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11 ビンナガ 南大西洋

Albacore, Thunnus alalunga

                                                           
PIC

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図1

図1. 南大西洋におけるビンナガの漁法別漁獲量(ICCAT 2015)


表1

表1. 南大西洋におけるビンナガの主要国別漁獲量(過去25年分・トン)


図2

図2. 大西洋のビンナガの分布と主な漁場


図3

図3. 南大西洋におけるビンナガの年齢と尾叉長(cm)の関係
実線はLee and Yeh(2007)、点線はBard and Compean-Jimenz(1980)


図4

図4. 2013年の資源評価に用いられた南大西洋ビンナガの標準化CPUE(ICCAT 2013a)
Chinese Taipei LL:台湾のはえ縄、Japan LL early:日本のはえ縄、Japan LL late:日本のはえ縄(後期)、Uruguay LL:ウルグアイのはえ縄


図5

図5.上:ASPICモデル及びBSPモデルから得られたMSYレベルを1.0としたときの資源量(赤)と漁獲係数(青)の相対値。実線は点推定値(ASPICモデル)もしくはメジアン(BSPモデル)、点線は50%信頼区間。下:ASPICモデル及びBSPモデルから得られた資源状態を表すMSYを基準とした相対漁獲計数(F/FMSY)と相対資源量(B/BMSY)との間の位置関係(いわゆるKobeプロット、実線)ならびに2011年の推定値まわりのばらつきの度合い。(ICCAT 2013a)


図6

図6.将来予測の結果、資源量及び漁獲係数がKobeプロットにおける緑の領域になる確率を年と将来の漁獲量水準の軸に対して等確率線で表したもの。確率は8つのシナリオ全てを用いて推定された。(ICCAT 2013a)


最近の動き

2015年10月に大西洋まぐろ類保存委員会(ICCAT)の科学委員会(SCRS)が開かれ、各国から2014年の漁獲量が報告された。2014年の漁獲量は約1.3万トンであり、過去25年(1989〜2013年)において最も低い漁獲量であった。最近年の漁獲量の減少は、台湾のはえ縄船の漁獲対象の変更に伴うビンナガの漁獲努力量の減少が主な要因と考えられている(ICCAT 2015)。2014年から日本にも国別割当量(年間1,355トン)が制定され、2014年の日本の漁獲量は1,133トンとなった。


利用・用途

主として缶詰原料となっている。また、近年日本のはえ縄船が高緯度域で漁獲したものの多くは刺身用に利用されている。


漁業の概要

南大西洋のビンナガの開発は日本のはえ縄漁船の大西洋への進出とともに、1950年代後半から始まった。1960年代には、日本に続き、韓国や台湾のはえ縄漁船が参入した。沿岸諸国の表層漁業による漁獲量の記録は1960年代から見られる。南大西洋のビンナガは開発当初からはえ縄による漁獲の割合が大きく、1970年代までは9割以上を占めた(図1)。遠洋漁業国のはえ縄が対象種をビンナガから他の魚種に転換したことと、沿岸国の竿釣りによる漁獲量の増加により、はえ縄による漁獲の割合は減少し、1980年代後半以降は6〜7割となった。このように、南大西洋のビンナガは主としてはえ縄によって漁獲されており、北大西洋とは対照的である。

南大西洋におけるビンナガの総漁獲量は1960〜1970年代にはおよそ2.0万〜3.5万トンの範囲で推移していたが、1980年代後半〜2000年代の初め頃には2.6万〜4.0万トンとより高い水準となった(表1)。その後漁獲量は急激に減少し、2005年に過去20年で最低となる1.9万トンとなった。2006〜2013年は1.9万〜2.5万トンの範囲で推移していたが、2015年の漁獲量は最近年の漁獲量を下回り、1.3万トンとなった(ICCAT 2015)。この漁獲量は過去25年(1989〜2013年)における年間総漁獲量において最も低い値である。主要漁業国では台湾、南アフリカ、日本、ブラジル及びナミビアであり、これら5か国で南大西洋のビンナガ総漁獲量の9割以上を占めている。また、熱帯域のまき網によってわずかな混獲がある。

