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15 キハダ 大西洋

Yellowfin Tuna, Thunnus albacares

                                                                                 
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最近の動き

2014年の総漁獲量は10.4万トン(予備集計)で前年の102%であった。資源評価は2011年9月に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)により行われ、MSYは14.5(11.4〜15.8)万トンと推定され、2014年の漁獲量より大きい。2010年の資源量はMSYレベルより小さい(B2010/BMSY=0.85(0.61〜1.12))と見られる。また、2010年の漁獲圧は、MSYレベルより小さい(F2010/FMSY=0.87(0.68〜1.40))と推定された。しかしながら、資源評価の不確実性を考慮すると、2010年に乱獲状態でなく、かつ漁獲圧が過剰でなかった可能性は26%と低い。


利用・用途

はえ縄漁獲物は主として刺身、すしに利用される。外国では、缶詰に利用される比率が高い。


図1a

図1b

図1. 大西洋におけるキハダの漁法別漁獲量(上図)、国別漁獲量(下図)2014年は暫定値。


表1

表1. 大西洋におけるキハダの年齢ごとの尾叉長(cm)と体重(kg)の関係


図2

図2. 大西洋におけるキハダの漁場(漁獲分布、2010〜2013年)
青:はえ縄、赤:竿釣り、黄:まき網、白:その他。凡例の丸は上から102,500トン、205,000トン。


図3

図3. 大西洋におけるキハダの分布域


図4

図4. 大西洋におけるキハダの産卵場と産卵期(月)
卵巣標本を収集し、組織学的観察により確認されたもの。地図上の範囲は、標本採集場所を表す。


図5

図5. 大西洋におけるキハダの年齢ごとの尾叉長(cm)と体重(kg)の関係


図6a

図6b

図6. 大西洋キハダの資源解析結果
上:非平衡プロダクションモデルとVPA(2-BOX)による解析当時の最新年(2010年)の資源状態。下:不確実性を考慮した2010年の資源状態(不確実性を考慮した。各ブートストタップ点の分布状況) 上図の縦軸は漁獲圧、横軸は資源量で現状/持続可能な値の比で示してある。黒色、青色の小さな丸は、一つ一つがブートストラップ解析の結果で、それぞれプロダクションモデル、VPAの結果を示している。白色の丸と赤色の丸は、それぞれのブートストラップ結果の中央値。水色の丸は、2つのモデルの全てのブートストラップ結果の中央値。


図7

図7. 将来予測
漁獲量一定(縦軸:6万〜14万トン)で将来のB/BMSYが1.0を上回る確率(0.5、0.6、0.7)を示している。


付表1

付表1. 大西洋キハダの年別、国別漁獲量 (単位:トン)


付表2

付表1. (続き)


漁業の概要

大西洋におけるキハダ漁業は1950年頃に始まり、1955年頃からは竿釣り及びはえ縄が開始した。当初ははえ縄が主体であったが、最近年は、全漁獲量のうち70%がまき網、11%が竿釣り(大部分が東部大西洋)、16%がはえ縄で漁獲されている(図1上)。1980年以降、漁獲量は10万〜19万トンの間で変動し、2014年は10.4万トン(予備集計)であった。

主漁場は熱帯域で、約80%が東大西洋で漁獲される(図 2)。東大西洋ではギニア湾に大規模なまき網漁場があり、その漁獲は全体の約60%(東大西洋の約80%)に達する。はえ縄は、大西洋のほぼ全域で操業が行われており、2014年は総漁獲量の12%(1.3万トン)を占めた。米国及びメキシコ船(メキシコ湾)、ベネズエラ船(一部の季節のみ)は、はえ縄でキハダを対象としているが、日本船及び台湾船は熱帯域においてメバチを主対象として操業している場合が多い。まき網船は1991年以来、東大西洋(主としてギニア湾)においてFADs操業を発達させており、その結果、カツオ、メバチ及びキハダの小型魚等の漁獲が増大し、漁場が西方及び赤道以南にまで拡大した。このFADsの利用による漁獲効率の向上により、総努力量の減少が相殺され、実質的な努力量は安定していると考えられている。

