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34 ウバザメ 日本周辺

Basking Shark

Cetorhinus maximus

                                                                       
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最近の動き

世界的には特に目立った動きは見られなかった。日本周辺での出現について、2012〜2014年は報告がなかった。


利用・用途

鰭はフカヒレスープの原料に、皮は皮革製品として利用される。肉は生肉や干し肉として人間の食用になる他、家畜餌用のフィッシュミールにもなる。肝油は工業用、化粧品用等に利用される(Springer and Gold 1989、Compagno 2001)。


図1

図1. ウバザメの分布(内田 1995、Last and Stevens 1994)


表1

表1. 日本周辺におけるウバザメの年別出現記録
出現記録は文献情報等から要約した。波切(三重県)以外の地名はすべて県名である。


漁業の概要

我が国では1960年代後半から1970年代にかけて、三重県波切で突きん棒により漁獲され、その肝臓が利用されていたが、最近ではまったく行われていない。現在ウバザメは、全国各地の定置網で迷入が観察される程度である。漁獲が稀であり、市場価値が低いことから、一部は水揚げされて市場に上がるものの、放流される個体も多いため取り扱いがばらばらであり、公式な漁獲統計としてはほとんど残っていない。


生物学的特徴

【分布】

ウバザメは全世界の温帯海域から寒帯海域にかけて分布しており、沿岸から沖合にかけて生息している(図1)。稀に熱帯海域にも出現するが、出現例は少ない。西太平洋では台湾が南限となっている(Compagno 2001)。日本近海では太平洋側は春から夏に出現し、日本海側は冬から春が多い。最南端の沖縄での出現例は7月である。ウバザメは太平洋の東西両岸で出現するが、東西の交流等に関しては不明である。また北大西洋の両岸に出現する本種の生物学的な関連に関しても不明である。


【産卵と回遊】

小型個体の出現例や調査例は少なく、20世紀中頃に最小遊泳個体1.65 mという記録がある(Bigelow and Schroeder 1948)。このことから、出生体長は全長1.7〜1.8 mと推定される。繊毛状組織におおわれた内壁を持つ子宮の性状や分類学的にネズミザメ目に属するサメとの類似などから、胎生で卵食性であろうと推定されている(Matthews 1950、Compagno 2001)。回遊について不明な点が多いが、大西洋では広く回遊するようである(Gore et al. 2008; Skomal et al. 2009)。また、ポップアップアーカイバルタグの記録から、水温フロントに沿って移動している報告がある(Priede and Miller 2009)。


【成長・成熟】

ウバザメの雄の性成熟体長は6.4〜7.4 m、年齢は6〜8歳であり、雌の性成熟体長は不明であるが、妊娠期間は3.5年であろうと推定されている(Parker and Stott 1965)。これは、北大西洋東部で脊椎骨椎体の成長輪を調査した結果に基づく推定である。成長輪2本を1年とした結果であるので、1本1年の可能性も考えられ、雄の成熟年齢は12〜16歳ではないかとの意見もある(Compagno 2001)。一方、Bigelow and Schroeder(1948)は体型の変化、クラスパーの状態や精巣の調査例などから、雄の性成熟体長は4.6〜6.1 mとしている。


【食性】

ウバザメは主にプランクトンを捕食する(この他のプランクトン食性の大型板鰓類はジンベエザメ、メガマウス、オニイトマキエイなど)。大きな口を開けて遊泳し、鰓把でコペポーダ、蔓脚類、十脚類、口脚類の幼生や魚卵などを濾しとって捕食する(Compagno 2001)。


資源状態

日本周辺におけるウバザメの年別出現数を表1に要約した(漁獲を含む)。三重県波切で1960年代後半から1970年代前半に年間100尾程度の漁獲(突きん棒による)があったが、1970年代後半以降はウバザメを主対象とする漁業はなく、定置網への偶発的な迷入の記録があるのみである。定置網への入網については、たまたま新聞記事などで記録されるだけで、出現頻度を定量化するのは困難である。ほぼ毎年数尾程度の記録が残っているものの、2011年に千葉と静岡で報告がなされたのを最後に、2012年以降は記録がない。偶発的には出現していると思われるが、それらが記録されていない可能性が高い。

1967〜1978年の12年間に1,200尾以上が水揚げされたので年間平均約100尾であり、その内訳はわかっている年で、1975年約150尾、1976年約20尾、1977年9尾、1978年6尾であった。その当時にに比べれば、来遊量は明らかに減少しているであろう。しかし、それ以前にも継続して大量のウバザメが来遊していたわけではなく、大量の来遊は30年周期で起こるという説もある。1970年代後半以降は、ウバザメを対象とした漁業はなく、全国の定置網に偶発的に迷入した記録があるのみである。1970年代後半以降の定置網への迷入は長期にわたりほぼ一定の割合で発生しているようにみえる。日本周辺に来遊するウバザメの資源量は不明であるが、1970年代後半の来遊量の減少以降、明らかな増減傾向は観察されていない。


