--- 詳細版 ---

29 カツオ 東部太平洋

Skipjack, Katsuwonus pelamis

                                                           
PIC

[HOME] [詳細版PDF] [要約版PDF] [要約版html] [戻る]

最近の動き

東部太平洋における本種の最近の資源評価は全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)事務局により2012年に行われ、資源状態は不確実であるが、資源が悪化する明確な証拠はないとされた。2015年には、前年までの漁業・生物学的指標値(まき網による漁獲量、FAD操業CPUE、素群れ操業CPUE、標準化努力量、平均(漁獲個体)重量、相対資源量、相対加入量、相対資源利用率の8つ)が更新された。


利用・用途

主に缶詰原料として利用されている。


図1

図1. 東部太平洋におけるカツオの漁法別漁獲量(IATTC 2015)


表1

表1. 東部太平洋におけるカツオの国別漁獲量(単位:トン)(IATTC 2015)


図2

図2. 2013年東部太平洋におけるまき網操業別カツオ漁獲量(5度×5度の統計値)(IATTC 2014)


図3


図3. 2007〜2012年東部太平洋でまき網及び竿釣りで漁獲されたカツオ体長組成の推定値(IATTC 2013)
測定対象の平均重量は各年の図上に示されている。


図4

図4. 太平洋におけるカツオの分布と漁場(Matsumoto et al. 1984、Schaefer 2001)


図5

図5. 東部太平洋におけるカツオの成長(Matsumoto et al. 1984)


図6

図6. 東部太平洋におけるカツオ資源指数(IATTC 2015を改変)
(a) まき網による漁獲量、(b) FAD操業努力量(CPUE)、 (c) 素群れ操業努力量(CPUE)、 (d) 標準化努力量、(e) 平均(漁獲固体)重量(kg)、(f) 相対資源量、(g) 相対加入量、(h) 相対資源利用率(CPDF:Catch per days fished)


図7

図7. 東部太平洋におけるサイズ組成を考慮したカツオ資源評価のために定義された海域(Maunder 2012a)


図8

図8. 体長組成を考慮した資源評価モデルで推定されたRegion Bの月毎の資源量(Maunder 2012b)


図9

図9. 空間資源動態モデルSEAPODYMによって推定された東部太平洋における体長30 cm以上のカツオの資源量(Maunder 2012a)


漁業の概要

東部太平洋における2014年のカツオ総漁獲量は約26.3万トンと推定された(表1:IATTC 2015)。東部太平洋のまき網では、漁獲物の一部が投棄されることがあるが、投棄量は年々減少してきており、1998年は漁獲量の16%、2012年は1%程度であった(IATTC 2014)。1950〜2014年までの漁法別カツオ漁獲量を図1に示す。国別の漁獲量ではエクアドルが全体の約半分を占め、パナマ、ベネズエラ、コロンビア等が続いている。日本は、本海域でカツオを主対象とした漁業を行っておらず、漁獲量ははえ縄によってまぐろ類に混じって漁獲される数10トン程度である。本海域では、1950年代までは沿岸での竿釣りが主であったが、その後大型の竿釣り船がまき網船に転換し始め、1960年代からまき網による漁獲量が増大した。1978年に約17万トンとなってピークに達し、1985年前後に5万〜6万トン台まで減少したが、その後は再び右肩上がりに増加を続け、20万〜30万トンレベルを維持している。漁場は沖合に広がり、現在では漁獲量のほとんどがまき網によるものである。

まき網漁場はバハ・カリフォルニアからペルー南部まで広がるが、メキシコ南部沖では漁獲量は比較的少ない。赤道海域では漁場は西経150度付近の沖合まで達している(図2)。集魚装置(FAD)を使用した操業は主に中米から北部南米沖で行われており、沖合にも広がっている。素群れを対象とする操業は、バハ・カリフォルニア、中米、北部南米沖で行われている。なお、イルカ付き群ではわずかなカツオしか漁獲されない。まき網によって漁獲されたカツオの体長は30〜80 cmで、年によって漁獲組成のモードが異なる傾向があるが、概ね40 cm半ばと60 cm半ばにモードが確認できる(図3)。

竿釣り漁船は、南カリフォルニアからチリ北部にかけた距岸約250海里以内の海域と沖合の島嶼周りで操業を行っていたが、現在ではエクアドル、メキシコ、米国籍のわずかな数しか残っておらず、エクアドル、メキシコ、南カリフォルニアの比較的沿岸近くで操業している。


