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04 クロマグロ 太平洋

Pacific Bluefin Tuna, Thunnus orientalis

                                                         
PIC
左から順に大型魚、尾叉長60 cm、20 cm。

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最近の動き

2014年2月に行われた北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)の資源評価結果に基づき、中西部太平洋水域においては、1)歴史的最低水準付近にある親魚資源量(約2.6万トン)を2015年からの10年間で歴史的中間値(約4.3万トン)まで回復させることを当面の目標とする、2)30 kg未満の小型魚の漁獲量を2002〜2004年平均水準から半減させる、3)30 kg以上の大型魚の漁獲量を2002〜2004年平均水準から増加させないためのあらゆる可能な措置を実施する、等を内容とする保存管理措置が2014年の中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)第11回年次会合で採択された。

東部太平洋水域においては、1)商業漁業については、2015年及び2016年の年間漁獲上限3,300トンを原則とし、2年間の合計が6,600トンを超えないように管理する、2)30 kg未満の漁獲の比率を50%まで削減するよう努力し、2016年の年次会合において2015年の操業結果のレビューを行う、3)遊漁については2015年に商業漁業と同等の削減措置を取り、委員会に報告する、等を内容とする保存管理措置が2014年10月の全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)第87回会合(再開会合)で採択された。2015年のWCPFC第12回年次会合においては、同年に開催されたWCPFC第11回北小委員会で策定された加入量が著しく低下した場合に緊急的に講ずる措置を2016年に決定するとの勧告案が採択された。

日本国内においては、2010年に水産庁が公表した「太平洋クロマグロの管理強化についての対応」等に基づきさまざまな管理措置が実施されている。これに加え、WCPFCでの国際合意に基づき、2015年1月からは30 kg未満小型魚漁獲量を2002 年から 2004 年までの年間平均漁獲実績から半減(8,015トン→4,007トン)する措置が導入されており、大中型まき網漁業に対しては漁獲上限2,000トン、その他の沿岸漁業等(ひき縄、定置網、近海竿釣り等)に対しては漁獲上限2,007トンとし、沿岸漁業では全国を6ブロックに分けて管理されている。

また、2014年より、水産庁は、その年に生まれた太平洋クロマグロの加入量水準について、概ね9月(2015年以降は10月)、12月、翌年5月、及び翌年10月頃の計4回、モニタリングの結果に基づく予測の公表を始めた。


利用・用途

クロマグロは「本まぐろ」とも呼ばれ、成魚は寿司や刺身用の高級食材として利用されるものもある。また、0〜1歳の若齢魚は「めじ」または「よこわ」と呼ばれ、主に刺身用食材として安価に流通している他、養殖用種苗として利用されている。外国による漁獲の多くは数か月から1年の蓄養の後、日本向けに食材として輸出されている。


図1

図1. 太平洋クロマグロの国別漁獲量の推移(1952〜2014年)


表1

表1. 太平洋クロマグロの国別漁獲量(単位:トン、ISC 2015)


表2

表2. 2009〜2011年平均の0〜5歳魚の漁獲死亡係数(ISCでの2014年の資源評価の出力を編集した)


図2

図2. 太平洋クロマグロの漁法別漁獲量の推移(1952〜2014年)


図3

図3. 日本周辺における太平洋クロマグロの主な漁場分布


漁業の概要

本種の利用の歴史は古く、日本沿岸では縄文時代から利用されてきた(Kishinouye 1911, 1923、渡辺 1973)。公式な統計としては、「まぐろ類」の漁獲量として水産事項特別調査(1891年)や農商務統計表(1894年)に報告があり(岡本 2004、Muto et al.2008)、漁獲の大半が沿岸漁業であることからその多くが本種であると推測される。1920年代からは、北海道南東沖で流し網による漁獲が盛んになり、多い年で1万トン以上の漁獲を記録している(川名 1934、Muto et al.2008)。東部太平洋では1918年から記録があり、1935年には1万トンを超えたが、その後は急速に衰退した(Bayliff 1991)。台湾沖では1930年代から第二次大戦中まで本種を対象としたはえ縄漁業があり、3,000トンを超える漁獲があった(中村 1939、矢崎 1943、台湾総督府農商局水産課 1945、Muto et al.2008)。

