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06 大西洋クロマグロ 西大西洋

Atlantic Bluefin Tuna, Thunnus thynnus

                                                           
PIC

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最近の動き

大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)へ2014年に報告された漁獲量は1,630トンであった。ICCATでの最新の資源評価は2014年9月に行われたものである。科学委員会(SCRS)は大西洋クロマグロに関して2015年に3つの会議を開催し、次回以降の資源評価に向けて、生物学的データ及び資源評価手法を検討した。現在の管理の指標(MSY)に用いている2つの極端な再生産関係の仮定(高加入、低加入シナリオ)の解決が期待されているが、SCRSは解析並びに議論の結果、加入シナリオの高低についてはどちらかを選択できないと結論付けた。2015年のSCRSでは最近年の資源量指数の情報に基づき、2014年の資源評価と判断が変わらないことを確認した。SCRSの管理勧告を踏まえ2015年11月の委員会は、2014年の決定(Rec. 14-05)を継続し、2015年及び2016年の総漁獲可能量(TAC)を2,000トン(日本は346トン)とした。なお次回の資源評価は2017年に実施する予定である。


利用・用途

ほぼ全てが刺身やすし用途に用いられている。


図1

図1. 大西洋クロマグロの分布域(赤)と主要漁場(青)、産卵場(黄)
索餌場は産卵場を除く海域。縦太線は東西の系群の境界。


図2a 図2b

図2.大西洋クロマグロ(西系群)の年別漁法別漁獲量(上)と年別国別漁獲量(下)(ICCAT 2015d)
漁獲量には投棄分も含まれる。


図3

図3. 大西洋クロマグロ(西系群)の年齢あたりの体長と体重(ICCAT 2015d)
青は2010年の資源評価で更新された成長曲線、灰色の実線は更新前を示す。図中の矢印は成熟体長を表す。赤は2015年に更新された体重曲線、灰色点線は更新前を示す。


図4

図4. 大西洋クロマグロ(西系群)の資源評価に用いた主なCPUE(ICCAT 2015d)
2015年のSCRSで更新した値を示す。


図5

図5. 大西洋クロマグロ(西系群)の親魚資源量の経年変化(ICCAT 2015 a,b)
資源評価モデルでの推定親魚資源量。上下の点線間は80%信頼範囲。


図6

図6. 大西洋クロマグロ(西系群)の加入尾数(1歳魚)の経年変化(ICCAT 2015 a,b)
資源評価モデルでの推定加入尾数。上下の点線間は80%信頼範囲。最近年(2011〜2013年)の加入尾数の推定値は、推定精度が低いためマークを変えた。


図7

図7. 大西洋クロマグロ(西系群)の親仔関係(ICCAT 2015 a,b)
赤と青線は、将来予測に用いた2つの仮定を示す。”two-line”は低い加入、”Bev-Hold”は高い加入に相当する。


付表1

付表1. 大西洋クロマグロ(西系群)の国別暦年漁獲量(1970〜2014年)
(※漁獲量には投棄を含む;単位はトン)(データ:ICCAT 2015d)


付表2

付表2. 大西洋クロマグロ(西系群)の各年齢時の体長(cm;尾叉長)と体重(kg)(ICCAT 2015d)


漁業の概要

主な漁業国は、米国、カナダ及び日本である。日本の漁獲は、全てはえ縄によるものであり、米国及びカナダではロッド&リールと呼ばれる釣り漁業が主体である。小型魚(2-3歳魚)を漁獲する漁業は米国のスポーツフィッシングのみで、他の漁業は全て中・大型魚を漁獲する。大西洋クロマグロを対象とした日本のはえ縄漁業は、大西洋の熱帯域であるカリブ海からブラジル沖で1963年頃から開始され、年間数万トンを漁獲していたが数年でこの漁場は消滅した。この漁場に分布していた魚群が大西洋の東西どちらの系群に属していたかは不明であるが、現在の水域区分では主に西大西洋となる。その後はメキシコ湾が主要な漁場となった。1970年代の中頃からはニューヨークからカナダのニューファンドランド沖合(北米沖)が漁場に加わり、1982年にメキシコ湾での操業が禁止されて以来主要な漁場となっている(図1)。一般的な漁期はメキシコ湾が1〜5月、北米沖が11〜3月である。日本の漁期は11〜3月、米国の漁期は主に7〜11月で、カナダの漁期はやや遅れて8〜11月である。

