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16 メバチ 東部太平洋

Bigeye Tuna, Thunnus obesus

                                                                               
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最近の動き

東部太平洋における本種の最新の資源評価は全米熱帯まぐろ委員会(IATTC)事務局により2015年に行われ、現状(2015年第一四半期)の産卵資源量はほぼMSYレベル、近年(2012〜2014年)の漁獲係数はMSYを維持するレベルよりやや低いとされた。この結果は同年5月の科学諮問委員会に報告された。また、同年7月の年次会合において、現行措置の継続が合意された。


利用・用途

はえ縄の漁獲物は生鮮(刺身)、まき網の漁獲物は缶詰をはじめとする加工品として主に利用される。


図1

図1. 太平洋におけるメバチの分布域
赤色と緑色を合わせた海域が索餌域(分布域)。赤色が産卵域(年平均表面水温24℃以上)。


表1

表1. 東部太平洋におけるメバチの年齢ごとの尾叉長(cm)と体重(kg)の関係


図2a

図2b

図2. 東部太平洋におけるメバチの漁法別漁獲量(上図)、国別漁獲量(下図)


図3

図3. 太平洋における漁場図(上:はえ縄、下:まき網)
上図:赤色がメバチ、橙色がキハダ。凡例の丸は2,300トン。
下図:メバチの漁獲。青色がイルカ付き操業、緑色が素群れ操業、橙色がFADs操業。凡例の丸は9,200トン。


図4

図4. 東部太平洋におけるメバチの年齢ごとの尾叉長(cm)と体重(kg)の関係


図5

図5. 東部太平洋におけるメバチのSpawning Biomass ratioの推移
Spawning Biomass ratio(SBR)は漁業がないと仮定した状態の産卵資源量を1.0としたときの、実際の産卵資源量の割合。大きな黒丸が現状。2015年以降は予測値。灰色は95%信頼限界。破線(SBR=0.21)はMSYを達成できるSBR。


図6

図6. 東部太平洋におけるメバチの加入量(1975年以降の平均加入量を1とした相対値)の推移
灰色は95%信頼限界。破線は平均値(1.0)。


図7

図7. 東部太平洋におけるメバチの漁獲係数の推移


図8

図8. 東部太平洋におけるメバチの産卵魚資源量と各漁業のインパクトの推移
黒実線が実際の産卵魚資源量、肌色、橙色及び青色はそれぞれはえ縄、FAD操業、小型魚の投棄の影響を示す。


図9

図9. 東部太平洋におけるメバチのF/FMSYとSSB/SSBMSY(上図:産卵親魚量)及びB/BMSY(下図:総資源量)の推移
青いクロスが現状と95%信頼限界。赤い▲は解析開始年(1975年)、青丸は前後3年の平均値で示してある。


付表1

付表1. 国別漁獲量(トン。まき網の投棄量を含んでいない)


付表2

付表1. 国別漁獲量(続き)


付表3

付表1. 国別漁獲量(続き)


漁業の概要

IATTCが管理する東部太平洋は、南北緯度50度未満、西経150度以東と南北アメリカ大陸の海岸線に囲まれた海域である(図1)。この海域でメバチは主にはえ縄とまき網によって漁獲される。1975〜1993年までは、はえ縄による漁獲が大部分(88 %)を占めていたが、1993年に集魚装置(FAD)操業が導入されると、まき網の漁獲が急増すると共にはえ縄の漁獲が減少し、1996年に逆転した。2014年の漁法別の漁獲量割合はまき網が63%、はえ縄が37%であった。総漁獲量は1986年に10万トンに初めて達し、その後、7.3万〜12.5万トンを推移し、2000年に14.3万トンの最高値を記録したのち、減少傾向となり、2014年は前年の110%にあたる9.4万トンであった(図2)。なお、本文と図表及び統計値は特に断らない限り、科学諮問委員会(2015年5月)における資料(Aires-da-Silva and Maunder 2015、IATTC 2005a, b)に基づく。また、2013年と2014年の漁獲量は予備集計値である。

我が国のはえ縄を中心とする漁業は第2次大戦以前から本種を漁獲していた(岡本 2004)。1952年のマッカーサーライン撤廃以降、急速に拡大し、1960年には中央アメリカ沿岸に達した(Suzuki et al. 1978)。その後も南北両半球の温帯域に操業域を広げ、1960年代に地理的に最も広く操業が行われた。当初は缶詰等の加工品原料としてキハダとビンナガを漁獲していたが、刺身需要の増加と冷凍設備の改善によってメバチを漁獲するようになった。漁場は2000年以降、南北アメリカ沿岸域で縮小し、より熱帯域に努力量が集中し、赤道を挟んだ南北15度の範囲を主な漁場としている(図3)。南北30〜35度付近の温帯域にも、それぞれの冬期にメバチの好漁場が形成される。主として100 cm以上の中・大型魚を漁獲する。我が国の漁獲量は1960年の1.7万トン以降、年変動はあったものの、増加傾向を示し、1986年には9.2万トンの最高値を記録した。1991年までは6.6万〜8.8万トンで推移した後、急落し、2014年は前年の94%にあたる1.3万トンであった。1960年以降のメバチ総漁獲量に対する我が国の漁獲量が占める割合は1993年までは71.7〜99.9 %の範囲にあったが、1994年以降急減し、2014年は14.2%となった。1960年以降、台湾は1964年から、韓国は1975年から漁獲報告があり、中国、バヌアツ及びフレンチポリネシアなどが近年、はえ縄操業を行っている(図2、付表1)。

