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12 キハダ 東部太平洋

Yellowfin Tuna, Thunnus albacares

                                                           
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最近の動き

東部太平洋における本種の最新の資源評価は全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)事務局により2015年に行われ、現状(2015年第一四半期時点)の産卵資源量はほぼMSYレベルにあり、近年(2012〜2014年)の漁獲係数はMSYを維持するレベルよりも低いとされた。この結果は同年5月の科学諮問委員会に報告された。また、7月の年次会合において、現行措置の継続が合意された。


利用・用途

はえ縄の漁獲物は生鮮(刺身)、まき網の漁獲物は缶詰をはじめとする加工品として主に利用される。


図1

図1. 太平洋におけるキハダの分布域
赤色と緑色を合わせた海域が索餌域(分布域)、赤色が産卵域(年平均表面水温24℃以上)


表1

表1. 東部太平洋におけるキハダの年齢ごとの尾叉長(cm)と体重(kg)の関係


図2

図2. 東部太平洋におけるキハダの漁法別漁獲量(上図)、国別漁獲量(下図)


図3

図3. 太平洋における2009〜2013年の漁場図(上:はえ縄、下:まき網)
上図:赤色がメバチ、橙色がキハダ。凡例の丸は2,300トン。
下図:キハダの漁獲。青色がイルカ付き操業、緑色が素群れ操業、橙色がFAD操業。凡例の丸は9,200トン。


図4

図4. 東部太平洋におけるキハダの年齢ごとの尾叉長(cm)と体重(kg)の関係


図5

図5. 東部太平洋におけるキハダのSpawning Biomass ratioの推移
上図はベースケース。下図は親子関係がある場合。破線はMSYを達成できるSBRで上図は0.27、下図は 0.35。大きな黒丸が現状。2015年以降は予測値。灰色は95%信頼限界。Spawning Biomass ratioは漁業がないと仮定した状態の産卵資源量を1.0としたときの、実際の産卵資源量の割合。


図6

図6. 東部太平洋におけるキハダの加入量
1975年以降の平均加入量を1とした相対値)の推移(破線は95%信頼限界)


図7

図7. 東部太平洋におけるキハダの漁獲係数の推移
青:1〜10四半期齢、赤:11〜20四半期齢、緑:21四半期齢以上


図8

図8. 東部太平洋におけるキハダの資源量と各漁業のインパクトの推移
黒実線が実際の資源量、黒破線は漁業がないと仮定したときの資源量。桃色、赤色、緑色、黄色、水色はそれぞれはえ縄、イルカ付き操業、素群れ操業、FADs操業、小型魚投棄の影響を示す。


図9

図9. 東部太平洋におけるキハダのF/FMSYとSSB/SSBMSY(上図)、B/BMSY(下図)の推移(赤丸は現状)


漁業の概要

IATTCが管理する東部太平洋は、南北緯度50度未満、西経150度以東と南北アメリカ大陸の海岸線に囲まれた海域である(図1)。1960年頃までに竿釣りによりキハダ資源が開発され、その後、まき網に転換された。近年、キハダの大部分はまき網によって漁獲され(95%、2010〜2014年)、残りがはえ縄(4%)と竿釣り(1%未満)で漁獲される。漁獲量は1970年代半ばと1990年にピークがみられる(図2、IATTC 2015b)。1983年の漁獲量の落ち込みは、海況の変化に起因する漁船数の減少によるものである(図2)。1990年以降の漁獲量の減少は、イルカ付きの魚群を漁獲していたため、イルカの保護運動の影響で漁獲努力量が減少したことによるものである。1990年以降は米国以外の進出が目立ち(図2、付表1)、1999年には29.8万トンまで回復し、好調な加入による資源増加と相乗して、2001〜2003年には40万トンを超えた。2014年は24.2万トンで前年の105%であった。なお、本文と図表及び統計値は特に断らない限り、科学諮問委員会(2015年5月)における資料(Minte-Vera et al. 2015、IATTC 2005a, b)に基づく。また、2013年と2014年の漁獲量は予備集計値である。