本種の年間漁獲量は0.9万〜4万トンの間で変動している(表1、図1)。1981年に3.5万トンを記録した後、1988年に0.9万トンまで落ち込んだ。漁獲の多くがまき網やひき縄で漁獲される未成魚であるため、加入変動が漁獲量変動の要因の一つと考えられている。

2000年代以降の漁獲量は1.1万〜2.9万トンの間で推移している。近年は資源の減少に伴い漁獲量も減少傾向にあり、2008年の2.5万トンから2013年には1.1万トンまで半減した(図1)。直近5年(2010〜2014年)の漁獲量は、北西太平洋で0.7万〜1.4万トン、東部太平洋で0.3万〜0.8万トンと推定されている。2000年代前半の好調な漁獲は、加入の水準が比較的高かったことと、メキシコ及び日本での養殖の発展等による需要の増加に支えられ、本種を狙う努力量が増加したことが原因であると推測される。2000年代半ば以降は、はえ縄による大型成魚(100 kg以上の大型(もしくは高齢)の成魚)の漁獲が親魚資源の減少に伴って継続的に減少し続けている。また、まき網による30〜50 kg程度の成魚の漁獲も減少し、その後、低加入の影響によりまき網とひき縄を中心とする未成魚の漁獲も減少している。

2014年の総漁獲量は約1.7万トン(暫定値)で、過去5年間(2009〜2013年)の平均漁獲量1.6万トンをわずかに上回った。2014年の各国漁獲量は、日本9,605トン、韓国1,311トン、台湾483トン、米国804トン、メキシコ4,862トンと見積もられている。

現在、本種は様々な漁法及び漁場で漁獲されている(図2、3)。日本周辺の沿岸域ではひき縄で未成魚が、定置網により未成魚と成魚が、また沖合域ではまき網により夏季から秋季に未成魚と成魚が漁獲されており、漁法別漁獲量はおおよそひき縄が1,000トン、まき網が5,500トン、定置網が1,900トンであった。台湾東沖から奄美諸島周辺域にかけては、春季にはえ縄で成魚が漁獲されている。東シナ海から日本海南西部にかけては、1990年以降、まき網による未成魚の漁獲が増加している。東部太平洋では、メキシコが5〜10月にまき網で漁獲しており、そのほとんどが養殖種苗となっている。

各国の漁業概要は以下のとおりである。


【日本】

まき網、はえ縄、ひき縄、竿釣り、定置網、一本釣り等により漁獲している。1993年以前には公海域で流し網でも漁獲していた。1952年以降、年間漁獲量は0.6万〜3.4万トンの間を変動しているが、過去10年は0.6万〜2.2万トンであり、その内の約半分はまき網により漁獲されている。まき網の主な漁場は、かつては夏期の三陸沖であったが、1980年代初頭より日本海南西部でも成魚の漁場が形成され、2000年代後半からはまき網による成魚の漁獲の大半は日本海で行われている。現在、日本海におけるまき網漁業は3〜5歳魚を主に漁獲しており、6月初旬より日本海北東部に漁場が形成され、6月下旬以降になると漁場は日本海南西部に移動する。また、まき網は1990年代初頭からは、東シナ海北部から日本海西部の海域にかけて0、1歳魚を中心とした未成魚も漁獲している。また、2000年以降は、ひき縄による養殖種苗用の0歳魚の漁獲が増加している。


【韓国】

主にまき網により済州島から対馬にかけての海域で漁獲しているが、表中層トロールでもわずかに漁獲している。近年は済州島周辺でひき縄でもわずかに漁獲が報告されている。漁獲量は1982年以降報告されており、2000年以降は600〜2,600トンで推移し、最大漁獲量は2003年の2,600トンである(表1)。


【台湾】

台湾東沖に広がる産卵場で小型はえ縄が200 cm以上の産卵親魚を漁獲している。過去にはまき網でも稀に混獲されていた。近年の漁獲量は減少傾向で、1999年の3,100トンから2008年には1,000トンを下回り、2012年には210トンまで減少したが、2014年には480トンまで持ち直した。以前は日本へも輸出していたが、近年はほとんどが台湾で消費されている(表1)。


