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52 イワシクジラ 北西太平洋

Sei Whale

Balaenoptera borealis

                                                  
PIC
図1. 浮上直後のイワシクジラ

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最近一年間の動き

引き続き本系統の詳細評価を進めるための国際捕鯨委員会(IWC)科学委員会の活動が継続している。未調査域における本種の分布密度に関する情報を得るため2010年に開始されたIWCと日本による共同の北太平洋鯨類目視調査プログラムが、2012年も行われた。


利用・用途

鯨肉は、刺身、大和煮(缶詰)、鯨かつ、鍋物材料として利用されている。内蔵は、ゆで物として食される。ヒゲ板は工芸品の材料として利用されている。鯨油はかつて工業原料などに用いられた。


図2

図2. 北太平洋におけるイワシクジラの漁獲量の推移(1910〜2011年)


図3

図3. イワシクジラの分布域(青)


漁業の概要

本種の捕獲は、1890年代末に基地式の近代捕鯨によって開始された。その後、1940年には母船式捕鯨が開始され本種も捕獲された。日本では1911年から捕鯨統計が整備されたが、イワシクジラとニタリクジラが分類されず、それが公式に判別されるようになった1954年までは統計上全てイワシクジラとして記録された。北太平洋では日本の他に、旧ソ連、米国並びにカナダが本種の捕獲を行った(図2)。

1910年代から年間500頭の捕獲が1955年までほぼ一定して継続したが、1967年から捕獲が急激に伸び、1968年には6,000頭を越える捕獲をあげた。1968年以後日米加ソ4か国による「北太平洋捕鯨規則」によって捕獲割当量が定められるようになり、1970年から国際捕鯨取締条約の附表に北太平洋産鯨類の捕獲枠が明示されるようになった。その後IWCの規制が厳しくなり、1976年から北太平洋全域で捕獲が禁止されている。商業捕鯨以外では国際捕鯨条約第8条に基づく第II期北西太平洋鯨類捕獲調査(JARPN II)により2004年から100頭を上限に(2002〜2003年は50頭上限)捕獲されている。


生物学的特徴

本種はナガスクジラ科ではシロナガスクジラ、ナガスクジラに次いで3番目に大きく、北半球産で雄14.0 m、雌14.8 mに達し、体重は雄15.9トン、雌17.8トンである(Masaki 1976、Horwood 1987)。

記録された最高年齢は60歳である。性成熟年齢は、1925年に10歳であったものが1960年には7歳と報告されている。出産時期は、11月とされ、出産海域は亜熱帯・温帯の外洋海域と想定される(図3)。

本種はさまざまな種類の餌生物を捕食し、知られているものとして魚類(カタクチイワシ、マイワシ、キュウリエソ、サンマ、マサバ、ハダカイワシ類など)、イカ類(スルメイカ、テカギイカなど)、動物プランクトン(オキアミ、カイアシ類)がある(根本 1962)。

本種を捕食する可能性があるものとしてはシャチがあるほか、繁殖場ではサメ類が仔鯨を襲う可能性もある。


資源状態

1975年のIWCで本系統について初めて資源評価が行われた。手法はCPUEと発見率指数(目視調査)を統合したDe Lury法であった(Ohsumi and Wada 1974、Tillman 1977)。資源評価の結果、初期資源量は42,000頭、1975年時点の資源量は9,000頭であるとされ、当時の管理方式ではMSYレベル(23,000頭)の40%のため保護資源と分類された。それにより、1976年度から北太平洋全域で本種の捕獲が禁止され現在に至っている。日本の目視調査の結果では1980年代始めから1990年代中頃にかけて北西太平洋海域で増加傾向が見られ、資源が回復しつつあるものと思われる(藤瀬ほか 2004)。

1975年以降、本系群に関する資源評価は行われていなかったが、2013年のIWC科学委員会において資源の詳細評価が開始される予定である。2002年と2003年の調査捕獲時の目視調査に基づき本種の資源量推定が行われ、調査海域内で4,100頭(CV=0.281)、非調査海域へ過去の目視調査結果から引き延ばし北西太平洋で68,000頭(CV=0.418)と推定された(Hakamada et al. 2004)。ただし、引き延ばし方法には異論が出され、詳細評価に向けた動機付けの一つとなっている。2010年及び11年に実施されたIWC・日本共同の北太平洋鯨類目視調査プログラムの結果から、東経170度以東の中央、東部北太平洋の調査海域内の資源量は、9,300頭(CV=0.350)と6,600頭(CV=0.420)と推定された(Hakamada et al. 2011, 2012)。


管理方策

IWCでは資源状態にかかわらずすべての商業捕獲が休止状態にある。我が国は2002年から捕獲調査を実施する一方、本種を対象とした目視調査を実施しつつあり、それらを用いて資源評価を行う必要がある。さらに西経海域を中心とした未調査海域における目視調査を実施する必要があったため2010年に開始されたIWCと日本による共同の北太平洋鯨類目視調査が、IWC太平洋鯨類生態系調査(IWC-POWER)プログラムの下、2012年も行われた。


イワシクジラ(北西太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 (おそらく)中位
資源動向 増加
世界の捕獲量
(最近5年間)
なし(商業捕鯨モラトリアムが継続中)
我が国の捕獲量
(最近5年間)
捕獲調査により年間100頭
管理目標 商業捕鯨モラトリアムが継続中であり、未設定
資源の現状 西部北太平洋では目視調査により増加傾向判明
管理措置 商業捕鯨モラトリアムが継続中
管理機関・関係機関 IWC

執筆者

外洋資源ユニット
鯨類サブユニット
国際水産資源研究所 外洋資源部 鯨類資源グループ

吉田 英可

国際水産資源研究所 外洋資源部

宮下 富夫


参考文献

  1. 藤瀬良弘・田村力・板東武治・小西健志・安永玄太. 2004. イワシクジラとニタリクジラ. 鯨研叢書 No.11. 日本鯨類研究所, 東京. 168 pp.
  2. Hakamada, T., Matsuoka, K. and Nishiwaki, S. 2004. Increase trend and abundance estimate of sei whales in the western North Pacific. Document SC/56/O19 submitted to 55th IWC. 9 pp.
  3. Hakamada, T., Kiwada, H., Matsuoka, K. and Kitakado, T. 2011. Preliminary estimation of North Pacific sei whale abundance derived from 2010 IWC/Japan Joint Cetacean Sighting Survey data. Document SC/63/IA13 submitted to 63rd IWC. 7pp.
  4. Hakamada, T., Matsuoka, K. and Kitakado, T. 2012. Preliminary estimation of North Pacific sei whale abundance based on the 2011 IWC-POWER sighting survey data. Document SC/64/IA11 submitted to 64th IWC. 10pp.
  5. Horwood, J. 1987. The sei whale: population biology, ecology and management. Croom Helm, New York. 375 pp.
  6. Masaki, Y. 1976. Biological studies on the North Pacific sei whales. Bull. Far Seas Fish. Res. Lab., 14: 1-104.
  7. 根本敬久. 1962. ひげ鯨類の餌料. 鯨研叢書 No.4. 日本鯨類研究所, 東京. 136 pp.
  8. Ohsumi, S. and Wada, S. 1974. Status of whale stocks in the North Pacific, 1972. Rep. Int. Whal. Commn., 24: 114-126.
  9. Tillman, M.F. 1977. Estimates of population size for the North Pacific sei whales. Rep.Int. Whal. Commn., (Sp. Is.) 1: 98-106.