--- 詳細版 ---

10 ビンナガ 北大西洋

Albacore, Thunnus alalunga

                                                           
PIC

[HOME] [詳細版PDF] [要約版PDF] [要約版html] [戻る]

最近の動き

2015年9月に大西洋まぐろ類保存委員会(ICCAT)の科学委員会(SCRS)が開かれ、各国から2014年の漁獲量が報告された。2014年の漁獲量は26,539トンで、2013年を上回り過去5年(2009〜2014年)の中で最も多かった。主要漁業国における2014年の漁獲量を過去5年の平均漁獲量と比較すると、スペイン・アイルランドは過去5年平均と同様、フランスは増加、日本・台湾は減少となった。2014年の漁獲量の増加は中層トロールによるものである(ICCAT 2015)。


利用・用途

主に缶詰原料となっているほか、近海で漁獲されたものは鮮魚としても販売される。また、近年日本のはえ縄船が高緯度域で漁獲したものの多くは、日本において刺身用として利用されている。


図1

図1. 北大西洋におけるビンナガの漁法別漁獲量(ICCAT 2015a)


表1

表1. 北大西洋におけるビンナガの主要国別漁獲量(過去25年分・トン)


図2

図2. 大西洋におけるビンナガの分布と主な漁場


図3

図3. 北大西洋ビンナガの年齢と尾叉長(cm)の関係(Bard and Compean- Jimenz 1980より)


図4

図4. 資源評価に用いられた北大西洋ビンナガの標準化されたCPUE(ICCAT 2013b)
Chinese Taipei LL early:台湾のはえ縄(初期)、Chinese Taipei LL late:台湾のはえ縄(後期)、Japan LL early:日本のはえ縄(初期)、Japan LL late:日本のはえ縄(後期)、Spanish TR:スペインのひき縄、Spanish BB:スペインの竿釣り


図5

図5. Multifan-CLモデルから得られた北大西洋ビンナガの1930〜2011年の親魚資源量(上図)及び加入量(下図)(ICCAT 2013a)
Biomassはトン、Recruitmentは尾数で表示。Time period は1930年が1を示す。


図6

図6. 北大西洋ビンナガのMSYを基準とした相対親魚資源量(SSB/SSBMSY:上図)及び相対漁獲係数(F/FMSY:下図)の時系列(ICCAT 2013a)


図7

図7. Kobe plotで表す北大西洋ビンナガのMSYを基準とした相対親魚資源量(SSB/SSBMSY)と相対漁獲係数(F/FMSY)の1930〜2009年における推移(ICCAT 2013b)
黒線:資源状態の軌跡、黒点;2009年時の資源状態、青点;不確実性を示す。



漁業の概要

北大西洋のビンナガは、ビスケー湾でスペインのひき縄及び竿釣りによって、またアゾレス海域でスペイン及びポルトガルの竿釣りによって古くから漁獲されてきた。はえ縄による漁獲は表層漁業による漁獲よりも小さく、多くを台湾が占める(図1)。これら伝統的な漁法以外にも、1980年代後半以降から、新しい表層漁業である流し網や中層トロールによっても漁獲されるようになった。

北大西洋における年間の総漁獲量は1960年代中頃(約6万トン)をピークに、短い周期の増減を繰り返しながら徐々に減少している(図1)。これらの減少は主としてひき縄、竿釣り及びはえ縄といった伝統的な漁法の努力量の減少による。総漁獲量は1999〜2002年にかけて減少し、2.3万トンまで減少した。その後、表層漁業による漁獲量が増加して、総漁獲量は2006年に3.7万トンにまで回復した。しかし、2007年から表層漁業及びはえ縄の両方の漁獲量が大きく減少し、2009年には1.5万トンとなった。これは1950年以降で最低の漁獲量であった。2010年以降、漁獲量は増加傾向に転じ、2014年には過去5年で最も多い26,539トンを記録した。

スペインは北大西洋ビンナガの最大の漁獲国であり、古く(1950年代以前)からひき縄及び竿釣りで利用してきた(表1)。1950〜1980年代に1.5万〜3.5万トン、1990年代には1.3万〜2.6万トンを漁獲した。2000年代には2006年に2.5万トンを記録したが、2001、2002、2009、2011年において漁獲量は1万トンを下回った。2014年は11,607トンを漁獲している。

