は近年減少していないこと判断された。

西部大西洋については、プロダクションモデル(ASPIC)による解析の結果、MSYは30,000〜32,000トンと推定され、B2013/BMSYはおよそ1.3付近、F2013/FMSYはおよそ0.7付近とされ、西部大西洋では資源は乱獲状態には陥っていないと判断された(図7)。SCRSは東部大西洋の資源について、乱獲状態の証拠はないものの、努力量と漁獲量は最近年の漁獲レベルを超過しない程度にするよう勧告している。西部大西洋については特段の管理勧告はない。


管理方策

2014年のICCAT年次会合において、既存の熱帯まぐろ保存管理措置に含める形で、管理方策が初めて設定されることとなった。それにより、カツオを漁獲する漁船のICCATへの登録、FADs操業の禁漁区・禁漁期等が設定されることとなった(ICCAT 2015b)。


カツオ(大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近の5年間)
20.4万〜26.2万トン
平均:23.6万トン(2010〜2014年)
我が国の漁獲量
(最近の5年間)
1〜5トン
平均:3トン(2010〜2013年)
管理目標 MSY
資源の現状 悪化の兆候は認められない
管理措置 ・漁船登録
・FADs操業の禁漁区・禁漁期
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2014年
次回の資源評価年 未定

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

芦田 拡士・松本 隆之


参考文献

  1. Anon.(ICCAT)2004. Report of the 2004 meeting of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain 4-8 October 2004). ICCAT, Madrid, Spain. 189 pp.
    http://www.iccat.es/Documents/SCRS/SCRS 2004 ENG.pdf(2004年12月9日)
  2. Anon.(ICCAT)2013. Executive summaries on species. Skipjack tuna. In ICCAT (ed.) Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain September 30- October 4 , 2013). 344pp.
    http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2013-SCRS-REP_ENG.pdf(2013年10月24日)
  3. Anon.(ICCAT)2014a. Executive summaries on species. Skipjack tuna. In ICCAT (ed.) Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain September 29- October 3 , 2014). 355pp.
    https://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2014-SCRS-REP_ENG.pdf(2014年12月1日)
  4. Anon(ICCAT)2014b. Report of the 2014 ICCAT east and west Atlantic skipjack stock assessment meeting.
    https://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2014_SKJ_ASSESS_ENG.pdf(2014年12月1日)
  5. Anon (ICCAT)2014c. Recommendation and resolution adopted at the 19th special meeting of the commission.
    https://www.iccat.int/Documents/Recs/7312-14_ENG.PDF(2015年3月9日)
  6. Anon.(ICCAT)2015a. Executive summaries on species. SKJ-skipjack tuna. In ICCAT (ed.), Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain, September 28-October 2, 2015). 351pp. https://www.iccat.int/Documents/Meetings/SCRS2015/SCRS_PROV_ENG.pdf (2015年12月22日)
  7. Anon.(ICCAT)2015b. Recommendation and resolutions adopted at the 24th regular meeting of the commission. https://www.iccat.int/Documents/08240-15_ENG.PDF(2015年12月22日)
  8. Fonteneau 2015. An overview of skipjack growth in the Atlantic knowledge and uncertainties. Collect. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 71(1): 221-229