まき網については、資源開発初期には米国船が多かったが、1970年代の終わり頃からメキシコ、ベネズエラ船が増加するとともに米国船が減少し、1990年代に入ると、エクアドルやバヌアツ等の漁船が増加した。伝統的にイルカ付き操業と素群れ操業が行われてきたが、1990年代に入るとFAD操業が発達した。まき網の1960〜1993年平均のメバチ漁獲量(魚種別割合)は0.6万トン(2.2%)であったが、1993年頃からFAD操業が導入されるとメバチの漁獲量は増加した。FAD操業においてはキハダ、メバチ及びカツオの小型魚が漁獲の主体となっている。FAD操業が行われている漁場は北緯10度以南から南緯20度間のエクアドル沿岸から西経130度付近に広くみられ、ガラパゴス西方の水域が比較的豊かな漁場である(図3)。2014年のまき網の国別漁獲量はエクアドル3.8万トン、パナマ0.8万トンである。我が国のまき網船は1970年代初頭に操業したが、それ以降は出漁していない。まき網による海上でのメバチの平均投棄率(2010〜2014年)は、メバチ総漁獲量の0.7%と推定された。中西部太平洋でのFAD操業での漁獲物と異なり、この海域でのFAD操業では尾叉長80 cm以上の大型魚の漁獲も多くみられる。まき網船数は1961年から2007年の間に125隻から227隻に増加し、それに伴い漁獲努力量(魚艙容量)は3.2万m3から22.5万m3に増加した。2014年には217隻、22.9万m3となっている。まき網総操業数は2003年にピーク(32,328操業)を記録したのち2.6万〜3.1万操業で推移している(2014年は29,698操業)(IATTC 2015a)。


生物学的特性

本種の寿命は、オーストラリアのサンゴ海で放流後10年以上経過してから再捕された例から10〜15年であろうと考えられている。成長は耳石日輪を用いた解析結果(Schaefer and Fuller 2006)を Richardの成長式で表わし、これに標識放流試験で得られた成長に関するデータを考慮して推定される(Maunder and Hoyle 2007、表1、図4)。体重尾叉長関係はW (kg) =3.661×10-5×L (cm)2.90182で得られる(Nakamura and Uchiyama 1966、表1、図4)。このほかに、行縄・薮田(1963)が鱗を用いて推定した式を改変したもの(Suda and Kume 1967)、耳石日輪や標識放流結果を用いた研究(Lehodey et al. 1999、Matsumoto 1998)がある。

生物学的最小型は90〜100 cm、14〜20 kg(満2歳の終わりから3歳)と報告されており、120 cmを越えると大部分が成熟する。仔魚の分布から、熱帯・亜熱帯域の水温24 ℃以上のほとんどの水域でほぼ周年産卵すると考えられている(図1)。海域によって産卵活動のピークが異なり、東部太平洋では赤道の北側で4〜10月が、南側で1〜6月が盛期である。なお、中西部太平洋では赤道の北側で4〜5月が、南側では2〜3月が盛期である。メバチは多回産卵型で、産卵期にはほぼ毎日産卵し、産卵は夜間の7時から真夜中にかけて行われ、一回当たりの産卵数はハワイ南西沖のサンプルから体長150 cmで約220万粒であると考えられている(二階堂ほか 1991)。

本種の漁場は、南北30〜35度付近の温帯域に、それぞれの半球の冬期に形成されるが、魚体は小さく、未成熟であるため、摂餌回遊とみなされる(図1)。胃内容物からは魚類や甲殻類、頭足類等、幅広い分類群が出現し、種特異性はないようである。しかし、他のまぐろ類に比べてハダカイワシやムネエソ等の中深層性魚類が多い。仔魚期、稚魚期には多くの捕食者がいると思われるが情報は少ない。さらに遊泳力が付いた後は大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に外敵は限られてくるものと思われる。

