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68 ニュージーランドスルメイカ・オーストラリアスルメイカ (ニュージーランド海域)

Gould's Flying Squid・Nototodarus sloanii

Gould's Flying SquidNototodarus gouldi


                             PIC
                             ニュージーランドスルメイカ                                                             オーストラリアスルメイカ

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はじめに

ニュージーランド海域で漁獲されるスルメイカ類は一般に“ニュージースルメ”と呼ばれている。しかし、実際には、ニュージーランドスルメイカ(Nototodarus sloanii)(写真左)及びオーストラリアスルメイカ(Nototodarus gouldi)(写真右)の2種からなる。両種は、主としてニュージーランド海域におけるトロール船といか釣り船により漁獲され、この海域ではこれら2種以外にミナミスルメイカ(Todarodes filippovae)、アカイカ(Ommastrephes bartramii)、ニセスルメイカ(Martialia hyadesi)等のアカイカ科も分布する。漁業対象となるのは前者2種であり、両者は形態的に似ているため、市場では区別されず“ニュージースルメ(ニュージーランドスルメイカ)”等と呼ばれ、FAOの統計でもWellington Flying Squid(Nototodarus sloanii)1種として取り扱われているが、この統計に実際には2種が含まれている。なお、本稿において両種を区別しない場合には、便宜的に“NZスルメ類”とし、個々の種に関する場合には“ニュージーランドスルメイカ”または“オーストラリアスルメイカ”として記載する。


最近一年間の動き

当海域で2012年に2隻の我が国いか釣り漁船が操業し、漁獲量は前年より多い1,787トンで、昨年度に引き続き漁獲量、CPUE(トン/日)ともに増加が認められた。資源量水準は、1987〜2010年の我が国いか釣り漁船のCPUEデータから判断すると高位の状態であると考えられる。ただし、本資源の総漁獲量ベースで見ると、2010年の各国による本資源の総漁獲量は約5.8万トンで2004年以降減少傾向が続いているが、これはニュージーランドによる漁獲が低迷していることが原因と考えられる。


利用・用途

いか飯や焼するめに仕向けられることが多い。原料特性として皮の色がきれいなため、さきいか材料にした場合はきれいな仕上がりになる。しかし、味がスルメイカやアルゼンチンマツイカより劣ること、毛羽立ちが悪いことから前2者より評価が低い。ただし、サイズもスルメイカに似ており、加工しやすいことから価格次第ではいろいろの用途に仕向けられることが可能であり汎用性が高い。


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図1. 各国のNZスルメ類漁獲量の変遷(データはFAO 2011、ただし、2011年は全国沖合いかつり漁業協会の操業状況週報及び南方トロールデータの集計による漁獲量。)


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表1.各国のNZスルメ類の漁獲量(水揚げ)の変遷 (Wellington Flying Squid及び南西太平洋のいか類を含む) (データ:FAO 2010、ただし、2010年は全国遠洋沖合いかつり漁業協会の操業状況週報および 南方トロールデータの集計による漁獲量。2010年のニュージーランド漁獲量は Ministry of Fishery of New Zealand 2010.より)(単位:トン)。 空白は情報がないかその他等と不可分、漁獲量0または漁業がなし。)


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図2. ニュージーランド海域におけるいか釣り漁場とトロール漁場の分布


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図3. ニュージーランド海域におけるNZスルメ類2種(ニュージーランドスルメイカNototodarus sloanii及びオーストラリアスルメイカNototodarus gouldi)の分布域


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図4. ニュージーランド海域におけるNZスルメ類2種の幼イカの分布域(Uozumi and Forch 1995)


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表2. NZスルメ類2種の日齢と体長


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図5. ニュージーランドスルメイカ(上)及びオーストラリアスルメイカ(下)の成長(Uozumi et al. 1995より)


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図6. ニュージーランド海域における日本のトロール船のCPUE(トン/時間)及びいか釣り船のCPUE(トン/日)の経年変化2002年(2001/2002年)漁期にはイカ釣り船は出漁しなかった。(西田・若林 2011より)


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図7. ニュージーランドにおけるNZスルメ類のTACCと実際の水揚量の推移(Ministry of Fishery of New Zealand. 2010より)


