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37 ヨシキリザメ

Blue Shark

Prionace glauca

                                                                                   
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最近の動き

2014年に北太平洋系群の資源評価が北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)サメ作業部会で行われ、現在の資源量は乱獲状態になく、漁獲も過剰漁獲の状態にないとされた。この結果は同年7月のISC本会合で承認されたのち、8月の中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)科学委員会でも受け入れられた。また、WCPFC科学委員会は、資源評価で使用されたデータの不確実性を考慮し、@漁獲上限の設定を含めた管理計画の提出、A漁獲及び漁獲努力量のモニタリングを勧告した。


利用・用途

肉はすり身など、鰭はふかひれ、皮は工芸品や医薬・食品原料、脊椎骨は医薬・食品原料などに利用されている。


図1

図1. 日本の主要漁港へのヨシキリザメ水揚量(1992〜2013年)


表1

表1. まぐろはえ縄漁業によるさめ類漁獲量(トン)(データ:漁業・養殖業生産統計年報)
2011年は、東日本大震災の影響により、岩手県、宮城県、福島県においてデータを消失した調査対象があり、消失したデータは含まない数値である。


図2

図2. ヨシキリザメの分布(Compagno 1984より)


図3

図3. ヨシキリザメの年齢と成長(中野 1994)


図4

図4. 北太平洋海域において日本の近海遠洋まぐろはえ縄漁船により漁獲されたヨシキリザメの標準化CPUE(上:1976〜1993年、下:1994〜2012年)点線は95%信頼区間、赤の破線は中央値を表す。東日本大震災の影響により2011年以降は別に推定した。(Hiraoka et al. 2013、Kai et al. 2014)


表2

表2. ヨシキリザメの年齢と成長(尾鰭前長cm)(中野 1994)


図5b

図5. ベイジアンサープラスプロダクションモデルで推定された北太平洋のヨシキリザメの資源量(ISC 2014)
点線は90%の信頼区間、青の破線はMSY水準を表す。


図6

図6. 統合モデル(Stock Synthesis 3)で推定された北太平洋におけるヨシキリザメの産卵資源量(ISC 2014)
黒の点線は90%の信頼区間、青の点線はMSY水準を表す。


図6

図7. 大西洋におけるヨシキリザメの標準化されたCPUE(上:北大西洋、下:南大西洋、1957〜2009年)(ICCAT 2014)
実線は重量、破線は面積で重みづけを行った標準化CPUEを示す。


図8

図8. インド洋におけるヨシキリザメのCPUE(上:1971〜1993年、下:1994〜2011年)(Hiraoka and Yokawa 2012)
太実線はノミナルCPUE、細実線は標準化CPUE、点線は95%信頼区間を示す。



漁業の概要

ヨシキリザメは全大洋の熱帯から温帯にかけて出現し、外洋性さめ類の中で最も資源豊度が高いと考えられている。本種はまぐろはえ縄漁業で数多く漁獲されているが、基本的には混獲種であり、日本周辺の漁場を除き、遠洋水域で混獲されるヨシキリザメは外地で水揚げされるか放流されている。水揚げは加工設備が整っている気仙沼港を中心に行われ、肉、鰭、脊椎骨、皮が食用や工芸用に利用されていたが、東日本大震災により港・加工場ともに壊滅的な被害を受けた。2012年4月からは、水産庁事業「もうかる漁業創設支援事業」による船団操業が行われている。

農林水産省統計部「漁業・養殖業生産統計年報」(農林統計)に記載されている、まぐろはえ縄漁業によるさめ類(サメ類全種込み)の漁獲量を表1に示した。種別漁獲量は不明であるが、7〜8割程度を本種が占めているものと推定される(中野 1996)。農林統計では、まぐろはえ縄漁業は1971年以降、遠洋・近海・沿岸の3種類に分類されており、それらの合計は13,000〜33,000トンで推移している。1990年代後半まで減少傾向にあったが、2000年代になって増加傾向となり、2005年に初めて3万トンを上回った。2011年は近海及び沿岸まぐろはえ縄漁業の漁獲量が激減した。この原因は東日本大震災の影響により、本種を多く漁獲していた気仙沼基地の近海はえ縄漁船及び沿岸流し網漁船の操業数が著しく減少したためである。これらの漁船の多くは、2012年には通常の操業に復帰したが、サメ類の加工施設の復興が遅れたため、2012年の漁獲量は29,000トンにとどまった。

