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18 メバチ インド洋

Bigeye Tuna, Thunnus obesus

                                                           
PIC

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最近の動き

2015年の第19回インド洋まぐろ類委員会(IOTC)年次会合において、FADsワーキンググループの設立及びFADs数制限(1隻あたり550基まで)が決議として採択された。


利用・用途

刺身や缶詰原料として用いられている。


表1

表1. 資源評価で使用されたインド洋メバチの自然死亡係数(2通り)(IOTC 2013a)


図1

図1. インド洋メバチの漁法別漁獲量(1950〜2014年)(IOTCデータベース:2015年9月)


図2

図2. インド洋メバチの国別漁獲量(1950〜2014年)(IOTCデータベース:2015年9月)
NEI:Not Elsewhere Included、DN、FR、CEはそれぞれ流し網、冷凍、生鮮の意味。


図3

図3. インド洋メバチの海域別漁獲量(1950〜2014年)(IOTCデータベース:2015年9月)
東インド洋(FAO海域57)、西インド洋(FAO海域51)


図4

図4. インド洋メバチの漁場


図5

図5. はえ縄好漁場(x)と水温(℃)の平年図(Bo and Nishida 2003)


図6

図6. はえ縄好漁場(x)と塩分(psu)の平年図(Bo and Nishida 2003)


図7

図7. はえ縄好漁場(x)と溶存酸素量(ml/l)の平年図(Bo and Nishida 2003)


図8

図8. はえ縄好漁場(x)と水温躍層深度(m)の平年図(Bo and Nishida 2003)


図9

図9. メバチの主要分布域(青)と想定回遊経路(毛利ら 1997を改変)
はえ縄漁業データより推定。数字は月を示す。


図10

図10. 日本、韓国、台湾のまぐろはえ縄漁業の標準化されたメバチCPUE(IOTC 2013a)


図11

図11. インド洋におけるメバチの資源評価(SS3)結果に基づく資源状況変遷を示すStock trajectory(神戸プロット)(IOTC 2013a)
紫色は12シナリオの中央値、灰色は中央値以外のシナリオ。


附表1

附表1. インド洋メバチの漁法別漁獲量(1950〜2014年)(トン)(IOTCデータベース:2015年9月)


附表2

附表2. インド洋メバチの国別漁獲量(1950〜2014年)(トン)(IOTCデータベース:2015年9月)


附表3

附表3. インド洋メバチの海域別漁獲量(1950〜2014年)(トン)(IOTCデータベース:2015年9月)
西インド洋(FAO海域51)・東インド洋(FAO海域57)


漁業の概要

総漁獲量は、操業開始以来増加し、1988年に7万トン台になった。1992年から急増し、1993年に10万トン台、1999年に16万トン台とピークに達した。その後、2000年から減少傾向が続き2010年に8.5万トンと1993年以降最低レベルとなった。その後2012年までは増加したが、2013年以降再び減少した(図1〜3、附表1〜3)。ピーク時までの漁獲量増加の主な原因は、台湾・インドネシア・日本のはえ縄及びスペインのまき網による漁獲量増加であり、2010年前後の減少の主な原因はソマリア沖における海賊の影響である。

本種ははえ縄(2歳以上対象)とまき網(0〜1歳対象)で主に漁獲される(図1、附表1)。本資源のインド洋における漁獲は日本のはえ縄漁船により、1952年にジャワ島南部海域で始まった。その後、台湾、韓国のはえ縄漁船がそれぞれ1954年、1965年から参入した(図2、附表2)。まき網の主要漁業国はスペイン、フランスである。

はえ縄漁業による漁獲量は、操業開始以来緩やかに増加し、1992年に6.5万トンに達したが、1993年に9.0万トンに急増し、1998年には11.8万トンとピークに達した。1999年からはいったん減少したが再び増加し、2004年には11.8万トンと2度目のピークに達した。しかし、その後減少し、2010年には4.9万トンになり、1984年以降最低レベルとなった。その後は再び増加に転じていたが、2013年以降は減少している。一方、まき網漁業は1984年より西部インド洋で本格的に始まり、漁獲量は徐々に増加し、1999年には4.4万トンとピークに達した。しかし、その後2万〜3万トンの間で推移しており、2014年には2.9万トンとなった(図1、附表1)。

漁獲対象年齢は、西インド洋のEUまき網漁業開始(1984年)以前は、はえ縄による漁獲が大半で主に2歳魚以上であったが、まき網による0〜1歳の漁獲尾数が急増し、最近では総漁獲尾数の7割近くを0〜1歳が占める。最近5年間(2010〜2014年)の漁法別の漁獲重量は、はえ縄62%、まき網29%、その他9%、また海域別ではFAO海域51(西インド洋)における漁獲量58%、FAO海域57(東インド洋)42%となっている(図3、附表3)。