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図8. ニュージーランドのNZスルメ類の管理海域


漁業の概要

ニュージーランド海域のNZスルメ類の資源は1960年代までは未開発であった。1960年代末の日本近海スルメイカの不漁を契機に、神奈川県のいか釣り漁船により本海域で初めての我が国による操業が試みられた(加藤・三谷 2001)。その結果が良かったことや日本近海での操業の裏作に好適であることから、遠洋海域で初めて本格的にNZスルメ類を対象とする釣り操業が行われた。その後、いか釣り船の隻数は急速に増加し、1970年代中頃には150隻前後となり、その後も2〜4万トンを漁獲するようになった。

また、同じ頃に、我が国のトロール船も同イカ類を漁獲するようになった。1978年に200海里水域が設定されると、我が国のトロール船による漁獲量は急速に伸び、年間2万トン前後に達した。これは、トロールの漁獲努力量が、規制の厳しくなった底魚から比較的に緩いNZスルメ類へ向けられたためである。1980年には、両漁法を合わせた我が国のNZスルメ類の総漁獲量は6万トンを超えるようになった(表1)。

しかし、1990年(1989/1990年漁期)には、それまで二国間協定に基づいて行われていた操業(GG船)に対してニュージーランド政府から日本のいか釣り船への割当量がなくなり、さらに合弁船(JV船)も半減した。このため、この漁期の出漁船数は前年の138隻(約5万トン)から45隻(8,000トン)へと減少した。これにより、それまでは我が国が同海域で6〜7割を占めていたNZスルメ類の漁獲量割合は、1990年を境に2割以下に減少した(図1)。本資源は、韓国、ロシア(旧ソ連)、ウクライナ及び台湾も漁獲している(表1)。なお、ニュージーランド政府は、現地人雇用を優先させる目的で法的最低賃金(Department of Labour of New Zealand 2012)を年々徐々に増加させてきた。しかし、2006年以降は最低賃金が急上昇し(2012年4月から大人で時給NZ$13.5)、外国船籍が安い外国人漁業労働者を雇用するメリットが減少した。さらに、2016年より外国船籍漁船のチャーター操業を禁止するとの方針が発表され(Ministry of Fishery of New Zealand. 2012)、今後は日本船の入漁にも影響が生じる可能性が考えられる。

主要漁場は、いか釣り船とトロール船とで若干異なる。いか釣り船は北島西岸及び南島周辺で主に操業し、トロール漁業は西岸以外の南島周辺、オークランド島周辺等に漁場が形成される(図2)。最近の規制強化により、我が国のトロール船は主として南島南岸とオークランド島周辺でいか操業を行っている。いか釣り漁船は大陸棚のほとんどを漁場とするのに対し、トロール船はやや深みの大陸棚縁辺部で操業する。なお、後述するように、ニュージーランドスルメイカとオーストラリアスルメイカの主分布の違いから、北島周辺を除く漁獲物はニュージーランドスルメイカからなると考えて良い。

漁期は基本的には南半球の夏から冬の12〜6月である。いか釣り漁業の盛漁期は1〜3月となることが多い。通常、いか釣り船の操業は南島の北西岸から始まり、次いでその年に最も豊度が高い漁場(例えば1989年は南島の東岸)での本格的な漁獲となり、最後は北島の西岸で終漁となる。トロール漁業の盛漁期は、年によって若干異なり、1〜5月にかけての数か月である。オークランド島周辺の漁期は南島南岸より1か月ほど遅く始まることが多い。


生物学的特徴

ニュージーランドスルメイカとオーストラリアスルメイカの分布域は、ニュージーランドの北島と南島の間で一部重なるものの(Mattlin et al. 1985)、比較的明瞭に分離している(図3)。ニュージーランドスルメイカは南島の大陸棚を中心に分布し、オーストラリア南部にも広く分布し前者に比べて暖海性である(Smith et al. 1987)。

幼イカがそれぞれ親イカと同じように分布し(図4)、主要漁場が南北方向に季節移動しない、標識イカが放流地点の近くで再捕された、近接する南島の南岸とオークランド島周辺で漁獲されるイカの大きさや熟度が異なる等から、両種とも深浅方向に移動する以外は大きな回遊は行わないと考えられる(Uozumi et al. 1995)。このように、ニュージーランド海域では、2種が漁獲されるだけでなく、それぞれの漁場の独立性が高く相互の交流が少ないと考えられる。