我が国のはえ縄船の漁場は、1952年のマッカーサーライン撤廃以降、急速に拡大し、1960年には中央アメリカ沿岸に達した(Suzuki et al. 1978)。その後も南北両半球の温帯域に操業域を広げ、1960年代に地理的に最も広く操業が行われた。当初は缶詰等の加工品原料としてキハダとビンナガを漁獲していたが、刺身需要の増加と冷凍設備の改善によってメバチを漁獲するようになった。漁場は2000年以降、南北アメリカ沿岸域で縮小し、より熱帯域に努力量が集中し、赤道を挟んだ南北15度の範囲を主な漁場としている(図3)。主として尾叉長100 cm以上の中・大型魚を漁獲する。我が国のキハダの漁獲量は、1986〜1995年にかけて2.0万トン程度であったが、2002年以降は1万トンを切り、近年では2,000〜4,000トンにまで減少している(2014年は2,652トン)。1960年以降の総漁獲量に対する我が国の占める割合は、1960年代は10〜25%であったが、その後は5〜10%を推移し、最近5年間は1〜2%にとどまっている(図2)。まき網漁業に関しては、資源開発初期には米国船が多かったが、1970年代の終わり頃から転籍船を含めメキシコ、ベネズエラ船が増加するとともに米国船が減少し、1990年代に入ると、エクアドルやバヌアツ等の漁船が増加した。伝統的にイルカ付き操業と素群れ操業が行われてきたが、1990年代に入ると集魚装置(FAD)を使用した操業が発達した。素群れ操業は尾叉長60〜100 cm程度、イルカ付き操業は尾叉長90〜150 cmの中・大型魚、FADs操業は尾叉長50 cm程度の小型魚を中心に漁獲している。イルカ付き操業の漁場は北緯10度を中心に西経130度以東の沿岸域に分布し、素群れ操業は沿岸部に多く、FAD操業は南緯側で比較的多くみられた(図3)。1985年以前は米国が、その後はメキシコが最大の漁獲量を揚げている。2014年のまき網の漁獲量に対する各国の割合は、メキシコ52.0%(12.1万トン)、エクアドル16.2%(3.8万トン)、ベネズエラ9.8%(2.3万トン)及びパナマ8.4%(2.0万トン)であった(図2、付表1)。我が国のまき網船は1970年代初頭に操業していたが、それ以降は出漁していない。まき網による海上でのキハダの平均投棄率(2010〜2014年)は、キハダ総漁獲量の0.2%と推定された。まき網船数は1961年から2007年の間に125隻から227隻に増加し、それに伴い漁獲努力量(魚艙容量)は3.2万m3から22.5万m3に増加した。2014年には217隻、22.9万m3となっている。まき網総操業数は2003年にピーク(32,328操業)を記録したのち2.6万〜3.1万操業で推移している(2014年は29,698操業)(IATTC 2015a)。


生物学的特性

本種の寿命は正確にはわかっていないが、成長が速いことから、メバチより短く7〜10歳であろうと考えられおり、耳石年輪より15歳までは存在が知られている。耳石日輪を用いた解析結果(Wild 1986)を Richardの成長式で表し、これに標識放流試験で得られた成長に関するデータを考慮して推定される(Maunder and Hoyle 2007。表1、図4)。体重尾叉長関係は、W (kg) =1.387 × 10-5 × L(cm)3.086で得られる(Wild 1986、表1、図4)。

生物学的最小形は50 cm以下であるが、雌の50%は92 cmで成熟し、123.9 cmの雌(39 kg、満2歳の終わりから3歳)では90%が成熟している(Schaefer 1998)。東部太平洋では赤道から北緯20度の沿岸から西経140度の範囲で周年産卵しており、北緯20度より北で主に7〜11月、赤道より南では11〜2月が産卵盛期である(図1)。組織学的な観察から産卵間近と推定された個体の85.3%は表面水温26〜30℃の水域に分布している。キハダは1度の産卵期に(周年産卵であれば1年のうちに)複数回産卵できるとされており(Schaefer 1998)、そのことは、蓄養のキハダでも確認されている(Niwa et al. 2003)。1回あたりの産卵量は体長120 cmで約233万粒とされる(Schaefer 1998)。

分布域は、北緯40度から南緯40度までである(Wild 1994)(図1)。標識放流結果からは、東部太平洋と中西部太平洋間の移動は稀で、東部太平洋内でも狭い範囲の移動が多く、クロマグロやビンナガにみられるような明瞭な回遊はない(Suzuki et al. 1978、Wild 1994)。

本種の仔魚期の餌生物はカイアシ類、枝角類が主体である(Uotani et al. 1981)。稚魚の胃内容物には魚類が多く、次いで頭足類が出現し、カイアシ類はほとんどみられない(辻 1998)。成魚の胃内容物に関する知見は比較的豊富で(Matthews et al. 1977)、魚類を主に甲殻類、頭足類など幅広い生物を摂餌し、明確な嗜好性はないと思われる。仔魚期、稚魚期には多くの捕食者がいると思われるが情報は少ない。さらに遊泳力が付いた後は大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に外敵は限られてくるものと思われる。

