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62 日ロ浮魚・底魚類(総説)



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最近一年間の動き

日ロ間には、北西太平洋の生物資源の保存及び最適利用を考慮し、相互の200海里水域で他方の国が漁業を行うために、1984年に日ソ地先沖合漁業協定(通称:日ロ地先沖合協定)が締結され、これに基づき日ロ漁業委員会が設置されている。日ロ漁業委員会では、日ロ両国水域に共通に存在する主要な魚種系群の持続的利用を協議するため、科学者グループを設置し、両国科学者が、それらの資源状態を協議し報告書を作成している。

第28回日ロ漁業委員会の決定に従い、両国科学者は以下の諸活動を行い、日ロ両国が双方の水域内で利用している同一資源について最新の情報を交換し、資源状態に関する見解をとりまとめた。2012年9月にウラジオストック市において「さんま、まさば、まいわし、かたくちいわし、いか及びすけとうだらの生態学及び現存量に関する意見交換会」を開催し、サンマ、スケトウダラ、イカ類等の研究課題を報告し、議論を行った。2012年11月に東京都において「第26回日ロ漁業専門家・科学者会議」を開催し、資源状況などに関する資料及び意見の交換を行い、資源に関する見解と2013年の調査協力計画案を作成した。2012年11〜12月に東京で開催された「第29回日ロ漁業委員会」において当該調査協力計画案を検討し採択した。


図1a 図1b

図1. ロシア水域における我が国漁船に対する漁獲割当量の経年変化(下は近年の拡大)


図2a 図2b

図2. ロシア水域における我が国漁船の漁獲量の経年変化(下は近年の拡大)


表

表. ロシアによるTAC数量(トン)の推移


ロシアと我が国漁業の歴史

我が国の北洋漁業、特にロシア沖における漁業として、日露戦争の結果による領土の拡大にともなう漁場の広がりもあり、大正時代には母船式カニ漁業、帆船タラ漁業等が興った(斉藤 1960)。昭和初期には、母船式さけ・ます漁業、トロール漁業も含め発展したが、第2次世界大戦によってこれら漁業は大きな被害を受けた。第2次世界大戦後、マッカーサーラインによって我が国漁船の漁場は著しく狭められていたが、1952年に同ラインが撤廃されるとともに、ソ連邦沖公海新漁場の開発が積極的に進められた(北野1980)。1953年に北方四島周辺太平洋岸漁場、1956年にサハリン東岸タライカ湾、1957年にサハリン西岸タタール海峡で調査が行われ、スケトウダラ、ホッケ、カレイ類等の底びき網漁場が開発された(北野1980)。1956年には日ソ漁業条約、1969年には日ソかに取決、1972年には日ソつぶ取決が結ばれた。我が国漁船のソ連沖での漁獲量としては、1975年には北海道沖合底びき網が38.9万トン、北転船がカムチャッカ半島周辺で73.3万トン等であった(北野 1980)。

一方、ソ連漁業による日本沖での漁獲量は、1975年にはサバ13.3万トン、マイワシ12.2万トン、スケトウダラ13.4万トン、イトヒキダラ10.6万トン等、合計52.7万トンであった(北野1980)。1976年12月にソ連は漁業管理法を制定し、200海里漁業水域を設定したが、我が国も1977年3月に同漁業水域を設定した。1977年には日ソ・ソ日漁業暫定協定、1978年には日ソ漁業協力協定が結ばれ、相互に相手国200海里水域で自国の漁船が操業できるようになった。1978年にソ連漁業水域内で我が国漁業に与えられた漁獲割当量(漁獲枠)は、スケトウダラ34.5万トン、イカ14.6万トン、イカナゴ6.5万トン、マダラ4.5万トン、サンマ6.9万トン等、合計85万トンであり、200海里水域設定以前の漁獲量に比べかなり減少した(北野1980)。同年の日本漁業水域内におけるソ連漁業への漁獲割当量は、マイワシ・マサバ31.8万トン、スケトウダラ8.0万トン、イトヒキダラ13.8万トン等、合計65.0万トンであり、200海里水域設定以前の漁獲量とそれほど差はなかった(北野 1980)。

相互の相手国200海里水域内での割当量の推移として、ロシア水域における我が国漁船に対する漁獲割当量の経年変化を図1に示した。1979〜1985年には、割当量は60〜75万トンの範囲であったが、1986年には15万トンへと大きく減少した。1987年にはそれまでの無償枠の他に、日本漁船に対してソ連水域で10万トンの有償枠が設けられるようになった。我が国漁業に対する割当量は、1988年には相互枠と有償枠を含めてスケトウダラ12.8万トン、サンマ6.5万トン、イカ7.5万トン等、合計31万トンとなった。1998年にはスケトウダラ1.6万トン、サンマ3.2万トン、イカ4.1万トン等、合計10.6万トンとなり、20年前の1978年の8分の1となった。我が国漁業に対する割当量は、2005年以降、5.6〜5.8万トンで推移していた。2013年は、6.7万トン(相互入漁6.2万トン、有償入漁5.1千トン)と前年より2割増加した。漁業種類別には、さんま棒受網、遠洋底びき網(北転船)、いか釣り、沖合底びき網の順に割当が多い。