台湾ははえ縄で本種を漁獲しており、最大の漁獲国となっている。1973年以降では総漁獲量の6〜9割を占めてきた。台湾船は伝統的にビンナガを主対象として亜熱帯から温帯域の広い海域で周年操業しており、1970〜1980年代には1.2万〜2.9万トン、1990年代には1.6万〜2.3万トンを漁獲した。2000〜2003年の漁獲量は1.6万〜1.7万トンと安定していたが、その後やや減少し0.9万〜1.3万トンとなった。2003年以降はブラジル域内でのビンナガ操業から撤退したため、現在は熱帯性まぐろ類の混獲として本種を漁獲している。2012年の台湾の漁獲量は前年に比べて減少したが、これはビンナガに対する漁獲努力の減少によるものである。この現象は2012年以降も継続し、2014年の漁獲量は6675トンと過去25年では最も低い値となった(ICCAT 2015、表1)。

ブラジルの2004年の漁獲量は2003年の2,000トンから500トン台へと大きく減少しており、これは台湾との合弁船が撤退したことや、ブラジルのはえ縄が漁獲対象をメカジキやメバチに変更したことによる。その後も漁獲量は600トン以下の低いレベルのままとなっていたが、2012年には1,857トン、2013年には1,743トンを漁獲している。これは竿釣り及び熱帯性まぐろ類を対象としたはえ縄の混獲によるものである。2014年の漁獲量は438トンと大きく減少している。

南アフリカの竿釣りは同国西岸沖からナミビア沖にかけて操業している。1960年から漁業が始まり一時中断したものの1972年から再開され、1980〜1984年に1,000〜3,000トン、1985〜2002年には4,000〜8,000トンを漁獲し、その後はやや減少し3,000〜5,000トンになった。2014年の南アフリカの漁獲量は3,719トンと過去5年平均をやや下回った。南アフリカとほぼ同じ漁場で操業するナミビアの竿釣りの漁獲量は、漁獲が初めて報告された1994年以降増加傾向を示し、2006年には過去最高の5,100トンとなった。その後漁獲量は年ごとに大きく変動し、1,000〜5,000トンで推移し、2014年のナ漁獲量は1,057トンと前年の漁獲量(848トン)をやや上回った(表1)。

日本のはえ縄は、1960年代に2万数千トンまで漁獲を伸ばしたが、対象が刺身用の他のまぐろ類へと変化したためビンナガの漁獲量が急激に減少し、1973年以降は1,000トン以下となった。しかしながら、近年ではナミビアや南アフリカ水域で漁獲努力量が増加し、2011〜2013年にかけて漁獲量は1,194〜3,145トンへ増加し、混獲から漁獲対象種へ移行していることが伺える。これは日本市場におけるビンナガの刺身用原料としての需要が増加している等の理由による。2014年から日本にも国別割当量(年間1,355トン)が制定されたため、2014年の漁獲量は1,133トンとなっている。


生物学的特徴

大西洋のビンナガは、大型魚の漁獲される海域及び稚魚の分布海域が南北でかなり明瞭に分かれていること、また、標識放流結果においても南北をまたいだ記録がないことから、南北で別々の系群が存在すると考えられている。ICCATでは、北緯5度線を南北両系群の境界として資源管理しており、南大西洋ビンナガはおよそ赤道〜南緯40度付近の西風皮流域との潮境に当たる亜熱帯収束線の北側海域に分布している(図2)。

ビンナガを対象としたはえ縄の漁場は南緯10〜30度、西経35度〜東経15度で、ここでは尾叉長90 cm以上の産卵群が漁獲される。それよりも南側(南緯30度以南)では尾叉長90 cm以下の索餌群が主体となる。南アフリカ沿岸では、この魚群が竿釣りで漁獲される。産卵域ははっきりしないが、稚魚は南緯10〜25度の南米大陸寄りに多く出現している(西川ほか 1985)。産卵期は春から夏と考えられている。索餌域は南緯25度以南と考えられる。