フランスのひき縄及び竿釣りは、かつてはスペインと同程度を漁獲していたが、漁獲量は徐々に減少し、1970年代には約1万トンになり、1980年代に漁業が衰退した。フランスは1990年以降それら漁業の代替として流し網及び中層トロールを行い、それぞれ0.2万〜0.3万トンを漁獲した。2005年の漁獲量は過去25年間で最高の7,266トンを記録したが、2005〜2009年の間、漁獲量は減少傾向を示し、2009年には1,122トンまで減少した。2010年以降は再び漁獲量は増加傾向を示し、2014年は6,716トンとなった。

アイルランドは1998年以降流し網から中層トロールへ漁法を転換し、1999年には4,858トンを漁獲したが、その後減少し、2003年以降は2か年の例外を除き漁獲量は0.1万トン以下で継続していたが、2011年には3,597トンを記録し、2012年は3,575トンを漁獲した。2013年以降、漁獲量はやや減少し、2014年には2,485トンを漁獲している。

日本のはえ縄は1960年代に1万数千トンを漁獲したがすぐに大きく減少し、1970年以降はクロマグロやメバチの混獲として0.02万〜0.1万トンを漁獲しているに過ぎなかった。2013年における漁獲量は1,745トンと過去25年で最も多い漁獲量となったが、2014年の年間総漁獲量は279トンと前年を大きく下回った。

台湾のはえ縄も日本と同様で、1970〜1980年代に1万〜2万トンを漁獲したが、対象種の変化により減少し、1990年代は0.2万〜0.6万トン、2000年代に入っても減少傾向は続き2007年以降は0.08万〜0.1万トン台の漁獲量となっている。2013年の漁獲量は2,394トンであり日本同様に過去5年間の平均漁獲量を上回ったが、2014年は947トンと前年を大きく下回った。

  

生物学的特徴

大西洋のビンナガは、大型魚の漁獲される海域及び稚魚の分布海域が南北で明瞭に分かれていること、また、標識放流結果においても南北交流の記録がないことから、南北で別々の系群が存在すると考えられている。ICCATでは、北緯5度線を南北両系群の境界として、それぞれを資源管理しており、北大西洋のビンナガはおよそ赤道〜北緯50度の広い海域に分布している(図2)。表層漁業(ひき縄、竿釣り、流し網)は、夏季にビスケー湾を中心とした海域及びアゾレス諸島海域で、索餌群(尾叉長50〜80 cmが多い)を対象としている。これらの魚群は、夏季に表層域を北東方向または北方へ回遊し、冬季には南西方向へ回遊する。近年ビンナガを主対象としたはえ縄は行われていないが、かつては北緯15〜25度で周年にわたり産卵群を、北緯25〜40度で秋冬季に索餌群を漁獲していた。産卵域ははっきりしないが、西部では北緯25〜30度で、中部から東部では北緯10〜20度で稚魚が出現している(西川ほか 1985)。なお、地中海でも産卵が見られる。索餌域は北緯25度以北と考えられる。

食性に関しては、胃内容物から魚類、甲殻類が多く出現しており、そのほかに頭足類も出現している(Ortiz 1987)。捕食者についてははっきりしないが、さめ類、海産哺乳類のほか、まぐろ・かじき類によって捕食されているものと思われる。

資源評価には、第一背鰭棘に見られる年輪を用いた年齢査定(Bard and Compean- Jimenz 1980)によって得られた成長式がよく用いられる(図3)。

     L(t)=124.7(1−e-0.23(t+0.9892))
         L: 尾叉長(cm)、t: 年齢

これによれば3歳で尾叉長75 cm、5歳で93 cm、7歳で104 cmに達する。尾叉長90 cmで50%が成熟するとされている。体長体重関係はSantiago(1993)により示されている。寿命は少なくとも10歳以上と思われる。
     w=1.339×10-5×l3.107
         w: 体重(kg)、l :尾叉長(cm)


