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05 大西洋クロマグロ 東大西洋

Atlantic Bluefin Tuna, Thunnus thynnus

                                                           
PIC

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最近の動き

大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)へ2014年に報告された漁獲量は13,240トンであった。ICCATでの最新の資源評価は2014年9月に行われたものである。科学委員会(SCRS)は大西洋クロマグロに関して2015年に3つの会議を開催し、次回以降の資源評価に向けて、生物学的データ及び資源評価手法を検討した。新たな生物学的知見として体長体重関係式が、主要な漁業国の科学オブザーバーによる膨大なデータから推定したものに更新された。2015年のSCRSは、更新された各種資源量指数より、2014年の資源評価と判断が変わらないことを確認し、2014年の委員会(Rec. 14-04)で示された総漁獲可能量(TAC)を超えなければ回復目標達成を阻害しないと勧告した。SCRSの管理勧告を踏まえ、2015年11月の委員会は2014年の決定を維持し、SCRSでの毎年の資源評価指数による判断を条件づけた上で、TACを2016年に19,296トン(1,608トン)とした。なお次回の資源評価は2017年に実施する予定である。


利用・用途

ほぼ、全てが刺身やすし用途に用いられている。ヨーロッパでは、卵巣の塩漬け(からすみ)や背肉の塩漬けとしても利用される。


図1

図1. 大西洋クロマグロ(東系群)の漁法別海域別公式漁獲量の推移(1950〜2014年)(ICCAT 2015c)
漁獲量には投棄分も含まれる。灰色は資源評価に用いた未報告漁獲量(1998〜2007年)を示す。


表1

表1. 大西洋クロマグロ(東系群)の各年齢時の体長(cm)と体重(kg)


図2

図2. 大西洋クロマグロ(東系群)の年齢あたりの体長と体重(ICCAT 2015c)

赤は2015年に更新された体重曲線、灰色は更新前の東大西洋と地中海を示す。図中の矢印は成熟体長を表す。
図3

図3. 大西洋クロマグロの分布域(赤)と主要漁場(青)、産卵場(黄)
縦太線は東西の系群の境界。索餌場は産卵場を除く分布域。


図4a 図4b

図4. 大西洋クロマグロ(東系群)の資源評価に用いたCPUE
2015年のSCRSで更新した値を示す(ICCAT 2015c)


図5

図5. 大西洋クロマグロ(東系群)の加入尾数(1歳魚)の経年変化
資源評価モデルで推定した親魚資源量。赤は公式に報告された漁獲量を用いた場合、青は1998〜2007年の実際の漁獲が公式に報告された漁獲よりも多かったとした場合(ICCAT 2015a,b)


図6

図6. 大西洋クロマグロ(東系群)の2〜5歳(左図)及び10歳以上(右図)の漁獲死亡率
資源評価モデルで推定した加入尾数。赤は公式に報告された漁獲量を用いた場合、青は1998〜2007年の実際の漁獲が公式に報告された漁獲よりも多かったとした場合(ICCAT 2015a,b)


図7

図7. 大西洋クロマグロ(東系群)の2〜5歳(左図)及び10歳以上(右図)の漁獲死亡率
赤は公式に報告された漁獲量を用いた場合、青は1998〜2007年の実際の漁獲が公式に報告された漁獲よりも多かったとした場合(ICCAT 2015a,b)


附表1

附表1. 大西洋クロマグロ(東系群)の海域別・漁法別漁獲量(2004〜2014年、ICCAT 2015d)(単位:トン)
漁獲量には投棄分も含まれる。


附表2

附表2. 大西洋クロマグロ(東系群)の海域別・国別漁獲量(2004〜2014年、ICCAT 2015d)
0は、0.5トン未満を表し、空欄は、未報告であることを表す。漁獲量には投棄分も含まれる。