太平洋で複数の系群の存在を示す遺伝学的な直接証拠はなく、はえ縄漁場が太平洋で連続的に分布している一方で、上述の標識放流の再捕記録、形態学的な方法(Schaefer 1991)、親魚の成熟状態と仔稚魚の出現場所(Suzuki et al. 1978)、魚体組成の変化(IATTC 1982)などは系群の存在を示唆するが結論は出ていない。現在のところ東部太平洋を独立した資源と仮定して資源評価が行われている。


資源状態

最新の資源評価は2015年にIATTC事務局により統合モデルであるStock Synthesis Version 3.23bを使用して行われた。漁業は、漁法(まき網、竿釣り、はえ縄)、まき網の操業タイプ(FAD操業、素群れ操業、イルカ付き操業)とIATTCのサイズデータ収集海域に基づいて定義された。資源豊度指数は、まき網、はえ縄が利用されている。なお、以下の結果は2015年5月の第6回科学諮問委員会に提出されたIATTC事務局の資料(Minte-Vera et al. 2015)からの引用である。

産卵資源量の推移をSpawning Biomass ratio(漁業がないと仮定した状態の産卵資源量を1.0としたときの、実際の産卵資源量の割合)図5に示す。現状(2015年第一四半期時点)の産卵資源量は、平均的加入及び親子関係なしと仮定した場合(以下、ベースケース)、ほぼMSYレベルにある(図5)。親子関係があると仮定すれば、資源評価結果は悲観的になり、MSYレベルを下回る。将来予測の結果では、ベースケースとした場合、努力量が現状と同レベルで推移すれば産卵資源量も表層漁業の漁獲量も増加すると予想された。加入量の経年変化は、レベルが異なる3つのレジーム(1975〜1983年の低い加入、1984〜2002年の高い加入、2003〜2012年の中間的加入)に区分される(図6)。最近年の加入量は平均的と推測されているが、信頼限界が大きい。漁獲係数は、1〜10四半期齢(0.25〜2.5歳)が最も低く、次いで21四半期齢(5.25歳)以上、11〜20四半期齢(2.75〜5歳)と続き、2003年から2006年にかけて漁獲係数が高く推移し、一旦減少に転じたが、近年増加傾向にある(図7)。各漁業の親魚資源量に与える影響に関しては、まき網のイルカ付き及び素群れ操業が最も大きなインパクトを示し、まき網のFAD操業がそれに続く。近年では、FAD操業のインパクトは素群れ操業のインパクトよりもわずかに大きくなっている。はえ縄とまき網の小型魚投棄のインパクトはそれらに比べるとかなり小さく近年減少している(図8)。MSYは27.5万トンと推定された。最近年(2014年)の漁獲量は24.3万トンとMSYよりも低い。

産卵親魚量と漁獲係数の関係を図9に示す。現状(2015年第一四半期時点)の産卵資源量はほぼMSYレベルであり(SSB2015/SSBMSY=1.06)、近年(2012〜2014年)の漁獲係数がMSYを維持するレベルよりも低いことから(F2012-2014/FMSY=0.90)、キハダ資源状態は乱獲状態にはなく、過剰漁獲にも陥っていないと考えられる。


管理方策

2015年7月に開催されたIATTC第89回会合(年次会合)において、現行のメバチ・キハダ保存管理措置の継続が合意された。はえ縄漁業漁獲枠はメバチについてのみ設定されているが、キハダの漁獲にも影響をもたらすと考えられる。措置の概要は以下のとおり。


・まき網漁業:62日間の全面禁漁。沖合特定区での1か月間禁漁。
・はえ縄漁業:国別メバチ漁獲枠の設定(我が国漁獲枠は32,372トン)
         

キハダ(東部太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(過去5年間)
21.3万〜26.1万トン
平均:23.3万トン(2010〜2014年)
我が国の漁獲量
(過去5年間)
0.2万〜0.4万トン
平均:0.3万トン(2010〜2014年)
管理目標 検討中
資源の状態 Brecent/ BMSY:0.99
SSBrecent/SSBMSY:1.06
recent:2015年第一四半期開始時点
(F2012-2014/FMSY=0.90)
管理措置 ・まき網漁業:62日間の全面禁漁。沖合特定区での1か月間禁漁。
・はえ縄漁業:国別メバチ漁獲枠の設定(我が国漁獲枠は32,372トン:キハダの漁獲量にも影響をもたらすと考えられる)
管理機関・関係機関 IATTC
最新の資源評価年 2015年
次回の資源評価年 2016年

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

佐藤 圭介


参考文献

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  10. Uotani, I., Matsuzaki, K., Makino, Y., Noda, K., Inamura, O. and Horikawa, M. 1981. Food habits of larvae of tunas and their related species in the area northwest of Australia. Bull. Japan. Soc. Scientist Fish. 47(9): 1165-1172.
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