漁獲物のサイズは、30〜170 cmまでと幅広く、小型魚は表層に多い。竿釣りでは38〜80 cmと変動が大きい。はえ縄では、日本船の漁獲物のモードは約140 cm(約53 kg)で、メキシコ湾(米国、メキシコ)では平均120〜126 cmで、大西洋南西部(ウルグアイ)のモードは110 cmである。まき網は、東部では体長モードは50 cmと150 cmにある。西部大西洋(ガーナ)では48〜52 cmである(ICCAT 2011)。

国別の漁獲量(図 1下、付表 1)は、フランスとスペインが多く、近年ガーナの比率が高くなっている。2014年はこれら3か国で全体のおよそ5割を占めた。以下、ケープベルデ、日本、ベネズエラなどが続いており、日本の漁獲量は、最近5か年は0.4万トン前後で横ばいである。


生物学的特徴

キハダは熱帯域から温帯域にかけて広く分布する(図3)。産卵は水温24℃以上の水域で行われ、産卵期と主産卵場は1〜3月にかけてのギニア湾赤道域、5〜8月にかけてのメキシコ湾、7〜9月にかけての南カリブ海が知られている(ICCAT 2001)(図4)。1回当たりの産卵数(Batch fecundity)は、尾叉長132 cmで約120万粒、142 cmで約400万粒と推定されている(Arocha et al. 2001)。生物学的最小型は尾叉長60 cm程度との報告もあるが、はえ縄の漁獲物を用いた卵巣の重量及び断面の肉眼観察によると、120 cmないしそれ以上になるまで成熟していないと推定される(Matsumoto and Miyabe 2000、Matsumoto et al. 2003)。産卵は夜間にほぼ毎日行われると考えられている(Schaefer 1996)。

雄は雌より大型になると考えられ、120 cm程度から雄の割合が高くなり150 cm程度になると大部分が雄である。成長式はGascuel et al.(1992)、体長体重関係はCaverivière et al.(1976)によって推定され、式はそれぞれ以下の通りである。これらによると、1歳で48 cm(2.2 kg)、2歳で78 cm(9.3 kg)、3歳で120 cm(32.8 kg)に達し、成熟年齢は満3歳と推定される(図5、表1)。

L=37.8+8.93t+(137.0-8.93t)[1-exp(-0.808 t)]7.49    Gascuel et al.(1992)

W=2.1527*10-5 L2.976    Caverivière et al.(1976)

    L : 尾叉長(cm)

    W : 体重(kg)

    t : 年齢

本種の寿命は正確にはわかっていないが、年齢査定の結果や成長が速いことから、メバチより短く7〜10年であろうと考えられている。自然死亡係数Mは若齢魚の方が成魚より高いと推定されている。

本種の胃中には魚類や甲殻類、頭足類等幅広い生物がみられる。仔稚魚時代には、魚類に限らず多くの外敵がいるものと思われるが、あまり情報は得られていない。遊泳力がついた後では大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に外敵は限られるものと思われる。

大西洋におけるキハダの系群構造は、以前は南北の2つの系群が想定されていたが、南北間(及び東西間)の魚群に交流がすることが標識放流によって確かめられたことから(Ortiz 2001)、大西洋全体で単一の資源を成すものと考えられている。


資源状態

最新の資源評価は2011年にICCATにより行われた。資源評価に必要なCPUEはまき網、はえ縄、竿釣り及び遊漁から得られているものの、漁獲の大部分を占めるまき網のCPUEは漁業の技術革新による漁獲効率の上昇を数値として取り扱うのが難しく、CPUE標準化が困難な状況となっている。当座の措置として、まき網の漁獲効率が年率3%あるいは7%上昇などと仮定してEUのCPUEは標準化された。また、はえ縄(日本、米国・メキシコ(メキシコ湾)、米国(大西洋)、ブラジル、ウルグアイ、台湾、ベネズエラ)、竿釣り(ダカール基地のヨーロッパ、カナリア諸島、ブラジル)、遊漁(米国)からCPUEの情報が得られた。年齢別標準化CPUE(1965〜2010年の中で、利用可能なもの)が、VPA(2-BOX)及び非平衡モデルのプロダクションモデル(ASPIC)による解析に使用された。