漁業の概要

主な漁業国はスペイン、フランス、日本、イタリア、モロッコ、チュニジア及びトルコである。日本の漁獲は全てはえ縄による。スペインは定置網と竿釣り漁業とまき網、フランス及びイタリアは地中海でまき網で漁獲する。東大西洋(ビスケー湾、Santiago et al.2015)と地中海(Fromentin 2004)では小型魚(2〜5歳)の漁獲が知られている。地中海では、1990年代半ばより蓄養を目的としたまき網漁業が盛んになったが、2007年までのまき網漁獲量統計値の精度には疑問がある(ICCAT 2009)。

遺跡の発掘調査からは、紀元前7000年から地中海においてクロマグロが獲られていたことが明らかになっている(Desse and Desse-Berst 1994)。フェニキア人、その後、ローマ人によって西地中海一帯でクロマグロが漁獲された(Doumenge 1998、Farrugio 1981、Mather et al.1995)。この時代の主な漁法は手釣りと様々な種類の地引き網であった。クロマグロ漁業は中世に至っても盛んに行われていた。16世紀頃には、地引き網が次第に定置網に置き換わっていった(Doumenge 1998、Ravier and Fromentin 2001)。定置網では、およそ3000年から4000年前よりクロマグロの漁獲が行われており(Fromentin et al.2000)、17世紀以降、20世紀半ばまで1.5万トンから2万トンの漁獲があった(Fromentin 1999)。

20世紀の漁獲はICCATの公式漁獲統計によれば(図1、付表1)、1950年から1965年には、主に北東大西洋における定置網やまき網で年間3万トン前後が漁獲された。地中海におけるまき網やはえ縄などの漁業は、1960年代に開始された。地中海における主な漁業は、まき網及びはえ縄であり、特にまき網の漁獲が全体の6割から8割を占めている。北東大西洋における主な漁業は、はえ縄、定置網、釣り漁業である。

大西洋におけるクロマグロを対象とした日本のはえ縄漁業は、カリブ海からブラジル沖の熱帯域で1963年頃から開始され、年間数万トンを漁獲していたが、その漁場は数年で消滅した。この漁場に分布していた魚群が大西洋の東西どちらの系群に属していたかは不明であるが、現在の水域区分では主に西大西洋となる。その後は地中海及びジブラルタル海峡付近が主要な漁場となった。漁期は地中海が4〜7月(6月は禁漁)、ジブラルタル海峡付近では3〜6月であった。1990年以降、冬季の西経35〜45度、北緯35度以北(北大西洋中央部)の新漁場が開発された。さらに1998年以降にはアイスランドやフェロー諸島付近に8〜11月にかけて漁場が形成され、年間千トンを超える漁獲が記録されており、現在も日本のはえ縄の主要漁場となっている。

地中海西部(スペイン、モロッコ)の定置網では3〜7月が盛漁期である。地中海における現在のまき網の漁期は5月26日〜6月24日に制限されているが、規制強化前はフランス、イタリアでは6〜9月、トルコでは10〜2月、チュニジアでは1〜5月が盛漁期であった。

本種のICCATへの公式報告漁獲量は1990年代以降、1996年の約5万トンまで急増し、それ以降2009年までICCATが設定したTAC(2万〜3.6万トン)前後で推移してきた。増減の大部分は地中海での漁獲によるものである。しかしながら2008年にSCRSは、公式報告漁獲量には深刻な過少報告が存在することを指摘し、漁獲量規制が遵守されない状況がクロマグロ資源に明白な悪影響を及ぼすと警告した(ICCAT 2009)。このため2008年以降のSCRSでは、公式報告漁獲量が正しかった場合と、1998〜2007年の実際の漁獲量が公式報告漁獲量よりも多かった場合で計算を行い、これらの結果から資源状態を検討している。なおSCRSでは、2008年以降の漁獲量はより正確な報告がなされているとの前提のもと、公式報告漁獲量を資源評価に用いている。