【米国】

近年はまき網による漁獲量が大きく落ち込む一方、遊漁による漁獲の増加が目立っている。まき網漁獲量の減少は、1980年代にメキシコが排他的経済水域を導入したことで、まき網船がカリフォルニア半島沿岸から閉め出されたことが大きい。近年の漁獲量は、1994年級群に支えられた1996年のピーク(4,700トン)以来減少し、2007年には約60トンになった。しかしその後はカリフォルニア南部からカリフォルニア半島の沿岸水域にかけて、まき網による偶発的な漁獲が報告されている。2010年以降、メキシコの排他的経済水域に入域できる遊漁で年間500トン強程度の好調な漁獲が続いていたが、2014年には前年の800トンから半減した。


【メキシコ】

キハダ、カツオを対象としたまき網がカリフォルニア半島沿岸で本種も漁獲している。まき網の全漁獲量に占める本種の割合は非常に小さいが、蓄養向けの需要が増加しており相対的に重要度が増している。また、総漁獲量に対するメキシコの割合は近年大きくなっている。漁獲量は1980年代に120〜680トンであったが、1989年以降0〜9,800トンと大きく変動している(図1)。2000年以降は、キハダの不漁に伴い、蓄養種苗向けに本種を対象とする操業が増加している。メキシコの漁獲量は東部太平洋への来遊量に左右されるが、近年は漁獲量規制により管理されている。2014年には、5,000トンの漁獲枠に対し4,862トンの漁獲量を記録した(表1)。

図4

図4. 太平洋クロマグロの分布と回遊の概念図


図5

図5. 太平洋クロマグロの産卵場の概念図


図6

図6. 太平洋クロマグロの尾叉長・体重と年齢との関係
2012年実施の資源評価では0歳時点の尾叉長を21.5 cmに固定して再推定した成長式(ISC 2012)を用いている。


図7

図7. 資源評価で仮定した年齢別の自然死亡係数と成熟率


図8a

図8b

図8. 日本の春期の南西諸島海域の沿岸まぐろはえ縄の太平洋クロマグロのCPUE(上図)、日本の冬期の対馬・五島海域のひき縄のCPUE(下図)。両図とも、実線は2012年の資源評価で使用した資源量指数(CPUE)の観測値、破線は、2014年の資源評価での資源評価モデルによる推定値。各CPUEは標準化した後、比較のためデータ期間の平均値で除して正規化し重ね描きした。日本の沿岸・近海と台湾のはえ縄のCPUE (上図)は高齢魚、五島周辺・対馬海峡のひき縄CPUE(下図)は0歳魚を中心とする若齢魚の資源量指数として用いられている。(ISCでの2014年の資源評価の出力を編集した)


図9

図9. 資源評価で推定された太平洋クロマグロの親魚資源量と加入量の関係
近年3年(2010〜2012年)は赤で強調している。(ISCでの2014年の資源評価の出力を編集した)


図10

図10. 太平洋クロマグロの親魚資源量(1952〜2012年)(上図)と加入量(1952〜2012年)(下図)のトレンド
赤色の実線が最尤法による点推定値、マーク付の実線、上下の点線がパラメトリックブートストラップ法により計算した結果の中央値と90%信頼区間の端点。 2012年(資源評価の最近年)の加入量の推定値は、推定精度が低いため、資源評価では使用されていない。(ISCでの2014年の資源評価の出力を編集した)


図11

図11. 1990年以降の0〜5歳魚の漁獲死亡係数(ISCでの2014年の資源評価の出力を編集した)


図12

図12. 資源評価モデルで推定された年齢別漁獲尾数の経年変化(上図)、1990年以前と1991年以降の年齢別漁獲尾数の平均の違い(下図)(ISCでの2014年の資源評価の出力を編集した)


図13

図13. WCPFCがISCに委託した親魚量の将来予測結果
グラフはシナリオごとの6千回のシミュレーション結果の中央値であり、計算結果の半数はこれよりも低い。加入レベルは、当初10年間は80年代の低レベル、その後は過去平均レベルを想定。2014年から10年以内(2024年まで)に歴史的中間値を達成する確率は、小型魚25%削減の場合は16%、小型魚50%削減の場合は85%である(図はISC評価結果に基づき水産庁監修の下編集)。