生物学的特徴

カツオは3大洋全ての熱帯〜温帯水域、概ね表面水温15℃以上の水域に広く分布する(Matsumoto et al. 1984)。適水温帯の分布にあわせて、東部太平洋における分布域は中西部太平洋に比べて南北に狭くなっている(図4)。太平洋においては単一系群とする説と複数系群とする説があるが(鈴木 2010)、資源管理上は東部太平洋と中西部太平洋に分けて資源評価が行われる場合が多い。

産卵は表面水温24℃以上の海域で広く行われ、東部太平洋においても南北アメリカ大陸沿岸から西経130度、北緯15度から南緯10度付近の適水温帯で産卵が行われる。成熟体長は45 cm程度とされ、性比は1:1で、キハダやメバチで確認される高齢魚における雄の比率の増大は見られない。

成長は、耳石日輪の計数から得られた結果と標識放流・再捕データを組み合わせて、満1歳で尾叉長40 cm台後半、満2歳で60 cm台後半、満3歳で70 cm台と推定されている(図5)。体長体重関係は、W=5.5293×10-6L3.336等(Wは体重(kg)、Lは尾叉長(cm))が用いられ、40 cmで1.2 kg、50 cmで2.6 kg、60 cmで4.7 kgとなる。寿命は6歳を超える。

餌生物は他の海域同様、魚類・甲殻類・いか類で、選択性は低く、その海域で主要なものが主たる餌となっている。また、捕食者は、カツオ自身を含めた高度回遊性魚類のまぐろ類・かじき類、その他の魚食性魚や海鳥と考えられる。


資源状態

東部太平洋における本種の最近の資源評価はIATTC事務局により2012年に行われ、4つの手法(a. 漁業・生物学的指標値;b. 標識データ解析;c. サイズ組成資源評価モデル;d. 空間資源動態モデル)の結果から、資源状況は不確実であるが、資源が悪化する明確な証拠は無いとされた。この結果は、@まき網のCPUEが資源量に比例しているかどうか不明であること、A漁業の影響が小さい大型カツオ資源の存在可能性、B中西部太平洋のカツオ資源との関連が不明であることから、過去の資源評価と同様に予備的なものとされている。

2014年には、前年までの漁業・生物学的指標値(まき網による漁獲量、FAD操業CPUE、素群れ操業CPUE、標準化努力量、平均(漁獲個体)重量、相対資源量、相対加入量、相対資源利用率の8つ)が更新された。

各結果を以下に示す。


a). 漁業・生物学的指標値(2015年の更新)

(a) まき網による漁獲量、(b) FAD操業CPUE、(c) 素群れ操業CPUE、(d) 標準化努力量、(e) 平均(漁獲個体)重量(kg)、(f) 相対資源量、(g) 相対加入量、(h) 相対資源利用率の8つの指数が更新された(Maunder 2014)。まき網による漁獲量は1985年以降増え続け、2003年以降は高い水準で推移している(図6 (a))。FAD操業CPUEは1990年以降、1999年を除いて平均レベルで変動し、2011年は高かった(図6 (b))。素群れ操業CPUEは2003年以降高く推移し、2008年に最も高かった(図6 (c))。資源利用度の指標となる標準化努力量は1991年から増加し、2009年以降減少傾向を示している(図6 (d))。相対資源量、相対加入量、相対資源利用率は20年以上増加傾向を示し、2003年以降は高いレベルで変動している(図6 (f), (g), (h))。

カツオ資源の懸案事項は、近年は減少傾向に転じたものの、利用率が断続的に増加していることであるが、これらの指標からは増加による悪影響は認められなかった。2009年の平均重量は基準値を下回っており、過剰な利用の結果である可能性があるが、近年の加入が過去よりも多いこと、あるいは小型のカツオで占められた海域に漁業が拡大したことが原因かもしれないとされた。また、平均体長が連続して減少していることが懸念され、漁獲量とCPUEの減少と合わされば、利用度がMSYレベルに近づいているか、又はそれを超えていることを示唆しているとされた。


b). 標識データ解析(2012年の結果)

放流時期が異なる2つの標識調査(1973〜1981年、2000〜2006年)で得られたデータを分析し、漁獲率を求めた(Maunder 2012b)。資源評価のために定義された海域(図7)のうち、2海域(AとC)のみ推定値が利用可能であった。また、漁獲率の推定値は不確実性が高いとされた。


c). サイズ組成資源評価モデル(2012年の結果)

サイズ組成資源評価モデルはMaunder(2012b, d)によって開発されたモデルで、キハダ、メバチに適用されたSSモデルとは異なる。信頼性のある年齢データが無かったため、標識データから成長に関するデータを算出した。CPUEと体長組成データに不確実性が伴うため、海域Bのみで信頼できる推定値が得られた。海域Bにおける資源量の推定値は、1999年に特に高くなり、1980年以降、増加傾向を示した(図8)。


d). 空間資源動態モデル(2012年の結果)