実際の漁獲量が公式報告漁獲量よりも多かった場合について、地中海で操業する漁船数とCPUEに基づいてSCRSが推定した漁獲量(図1)は、1998〜2006年には約5万トン、2007年には約6.1万トン(公式報告漁獲量は3.5万トン)であった。2009年のSCRSでは、更に詳細なデータを用いて漁獲量の推定が行われた。新たに入手可能になったデータには貿易統計、登録漁船の名簿、漁船からの毎週の漁獲報告、蓄養生け簀の登録情報、VMSのデータが含まれていた。それによれば、2008年の漁獲量について、公式報告漁獲量が23,862トンであった(図1)のに対して、上述のような様々なデータを利用した最も確からしい推定値は25,760トンであり、また漁船の潜在的な漁獲能力からの最大推定値でも34,120トンであった。一方、2008年の漁獲量を、2007年漁獲量推定に用いた同じ方法で推定した場合には約68,600トンにもなった。2008年に推定した、2007年の推定漁獲量約6.1万トンが過大なものであった可能性が示唆される(ICCAT 2010a)。

ICCATは、大西洋クロマグロ東西両系群の国際取引を禁止するCITES(ワシントン条約)附属書Iへの掲載提案(2010年3月にCITES締約国会議において否決)を機に、2010年以降のTACを約1.3万トンとし、管理措置の強化に取り組んでいる。そのため漁獲量は一旦、過去最低水準となり、2013年及び2014年の公式報告漁獲量は13,244トン、13,243トンであった(ICCAT 2015c)。TACは2015年に約1.6万トンに増加し、さらに2017年までに約2.3万トンまで徐々に増加する見込み(ICCAT 2015d)。日本の漁獲量は、2010年以降1,100トン前後で推移しているが(付表2)、2015年の漁獲枠は1,345トンに増加した。日本はこの漁獲枠管理に、8月〜翌7月の漁期年を用いている。


生物学的特徴

 年齢は背鰭棘の輪紋から推定されており、大西洋クロマグロ西系群と同様に、成長につれて雄が雌より大きくなる。2015年のSCRSにおいて、従来の体長体重関係式(ICCAT 1984)は、主要な漁業国の科学オブザーバーによる膨大なデータから推定した関係式に更新された。成長式と各年齢の体長(尾叉長)及び体重(全重量)を図2と表1に示す。各関係式は以下のとおりである。
      Lt=318.85 (1-e-0.093(t+0.97))     (Cort 1991)
        体重=0.0000295体長2.898958     (<101cm)
      体重=0.000019607体長3.0092     (>100cm)

なお、近年のデータを含めて体長体重関係が再推定され、以下の関係式を将来の資源評価に用いることが合意された。

      体重=0.0000350801体長2.878451 (Rodriguez-Marin et al. 2015)

最大体長は約3.5 m、寿命は25〜30歳である。各年齢時の体長及び体重は、1歳で53 cm(3 kg)、3歳で98 cm(18〜19 kg)、5歳で136 cm(45〜51 kg)、10歳で204 cm(146〜176 kg)である(Cort 1991)(図2)。近年、耳石の輪紋分析を用いた本系群の年齢-体長関係の再評価が行われ、従来よりも遅い成長であることが示唆されていた。しかし、これは暫定的結果であることから、資源評価では従来通りの成長式が使用されている。

本種の卵は分離浮性卵で、受精卵の直径は約1 mmである。従来、マジョルカ島からシチリア島にかけての地中海で6〜8月に産卵すると考えられてきたが、近年、地中海東部海域でも本種の卵稚仔の分布が確認されていることから(Karakulak et al.2004、Oray and Karakulak 2005)、より広範囲に産卵場が形成されているものと考えられる。全ての雌が産卵を開始する年齢は5歳(130 cm)と考えられており、これは大西洋クロマグロ西系群に比べてかなり若い。産卵数は尾叉長200〜250 cmの成魚で2,000万〜3,800万粒と報告されている(Rodriguez-Roda 1967)。