生物学的特徴

【分布と回遊】

太平洋に分布するクロマグロThunnus orientalisは、かつては大西洋に分布する大西洋クロマグロThunnus thynnusの地理的亜種とされていたが、現在では分子遺伝学的研究等により両種を別種とする意見が多い(例えばCollette 1999)。漁業資源としても両者には地理的な交流が認められないことから、ISC、IATTC及びFAOにおいては前者をPacific Bluefin Tuna(太平洋クロマグロ)、後者をAtlantic Bluefin Tuna(大西洋クロマグロ)と呼称し、別資源として扱っている。

本種は主に北緯20〜40度の温帯域に分布するが、熱帯域や南半球にもわずかながら分布がみられる(図4)。産卵期及び産卵場は、4〜7月に南西諸島周辺海域を中心とした日本の南方〜台湾の東沖、7〜8月に日本海南西部と考えられている(米盛 1989)(図5)。0〜1歳魚は、夏季に日本海または太平洋側の日本沿岸を北上し、冬季に南下する(Inagake et al. 2001、Itoh et al. 2003)。2〜3歳魚は北西太平洋を主な分布域とし、春季に黒潮続流域を西進、夏季に三陸沖を黒潮分派に沿って北上、秋季に親潮前線に沿って東進、冬季に日付変更線付近で黒潮続流域に向かって南下、という海洋構造に応じた時計回りの回遊パターンを示すことがアーカイバルタグ調査から示された(Inagake et al. 2001)。しかし、個体によっては日付変更線付近まで移動しない場合や、半年〜数年間沿岸の同一箇所に滞在し続ける場合もあり、個体ごとの回遊パターンに大きな違いが認められる。未成熟魚の一部には、太平洋を横断して東部太平洋に渡り、北米西岸を南北に回遊をしながら数年滞在した後、産卵のために西部太平洋へ回帰するものがあることも知られている。産卵後に、親魚の多くは北太平洋北部の沖合に索餌回遊するが、一部の親魚は、さらに南方あるいは黒潮沿いに東方へ移動することがポップアップタグによる調査で示されている(伊藤 2006)


【成長と成熟】

近年の耳石を用いた研究により年齢と成長に関する知見が蓄積され、高齢魚の年齢推定が大幅に改善された (Shimose et al.2008、Shimose et al.2009)。2013年11月には太平洋クロマグロと北太平洋ビンナガの年齢査定に関するワークショップが開催され、両種の年齢査定技術の確立が図られた(ISC 2013a、Shimose and Ishihara 2015)。本種は、若齢期に急激に成長して5歳で尾叉長150 cmに達し、それ以降は成長速度が遅くなって9歳で200 cm、13歳で極限体長の90%である225 cmになる(図6)。寿命は20歳以上と考えられる。漁獲物の最大体長は300 cm以上に達する。しかし、成長式から計算された若齢魚の体長と漁獲物測定データのモード(最頻値)とが一致しないことが多く(Ichinokawa 2008)、5歳前後までの成長式については改善の余地がある。

本種は一産卵期に数回産卵する多回産卵魚であり、卵は直径約0.7〜1 mmである。産卵数は体長に伴って増加する(Chen et al.2006)。個体ごとの産卵継続期間や産卵回数などは不明であるが、本種の産卵間隔は台湾近海では平均3.3日(Chen et al.2006、Ashida et al.2015)、日本海では平均1.1〜1.2日(Tanaka 2011、Okochi et al.2016)と報告されている。産卵水温は、台湾〜南西諸島近海では表層水温約26〜29℃と報告されている(Chen et al.2006、Suzuki et al.2014)。一方、日本海における産卵開始水温は20℃前後(Tanaka 2011、Okochi et al.2016)と南西海域での水温より低いことが報告されている。成熟サイズについては、日本海では産卵期に漁獲された体重30 kg程度(約3歳魚に相当)の標本の約8割が成熟していたが(Tanaka 2006)、東部太平洋では同サイズの個体による産卵は確認されていない。また日本の南方〜台湾東沖で漁獲されるのは、ほとんどが体重60 kg以上(5歳以上に相当)の成熟個体である。以上の知見に基づき、現在の資源評価では、3歳で20%、4歳で50%、5歳以上で100%を成熟割合としている(図7)。