水産庁委託事業で、まぐろはえ縄漁業等による日本の主要漁港のさめ類の種別水揚量を調査している。それによるとヨシキリザメの水揚量は、1992〜2013年で5,100〜16,000(平均11,461)トンであり、2001年をピークに減少傾向で、2011年は過去最低を大きく更新したが2012年は2010年レベルまで回復した(図1)。2000年代の漁獲量の落ち込みは、本種を季節的に主対象として漁獲している気仙沼基地の近海はえ縄漁船数が減少したためで、2011年の落ち込みは東日本大震災の影響と考えられる。また漁法別に見ると、はえ縄の割合が徐々に減少している。


生物学的特徴

【分布】

本種は南北太平洋、南北大西洋、インド洋の熱帯から温帯域にかけて広く分布し(Compagno 1984)(図2)、温帯域での分布豊度が高く、温帯域出現種と考えられている(中野 1996)。系群については、繁殖周期が大洋の南北で逆になるので、南北太平洋で2系群、南北大西洋で2系群と考えるのが妥当であろう。各漁業管理機関では、これらの4系群にインド洋1系群を加え、5系群が存在するとして資源評価及び管理を行っている。これまでWCPFCが管轄する中西部太平洋で資源評価を行い、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)が管轄する大西洋で資源評価と管理を行っている。系群構造に関しては、赤道を越えて再捕された標識個体もあるので(Casey et al. 1989)、南北での交流も考えられる。太平洋ではISCが中心となってDNA分析による系群構造の解明作業が行われつつある


【産卵・回遊】

本種の繁殖様式は胎盤型の胎生であり、産仔数の平均と範囲は25.6、1〜135(中野 1994、Gubanov and Grigor’yev 1975)、出生時の体長(尾鰭前長)は30〜43 cm(中野 1994)である。北太平洋においては回遊モデルが提唱されている(中野 1994)。それによると、本種は北緯20度付近の海域で初夏に交尾し、雌は約1年の妊娠期間後に北緯30度以北の海域で出産する。幼魚は北緯40度付近の亜寒帯境界を生育場とし、成熟すると温帯域に移動する。


【成長・成熟】

脊椎骨に形成される輪紋から年齢が推定されており、その結果に基づいてCailliet and Bedford(1983)、田中(1984)、中野(1994)が太平洋における成長式を雌雄別に報告している。成長には性差が認められ、雄が雌に比べて早く、大きく成長する。成熟に達する体長は、北太平洋では雌雄共に140〜160 cm(須田 1953、中野 1994)、北大西洋では雌が約165 cm、雄が160 cm(Pratt 1979)と報告されており、年齢に換算すると雌6歳、雄5歳と推定される。また寿命は20歳以上とされている(Compagno 1984)。

以下に北太平洋で求められた成長式を示す。

       Cailliet and Bedford(1983):全長
             雌:Lt=241.9(1-e-0.251(t-(-0.795)))
             雄:Lt=295.3(1-e-0.175(t-(-1.113)))
       田中(1984):尾鰭前長
             雌:Lt=256.1(1-e-0.116(t-(-1.306)))
             雄:Lt=308.2(1-e-0.094(t-(-0.993)))
       中野(1994):尾鰭前長(表2、図3)
             雌:Lt=243.3(1-e-0.144(t-(-0.849)))
             雄:Lt=289.7(1-e-0.129(t-(-0.756)))

【食性・捕食者】

多獲性浮魚類やまぐろ類、いか・たこ類が主な餌料である(川崎ほか1962、谷内1984、Strasburg 1958)。海域、成長段階等によって異なった物を摂餌しており、特に選択的ではなく、生息域に豊富にいる利用しやすい動物を食べる日和見的な食性を示している。成魚に対する捕食者は知られていないが、幼魚は大型さめ類や海産哺乳類に食べられている可能性がある(Nakano and Seki 2003)。


資源状態

北太平洋系群については、2014年のISCサメ作業部会において、漁獲量及び資源量指数(CPUE)のデータ(図4)等を使用し、ベージアンサープラスプロダクションモデル(BSPM)及び統合モデル(SS)により資源評価が行われた(ISC 2014)。BSPMの結果は、資源量は1970年代後半から1980年代にかけて減少したが、1990年代になり徐々に回復し、その後わずかながら増加していることを示し(図5)、現在の資源量はB2011/BMSY=1.65、漁獲係数はF2011/FMSY=0.32であるとされた。SSの結果は、資源量は1980年代から1990年代前半にかけて減少傾向を示したが、その後緩やかな増加傾向を示し(図6)、現在の資源量はB2011/BMSY=1.62、漁獲係数はF2011/FMSY=0.34であるとされた。資源解析に使用したデータは不確実性が高いものの、異なる2つのモデルによる資源解析結果が共に資源量はBMSY水準を大きく上回り、漁獲死亡係数はFMSY水準を大きく下回っていることを示したため、作業部会は、不確実性を考慮しても、現在の資源量は乱獲状態になく、漁獲も過剰漁獲の状態にないと評価した。この結果は、同年7月のISC本会合で承認されたのち、8月のWCPFC科学委員会でも受け入れられた。本資源については、資源解析精度向上のために、種別漁獲統計の充実、過去の漁獲量の推定精度向上、漁業による放流投棄による死亡量の推定精度向上、並びに本資源の再生産特性の検討を行っていく必要がある。