主な分布域は北緯30〜45度の海域で(図3)、他のまぐろ類に比べて沿岸にも来遊する。地中海で孵化した稚魚は成長しながら地中海に広く分散する。一部はジブラルタル海峡を経てビスケー湾などの東大西洋に回遊する。ビスケー湾からは西大西洋の北米沖へ移動した例が通常型の標識放流結果から示されている。

現在まで20年以上にわたり、大西洋クロマグロは西経45度線で東西2つの区域の別系群として分けて管理されてきた。しかし、1990年代以降に行われた通常標識や電子標識の放流再捕結果から、東西系群は北大西洋において混合して広く回遊を行うことが示された(Block et al.2005)。また、ポリ塩化ビフェニル(PCB)を指標として用い、地中海生まれの東系群は2〜3歳までに米国東岸へ回遊することが報告されている(Dickhut et al.2009)。さらに、耳石中心部分の酸素安定同位体比を用いた最近の研究(Carlsson et al.2007、Boustany et al.2007)によると、地中海で漁獲されたクロマグロ大型魚はほぼ全て東系群であった一方、西系群の漁場とされる米国東岸沖の索餌場で漁獲された未成魚(69〜119 cm)の62%は地中海生まれの東系群であり、大型魚(>250 cm)はほぼ全てがメキシコ湾生まれの西系群であったことが報告されている(ICCAT 2011)。2012年に発表された研究では、標本数が限定的ではあるが、西大西洋での漁獲物(2〜6歳魚)に占める西系群の割合が年々低下していることが示された(Secor et al.2013)。これらの結果は、西大西洋での漁獲物には東系群の魚が含まれている可能性を示唆しており、西経45度で東西2つの系群に分けて管理する現在の方法改善するためには、東西の混合率の推定が必要とされる。

本種の胃内容物には魚類や甲殻類、頭足類等幅広い種類の生物が見られ、特定の餌料に対する嗜好性はないようである(Ortiz de Zarate and Cort 1986、Eggleston and Bochenek 1990、Uotani et al.1990)。仔稚魚期には、魚類に限らず多くの捕食者がいるものと思われるが、あまり情報は得られていない。遊泳力がついた後も、まぐろ類を含む魚食性の大型浮魚類により捕食されるが、50 cm以上に成長すると、捕食者は大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に限られるものと思われる。


資源状態

本系群の資源評価は、ICCATのSCRSにおいて、加盟国の研究者の共同作業で実施される。前述のとおり、漁獲魚をより正確に東西系群に分ける方法が確立されていないため、2014年9月に実施した資源評価では、過去の資源評価と同様に西経45度線で東西系群に分けて解析した。

SCRSは、資源評価で使われている漁獲量、漁業努力量及び漁獲物体長組成データの精度が大幅に改善されない限り、信頼できる資源評価結果を得るのは困難であると委員会に対して報告している。漁獲データが不十分であることは、とりわけ近年の資源状態の推定を困難にしている(ICCAT 2011)。資源評価手法としては、年齢別漁獲尾数を基本データとし、資源量指数をチューニングに用いるADAPT VPAが用いられている。