捕食、被食に関してははっきりしないが、魚類、甲殻類、頭足類を捕食し、さめ類、海産哺乳類のほか、まぐろ類・かじき類によって捕食されているものと思われる。

南大西洋ビンナガの成長に関して、輪紋が一定の間隔で形成されるかの評価(Validation)がなされていなかったため(Lee and Yeh 1993)、2003年の資源評価までは北大西洋ビンナガの成長式(Bard and Compean-Jimenz 1980)が用いられてきた。しかし、2007年に実施された資源評価で新たな成長式(Lee and Yeh 2007)が用いられた(図3)。これによると、尾叉長は3歳で68 cm、5歳で86 cm、7歳で99 cmとなる。尾叉長90 cmで50%が成熟する。体長体重関係は下記(Penney 1994)により示されている。寿命ははっきりしないが、少なくとも10歳以上と思われる。
     L(t)=147.5(1−e-0.126(t+1.89)
         L: 尾叉長(cm)、t : 年
     w=1.3718×10-5 ×l3.0973
         w : 体重(kg)、l : 尾叉長(cm)


資源状態

大西洋ビンナガの資源評価はICCATで行われてきており、最新の資源評価は2013年6月のビンナガ資源評価会合で行われた(ICCAT 2013)。この資源評価では前回の資源評価(2011年)と同様にベイズプロダクションモデル(Baysian Surplus Production model:BSP)、ASPICで解析が行われた(ICCAT 2013a)。

解析には2011年までの漁獲量、努力量が用いられた。親魚を漁獲するはえ縄のCPUEには、初期に急激な減少がみられた。1975〜2005年までは増減を繰り返しながら緩やかな減少傾向を示し、2005〜2010年にはCPUEは再び増加傾向を示した。ウルグアイのはえ縄CPUEは1998〜2005年にかけて急激に減少した(図4)。資源評価には日本、台湾、ウルグアイのはえ縄CPUE及び各漁業別の漁獲量を入力データとして用いた。資源評価モデルの設定は前回(2011年)と同様とし、初期資源量と環境収容力との比(B0/K)を0.9に固定、資源CPUEの重み付け(等ウェイトもしくは漁獲量で重みづけ)、再生産モデル(logisticもしくはFox)の仮定等を変えた4つの設定をASPICとBSPで実施し(計8シナリオ)、これらの結果は同等に扱われた。

これら8つのシナリオから出力された各MSY推定値の中央値は25,228トン(範囲:19,109〜28,360トン)、B2012/BMSY推定値の中央値は0.92(範囲:0.71〜1.26)、F2011/FMSY推定値の中央値は1.04(範囲:0.38〜1.32)であり、南大西洋のビンナガは資源量及び漁獲係数ともにMSY水準を維持しているとされた(図5)。これら8つのシナリオから推定された「過剰漁獲でありかつ乱獲状態である確率」は57%、「過剰漁獲ではなくかつ乱獲状態でもない確率」は30%であることが示された。

資源量の将来予測の結果はシナリオによってかなり異なった。8つのシナリオのうち、どのシナリオがより実態に近いかを客観的に判断する材料が乏しかったため、8つのシナリオ全てを用いた。異なる将来の漁獲水準で漁獲した時に、親魚資源量がMSYレベルより大きくなる確率を示した(図6)。2013年のTACレベル(2.4万トン)と同様の漁獲を継続すると仮定して将来予測を行った場合、資源量が回復(B>BMSY、FMSYとなり、Kobe plotの緑の領域になる)する確率が50%以上となるのは2020年以降になると推定され、2013年のTAC以上の漁獲は将来予測の期間内において資源量が回復する確率は50%を下回るとされた。またTACを引き下げた場合、2020年までに資源状態が回復する確率が高くなることが予測された。将来にわたってFMSYで漁獲した場合、2026年以前に資源量が回復する確率が50%を上回らないことが予測された。