【自然死亡係数】

本種の自然死亡係数は若齢魚で高く、その後低下すると考えられている。しかし、0歳魚の自然死亡係数について通常標識から若干の知見が得られている他は、信頼できる推定値がない(Takeuchi and Takahashi 2006)。そのため、資源評価で用いられる自然死亡係数は、若齢魚については、通常標識による推定値(0歳魚、Takeuchi and Takahashi 2006)、同様の水温帯に分布して生活史が類似しているミナミマグロで通常標識を用いて推定された値(1〜3歳魚、Polacheck et al. 1997、ISC 2008b) が用いられ、高齢魚については、Pauly(1980)の経験式から推定した値(0.25、図7、ISC 2008b)が用いられている。


【食性】

後期仔魚は、カイアシ類 (卵、ノープリウス幼生を含む)を主な餌とするプランクトン食性である。主に日中に摂餌し、夜間は摂餌を休止するという、顕著な日周変動がみられる(米盛 1989、Uotani et al.1990)。全長5 mm未満の仔魚はカイアシ類のノープリウス幼生を主に摂餌するが、全長5 mm以上では遊泳力の向上に伴ってより大型のカイアシ類を摂餌するようになる(Uotani et al.1990)。全長7〜8 mm程度になると魚類仔魚を捕食し始め、それに伴って魚体は急激に成長する(Tanaka et al.2014)。20〜60 cmの当歳魚は、日本海ではホタルイカモドキからキュウリエソに、太平洋では甲殻類幼生からいわし類へと、成長に伴い食性を変化させる(Shimose et al.2012)。成魚の胃袋からは、いか類の他、とびうお類、きんときだい類、カツオなど魚類が多く見られる。いずれにしても特定の魚種を選択的に捕食するのでなく、その海域に多い生物を機会に応じて捕食しているとされている(山中 1982)。また幼魚のときには他のまぐろ類に捕食され、大型魚はごく稀にシャチやさめ類に捕食される(山中 1982)。


資源状態

2014年2月、ISC太平洋クロマグロ作業部会において資源評価の更新が行われ、その結果は同年3月のISC臨時会合で承認、4月に公表された(ISC 2014a, ISC 2014b)。その結果を以下に示す。


【資源解析】

資源評価では、統合モデルのStock Synthesis(SS、Methot 2000, 2010)を用いた。使用したデータは、漁期年で1952年(1952年7月)から2012年(2013年6月末)までの四半期別・漁法別漁獲量、各漁業による漁獲物の体長頻度データ及び標準化された資源量指数である。資源評価では漁期年(7月〜翌6月)を使用した。資源量指数は、大型魚として日本の南西諸島海域の沿岸のはえ縄 CPUE(1993〜2012年)、日本の近海はえ縄CPUE(1952〜1992年)、台湾のはえ縄 CPUE(1998〜2012年)、0歳魚について五島周辺・対馬海峡で漁獲が行われるひき縄 CPUE(1980〜2012年)を使用した(図8)。生物学的パラメータは、成長式(ISC 2012d)と体長・体重関係式(Kai 2007)(図6)、年齢別の自然死亡係数や成熟率(図7)等を使用した。SSでは、最尤法により漁獲物の体長頻度分布、漁獲量、資源量指数から漁法別の選択曲線、年齢別漁獲尾数、年齢別の個体数、産卵親魚量等の資源量を推定している。


【資源状態】

親魚資源量は、1960年前後、1970年代後半、1990年代中頃にピークを示す一種の周期的な変動傾向を示している(図10上)。親魚資源量が歴史的に最大となったのは1960年代で、日本沿岸のはえ縄の資源量指数(図8上)と同じ傾向を示している。ここ10年の資源量と親魚資源量は、1990年代中ごろのピークから2012年まで徐々に減少した。最近年(2012年)の親魚資源量は約2.6万トンで、評価期間(1952〜2012年)の最低値に近い水準となった。加入量は親魚資源量とは独立に年変動しており(図9)、2009年以降は低加入が続いている(図10下)。直近年(2012年)の加入の推定値は、1952年以降で8番目に低い低水準であり、近年5年間(2008〜2012年)の加入の平均は、過去の平均的な加入の水準を下回っていた。