資源状態

本資源の資源評価はICCATで行われている。2013年6月にビンナガ北大西洋系群の資源評価会合が行われた(ICCAT 2013a)。以下に、2013年10月のSCRS全体会合でとりまとめられた報告書(ICCAT 2013b)を中心として資源評価の内容を示す。


【資源評価】

資源評価は、Multifan-CLをベースモデルとし、その他にVPA、ASPIC、Stock Synthesisを比較対象のモデルとして用い、1930〜2011年のデータを用いた。Multifan-CLではベースケースを含む10通りの設定で資源評価が行われた(ICCAT 2013a)。

表層漁業のいくつかの漁業間でCPUEのトレンドは必ずしも整合してはいなかった(図4)。スペインのひき縄のCPUEはスペインの竿釣りに比べ過去30年間変化に乏しい。はえ縄のCPUEは1980年中盤までには減少し、その後、増減を繰り返しながら安定し、最近年においてわずかに増加した。2012年では日本のはえ縄のCPUEが急激に減少する一方で、台湾のはえ縄CPUEは増加している。このようなCPUEトレンドの不整合から、CPUEの分析では最近年の推移について結論は出せなかった。

Multifan-CLの結果では、1930年代から親魚資源量は減少し、現在ではピーク時(1940年代)の45%程度となっている(図5)。加入量は変動するものの1950〜1960年代は高く、その後2007年まで減少傾向を示した。2000年以降では2005年及び2011年に、1960年代に見られたものと同程度の高い加入があったと推定された(図5)。親魚資源量は1980年代中盤以降MSYレベルを下回った。2000年以降では親魚資源量は増加傾向を示し、2011年にはMSYをわずかに下回る状態であると推定された(図6)。漁獲圧は2000年代後半より減少傾向を示し、FMSYを下回って推移している(図6)。各シナリオより推定された各MSYの中央値は31,680トン、SSB2011/SSBMSYの中央値は0.94、F2011/FMSYの中央値は0.72であった。過剰漁獲でありかつ乱獲状態である確率(F/FMSY>1、SSB/SSBMSY<1)は0.2%、過剰漁獲ではないが、乱獲状態である確率(F/FMSY<1、SSB/SSBMSY<1)は72.4%、過剰漁獲・乱獲状態にない確率(F/FMSY<1、SSB/SSBMSY>1)は27.4%と推定された(図7)。

将来予測の結果より、将来の漁獲量が最近5か年(2.0万トン)以上またはTAC(2.8万トン)であった場合、資源量は2012年レベルより増加すると予測された。

漁獲管理方策は漁獲係数(Ftarget)をFMSYの0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、1.0倍の6通り、管理措置を導入する資源量の閾値(Bthreshold)はBMSYの0.6、0.8、1.0倍の3通り、BlimitをBMSYの0.4倍とし、これらの組み合わせを用いて2030年までの将来予測結果が示され、これを元に勧告がなされた。


【勧告】

将来予測の結果から、現行のTACレベル(2.8万トン)の継続は2019年までに資源が回復する(Kobe plotの緑の領域, F/FMSY<1、SSB/SSBMSY>1の状態)確率が53%であることが示された。現行の漁獲量(2.0万トン)を継続した場合、より速い期間(2016年まで)での資源の回復が見込まれ、2019年までに資源が回復する確率は75%である。3.2万トン以上の漁獲を行った場合は、将来予測の期間内に資源が回復する確率が50%を下回る。ICCATの委員会が10年以内に高い確率(75%)で資源が回復する目標を立てた場合、BthresholdをBMSYとし、Ftargetを0.9FMSYとすると10年間の累積漁獲量が最大(2.62万トン)となる。5年以内に60%の確率で資源の回復する目標を立てた場合も、累積漁獲量が最大になるのは同様の条件(Bthreshold=BMSY、Ftarget=0.9FMSY)の場合である。