MSYはASPICで14.0万トン(11.4万〜15.0万トン)、VPAで14.9万トン(14.0万〜15.8万トン)と推定され、資源評価時の最新年(2010年)の漁獲量10.8万トンを上回った。2010年の資源量はMSYレベルより小さい(B2010/BMSY=0.85(0.61〜1.12))と見られる。資源評価時の最近年(2010年)の漁獲圧は、MSYレベルより小さい(F2010/FMSY=0.87 (0.68〜1.40))と推定された。しかしながら、資源評価の不確実性を考慮すると、乱獲状態でなく、かつ漁獲圧が過剰でなかった可能性はVPAの結果から26%と低く(図6)、前回(2006年)の資源評価より悲観的な結果である。努力量の増加は、資源量を減らす危険があり、キハダとともに漁獲される種(特にメバチ)に悪影響を与える懸念がある。将来予測を行うと、漁獲量11万トンの場合は、2016年に60%の確率で資源量がMSYレベルを上回る。14万トン以上ではその確率は50%以下になった(ICCAT 2015)(図7)。


管理方策

ICCATのRecommendation 15-01(ICCAT 2015b)に基づき、資源管理措置が講じられている。将来にわたる持続的利用を確実にするため、TAC(11万トン)が設定されている。また、メバチ・キハダの幼魚が多く生育するギニア湾におけるFADsを利用するまき網の禁漁期、禁漁区域等が導入されている。


キハダ(大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(過去5年間)
10.1万〜11.4万トン
平均:10.6万トン(2010〜2014年)
我が国の漁獲量
(過去5年間)
0.4万〜0.5万トン
平均:0.5万トン(2010〜2014年)
管理目標 MSY:14.5(11.4〜15.8)万トン
資源の現状 B2010/BMSY:0.85(0.61〜1.12)
F2010/FMSY:0.87(0.68〜1.40)
管理措置 TAC(11万トン)
メバチ・キハダの幼魚の保護(ギニア湾におけるFADsを利用するまき網の禁漁期、禁漁区域、1〜2月のFADs操業禁止)
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2011年
次回の資源評価年 2016年

執筆者

かつお・まぐろユニット
熱帯まぐろサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

佐藤 圭介


参考文献

  1. Anon.(ICCAT)2001. Report of the ICCAT SCRS Atlantic yellowfin tuna stock assessment session (Cumaná, Venezuela, July 10 to 15, 2000). Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 52(1): 1-148. http://www.iccat.int/Documents/CVSP/CV052_2001/no_1/CV052010001.pdf (2014年12月1日)
  2. Anon.(ICCAT)2011. Report of the 2011 ICCAT yellowfin tuna stock assessment session (San Sebastián, Spain - September 5 to 12, 2011). 113 pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2011_YFT_ASSESS_REP.pdf (2014年12月1日)
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  5. Arocha, F., D.W. Lee, L.A. Marcano and J.S. Marcano. 2001. Update information on the spawning of yellowfin tuna, Thunnus albacares, in the western central Atlantic. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 52(1): 167-176. http://www.iccat.int/Documents/CVSP/CV052_2001/no_1/CV052010167.pdf (2015年12月)
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  9. Matsumoto, T., H. Saito, H. and N. Miyabe, N.. 2003. Report of observer program for Japanese tuna longline fishery in the Atlantic Ocean from September 2001 to March 2002. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 55(4): 1679-1718. http://www.iccat.int/Documents/CVSP/CV055_2003/no_4/CV055041679.pdf(2015年12月)
  10. Ortiz, M. 2001. Review of tag-releases and recaptures for yellowfin tuna from the U.S. CTC program. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 52(1): 215-221. http://www.iccat.int/Documents/CVSP/CV052_2001/no_1/CV052010215.pdf(2015年12月)
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