主要漁場は、赤道をはさむ北緯15度〜南緯15度の産卵海域と、南半球中緯度(南緯25〜40度)の索餌海域である(図4)。


生物学的特徴

【系群】

インド洋と太平洋のメバチでは、遺伝的な差異が報告されている。しかしながら、インド洋においては、分布、体長組成、成熟などの特性から、単一系群とみなされており(Kume et al. 1971ほか)、資源評価は通常単一系群を仮定して行われている。


【分布】

分布域は南緯40度以北のインド洋全域である。まぐろ類の中では沖合性が強い。主な分布深度は昼間おいては300〜600 mと深いことが報告されている(Sabarros et al. 2015)。幼魚は浮遊物の下に、しばしばキハダやカツオとともに群れている。分布可能水温はキハダよりやや低く、分布域は南北方向及び鉛直方向ともに、キハダよりやや広い。メバチはえ縄好漁場と海洋環境要因(水温、塩分、溶存酸素量、水温躍層の水深)とのオーバーレイ図を、それぞれ図5〜8に示した(Bo and Nishida 2003)。好漁場は平均釣獲率(1,000鈎当りの漁獲尾数)が8.5(75%tile値)以上の1度区画域とした。水温、塩分、溶存酸素量分布密度は、メバチ成魚の生息深度(75〜300 m:昼夜の分布の中間)の平均値を示している。数値解析の結果、好漁場を形成する最適範囲は、水温(14〜17℃)、塩分(34.5〜35.4 psu)、溶存酸素量(1.0〜3.6 ml/L)、水温躍層深度(80〜160 m)となった。溶存酸素量は、アラビア海、ベンガル湾で低く(0.2 ml/L 以下)、メバチの好漁場は形成されない。これらの最適範囲はインド洋における、局所的な研究結果(Stéquert and Marsac 1989、毛利 1997ほか)と近似している。


【回遊】

本種の詳しい回遊経路は不明であるが、季節や生活史により複雑に変化している(毛利 1997)。すなわち、産卵後は海流に乗りながら南半球の温帯域へ索餌移動し、成熟に達した後、再び熱帯域に戻るという大きな回遊が想定されている。はえ縄漁業データを基に推察した成魚の回遊パターンを図9に示した。なお、2005年5月〜 2007年9月にかけてインド洋標識プログラム(RTTP-IO)により実施された大規模標識放流(大部分は西部インド洋で35,997尾のメバチを放流)によると、再捕の多くは放流場所付近であった(IOTC 2012b)。


【産卵】

産卵は稚魚の分布から推測して、表面水温24℃以上の熱帯・亜熱帯域でほぼ周年行われているが、ジャワ島の南が主要産卵域となっている(西川ほか 1985、Bo and Nishida 2003)。メバチは体長が120 cmを超えると大部分が成熟する。しかし、90 cm以下では生殖腺が微細であり、未熟状態にあるため、メバチでは生後満3歳頃(100 cm)から一部が成熟開始すると考えられている。

本種の卵は分離浮性卵で油球が1個あり、受精卵の卵径は0.8〜1.2 mmである。1尾の抱卵数は体重50 kgの魚体で300万粒、100 kg前後の魚で400〜600万粒である。本種は多回産卵で、産卵期にはほぼ毎夜産卵すると推察されている。


【自然死亡係数:M】

インド洋では、Mを直接推定した研究はないが、2013年の資源評価では、表1に示したような2通りの年齢別の値を使用した(IOTC 2013a)。標識データを用いたMの直接推定の試みも行われている。


【体重・体長関係】

以下の体重(W:kg)・体長(尾叉長)(L:cm)関係式ないし代用式が、 これまでの資源評価で使用されてきた。
    尾叉長(80 cm以下)(インド洋)
         W=(2.74×10-5) L2.908     Poreeyanond (1994)
    尾叉長(80 cm以上)(太平洋)
         W=(3.661×10-5 ) L2.90182      Nakamura and Uchiyama (1966)


【成長式】

耳石及び標識データより推定した成長式は以下のとおりである(Eveson et al.. 2012)。
PIC

L=150.9、K1=0.15、K2=0.41、α=3.4、β=20、t0=-1.2

なお、2013年の第16回IOTC科学委員会では、上記成長式は1歳魚が約40 cmとなりやや小さすぎるという懸念も示され、代替成長式も提案され、今後さらなる検討が必要とされた(IOTC 2013b)。本種の寿命は10〜15歳と考えられている。


【年齢−体長−体重 関係】

上記体重‐体長関係式と成長式より、表2のような値が計算され、資源評価で使用されている(IOTC 2009)。


【食性】

メバチの餌生物は他のまぐろ類と本質的に変わらない。主に魚類・甲殻類及びいか類などを食べており、餌に対する特別な選択性はない。しかし、メバチはやや深層を遊泳するため、表層性のモンガラカワハギ、マンボウ、シイラ、カツオなどの魚類は本種の胃内に少なく、ハダカエソ、ミズウオ、クロボウズキスなどの中深層性魚類が多い。生息域及び魚体の大きさで胃内容物として出現する餌生物が異なる。