管理方策

1995年から主要漁獲国(台湾、南アフリカ、ブラジル及びナミビア)は漁獲量を1989〜1993年の平均漁獲量の90%以下(=およそ2.2万トン)にする管理措置が初めて実施され、2001年からは総漁獲量の規制が始められた。

2013年のICCAT年次会合においては、資源評価結果を受け2014〜2016年のTACが2.4万トンに設定された。日本の漁獲量については、南大西洋(北緯5度以南)におけるはえ縄によるメバチの漁獲量の4%以下に抑制するというこれまでの努力規定から、新たに1,355トンの国別割当量が設定された(ICCAT 2014)。


ビンナガ(南大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位*1
資源動向 横ばい*1
世界の漁獲量
(最近5年間)
1.36万〜2.50万トン
平均:2.0万トン(2010〜2014年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
973〜3,106トン
平均:1,862トン(2010〜2014年)
管理目標 MSY:25,228トン(範囲:19,109〜28,360トン)*2
資源の現状 SSB2012/SSBMSY =0.92(0.71〜1.26)
F2011/FMSY 1.04(0.38〜1.32)*3
管理措置 漁獲量規制:24,000トン
うち日本への割り当ては1,355トン
管理機関・関係機関 ICCAT
*12013年資源評価の資源状態及び過去5年の漁獲量の動向に基づく
*22013年資源評価結果より。8つの各シナリオからの推定値の範囲。
*32013年資源評価結果より。8つのシナリオの結果全部から推定した80%信頼区間。

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

芦田 拡士・松本 隆之


参考文献

  1. Anon. (ICCAT) 2013a. Report of the 2013 ICCAT north and south Atlantic albacore stock assessment meeting (Sukarrieta, Spain - June 17-24, 2013). 115pp. http://www.iccat.es/Documents/Meetings/Docs/2013_ALB_ASSESS_REP_ENG.pdf (2014年2月24日)
  2. Anon. (ICCAT) 2013b. Executive summaries on species. ALB-Albacore. In ICCAT (ed.), Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain, September 30-October 4, 2013). 344pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2013-SCRS-REP_ENG.pdf(2013年10月24日)
  3. Anon. (ICCAT) 2014. Report for biennial period, 2012-13 PART II (2013) - Vol. 1 https://www.iccat.int/Documents/BienRep/REP_EN_12-13_II_1.pdf (2015年3月9日)
  4. Anon. (ICCAT) 2015. Executive summaries on species. ALB-Albacore. In ICCAT (ed.), Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain, September 28-October 2, 2015). 351pp. https://www.iccat.int/Documents/Meetings/SCRS2015/SCRS_PROV_ENG.pdf (2015年12月22日)
  5. Bard, F.X. and Gompean-Jimenez, G. 1980. Consequences pour l'evaluation du taux d'exploitation du germon Thunnus alalunga. Nord Atlantique d'une courbe de croissance debuite de la lecture des sections de rayons epineux. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 9(2): 365-375.
  6. Lee, L. K. and Yeh, S.Y. 1993. Studies on the age and growth of South Atlantic albacore (Thunnus alalunga) specimens collected from Taiwanese longliners. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 40(2): 354-360.
  7. Lee, L. K. and Yeh, S. Y. 2007. Age and growth of South Atlantic albacore -- a revision after the revelation of otolith daily ring counts. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 60(2): 443-456.
  8. 西川康夫・本間 操・上柳昭治・木川昭二. 1985. 遠洋性サバ型魚類稚仔の平均分布, 1956-1981年. 遠洋水産研究所Sシリーズ12. 遠洋水産研究所, 静岡. 99 pp.
  9. Penney, A.J. 1994. Morphometric relationships, annual catches and catch-at-size for South African caught South Atlantic albacore (Thunnus alalunga). Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 42(1): 371-382.