日本水域におけるロシア漁船に対する割当量は、1985年以降我が国漁船に対するロシアからの相互枠と等量で推移しており、1988年には21万トン、1998年には9.5万トンとなったが、2004年は5.5万トンとなり、それ以降は5.0〜5.2万トンで推移している。魚種としては、1980、1990年代はマイワシ・マサバが最も多かったが、2001年以降はイトヒキダラが半分以上を占めていた。2013年の割当量はイトヒキダラ2.8万トン(前年同)、サンマ2.1万トン(同64%増)、マイワシ・マサバ1.3万トン(同24%増)となった。

ロシア水域における実際の我が国の漁獲量の推移を図2に示した。相互枠と有償枠を合わせて、我が国漁船の漁獲量は1979年の約54万トンが最も多く、スケトウダラが約5割を占めた。1986年には約7万トンに急減したが、1988年には約17万トンに回復した。その後は直線的に減少し、2002年には1.2万トンとなったが、2004〜2006年には4.5〜5.1万トンに増加した。2007〜2009年には2.3〜2.7万トンに半減したが、その後は3.4万トンに回復している。1980年代前半はスケトウダラ、その後はサンマが最も多く漁獲された。割当量に対する漁獲量の割合は、1980年代は50〜70%であったが、90年代には20〜30%程度に低下した。2004〜2006年には再び70〜90%に上昇したが2007〜2009年は50%以下に低下した。2010年以降は60%近くに回復している。

我が国水域におけるロシア漁船の漁獲量は、1985〜1992年には5〜15万トンで、マイワシとマサバが大部分を占めたが、1994年以降ほとんど漁獲されなくなった。最近はイトヒキダラのみが漁獲されていたが、2010年以降はサンマも漁獲されている。2000年以降のロシア漁船による漁獲量は、2.4〜2.7万トンで推移していたが、2008年以降2万トンを割っている。2011年は震災によるロシア側の操業自粛により入域が遅れたため、漁獲量は1.2万トンと前年の3分の2に減少した。

なお、日本漁船は、日ソ地先沖合漁業協定の他に日ソ漁業協力協定、北方四島周辺水域操業枠組協定及び貝殻島昆布協定(民間)に基づく操業も行っている。


日ロ両国水域にまたがって存在する資源に関する資源評価

2012年の日ロ漁業専門家・科学者会議において、日ロ両国が双方の水域内で利用している同一資源の状況に関して、両国の科学者は、以下の通り、共通の見解を持った。スケトウダラ、サンマ、スルメイカ等については、ロシア水域での分布や資源状態に関する情報が、それらの適切な資源評価及び評価結果を踏まえた資源管理のために重要であり、引き続き、日ロ科学者による意見交換会等の機会に、これらの情報収集に一層努める必要がある。

(1)サンマ

現状において資源は十分高い水準にあり、漁業の資源への影響は僅かであるが、年毎の資源変動は大きいことから、今後の動向には注意を要する。


(2)マイワシ

1990年代に太平洋の資源は急激に減少した。一方、現状においては太平洋の資源は低水準にあるが、近年、その増加傾向が認められている。対馬系群の資源は増加が認められるものの、その水準は低位であることから、今後の動向には注意を要する。


(3)マサバ

太平洋の資源状況は依然低水準にあるが、2000年代前半の最低水準は脱した。


(4)カタクチイワシ

資源は十分操業可能な中位水準にある。


(5)スルメイカ

年毎の変動にも関わらず、太平洋及び日本海におけるスルメイカの資源量は過去30年程度の期間で見ると比較的高い水準にある。


(6)ニシン

サハリン・北海道系ニシンの資源は何らかの増加の兆候もないまま極めて低い水準にある。


(7)スケトウダラ

北部日本海系群の資源は1990年以降低水準にある。


ロシアからの割り当てに関係するその他の重要資源に関する情報

ロシアから入手可能なマダラ、キチジ等の重要資源に関する情報は少ない。ロシアは、これら魚種についても資源調査を基にTACを設定しているため、これらのTACは基本的に資源動向を反映していると考えられる。ここでは、我が国漁船が漁獲している主な魚種に関するロシアが設定した極東水域のTAC数量を記載する(表1)。



執筆者

北西太平洋ユニット
東北区水産研究所 資源海洋部

山田 陽巳


参考文献

  1. 北野裕. 1980. 北海道海域底魚資源. In 青山恒雄(編), 底魚資源. 恒星社厚生閣, 東京. 204-228 pp.
  2. 斉藤市郎. 1960. 遠洋漁業.恒星社厚生閣, 東京. 318 pp.