2014年9月に実施した資源評価では、ADAPT VPAを引き続き使用し、モデルの詳細は前回(2012年)の資源評価での設定を踏襲した。近年2年間のデータを追加して、1950年から2013年までの年齢別漁獲尾数(1〜10+歳)と、はえ縄CPUE等7種類の資源量指数(図4)を入力データとし、ICCAT公認プログラムであるVPA-2BOX(Porch 2003)を用いて資源評価を実施した。公式報告漁獲量が正しかった場合と、1998〜2007年の実際の漁獲量が公式報告漁獲量よりも多い場合による計算結果から資源状態を検討した。推定された親魚資源量(4歳以上、SSB)、加入量及び漁獲死亡率(2〜5歳及び10歳以上)をそれぞれ、図5〜7に示す(ICCAT 2015a,b)。親魚資源量は1970年代(約30万トン)より2000年半ば(約15万〜22万トン)まで減少し続けた後、近年は急激な増加傾向に転じたと推定された。ただし、推定された親魚資源量の増加速度や量には高い不確実性があると考えられている。公式報告漁獲量が正しかった場合、近年(2011〜2013年)の親魚資源量は過去最大時(約31万トン、1957〜1959年)の約175%(実際の漁獲量が公式報告漁獲量よりも多い場合は190%)であった(図5)。加入尾数(図6)は、1980年以前は比較的低い水準であったが、それ以降は高い水準と推定された。特に2004〜2007年の間に非常に強い卓越年級群が推定されたが、近年の高齢魚を対象としたCPUEから推定されており、その推定精度には疑問がある(ICCAT 2015a,b)。高齢魚の漁獲死亡率は、2000年以降に急増したが、2009年以降は漁業規制の影響で減少した(図7右図)。また若齢魚の漁獲死亡率は2003年以降に急減し、近年は30 kg未満の小型魚の漁獲制限の影響でさらに減少した(図7左図)。以上の結果は、2012年(前回)に行われた資源評価結果よりも楽観的であり、資源の水準は高位で、資源の動向は増加傾向と評価された。

2010年の資源評価では、資源回復目標(BMSYの代替値)が従来のSSBFMAX(FmaxでのSSB)からSSBF0.1(F0.1でのSSB)に引き上げられた。計算上、過去の加入量の推定値に基づき、高(1990年代)・中(1950〜2006年)・低(1970年代)の3段階の加入レベルを仮定したシナリオを検討している。公式報告漁獲量を用いた場合(1998〜2007年の実際の漁獲が公式報告漁獲量よりも多い場合)の推定された2013年の親魚資源量は、SSBF0.1と比較して、1)中加入レベルを仮定した場合は1.10(1.11)倍、2)低加入レベルを仮定した場合は1.60(1.74)倍、3)高加入レベルを仮定した場合は0.67(0.55)倍であった。また、2013年の漁獲死亡係数FはF0.1と比較して0.40(0.36)倍であった。

SCRSは2014年に、2022年までの将来予測を、2種類の漁獲量、3種類の加入レベルの仮定を組み合わせた計6シナリオで示した。将来の親魚資源量の推定には、非常に高い不確実性があるものの、漁獲量は最も予防的な3加入シナリオのうちで最小のMSY(低加入シナリオで約2.3万トン)まで増加可能であると勧告された。なお2015年のSCRSでは、最新のデータにより更新された各種資源量指数を確認の上で(図4)、2014年の資源評価と判断が変わらないことを確認した(ICCAT 2015c)。


管理方策

ICCATは2009年に、2022年までに60%以上の確率で最適な資源状態に回復させるという計画を決定した(ICCAT 2010b [Rec. 09-06])。2014年のSCRSによる勧告は以下の通りである(ICCAT 2015b)。まずSCRSは、近年の規制により明らかに漁獲量及び漁獲死亡が減少したこと、最近年の全ての資源量指数が上昇傾向であることを明記した。ついで2022年までに60%以上の確率でSSBF0.1を達成するとの管理目標について、現行の資源評価では定量的に評価しきれていない不確実性が含まれている懸念があり、将来の資源回復確率を定量的に示すことは困難としながらも、最も予防的なMSY程度の漁獲量(約2.3万トン)までであれば回復目標を達成可能と勧告した。なお、TACを増加する場合は急激な増加を避け、数年(例えば2〜3年)かけるべきであり、委員会は毎年、資源量指標(CPUE等)などに基づくSCRSのアドバイスを受けるべきであるとした。これらの結果に基づき、2014年のICCAT年次会合では、TACを2015年に16,142トン(日本枠は1,345トン)、2016年に19,296トン(1,608トン)、2017年に23,155トン(1,931トン)にすると決定した(ICCAT 2015d [Rec. 14-04])。

