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09 ビンナガ インド洋

Albacore

Thunnus alalunga

                                                           
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最近一年間の動き

2014年7月にインド洋まぐろ類委員会(IOTC)第5回温帯性まぐろ作業部会によって資源評価が実施され、不確実性はあるものの、資源は乱獲状態ではなく、漁業も過剰漁獲状態ではないとされた。


利用・用途

刺身及び缶詰として利用されている。


図1

図1. インド洋におけるビンナガの国別漁獲量(1950〜2013年) (IOTCデータベース2014年10月)


図2

図2. インド洋におけるビンナガの漁法別漁獲量(1950〜2013年)(IOTCデータベース2014年10月)


図3

図3. インド洋におけるビンナガのFAO海域別漁獲量(1950〜2013年)(IOTCデータベース2014年10月)
東インド洋(FAO海域57)、西インド洋(FAO海域51)


図4

図4. インド洋におけるビンナガの分布とはえ縄漁場


図5

図5. 台湾、日本のはえ縄標準化CPUEの年変動(1975〜2013年、南部主漁場)(IOTC 2014b)


図6

図6. ASPIC及びSS3による資源評価(KobeIプロット)の結果の比較(IOTC 2014b)
縦軸と横軸はそれぞれ漁獲死亡係数、バイオマスもしくは産卵親魚量のMSYレベルに対する比。


表1

表1 資源量・漁獲係数に関するリスク解析結果(現状の漁獲量を増加、減少させた場合、2015年及び2022年において資源量もしくはFがMSYレベルを下回る確率)
縦軸と横軸はそれぞれ年、現状(2011〜2013年平均)の漁獲量からの増減率。SS3による資源評価結果に基づく。


附表1

附表1. インド洋におけるビンナガの国別漁獲量(1950〜2013年)(IOTCデータベース:2014年10月)


附表2

附表2. インド洋におけるビンナガの漁法別漁獲量(1950〜2013年)(IOTCデータベース:2014年10月)


附表3

附表3. インド洋におけるビンナガの海域別漁獲量(1950〜2013年)(IOTCデータベース:2014年10月)
西インド洋(FAO海域51)、東インド洋(FAO海域57)

漁業の概要

本資源の漁業は、1950年代前半、日本のはえ縄船により開始された。その後、台湾、韓国のはえ縄が、それぞれ1954年、1965年から参入した(図1、附表1)。また、1982〜1992年の11年間、台湾は流し網を行ったが、国連の公海大規模流し網漁業禁止決議により1992年末で停止した。本資源の漁業では、流し網の行われた11年間と1950〜1951年を除き、漁獲量の9割以上ははえ縄による。台湾のはえ縄の漁獲量は1970年以来、流し網の全盛期(1987〜1993年)及び最近年(2004〜2013年)を除き、総漁獲量の5〜9割を占める。また、近年ではインドネシア(大部分ははえ縄)の比率も高くなっている(図1〜2、 附表1〜2)。

はえ縄の総漁獲量は操業開始以来緩やかに増加し、1958年までは1万トン以下、1997年までは1〜3万トンであった。1982〜1992年の11年間は、台湾の流し網で最大2.6万トン漁獲され、全漁業国の総漁獲量は3.6万トンまで達したが、流し網を停止した1993年には総漁獲量は2.1万トンに減少した。その後、はえ縄の漁獲量が徐々に増加し、2001年には4.6万トン(過去最大)に達したが、その後減少し、2003年には2.9万トンになった。2006年から総漁獲量は再び増加し2010年には4.4万トンとなったが、2011年には3.4万トンと減少した。2012年もほぼ同程度であったが、2013年には3.9万トンに増加した(図2、附表2)。ただし、2013年のインドネシアの漁獲量にはいまだ不確実性があるとされた。日本のはえ縄では、初期の年代を除き主要対象種ではなかったが、近年は対象種のひとつとなっている。また、1983年からは西インド洋でまき網による漁獲が始まり、1992年に最大3,300トンの漁獲があった(附表2)。西インド洋(FAO海域51)と東インド洋(FAO海域57)における漁獲量の平均的割合は、およそ4:6である(図3、附表3)。


生物学的特徴

【系群】

太平洋とインド洋のビンナガの分布はオーストラリアの南側で、インド洋のビンナガと大西洋のビンナガの分布はアフリカ南端で連続しており、一部交流する可能性もあるが(古藤 1969)、血清学的見地からはそれらはかなり異質で、別系群であると示唆されている(鈴木 1962)。また、体長組成、仔稚魚、分布の特性から、インド洋は単一系群とみられている(Hsu 1994)。


【分布】

インド洋ビンナガの分布範囲は、北緯5度〜南緯40度である。メバチやキハダが赤道海域を中心に分布するのに対し、本種の主要分布域は中緯度海域で、北緯5度〜南緯25度が成魚分布域、南緯10〜25度に産卵域、南緯30〜40度に索餌海域があり、魚群の密度が高い。分布の南限や北限は季節によってやや異なる(図4)。

海流は、大きな空間スケールでビンナガの分布や漁場形成を左右する最も重要な要因と考えられている。赤道反流の南である南緯10度付近に一種の収束線が形成され、ビンナガ好漁場の北の境界となっている。


