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08 ビンナガ 南太平洋

Albacore, Thunnus alalunga

                                                                                   
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最近の動き

本種の最近の資源評価は2015年に太平洋共同体事務局(SPC)の専門家グループにより行われ、現在の漁獲は過剰漁獲の状態ではなく、資源も乱獲状態ではないとされた。同年の中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)科学委員会は、この結果を踏まえ、生物学的な限界管理基準値を下回ることを回避し、経済的に実現可能な漁獲率を持続するために、はえ縄の努力量と漁獲量を減少することを勧告した。


利用・用途

主に缶詰など加工品の原料として利用されてきたが、近年では小型魚を中心に刺身による消費が増加している。


図1

図1. 南太平洋におけるビンナガの国別漁獲量(データ: WCPFC 2015)


表1

表1. 南太平洋におけるビンナガの国別漁獲量(単位:トン)(データ:WCPFC 2015)


図2

図2. 南太平洋におけるビンナガの漁法別漁獲量(データ: WCPFC 2015)


図3

図3. 太平洋におけるビンナガの分布域と主な漁場。南北のビンナガは赤道で区分される。


図4

図4. 南太平洋ビンナガの年齢と体長(尾叉長、cm)の関係


図5

図5. 南太平洋ビンナガの漁獲分布(1988〜2014年)と海区区分(William and Terawasi 2015)
黒太字は海区、黄色:流し網、橙:ひき縄、緑:はえ縄を表す。


図6

南太平洋におけるビンナガの加入量推定値(Harley et al. 2015を改変)


図7

図7. 南太平洋ビンナガの産卵資源量の推定値(Harley et al. 2015を改変)


図8

図8. 南太平洋におけるビンナガの推定された漁獲係数の経年変化(Harley et al. 2015を改変)


図9

図9. 南太平洋のビンナガに関するF/FMSYとSB/SBf=0 (Harley et al. 2015を改変)


図10

図10. 漁業の影響評価(漁業がないと仮定した場合の資源量に対する各年資源量の比率)


漁業の概要

南太平洋ビンナガの漁獲は1950年代初めから始まり、1960年代までの漁業国は日本、韓国、台湾であった。年間総漁獲量は1960年から現在まで約2.2万〜8.9万トンの範囲を増減している。過去5年間(2010〜2014年)の漁獲量は6.6万〜8.8万トン、2014年の漁獲量は8.2万トンであった(表1)。近年の漁獲努力量と漁獲量の急激な増大に対して、南太平洋諸国からの懸念が高まっている。

主な漁業は、遠洋漁業国(日本、中国、韓国、台湾)及び島嶼国(フィジー、サモア、仏領ポリネシア)のはえ縄、とニュージーランド及び米国のひき縄で、竿釣りによる漁獲はわずかである(図1、表1)。はえ縄の漁場は南緯10〜30度、東経150度〜西経150度の中・西部熱帯・亜熱帯海域であり、尾叉長80 cm以上の産卵群(成魚)が漁獲される。ひき縄の漁場は南緯35〜45度、東経160度〜西経110度であり、尾叉長80 cm以下の索餌群(未成魚)が漁獲される。1990年代には、はえ縄によって2.1万〜4.4万トン、ひき縄によって3,400〜7,800トンが漁獲された(図2)。2000年代に入り、はえ縄の漁獲量は6万トン台に増加したが、ひき縄の漁獲量は6,455トン(2000年)から2,221トン(2014年)に減少している。

はえ縄の漁獲量を国別で見ると、1967年から2005年まで台湾が最も多く、1967〜1995年には1.0万〜2.7万トンであった。近年、一部の操業を北太平洋ビンナガあるいは中西部太平洋赤道域のメバチに移行したため、台湾の漁獲量は減少している。一方、島嶼国の漁獲量は急増し、特にフィジーは一時1万トンを超え、2006年には台湾を上回った。また、中国の漁獲量は2007年の0.5万トンから2008年の1.5万トンに急増、2013年は2.8万トンに達した。2014年の漁獲量は2.6万トンと若干減少したが依然として高く推移しており、最近年の総漁獲量の増加の主な要因となっている。日本のはえ縄については、1950年代終盤から1960年代半ばには1.7万〜3.5万トンの漁獲があり、全体の漁獲の大半を占めたが、1960年代終盤から減少した。漁獲量の大部分は、メバチを対象とした東太平洋のはえ縄での混獲物であり、南太平洋のビンナガ漁場で漁獲されたものは少ない。

はえ縄以外では、ニュージーランドのひき縄による漁獲が最も多く、1980年代が400〜4,400トン、1990年代には1,800〜5,300トンで、2000年以降は2,700トン前後で推移している。

その他、遠洋漁業国の大規模流し網は1983年頃から始まり、漁獲量は1987年までは1,000〜2,000トン程度であったが、1989年には2.2万トンを記録した。その後、1990〜1991年には大きく減少し、さらに国連決議により禁止されたため、公海における大規模流し網は1991年7月を最後に消滅した。


生物学的特徴

太平洋においてビンナガは、北緯50度から南緯45度の広い海域に分布する。この海域には、北太平洋と南太平洋の2系群が存在するとされている。これは太平洋の南北間で形態学的な差異があること、太平洋の赤道付近ではビンナガがほとんど漁獲されず赤道の南北をまたぐ標識再捕がほとんどないこと、産卵場が地理的に分離すること及び産卵盛期が一致しないことに基づいている。