管理方策

1998年までは努力量規制やTACによる規制等の管理措置は講じられてこなかったが、1999年から当該資源を漁獲対象とする漁船を登録し、入漁隻数が1993〜1995年の平均隻数に制限された。さらに2001年からTAC及び国別クォータが設定されるようになった。2013年に行われた資源評価の結果を受け、2014〜2016年のTACは2.8万トンに設定されている。日本については、北大西洋ビンナガの漁獲量が大西洋全体におけるはえ縄によるメバチの漁獲量の4%以下になるよう努力するという規制が課せられている(ICCAT 2014)。2015年の年次会合において、北大西洋ビンナガに漁獲決定ルール(HCR)を導入する勧告が」採択された。具体的には管理目標として「Kobe plotの緑の領域,(即ち F/FMSY<1、SSB/SSBMSY>1の状態)に少なくとも60%で資源を維持しつつ、長期間の漁獲量を最大化すること」及び「資源評価によって産卵親魚量がMSY(SSBMSY)を下回っているとSCRSが評価した場合、遅くとも2020年までの可能な限り早い段階で少なくとも60%の確率で資源をMSY水準以上の状態に回復することの2点を設け、目標を達成するための管理基準及びHCRを2016年のSCRSが検討、それに基づき、資源状態に応じた管理方策を委員会が予め設定することとなる(ICCAT 2015b)。


ビンナガ(北大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 増加*
世界の漁獲量
(最近5年間)
1.95万〜2.65万トン
平均:2.32万トン(2010〜2014年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
279〜1,745トン
平均:657トン(2010〜2014年)
管理目標 MSY:31,680トン
資源の状態 SSB2011/BMSY=0.94 [0.74〜1.14]
F2011/FMSY=0.72 [0.55〜0.89]
管理措置 入漁隻数の制限
TAC:2.8万トン
日本については漁獲量を大西洋全体におけるはえ縄によるメバチの漁獲量の4%以下とする努力義務
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2013年
次回の資源評価年 2016年
資源の状態における[]は95%信頼限界を示す。
*過去5年間の漁獲量の推移より判断

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

芦田 拡士・松本 隆之


参考文献

  1. Anon. (ICCAT) 2013a. Report of the 2013 ICCAT north and south Atlantic albacore stock assessment meeting (Sukarrieta, Spain - June 17-24, 2013). 115pp. http://www.iccat.es/Documents/Meetings/Docs/2013_ALB_ASSESS_REP_ENG.pdf(2014年2月24日)
  2. Anon. (ICCAT) 2013b. Executive summaries on species. ALB-Albacore. In ICCAT (ed.), Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain, September 30-October 4, 2013). 344pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2013-SCRS-REP_ENG.pdf(2013年10月24日)
  3. Anon. (ICCAT) 2014. Report for biennial period, 2012-13 PART II (2013) - Vol. 1 https://www.iccat.int/Documents/BienRep/REP_EN_12-13_II_1.pdf (2015年3月9日)
  4. Anon. (ICCAT) 2015a. Executive summaries on species. ALB-Albacore. In ICCAT (ed.), Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain, September 28-October 2, 2015). 351pp.  https://www.iccat.int/Documents/Meetings/SCRS2015/SCRS_PROV_ENG.pdf (2015年12月22日)
  5. Anon. (ICCAT) 2015b. Recommendation and resolutions adopted at the 24th regular meeting of the commission. https://www.iccat.int/Documents/08240-15_ENG.PDF(2015年12月22日)
  6. Bard, F.X. and Compean-Jimenez, G. 1980. Consequences pour l'evaluation du taux d'exploitation du germon Thunnus alalunga. Nord Atlantique d'une courbe de croissance debuite de la lecture des sections de rayons epineux. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 9(2): 365-375.
  7. 西川康夫・本間 操・上柳昭治・木川昭二. 1985. 遠洋性サバ型魚類稚仔の平均分布, 1956-1981年. 遠洋水産研究所Sシリーズ12. 遠洋水産研究所, 静岡. 99 pp.
  8. Ortiz de Zarate, V. 1987. Datos sobre la alimentación del atún blanco (Thunnus alalunga) juvenil capturado en el Golfo de Vizcaya. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 26(2): 243-247. http://www.iccat.es/Documents/CVSP/CV026_1987/no_2/CV026020243.pdf (2005年11月10日)
  9. Santiago, J. 1993. A new length-weight relationship for the North Atlantic albacore. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 40(2): 316-319.