漁獲量は、1981年までは5,000トン前後の水準にあったが、1982年に厳しい漁獲規制が導入され、1983年以降はほぼ2,500トン前後となっている(図2、付表1)(ICCAT 2015a, b)。2002年に、1982年以降で最大の3,319トンに達した後、漁獲量は減少し続け、2007年に1,638トンとなった。その後約2,000トンで推移し、さらに2011〜2014年のTACは1,750トン(我が国は301.64トン)に削減され、2014年の漁獲量は1,626トンであった。2015年以降のTACは2,000トンに設定された(ICCAT 2015c [Rec. 14-05])。2003年以降の漁獲量の減少は、米国漁業の不漁が原因である。カナダの漁獲量は安定しているが、セントローレンス湾で漁獲される魚の平均サイズが小さくなっていること、また近年のCPUEが著しく増加したことが報告されている。日本の漁獲量も安定的だが、2003年に前年までの漁獲枠超過分の調整として57トンに一時的に減少し、それ以降は350トン前後で推移している。日本は漁獲枠管理に、8月〜翌7月の漁期年を用いている。


生物学的特徴

本系群の成長は、これまで標識放流調査の結果から推定されていたが(Turner and Restrepo 1994)、2010年のICCATのSCRSにおいて、体長組成データ及び耳石の輪紋から推定した、より成長の遅い成長曲線に更新された(Restrepo et al. 2011)。2015年のSCRSにおいて、体長体重関係式(Parrack and Phares 1979)は主要な漁業国の科学オブザーバーによる膨大なデータから推定したものに更新された。成長曲線と各年齢の体長(尾叉長)及び体重(全重量)を図3と付表2に示す。各関係式は以下のとおりである。

(Restrepo et al. 2011)
          体重=0.0000177054体長3.001252 (Rodriguez-Marin et al. 2015)

本種は、大型個体では性別による体長の差が認められ、尾叉長255 cm以上の個体の60〜70%程度が雄である(Maguire and Hurlbut 1984)。最大体長(尾叉長)は3 m以上、寿命は32歳(Nielsen and Campana 2008)と考えられている(ICCAT 2011a)。本種の卵は分離浮性卵で、受精卵の直径は約1 mmである。産卵場はメキシコ湾にあり、5〜6月が産卵期である。成熟年齢に関する生物学的知見は不足しており、生殖腺と硬組織を用いた正確な成熟年齢の調査の必要性が指摘されている。なお、資源評価ではメキシコ湾での漁獲個体の体長に対応する年齢を便宜的に成熟年齢として用いている。2010年の資源評価では、成長曲線の更新に伴い、仮定される成熟年齢が8歳から9歳に引き上げられた(ICCAT 2011b)。この仮定は、本種の東系群の成熟年齢(4〜5歳)よりもかなり高齢である。2012年のSCRSでは、米国近海において5歳の成熟魚が分布することが報告され(Knapp et al. 2012)、西系群の成熟年齢が想定よりも早い可能性が示唆された。産卵数は、体長200〜250 cmの成魚で約3,400万粒と報告されている(Rodriguez-Roda 1967)。主な分布域は北緯30〜45度の海域であり、他のまぐろ類に比べてやや沿岸性が強い(ICCAT 2003)。

メキシコ湾で孵化した稚魚は、成長しながら沿岸に沿って北へ移動し、夏にはコッド岬あたりに達する。その後、北米沿岸からやや沖合域に分布し、冬期には南下(南限はおおよそ北緯30度)、夏期には北上する(北限は北緯50度)。標識放流の結果から一部個体(数%)が、東大西洋(ヨーロッパ沿岸、ノルウェー沖合)・地中海へ渡洋回遊することが知られている。アーカイバルタグ、ポップアップタグ等の電子標識を用いた移動・回遊行動の研究により、従来考えられていたよりも東西の移動が頻繁に生じていることが示されているが、正確な移動率の算出には至っていない(ICCAT 2002)。

本種の胃内容物には魚類や甲殻類、頭足類等の幅広い種類の生物が見られ、特定の餌料に対する嗜好性はないようである(Ortiz de Zarate and Cort 1986、Eggleston and Bochenek 1990、Uotani et al. 1990)。仔稚魚期には、魚類に限らず多くの外敵がいるものと思われるが、あまり情報は得られていない。遊泳力がついた後も、まぐろ類を含む魚食性の大型浮魚類により捕食されるが、50 cm以上に成長すると、外敵は大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に限られるものと思われる。