【回遊】

ビンナガはよく発達した胸鰭を持ち、索餌または産卵のために大規模な回遊をする。インド洋における回遊の研究は皆無で、経路などは不明である。


【食性】

ビンナガも他のまぐろ類と同様に、魚類・甲殻類・頭足類を主な餌として、生息環境中に多い餌生物を、主として昼間に無選択的に捕食する。したがって、胃内容物組成は海域や季節によってかなり変化する。西部インド洋では、主にギマ科、ミズウオ科、ホウネンエソ科、アジ科、クロタチカマス科、ヒシダイ科などを捕食する(Koga 1958)。


【産卵】

インド洋においては詳しい知見がない。以下、参考として太平洋のビンナガについて述べる。西部太平洋のビンナガは、卵巣が200 g以上になると産卵すると考えられ、その最小体長は87 cmである。雄では精巣重量150 g以上のものが成熟個体とみなされ、その最小体長は97 cmである。卵巣卵の直径は成熟期では0.6 mm以上となり、卵巣重量は100〜200 gが普通だが、大型の成熟したもので200 g以上になる。体重20 kg前後の魚体で、1尾の抱卵数は180〜210万粒である(上柳 1955)。1産卵期中に複数回の産卵が推定される。成熟に達する年齢は5歳あるいはそれ以上である。


【体長・体重関係】

以下の体重(W: kg)・体長(尾叉長 L: cm)の関係式が報告されている。
     Lee and Kuo (1988)
         雄 W=(3.383×10-5) L2.8676
         雌 W=(4.183×10-5) L2.8222


【年齢・成長式】

インド洋のビンナガは、Huang et al.. (1990)の鱗による研究によると、8歳まで確認されている。その他に、脊椎骨や体調組成解析による以下の成長式の報告がある。L: 尾叉長(cm)、 t: 年齢とする。
         Huang et al.. (1990) 鱗
             Lt(cm)=128.13[1-e-0.162[t-(-0.897)]]
         Lee and Liu (1992) 脊椎骨
             Lt(cm)=163.7[1-e-0.1019[t-(-2.0668)]]
         Hsu (1991) 体長組成解析
             Lt(cm)=136[1-e-0.159[t-(-1.6849)]]


【自然死亡係数】

以下2件の報告がある。
         Lee et al.. (1990)     Pauly(1980)の方法により推定。
             M=0.206
         Lee and Liu (1992)     はえ縄データを用い、Z=q*F+Mより推定。
             M=0.2207


資源状態

2014年7月に開催されたIOTC第5回温帯まぐろ作業部会において、台湾、日本、韓国の3国からはえ縄漁業の標準化CPUEが資源量指数として提示された。台湾と日本のCPUEについて一部期間のトレンドに違いがあり、本種を漁獲対象としているか否かが関係していると考えられる(図5)。本年度の資源評価は一貫してビンナガを漁獲対象にしているとされる台湾(南部主漁場)の資源量指数を基に実施した。

資源評価は2012年までのデータを基に、試行された5つのモデルのうち、シンプルな余剰生産モデルであるASPIC(Matsumoto et al.. 2014)、統合型モデルのSS3(Hoyle et al.. 2014)の2手法が採用された。これらの方法による結果は同等に扱われ、結果は比較的類似したが(図6)、Fratioに関してはSS3の方が楽観的だった。SS3の結果では、Fratio=0.69(80%信頼区間:0.23〜1.39)、SSBratio=1.09(0.34〜2.20)及びMSY=4.8万トン(2.7〜7.9万トン)(2009〜2013年の平均漁獲量:3.8万トン)であった。一方、ASPICの結果では、Fratio=0.94(80%信頼区間:0.68〜1.9)、Bratio=1.05(0.73〜1.35)及びMSY=3.5万トン(2.9〜3.7万トン)であった(いずれも2012年の状態)。これらの推定値から、インド洋のビンナガ資源は乱獲状態ではなく、漁業も過剰漁獲状態ではないとされた。また、現状(2011〜2013年平均:資源評価実施時)の漁獲量がこのまま続いても2022年には資源量がSSBMSYレベルを下回る確率は40%以下となる(図6)。


管理方策

2014年12月のIOTC第17回科学委員会は、同年7月に実施された資源評価を基に、資源は乱獲状態ではなく漁業も過剰漁獲状態ではないものの、資源評価には多くの不確実性があるので、漁獲圧を削減もしくは漁獲量を2012年レベルに抑えるよう勧告した(IOTC 2014c)。

なお、現在IOTCではビンナガを漁獲対象とする漁船の隻数を2007年水準に制限している。


ビンナガ(インド洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
3.4〜4.4万トン
平均:3.8万トン(2009〜2013年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
2,300〜3,800トン
平均:3,000トン(2009〜2013年)
管理目標 MSY=4.8万トン(80%信頼区間:2.7〜7.9万トン)(SS3)
MSY=3.5万トン(80%信頼区間:2.9〜3.7万トン)(ASPIC)
資源の状態 資源評価結果によると、資源は乱獲状態ではなく漁業も過剰漁獲状態ではない。現状の漁獲量がこのまま続いても2022年には資源量がSSBMSYレベルを下回る確率は40%以下。
資源管理措置 ビンナガを漁獲対象とする漁船の努力量を2007年水準に制限
管理措置(共通項目) はえ縄・まき網ログブック(最低情報収集項目の義務化)、統計データ提出強化、オブザーバープログラム(2010年7月より)、漁獲努力量(漁船数)規制、公海における大規模流し網漁業の禁止、海賊対策など
管理機関・関係機関 IOTC
最新の資源評価年 2014年
次回の資源評価年 2016年


執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット 国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

松本 隆之

国際水産資源研究所 業務推進課

西田 勤


参考文献

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