漁獲圧は、歴史的に若齢魚(特に0〜2歳)に対してとても高く、2009〜2011年の平均の漁獲死亡係数は、2007〜2009年よりは減少したもののISCの保存勧告とWCPFCの規制の基準年である2002〜2004年の平均を上回った。特に3〜5歳の漁獲死亡係数の増加率が目立った(図11、表2)。漁獲尾数で見ると、2歳以下の魚が全漁獲の95%以上を占めていると推定され、1991年以降増加傾向にある(図12)。

以上を踏まえ、本種の資源状態は1)最近年(2012年)の親魚資源量(約2.6万トン)は歴史的最低水準(約1.9万トン)近くまで減少しており、2)最近年(2012年)の加入も極めて低水準である、とされた。


【将来予測】

WCPFCの要求(WCPFC 2013)に対応して、2014年時点のWCPFC及びIATTCの保存管理措置の継続を含む漁獲削減オプション毎の親魚資源の将来予測を実施し、2015年以降の保存管理措置を検討した。その結果、近年の低水準の加入が今後も継続する場合、現行のWCPFC及びIATTCの保存管理措置では親魚資源量の増加は期待できず、歴史的最低水準を割り込むリスクが増加すること、30 kg未満小型魚の漁獲量を2002〜2004年水準から半減させた場合のみ親魚資源の回復が望めることが示された(図13)。


【保存勧告】

これらを踏まえISCは、1)親魚資源量は歴史的最低水準にあり、殆ど全ての生物学的基準値を超えた高い率で漁獲されている、2)最近の低加入が継続すれば現在のWCPFC及びIATTCの保存管理措置では親魚資源の増加は期待できず、歴史的最低水準を割込むリスクが増加する、3)上記を踏まえ、親魚資源量が歴史的最低水準を割込むリスクを低減するため、全ての年齢の未成魚の漁獲死亡率及び漁獲の更なる削減を検討すべき、4)未成熟の全個体について未成魚削減を検討すべき、5)親魚資源量が低水準にあること、加入の不確実性並びに資源量への影響の重要性を考慮し、加入動向を迅速に把握するための加入モニタリングを強化すべき、を内容とする保存勧告をまとめた(ISC 2014a, 2014b)。

水産庁は、2013年7月及び2014年7月のISCの勧告(ISC 2013b, 2014b)に基づき、国立研究開発法人水産総合研究センターと協力し、太平洋クロマグロの加入動向を迅速に把握するためのモニタリングを強化しており、2014年からは、その年に生まれた太平洋クロマグロの加入量水準について、9月、12月、翌年3月、翌年10月の計4回、モニタリングの結果に基づく予測を公表することとしている(水産庁 2014a, 水産庁 2014b)。


管理方策

保存管理措置は、WCPFCでは2010年、IATTCでは2012年から実施されている。

ISCの資源評価を受け、中西部太平洋水域においては、2014年9月のWCPFC第10回北小委員会で、1)歴史的最低水準付近にある親魚資源量(約2.6万トン)を2015年からの10年間で歴史的中間値(約4.3万トン)まで回復させることを当面の目標とする、2)30 kg未満の小型魚の漁獲量を2002〜2004年平均水準から半減させる、3)30 kg以上の大型魚の漁獲量を2002〜2004年平均水準から増加させないためのあらゆる可能な措置を実施する、等を内容とする保存管理措置案が合意され、同年12月のWCPFC第11回年次会合で採択された(水産庁2014c, 水産庁2014d)。東部太平洋水域においては、2014年10月のIATTC第87回会合(再開会合)において、1)商業漁業については2015年及び2016年の年間漁獲上限3,300トンを原則とし、2年間の合計が6,600トンを超えないように管理する、2)30 kg未満の漁獲の比率を50%まで削減するよう努力し、2016年の年次会合において2015年の操業結果のレビューを行う、3)遊漁については2015年に商業漁業と同等の削減措置を取り、委員会に報告する、等を内容とする保存管理措置が採択された(水産庁2014e)。2015年12月のWCPFC第12回年次会合においては、同年9月に開催されたWCPFC第11回北小委員会で策定された加入量が著しく低下した場合に緊急的に講ずる措置を2016 年に決定するとの勧告案が採択された(水産庁 2015c)。