南太平洋ビンナガは、およそ赤道〜南緯45度の豪州東岸から南米西岸にかけての広い海域に分布する(図3)。仔魚の出現から推定した産卵場は、南緯10〜20度の豪州北東沖〜西経120度付近までの中・西部熱帯・亜熱帯海域である。仔魚分布密度の季節変化及び生殖腺の成熟状況から推定した産卵期は、南半球の春・夏季にあたる10〜2月と考えられている(上柳 1969)。産卵域の物理環境的な特徴は、表層混合層が厚く、表層から水深250 m付近まで水温躍層が見られない高水温域である(水深50〜60 mで水温24℃以上、250 m付近で水温15℃以上)。性比は、90 cm未満の未成熟魚ではほぼ1:1であるが、成熟魚では雄の比率がかなり高くなる。

成長については、脊椎骨の輪紋読み取り結果より、以下の式より推定されている(Labelle et al. 1993)(図4)。最近、耳石及び背鰭棘の年輪に基づく年齢査定結果が報告され(Farley and Clear 2008)、より成長が早いと推定され、Multifan-CLにより推定された成長によく近似した。

     L(t)=121.0(1-e-0.134(t+1.922))
     L: 尾叉長(cm)、t: 年

成熟開始年齢は、満6歳、尾叉長約80 cmである。本種の寿命は、少なくとも12歳以上と見られる。

主要な餌生物は魚類(小型浮魚)・甲殻類・頭足類である。餌生物に対する選択性は弱く、生息環境中に多い餌を捕食するため、胃内容物組成は海域や季節によって変化する。索餌場は、主として中緯度(南緯30〜45度)の外洋域で、索餌期は南半球の夏季である。捕食者は、大型の外洋性浮魚類(まぐろ類、かじき類)、さめ類、海産哺乳類が知られている。


資源評価

本種の最近の資源評価は2015年にSPCの専門家グループにより、Multifan-CL(Fournier et al. 1998)を用いて行われ(Harley et al. 2015)、WCPFC科学委員会に報告された。前回(2012年)資源評価からの大きな変更点は、1. 対象海域が南太平洋全域からWCPFC海区の南太平洋、2. 漁業の定義が30から14へと減少、3. 海域が6海区から8海区に細分化(図5)、4. 時間間隔が年から四半期、5. 自然死亡率が0.4から0.3となったことである。資源解析に利用したデータは、漁獲量、はえ縄努力量(100鈎数)、サイズデータと標識データである。漁獲データは、流し網を除いて漁獲尾数が用いられた(流し網は漁獲量)。漁獲努力量は、はえ縄については枝縄100本、ひき縄及び流し網については操業日数が用いられた。成熟率は、2012年資源評価と同様に4歳までが0(未成熟)、5歳で0.23、6歳で0.57、7歳で0.88、8歳で1.0(全て成熟)と設定された。体長体重関係式Hampton(2002)から、成長はvon Bertalanffy成長曲線に近似するものとされた。

推定された加入量は横ばいの傾向を示し(図6)、推定された資源量は減少傾向を示した(図7)。親魚の漁獲係数(F)は、1970年代前半から1990年中頃まで低く推移し、その後増加した(図8)。2000年頃に急増し、それ以降高く推移している。未成魚のFは、1989年から1990年をピークに徐々に増加していた(図8)。

MSYは76,800トン(2012年:99,085トン)であり、近年の漁獲は約8.2万トンであった。同種の限界管理基準値(LRP)は、漁業がないと仮定した資源量の20%(20%SBF=0)とされており、現在の資源量は漁業が無いと仮定した資源量の41%であることが示された。FMSYに対する現在のFの比率(F2009-2013/FMSY)は0.39(同:0.21)と推定された(図9)。以上のことから、現在の漁獲は過剰漁獲の状態ではなく、資源も乱獲状態ではないとされた。漁業が資源に与える影響については、漁業によって異なるが10〜60%の範囲にあり、特に亜熱帯域における近年のはえ縄漁業が南太平洋のビンナガ資源へ大きく影響していることが示された(図10)。

この結果を踏まえ、WCPFC科学委員会は、漁業が経済的に存続できる漁獲効率を維持する資源量とするために、はえ縄漁業による死亡率と漁獲量を減少することを勧告した(WCPFC 2015b)。


管理方策

WCPFCにおいて、南緯20度以南の太平洋でビンナガを目的として操業する漁船隻数を2005年または過去5年間(2000〜2004年)の平均より増加させないことが2005年に合意されている(WCPFC 2005)。2015年には、船別漁獲量情報の提出(南緯20度以南水域で本種を漁獲した船が対象)が合意された(WCPFC 2015c)。


ビンナガ(南太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(過去5年間)
6.6万〜8.8万トン
平均:8.2万トン(2010〜2014年)
我が国の漁獲量
(過去5年間)
2,400〜5,400トン
平均:4,056トン(2010〜2014年)
管理目標 検討中
目標値 検討中
資源の現状 MSY=76,800
Fcurrent/FMSY=0.39
SBlatest/SBcurr, F=0=0.40
SBlatest/SB0=0.41
管理措置 南緯20度以南の漁船数を2005年または過去5年(2000〜2004年)の平均以下に抑制
管理機関・関係機関 WCPFC、SPC
最新の資源評価年 2015年
次回の資源評価年 2018年

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

清藤 秀理


参考文献

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