成熟した雌が周年にわたって各地で漁獲されることから産卵場は前述した種の分布域に広く存在すると考えられる。平衡石を用いた日齢査定結果を基にして推定されたふ化日によると、産卵は2種とも周年にわたっていると推定される(Uozumi et al. 1995)。しかし、後述するように漁期が存在することから、発生時期によってその豊度がかなり異なる。オーストラリアスルメイカでは6〜7月に発生したものが多く、ニュージーランドスルメイカでは7〜9月に発生したものが卓越する場合が多い。このように2種とも南半球の冬期を中心とした時期に発生したものが比較的卓越する場合が多いが、年によっては、他の時期に発生したものが卓越する場合もあり(Uozumi et al. 1995)、資源構造を曖昧なものにしている。

両種の成長は、平衡石を用いた日齢査定によって推定され、両種とも雌の成長は雄よりも速い(表2)。2種の成長については、ともに図5のようなロジスティック曲線で表される(Uozumi et al. 1995)。発生した時期によって成長はやや異なる。しかし、発生時期の異なる個体の成長を比較すると、どの日齢でもその時期水温が高かった個体の成長が最も良い。このように、各日齢での成長速度は異なるが、最大体長にはさほど大きな差が見られない。両種の寿命は、その他のアカイカ科と同様に1年である。成熟は、雄で200日頃から始まり、270日前後にピークに達する。雌ではその頃から卵巣、輸卵管等の生殖器官が急速に発達する。また、交接もその頃活発に行われる。

着底トロールによって採集されたニュージーランドスルメイカの主餌料として、はだかいわし類、ミナミダラ(Micromesistius australis)及びおきあみ類(Nyctiphanes australis等)が報告されている(Yatsu 1986)。また、いか釣りによって採集されたオーストラリアスルメイカの主餌料は、魚類ではマイワシやバラクータ(Thyrsites atun)、甲殻類ではオキエビ科のLeptochela sydnensisやスナホリムシ科のCirolana sp.が報告されている(O’Sullivan and Cullen 1983)。両種の被捕食については、アホウドリ類数種(Cherel and Klages 1998)及び鰭脚類が報告され、また、オーストラリアスルメイカについては、さめ類(シュモクザメ類、ヨシキリザメ)等による捕食が報告されている(Dunning et al. 1993)。


資源状態

一般的に、本種のような単年性のイカ資源は、毎年新たに加入が決まることから大きな年変動をする傾向を持つ。本水域でも個々の資源は年により大きく変動していた。各国による総漁獲量で見ると、20年間の年平均及び最近5年間の漁獲量はそれぞれ8.4万トン、9.5万トンであることから、本資源は現状では中位の状態にあると示唆される。いか釣り船は、その年に豊度が最も高い漁場で集中操業するため、その主要漁場は毎年のように変化した。しかし、前述のようにニュージーランド海域のスルメイカ類の資源は複雑でいくつもの単位からなっており、トロール船といか釣り船のそれぞれのCPUE(曳網時間当たりの漁獲量及び船一日当たりの漁獲量)(酒井・若林 2010、西田・若林 2010)の傾向は、それぞれにかなりの年変動を示した(図6)。同海域におけるトロール漁業では、目的とする魚種の変更等の影響で必ずしもCPUEが資源水準の変動を的確に反映しているわけではない。いか釣り船の場合も、出漁する隻数が減少するとイカの群れを探索する能力が減少するため、好漁場を発見する確率が低下して真の資源水準を表さないことも考えられる。しかし、規模の違いはあるが両漁法によるCPUEの変動はおおよそ一致している。特に、1990年(1989/1990年)漁期以降でCPUEが両者ともに増加し、1995年(1994/1995年)漁期に両者でCPUEのピークが見られ、それ以降で減少していたが、2009年以降増加傾向が認められることから、この2つのCPUEはともに資源水準の変動と同期して変化していると見られる。

いか釣り船のCPUEで見る限り最近の10年間は各漁船1日あたり3〜11トン前後(平均5.7トン)であり、漁獲成績報告集計による2011年のCPUEは7.0トン/日で高い値であった。1987年から2010年までの我が国いか釣り漁船のCPUEデータを見て、最大値(1995年)の11.0トン/日と最小値(1990年)の2.2トン/日の間を3分割して上から高位(8.0トン/日以上)、中位(CPUEが5.1トン/日から8.0トン/日)、低位(CPUEが5.1トン/日以下)という基準で評価すると、2012年の資源水準は高位であると判断できる。