国内においては、水産庁が2010年5月に公表した、未成魚の漁獲を抑制・削減し、大きく育ってから獲ることにより、太平洋クロマグロの資源管理を推進すること、資源変動の大きい本種の親魚資源量が中長期的(5〜10年)に適切な変動の範囲内に維持され、これまでの最低水準を下回らないよう管理していくことを基本的な対応とする「太平洋クロマグロの管理強化についての対応」等に基づき、1)まき網漁業の漁獲量削減、2)ひき縄等の沿岸漁船の届出制(更に、2014年4月以降は承認制)移行及び漁獲実績報告の義務化、3)クロマグロ養殖場の登録制及び実績報告の義務化、4)天然種苗を用いるクロマグロ養殖場の数・生け簀の規模の拡大防止、等の管理措置が導入されている(水産庁 2010a, 水産庁2011)。これに加え、WCPFCの決定を受け、2015年1月から30 kg未満小型魚漁獲量の半減(8,015トン→4,007トン)に取り組んでおり、大中型まき網漁業に対しては漁獲上限2,000トン、その他の沿岸漁業等(ひき縄、定置網、近海竿釣り等)に対しては漁獲上限2,007トンとし、沿岸漁業を全国6ブロックに分けて管理している。さらには、「まぐろ資源の保存及び管理の強化に関する特別措置法」に基づき国内の流通業者(輸入業者、卸売業者)から韓国産及びメキシコ産の太平洋クロマグロの輸入情報を収集する取組が行われている。


クロマグロ(太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
1.1万〜1.8万トン
平均:1.6万トン(2010〜2014年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
0.6万〜1.3万トン
平均:0.9万トン(2010〜2014年)
管理目標 WCPFCにおいては、親魚資源量を2015年からの10年間で歴史的中間値(約4.3万トン)まで回復させることを当面の目標とすることが合意されている。
資源の状態 1)最近年(2012年)の親魚資源量(約2.6万トン)は、歴史的最低水準(約1.9万トン)近くまで減少しており、2)最近年(2012年)の加入も極めて低水準である。
管理措置 WCPFC: 1)歴史的最低水準付近にある親魚資源量(約2.6万トン)を2015年からの10年間で歴史的中間値(約4.3万トン)まで回復させることを当面の目標とする。2)30 kg未満の小型魚の漁獲量を2002〜2004年平均水準から半減させる。3)30kg以上の大型魚の漁獲量を2002〜2004年平均水準から増加させないためのあらゆる可能な措置を実施する。

IATTC:1)商業漁業については、2015年及び2016年の年間漁獲上限3,300トンを原則とし、2年間の合計が6,600トンを超えないように管理する。2)30 kg未満の漁獲の比率を50パーセントまで削減するよう努力し、2016年の年次会合において2015年の操業結果のレビューを行う。3)遊漁については、2015年に商業漁業と同等の削減措置を取り、委員会に報告する。

日本国内: 1)まき網漁業の漁獲量削減、2)ひき縄等の沿岸漁船の届出制(更に、2014年4月以降は承認制)移項及び漁獲実績方向の義務化、3)クロマグロ養殖場の登録制及び実績報告の義務化、4)天然種苗を用いるクロマグロ養殖場の数・生け簀の規模の拡大防止、等。2015年1月から、大中型まき網漁業に対しては漁獲上限2,000トン、その他の沿岸漁業等(ひき縄、定置近海竿釣り等)に対しては漁獲上限2,007トンとし、沿岸漁業は全国を6ブロックに分けて管理。
管理機関・関係機関 WCPFC、ISC、IATTC
最新の資源評価年 2014年
次回の資源評価年 2016年

執筆者

くろまぐろユニット
くろまぐろサブユニット
国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部 くろまぐろ資源グループ

鈴木 伸明・大島 和浩
国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部 くろまぐろ生物グループ

大下 誠二

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