現在まで20年以上にわたり、大西洋クロマグロは西経45度線で東西2つの区域の別系群として分けて管理されてきた。しかし、1990年代以降に行われた通常標識や電子標識の放流再捕結果から、東西系群は北大西洋において混合して広く回遊を行うことが示された(Block et al. 2005)。また、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を指標として用い、地中海生まれの東系群は2〜3歳までに米国東岸へ回遊することが明らかになった(Dickhut et al. 2009)。さらに、耳石中心部分の酸素安定同位体比を用いた研究によると(Carlsson et al. 2007、Boustany et al. 2007)、地中海で漁獲された大型魚のほぼ全ては地中海生まれの東系群であった一方、西系群の漁場とされる米国東岸沖の索餌場で漁獲された未成魚(69〜119 cm)の62%は地中海生まれの東系群であり、大型魚(>250 cm)のほぼ全てはメキシコ湾生まれの西系群であったことが報告されている(ICCAT 2011a)。また、2012年に発表された研究では、標本数が限定的ではあるが、西大西洋での漁獲物(2〜6歳魚)に占める西系群の割合が年々低下していることが示された(Secor et al. 2013a)。これらの結果は、西大西洋での漁獲物には東系群の魚が含まれている可能性を示唆しており、西経45度で東西2つの系群に分けて管理する現在の方法を改善するためには、東西の混合率の推定が必要とされる。


資源状態

本系群の資源評価は、ICCATのSCRSにおいて、加盟国の研究者の共同作業で実施される。前述のとおり、漁獲魚をより正確に東西系群に分ける方法が確立されていないため、2014年9月に実施した資源評価では、過去の資源評価と同様に西経45度線で東西系群に分けて解析した。資源評価手法としては、年齢別漁獲尾数を基本データとし、資源量指数をチューニングに用いるADAPT VPAが用いられている。前回(2012年)の資源評価の設定に、近年2年間のデータを追加して、1970年から2013年までの年齢別漁獲尾数(1〜16+歳)と、はえ縄CPUE等12種類の資源量指数を入力データとし(図4)、ICCAT公認プログラムであるVPA-2BOX(Porch 2003a)を用いて資源評価を実施した。なお、成長曲線の更新(2010年)に伴い、プラスグループの仮定は10歳から16歳に変更されている。

推定された親魚資源量と加入尾数(1歳魚)をそれぞれ、図5と図6に示す(ICCAT 2015a, b)。親魚資源量は1970年代に約5万トンから2万トンに大幅に減少した後、1980年代から2000年頃までの期間に1970年代初頭の25〜36%水準(1.5万トン前後)で比較的安定していたと推定された。2000年以降、親魚資源量に増加傾向が見られ、2000年代半ば(約2万トン)から急激に増加し、2013年には約3万トン(1970年の59%)に到達した。加入量は、1970年代初頭には高い水準にあったが、1976年以降、2003年を除き、低い水準で推移している。2010年の資源評価では高水準と評価されていた2003年級の加入量(約19万尾)は、最新の資源評価においても前回(2012年)同様に2010年の資源評価よりも低く見積もられ、当該年級が2002・2003年級の両方で構成されるという結果となった。しかし、これは漁獲物の体長組成から年齢組成を推定する際、6歳以上の個体では年間成長量に比較して成長の個体差が相対的に大きくなることで隣り合う年級群の判別が不鮮明になる技術的な問題によるものであり、現実には2003年級の加入水準は高かったと認識された。2012年に発表された耳石を用いた資源構造解析結果は、西大西洋に分布する卓越した2003年級には西系群が貢献(49.2% ± 13.2% SD, N=39)していることを支持している(Secor et al. 2013b)。以上の結果から、現在の資源水準は中位、資源動向は、2003年卓越年級群が今後の資源を下支えすると予想されていることから、増加傾向と評価された。

資源評価で推定された加入尾数は、1976年を境に比較的高い水準から低い水準に移行している。1976年前後は親魚資源量が大幅に減少した時期と一致しており、親魚資源量が多い場合に加入量が増加する親仔関係の存在を示唆している。しかし、1976年以降も親魚資源量が減少し続けているにもかかわらず、加入量に親魚資源量との相関が全く見られないことから(図7)、本資源における親仔関係の存在には疑問も呈されている。このため、1) 親魚資源量の増減に関わらず加入尾数は1976年以降の低いレベルで一定(低い加入シナリオ)、または2)親魚資源量が増加した場合、加入尾数は1976年以前のレベルまで増加する(高い加入シナリオ)、という2つの再生産関係の仮定に基づきMSYを推定している(図7)。推定されたMSYは、仮定する再生産関係に大きく依存し、1)の低い加入シナリオを仮定した場合、2010〜2012年の平均漁獲死亡係数FはFMSYの0.20倍で、現在の親魚資源量はSSBMSYの2.25倍となる。一方、2)の高い加入シナリオを仮定した場合、2010〜2012年の平均FはFMSYの0.08倍で、現在の親魚資源量はSSBMSYの0.48倍となる。なお、2つの親仔関係を仮定した場合の2010〜2012年のF0.1の平均は0.12倍であった。