南太平洋系群については、各国のCPUEを標準化して推定した資源量指数の年トレンドが異なっており、更なる検討が必要なため資源評価実施には至っていない(WCPFC 2014)。

南北大西洋系群については、2008年のICCATサメ資源評価会合において、漁獲量及び資源量指数(CPUE)のデータ等を使用し、ベージアンサープラスプロダクションモデル(BSPM)、年齢構成プロダクションモデル(ASPM)、キャッチフリーモデル(CFASPM)により資源評価が行われた。その結果、資源量は南北共にBMSY水準を上回っており、漁獲死亡係数はFMSY水準を下回ることが示されている(ICCAT 2008)。日本、米国、ブラジル、台湾、ベネズエラ、スペイン、アイルランド、ウルグアイ、カナダと多くの国のまぐろはえ縄漁業の標準化CPUEが得られているものの(ICCAT 2008)(図7)使用可能なデータは不足しており、資源評価は多くの仮定に基づいている。1971〜2009年における日本のCPUEを算出した結果では、南北両系群とも近年のCPUEに顕著な増減傾向は見られなかった(Hiraoka and Yokawa 2011)。これらの結果から、大西洋系群はこの約40年間比較的安定していると考えられる。ICCATでは2015年に資源評価が行われる予定である。

インド洋系群については、日本のまぐろはえ縄漁業の標準化CPUEの経年変化を検討したところ、他の海域と同様にCPUEは増減を繰り返していた(図8、Hiraoka and Yokawa 2012)。南アフリカ沖やオーストラリア沖のミナミマグロ漁場の日本のオブザーバー調査から得られたCPUEは、1992年から2007年にかけて変動が見られるものの、顕著な増減傾向は示さなかった(松永・余川 2009)。これらから、インド洋系群は安定していると考えられる。しかし、沿岸漁業の情報が著しく不足しているため、早急にこれらの情報を整備して資源評価を実施する必要がある。


管理方策

北太平洋系群について、2014年のWCPFC科学委員会は、資源評価で使用されたデータの不確実性を考慮し、@漁獲上限の設定を含めた管理計画の提出(本種を対象とする漁業が対象)、A漁獲及び漁獲努力量のモニタリングを勧告した(WCPFC 2014)。

本種を対象とした保存管理措置は存在しないが、全てのまぐろ類地域漁業管理機関において、漁獲されたサメ類の完全利用(頭部、内臓及び皮を除く全ての部位を最初の水揚げ又は転載まで船上で保持すること)及び漁獲データ提出が義務付けられている。加えて、WCPFCでは、2014年の年次会合において、@まぐろ・かじき類を対象とするはえ縄漁業は、ワイヤーリーダー(ワイヤー製の枝縄及びはりす)又はシャークライン(浮き玉又は浮縄に接続された枝縄)のいずれかを使用しないこと、Aさめ類を対象とするはえ縄漁業は、漁獲を適切な水準に制限するための措置等を含む管理計画を策定すること、が合意された。


ヨシキリザメ(全水域)の資源の現況(要約表)

北太平洋 南太平洋 北大西洋 南大西洋 インド洋
資源水準 中位〜高位 調査中 調査中 調査中 調査中
資源動向 横ばい 調査中 横ばい 横ばい 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
調査中 調査中 3.5〜3.8万トン
平均:3.7万トン
1.9〜3.4万トン
平均:2.6万トン
平均:24,447トン
(2009〜2013年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
5,149〜9,824トン
(水揚量)
平均:7,395トン
調査中 1,227〜2,210トン
平均:1,807トン
981〜2,271トン
平均:1,522トン
1,114〜2,657トン
(2009〜2013年)
管理目標 検討中
資源の状態 B2011/BMSY:1.65(BSPM)1.62(SS) 議論中 B2007/BMSY
:1.87-2.74
B2007/BMSY
:1.95-2.80
議論中
管理措置 漁獲物の完全利用等
管理機関・関係機関 IATTC, WCPFC, ISC WCPFC ICCAT ICCAT IOTC, CCSBT
最新の資源評価年 2014年 2008年 2008年
次回の資源評価年 未定 未定 2015年 2015年 2015年

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

甲斐 幹彦

国際水産資源研究所 国際海洋資源研究員

余川 浩太郎


参考文献

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