太平洋における分布は非常に広く、陸棚上やメキシコからコスタリカ沖の低酸素水域を除く南北両半球の緯度40度未満のほとんどの水域に分布する(図1)。熱帯もしくは夏季の亜熱帯や温帯で生まれた仔稚魚は海流と共に、もしくは遊泳しながら移動し、多くは熱帯や亜熱帯に留まるものの、一部は温帯域へ索餌回遊を行い、成熟に達したら産卵に適した水温の高い水域に戻るのではないかと想定されている。しかし、95 %の標識放流魚が放流点から1,000マイル以内で再捕されている点から、この回遊パターンは他のまぐろ類、例えばビンナガやクロマグロほど明瞭な方向性があるものではないと思われる。予備的であるが、IATTCによる標識放流事業の結果(Schaefer 2014)から、中部から東部太平洋熱帯域にかけての資源構造が推定され、西経155度付近で放流された個体は、移動性が少なかったが、西経140度と西経170度の間で放流された個体は、東への強い移動傾向を示した。西経95度付近で放流された個体は、放流地点であまり移動せず、限定的ながら西への移動を示した。

大西洋とインド−太平洋間には遺伝的な違いが報告されているが、太平洋での複数の系群の存在は知られていない(Chow et al. 2000)。このことは、太平洋において、はえ縄の漁場分布が地理的に連続することや魚の計数形質にあまり差が見られないことと一致している。


資源状態

最新の資源評価は2015年にIATTC事務局により統合モデルであるStock Synthesis Version 3.23bを使用して行われた。漁業は、漁法(まき網、竿釣り、はえ縄)、まき網の操業タイプ(FAD操業、素群れ操業、イルカ付き操業)とIATTCのサイズデータ収集海域に基づいて定義された。資源豊度指数は、はえ縄が利用されている。なお、以下の資源解析結果は2015年5月の第6回科学諮問委員会での資料(Aires-Da-Silva and Maunder 2015)に基づいている。

産卵資源量の状態をSpawning Biomass ratio(漁業がないと仮定した状態の産卵資源量を1.0としたときの、実際の産卵資源量の割合)で示すと、現状(2015年第一四半期時点)の産卵資源量は、ベースケース(平均的加入及び親子関係なし)の場合、ほぼMSYレベルにある(図5)。なお、親子関係があると仮定すれば、資源評価結果は悲観的になる。将来予測の結果では、ベースケースの仮定の下で、努力量が現状と同レベルで推移すれば産卵資源量は増加すると予想された。最近年の加入量は平均的と推定されているが、信頼限界が大きい(図6)。漁獲係数は、1〜12四半期齢(0.25〜3歳)が最も高い(図7)。各漁業の親魚資源量に与える影響に関しては、はえ縄よりまき網の影響が大きかった(図8)。MSYは11.3万トンと推定された。最近年(2014年)の漁獲量は9.4万トンとMSYよりも低い。現状(2015年第一四半期時点)の産卵資源量はほぼMSYレベルにある(SSB2015/SSBMSY=1.06)と推定された(図9)。近年(2012〜2014年)の漁獲係数はMSYを維持するレベルよりも低いと推定された(F2012-2014/FMSY=0.88)(図9)。


管理方策

2015年7月に開催されたIATTC第89回会合(年次会合)において、現行のメバチ・キハダ保存管理措置の継続が合意された。措置の概要は以下のとおり。


・まき網漁業:62日間の全面禁漁。沖合特定区での1か月間禁漁。
・はえ縄漁業:国別メバチ漁獲枠の設定(我が国漁獲枠は32,372トン)

メバチ(東部太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(過去5年間)
8.6万〜10.2万トン
平均:9.3万トン(2010〜2014年)
我が国の漁獲量
(過去5年間)
1.3万〜1.6万トン
平均:1.5万トン(2010〜2014年)
管理目標 検討中
資源の状態 Brecent/BMSY=1.03
SSBrecent/SSBMSY=1.06
recent:2015年1月時点
F2012-2014/FMSY=0.88
(Fmultiplier=1.14)
管理措置 ・まき網漁業:62日間の全面禁漁。沖合特定区での1か月間禁漁。
・はえ縄漁業:国別メバチ漁獲枠の設定(我が国漁獲枠は32,372トン)
管理機関・関係機関 IATTC
最新の資源評価年 2015年
次回の資源評価年 2016年

執筆者

かつお・まぐろユニット
熱帯まぐろサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

佐藤 圭介


参考文献

  1. Aires-da-Silva and Maunder. 2015. Status of bigeye tuna in the eastern Pacific Ocean in 2014 and outlook for the future. Document SAC-06-05, adopted at the 6th scientific advisory committee of the IATTC. June 11-15 2015. La Jolla, USA. 11 pp. (2015年12月)
  2. Chow, S., Okamoto, H., Miyabe, N., Hiramatsu, K. and Barut, N. 2000. Genetic divergence between Atlantic and Indo-Pacific stocks of bigeye tuna(Thunnus obesus)and admixture around South Africa. Mol. Ecol., 9: 221-227.
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