2019年までの将来予測には、上述の2通りの再生産関係を仮定し、ICCAT公認プログラムであるPRO-2BOX(Porch 2003b)を使用した。1)の仮定の下では、2018年まで毎年2,500トン以下の漁獲を行った場合に、2019年の親魚資源量がSSBMSYを超える確率が少なくとも60%を超えると予測された。一方、2)の仮定の場合は、回復目標であるSSBMSYの値が高くなるため、たとえ漁獲を0にしたとしても、1.5%以下しか回復目標を達成することができないと予測された。なお2015年のSCRSでは、最近年の資源量指数に関する情報に基づき、2014年の資源評価と判断が変わらないことを確認した(ICCAT 2015d)。

2013年以降、西クロマグロ資源評価支援のための行政官・研究者合同会議が毎年開催されている。会議では、資源評価精度向上のため、資源指標の改善を盛り込んだ調査計画案を検討してきた。近親遺伝解析(Close-kin analysis)、仔魚調査の充実、0歳魚のひき縄調査、ソナーによる音響調査、音響タグやポップアップタグを含む標識放流などが提案され、2015年は主に各国の指標改善の進捗状況を確認した(ICCAT 2015e)。また主要漁業国間の統合的な資源量指数の検討を実施することとなった。


管理方策

ICCATは1998年に、20年以内に少なくとも50%以上の確率で最適な資源状態(SSBMSY)に回復させるという計画を決定した(ICCAT 1999)。しかし、前述したように、仮定する再生産関係によってSSBMSYの推定値が大きく異なるため、回復目標を達成するための許容漁獲量は0〜2,500トンとなり、非常に不確実性が高い(ICCAT 2014b)。ただし、どちらの加入シナリオを用いた場合でも、漁獲量を2,250トン以下にすると、2019年までに現状またはそれ以上の資源量が得られるとした。また、現在の漁獲量(1,750トン)レベルの維持はより早い資源量の増加につながり、加入シナリオの検証にも役立つとした。本種の西系群と東系群は混合しており、東系群の資源量が西系群よりはるかに大きいため、今後の東系群の管理手段が西系群の回復に影響を与える可能性がある。

これらの結果に基づき、2014年11月にジェノバ(イタリア)で開催されたICCAT年次会合で、2015年及び2016年の総漁獲可能量(TAC)は、2,000トン(日本は346トン)と決定された(ICCAT 2014c [Rec. 14-05])。なお次回の資源評価は、2016年に東西系群の混合も考慮した新たなモデルを開発して実施する予定である。

他の規制として、SCRSが、幼魚加入の急激な減少など、西大西洋クロマグロ資源の崩壊の危機を認めた場合、漁業停止の義務化を決定している。また115 cm(または30 kg)未満の漁獲量制限(国別に漁獲量の10%未満とすること並びに小型魚から経済的利益を得ない方法を開始すること)、産卵場(メキシコ湾)における産卵親魚を対象とした操業の禁止及び漁獲証明制度が実施されている(ICCAT 2014c [Rec. 14-05])。


大西洋クロマグロ(西大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
1,484〜2,007トン
平均:1,820トン(2009〜2013年)
(投棄を含む)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
162〜578トン
平均:340トン(2009〜2013年)
管理目標 2018年内に50%以上の確率で親魚資源量をMSYを与えるレベルに回復
MSY:3,050 [2,807-3,307]トン*(低い加入)
    5,316 [4,442-5,863]トン*(高い加入)
資源の状態 SSB2013/SSBMSY:2.25 [1.92-2.68]*(低い加入)
            0.48 [0.35-0.72]*(高い加入)
F2010-2012/FMSY:0.36 [0.28-0.43]*(低い加入)
            0.88 [0.64-1.08]*(高い加入)
F2010-2012/F0.1:0.60 [0.50-0.72]*
管理措置 TAC:2,000トン(2015年)(日本枠:346トン)
115 cm(または30 kg)以下の魚の漁獲量制限(10%以下、国別)、漁場・漁期の制限(産卵場における産卵親魚の漁獲制限)、漁獲証明制度
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2014年
次回の資源評価年 2016年
* 括弧内は80%信頼区間を示す。

執筆者

くろまぐろユニット
みなみまぐろサブユニット
国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部 温帯性まぐろグループ

木元 愛・伊藤 智幸


参考文献

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