2015年のSCRSでは、2014年の委員会で定めたTACを超えなければ回復目標達成を阻害しないと勧告した(ICCAT 2015c)。これを受けて2015年11月にマルタで開催されたICCAT年次会合では、2014年の決定を継続することとした(ICCAT 2015e)。なお次回の資源評価は、これまでICCAT GBYP(大西洋クロマグロ拡大調査計画)を通して新たに収集された過去の漁獲量や漁獲物サイズ情報、生物学的知見を考慮して、2017年に実施する予定である。

蓄養魚では活け込み時の体長及びそこから推定される漁獲量に不確実性がある問題が指摘されており、SCRSはステレオビデオカメラによる蓄養魚活け込み時の体長測定技術の実用化を強く勧告している(ICCAT 2012, 2013)。これを受けて委員会では、2013年より全ての生簀においてステレオビデオカメラ、または同等の情報が得られる方法の導入を義務付けている(ICCAT 2014 [Rec. 13-07])。

ICCATでは様々な漁業規制を行っている(ICCAT 2015d [Rec. 14-04])。はえ縄の禁漁期は6月1日〜12月31日(ただし、地中海及び東部大西洋の一部(西経10度以西、北緯42度以北、及びノルウェーEEZ内)は2月1日〜7月31日)、まき網の禁漁期は5月26日〜6月24日(ノルウェーEEZ内は6月25日〜10月31日以外)が設定されている。また、各国の保存管理措置遵守確保の強化のため、漁業国及び蓄養(養殖)国が活け込み時にクロマグロの尾数及び重量を正確に確認してICCATに報告できない場合、クロマグロを放流することを義務付けている。この他の規制として、漁獲証明制度、小型魚を保護するため体重30 kg未満の漁獲・陸揚げ・販売の禁止(ただしビスケー湾の竿釣り、ひき縄、中層トロール、アドリア海の蓄養向けについては体重8 kg未満)、魚群探査のための航空機利用の禁止等がある。

日本は大西洋クロマグロを漁獲する自国はえ縄船に対して毎日の漁獲報告及び個別重量報告を義務付けている。これによって漁獲した全個体の個体別重量が得られ、また漁獲状況が毎日、即時的に得られるようになっている。さらに科学オブザーバーを乗船させ、詳細な操業データ、生物測定データ、耳石等の生物サンプルの収集を行っている(Japan 2015)。ICCATでの資源評価においてこれらの精度の高い基礎的科学データは重要であり、日本のはえ縄CPUEは主要な資源量指数として重視されている。


大西洋クロマグロ(東大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
1.0万〜1.3万トン
平均:1.2万トン(2010〜2014年公式報告漁獲量)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
1,089〜1,155トン
平均:1,120トン(2010〜2014年)
管理目標 2022年までに60%以上の確率で親魚資源量をMSYを与えるレベルに回復
資源の状態 SSB2013/SSBF0.1=1.10 [0.55-1.74] *
F2013/F0.1=0.40 [0.36-0.40] *
管理措置 TAC:1.93万トン(日本枠:1,608トン)(2016年)
地中海まき網禁漁期、東大西洋の一部と地中海はえ縄禁漁期、航空機使用禁止、蓄養魚管理強化、30 kg未満の小型魚の漁獲・陸揚げ禁止(一部例外あり)、漁獲証明制度
管理機関・関係機関 ICCAT
最新の資源評価年 2014年
次回の資源評価年 2017年
* 代表値は公式報告漁獲量が正しかった場合に、将来の加入量を過去の中位(1950〜2006年)加入レベルと仮定した場合を示し、括弧内は公式報告漁獲量が正しかった場合または1998〜2007年の実際の漁獲量が公式報告漁獲量よりも多い場合に、将来の加入量を3段階の加入レベルを仮定した場合の最小値及び最大値を示す。

執筆者

くろまぐろユニット
みなみまぐろサブユニット
国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部 温帯性まぐろグループ

木元 愛・伊藤 智幸


参考文献

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