空間資源動態モデル(SEAPODYM)とは、外洋域の海洋生物物理環境から高次捕食者までをカバーしたend-to-end型の生態系モデルであり、高次捕食者の食物環境、産卵環境、ハビタット選択性や移動回遊を大洋規模で考慮している。このモデルを使用した解析により推定された東部太平洋における体長30 cm以上のカツオの資源量は、180万〜235万トンであった(図9)。


管理方策

本種を対象とする資源管理措置はIATTCにおいて導入されていないが、メバチ・キハダの保存管理措置として、まき網漁業に対し62日間の全面禁漁及び沖合特定区での1か月間の禁漁が導入されており、結果的に本種に対する漁獲努力量は制限されている。


カツオ(東部太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
15.0万〜28.0万トン
平均:24.8万トン(2010〜2014年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
58〜74トン
平均:65.2トン(2010〜2014年)
管理目標 MSY
資源の状態 まき網素群れCPUEとFAD CPUEから過剰に利用されていないと考えられる。
管理措置 特定の措置はなし(メバチ・キハダの保存管理措置として、まき網漁業に対し62日間の全面禁漁及び沖合特定区での1か月の禁漁が導入されており、結果として本種に対する漁獲努力量は制限されている)
管理機関・関係機関 IATTC
最新の資源評価年 2012年(2015年に指標値のみ更新)
次回の資源評価年 未定

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

清藤 秀理


参考文献

  1. Anon.(IATTC) 2007. THE FISHERY FOR TUNAS AND BILLFISHES IN THE EASTERN PACIFIC OCEAN IN 2006. IATTC. 1-160 pp.
    http://www.iattc.org/PDFFiles2/FisheryStatusReports/FisheryStatusReport5ENG.pdf (2010年11月30日)
  2. Anon.(IATTC)2015. Fishery Status Report 13 - TUNAS AND BILLFISHES IN THE EASTERN PACIFIC OCEAN IN 2014. IATTC. 1-204 pp.
    http://www.iattc.org/PDFFiles2/FisheryStatusReports/FisheryStatusReport13.pdf (2014年12月21日)
  3. Lehodey, P., Senina, I., Calmettes, B., Hampton, J., Nicol, S., Williams, P., Molina, J., Ogura, M., Kiyofuji, H. and Okamoto, S. 2011. SEAPODYM working progress and application to Pacific skipjack tuna population and fisheries. WCPFC-SC7-2011/EB-WP 06 rev1.
  4. Matsumoto, W.M., R.A. Skillman, and A.E. Dizon (1984): Synopsis of biological data on skipjack tuna, Katsuwonus pelamis. NOAA Tech.Rep. NMFS Circ., (451): 1-92.
  5. Maunder, M.N. and S.J. Harley. 2005. Status of skipjack tuna in the eastern Pacific Ocean in 2003 and outlook for 2004. In IATTC (ed.), Status of the tuna and billfish stocks in 2003. 109-167pp.
    http://www.iattc.org/PDFFiles2/SAR5%20_SKJ_ENG.pdf (2005年10月14日)
  6. Maunder, M.N. (2012a) Preliminary analysis of historical and recent skipjack tuna tagging data to explore information on exploitation rates. IATTC Scientific Advisory Committee (SAC-03-07c). 1-24pp.
    http://www.iattc.org/Meetings/Meetings2012/May/PDFs/SAC-03-07c-SKJ-tag-analysis.pdf (2012年5月7日)
  7. Maunder, M.N. (2012b) A length based meta-population stock assessment model: application to skipjack tuna in the eastern Pacific Ocean. IATTC Scientific Advisory Committee (SAC-03-INF). 1-24pp.
    http://www.iattc.org/Meetings/Meetings2012/May/PDFs/SAC-03-INF-A-Length-based-meta-population-stock-assessment-model-DRAFT.pdf (2012年5月17日)
  8. Maunder, M.N.(2015) Status of skipjack tuna in the eastern Pacific Ocean in 2014. IATTC Scientific Advisory Committee (SAC-06-07). 1-4pp. http://www.iattc.org/Meetings/Meetings2015/6SAC/PDFs/SAC-06-07-SKJ-Stock-status-of-skipjack-2014.pdf (2015年12月21日)
  9. Schaefer, K. M. 2001. Assessment of skipjack tuna (Katsuwonus pelamis) spawning activity in the eastern Pacific Ocean. Fish. Bull., 99: 343-350.
  10. 鈴木伸明. 2010. カツオ系群構造研究−系群構造に関しては現段階で確固たる結論は無い−.遠洋水産研究所リサーチ&トピックス.