また、日本のトロール漁船のCPUEで見ると2000年(1999/2000年)漁期以降、5年連続で増加傾向にあったが(図6)、2004年から減少傾向となり、2009年から増加傾向にある。さらに、日本のいかつり漁船週報による速報的なCPUE値(全国遠洋沖合いかつり漁業協会資料より)で見ると、2012年漁期には1987年以降で最高の値であったことから(図7)、資源水準は増加傾向にあるとみられる。


管理方策

ニュージーランド政府によって1978年に200海里水域が施行され、本海域のNZスルメ類の資源も同国政府の管轄下に入り、1987年から漁獲割当制度(QMS)を設けて管理が始まった。当初において、同政府はトロール漁業を漁獲量規制する一方で、いか釣り漁業に対しては努力量規制(隻数)で管理していた。しかし、同じ資源に異なる管理法策を用いるという矛盾から、現在ではいか釣り漁業にも漁獲量規制を実施している。これはトロール漁業には混獲問題があり、努力量による規制が適用できないためである。現在、NZスルメ類資源は北側のSQU 10Tストック、東西のSQU 1JとSQU 1Tストック及び南のオークランド諸島のSQU6Tストック(図8)に対してそれぞれTACC(商業漁獲可能量)が決められている。イカ類のような単年性の生物では、ストックを維持するためのMSYを推定することは不可能であり、その必要もない。現在の漁獲量及び努力量データから漁期前や漁期中に利用可能な資源量を見積もることは不可能で、漁獲の規模から見ると将来の加入量や資源量に影響を与えることはないと考えられている。このため、本資源に対するTACCのセットはここ10年の間に大きな変化はない(図7)。これらのTACCに基づき配分される個別譲渡可能漁獲割当量(ITQ)はDWG(Deepwater Group Limited)によって管理されている。安全率を見込んだ管理を行っていることから、NZスルメ類資源への漁獲の影響は問題となっていない。ただし、南部海域のオークランド諸島におけるSQU6Tストックは、雑魚の混獲が少ないイカ狙いのトロール操業が中心となる。しかし、トロール操業によってこの諸島海域に生息しているニュージーランドアシカ(Phocarctos hookeri)の混獲死亡が発生するため、1993〜2004年までの間にニュージーランドの漁業省と環境省は毎年その死亡を制限するための混獲数の限度を60〜70頭に設定していた。近年になってイカの資源量が増加したことを受け、2004〜2006年には115〜150頭に混獲漁獲量制限数を増やしたが、2006年以降は68〜113頭と毎年ごとに設定されている。2010〜2011年漁期は実際の死亡数は58頭と推定され、近年では制限頭数を超えて混獲されることはなかった(Ministry of Fishery of New Zealand. 2011)。また、同海域におけるイカトロール船の操業は、アシカの混獲を減らす混獲防止装置(SLED: sea lion exclusion device)の装着が義務づけられ、これにより混獲死亡が減少している(Thompson et al. 2010)。


ニュージーランドスルメイカ類(ニュージーランド海域)の資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
(FAO統計)
5.8〜11.1万トン
平均:8.2万トン(2006〜2010年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
(FAO統計)
1,033〜3,951トン
平均:2,158トン(2006〜2010年)
管理目標 ニュージーランドEEZ内のTACC(商業漁獲量):12.7万トン(2011/12漁期)
資源の状態 推定できず
管理措置 4ストックに分けて、それぞれにTACCを決定
管理機関・関係機関 資源管理:SFMC(イカ漁業管理会社)がITQを管理
資源評価:ニュージーランド政府

執筆者

外洋資源ユニット
いか・さんまサブユニット
国際水産資源研究所 外洋資源部 外洋いか資源グループ

加藤 慶樹・酒井 光夫


参考文献

  1. Cherel Y. and Klages N. 1998. A review of the food of albatrosses. In Robertson G. and Gales R. (eds.), Albatross biology and conservation. Surrey Beatty, Chipping Norton. 113-136 pp.
  2. Department of Labour of New Zealand. 2012. Employees - New entrants and the minimum wage. Fact sheet. http://www.dol.govt.nz/er/pay/minimumwage/index.asp(2012年10月13日)
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