Bashamakov et al.(1991)は、セーシェル、モーリシャス付近の海域で収集した胃内容物を調査した。その結果、23種類の生物が発見されたが、いか類、浮遊性かに類、はだかえそ類が大部分を占めていた。また、はだかいわし類が夜間に多く食べられることから考え、昼間より夜間に積極的な索餌をすると言われている。捕食者はさめ類、海産哺乳類と考えられる。


資源状態

2013年の第15回IOTC熱帯まぐろ作業部会(2013年10月)ではSS3(統合モデル)(Langley et al. 2013)、ASAP(Age Structured Assessment Program、年齢構成プロダクションモデル)(Zhu et al. 2013)及びASPM(Age Structured Production Model、年齢構成プロダクションモデル)(Nishida and Iwasaki 2013)により資源評価が行われ、比較的類似した結果が得られたが、管理勧告にはSS3の結果が用いられた。SS3による解析の概要は次のとおりである。標準化CPUEは日本、韓国、台湾から(図10)、ベースモデルに日本のはえ縄のCPUEのみが使用された。解析結果は、MSY=13.2万(9.8万〜20.7万)トン(12シナリオの中央値及び範囲)、F2012/FMSY=0.42(0.21〜0.80)及びSSB2012/SSBMSY=1.44(0.87〜2.22)であった。過去5年間の平均漁獲量は10.8万トン、2012年の漁獲量は11.6万トンで、漁獲はMSYレベルを下回って、資源量はMSYレベルを上回っており、過剰漁獲及び乱獲状態ではないとされた(図11)。現状(2012年)の漁獲量で漁獲すると、3年後及び10年後にSSB<SSBMSY(乱獲)、F>FMSY(過剰漁獲)になる確率はともに0%、現状から漁獲量を40%増加させると(ピーク時のレベル)、10年後にはともに25%と予測された。ただし、近年ソマリア沖海賊の影響で漁獲量が低水準で推移していることに留意する必要がある。


管理方策

第15回IOTC熱帯まぐろ作業部会における資源評価結果を受け、第16回IOTC科学委員会(2013年12月)は、現状の漁獲努力量はMSYレベルを下回り、資源量はMSYレベルを上回っているので、この状態が続けば特に資源管理方策の必要はないが、引き続き資源状況のモニター及びデータ収集する必要があると勧告し(IOTC 2013b)、第17回(2014年12月)・第18回(2015年11月)IOTC科学委員会でもそれが引き継がれた(IOTC 2014, 2015)。また、人工浮き魚礁(FADs)の管理として、2013年の第16回IOTC科学委員会ではFADs操業による漁獲報告の詳細な様式設定、混獲を回避するFADsデザイン構築等が勧告された。さらに、2015年の第19回IOTC年次会合ではFADsワーキンググループの設立及びFADs数制限(1隻あたり550基まで)が決議として採択された。

台湾への漁獲量割当3.5万トンが設定されている他、熱帯まぐろ(メバチ、キハダ)を漁獲対象とする漁船隻数の2006年水準への制限、まき網・はえ縄漁業ログブック最低情報収集の義務及びオブザーバープログラムが行われている。


メバチ(インド洋)の資源の現況(要約表)(*)

資源水準 中位
資源動向 増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
8.5万〜12.0万トン
平均:10.2万トン(2010〜2014年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
0.5万〜0.6万トン
平均:0.5万トン(2010〜2014年)
管理目標 MSY :13.2万トン(9.9万〜20.7万トン) (**)
資源の状態 SSB2012/SSBMSY:1.44(0.87〜2.22)(**)
F2012/FMSY:0.42(0.21〜0.80)(**)
漁獲圧はMSYレベルの約7割で資源量はほぼMSYレベル(過剰漁獲でなく乱獲状況でもない)
資源管理措置 現在(2012年)の漁獲努力量レベルなら管理措置は特に必要でない
漁業管理措置
(共通項目)
台湾への漁獲量割当3.5万トン、熱帯まぐろ(メバチ、キハダ)を漁獲対象とする漁船隻数の2006年水準への制限、FAD数制限、まき網・はえ縄漁業ログブック最低情報収集の義務及びオブザーバープログラムなど。
管理機関・関係機関 IOTC
最新の資源評価年 2013年
次回の資源評価年 2016年
(*)2012年までのデータを使用した資源評価の結果に基づく
(**) SS3複数シナリオで得られた結果の範囲

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

松本 隆之

国際水産資源研究所 業務推進課

西田 勤


参考文献

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