管理方策

本種の規制措置はない。現在、我が国には本種を対象とした漁業はなく、積極的な漁獲努力は行われていないので、特に管理方策を策定する必要はないと考えられる。なお、ウバザメが絶滅の危機にあるとして、2000年のワシントン条約(CITES)第11回締約国会議において、英国から附属書Uへの掲載が提案されたが否決され、附属書Vに掲載する修正提案が行われた。2002年の第12回締約国会議において、英国から再度附属書Uへの掲載が提案され、採決の結果3分の2以上の賛成が得られ可決された。このことから、ウバザメの魚体、鰭などを含む一切の派生物を国際取引する際は、輸出国による輸出許可書の発給が必要となり、また、公海域で採取し自国に持ち帰る行為についても証明書の発給が義務付けられる(海からの持ち込み)。しかしながら、我が国は、ウバザメの附属書Uへの掲載に関して留保を付しており、締約国に輸出する場合には輸出許可書が必要となるものの、海からの持ち込みについての証明書の発給は不要となっている。


ウバザメ(日本周辺)の資源の現況(要約表)

資源水準
資源動向
世界の漁獲量
(最近5年間)
調査中
我が国の漁獲量
(最近5年間)
年に0〜2個体程度が定置網に迷入
管理目標 なし
資源の現状 検討中
管理措置
管理機関・関係機関 FAO、CITES
最新の資源評価年
次回の資源評価年

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

大下 誠二

国際水産資源研究所 国際海洋資源研究員

余川 浩太郎


参考文献

  1. Bigelow, H.B. and Schroeder W.C. 1948. Chapter three. Sharks. In Tee-Van, J., Breder, C.M., Hildebrand, S.F., Parr, A.E. and Schroeder, W.C. (eds.), Fishes of the western North Atlantic. Part 1. Vol. 1. Sears Foundation for Marine Research, Yale University, New Haven, Connecticut, U.S.A. 56-576 pp.
  2. Compagno, L.J.V. 2001. Sharks of the world. An annotated and illustrated catalogue of shark species known to date. FAO Species Catalogue for Fishery Purposes No. 1 Vol. 2. 269 pp.
  3. Gore, M.A., Rowat, D., Hall, J., Gell, F.R. and Ormond, R.F. 2008. Transatlantic migration and deep mid-ocean diving by basking shark. Biol. Lett., 4, 395-398.
  4. Last, P.R. and Stevens, J.D. 1994. Sharks and Rays of Australia. CSIRO, Australia. 513 pp.
  5. 日本エヌ・ユー・エス. 2004. 平成15年度ウバザメPop up tag調査および, 大型サメ類3種に関する情報収集調査結果報告. In 遠洋水産研究所(編), 平成15年度国際資源調査等推進対策事業 混獲生物グループ報告書. 遠洋水産研究所, 静岡. 184-198 pp.
  6. 日本エヌ・ユー・エス. 2006. 平成17年度国際漁業混獲生物調査委託事業報告書. In 遠洋水産研究所(編), 平成17年度国際資源調査等推進対策事業 混獲生物グループ報告書. 遠洋水産研究所, 静岡.
  7. Matthews, L.H. 1950. Reproduction in the basking shark, Cetorhinus maximus (Gunnerus). Philos. Trans. R. Soc. Lond. B Biol. Sci., 234: 247-316.
  8. Parker, H.W. and Stott, F.C. 1965. Age, size and vertebral calcification in the basking shark, Cetorhinus maximus (Gunnerus). Zool. Meded., 40: 305-319.
  9. Priede, I,G. and Millier, P.I. 2009. A basking shark (Cetorhinus maximus) tracked by satellite together with simultaneous remote sensing II. New analysis reveals orientation to the thermal front. Fish. Res., 95, 370-372.
  10. Skomal. G.B., Zeeman, S.I., Chisholm, J.H., Summers, E.L., Walsh, H.J., McMohan, K.W. and Thorrold. S. 2009. Transequatorial migrations by basking sharks in the western Atlantic Ocean. Curr. Biol., 19, 1019-1022.
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  13. 自然資源保全協会(編). 2004. 平成15年度サメ・海鳥保全管理プログラム作成調査並びに鮫の利用の推進に関する啓蒙普及報告書(国内現地調査および啓蒙普及活動編). 自然資源保全協会, 東京. 34+16 pp.
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  19. 矢野憲一. 1981. サメのお伊勢まいり. アニマ, 99: 20-26.