--- 要約版 ---

51 シロナガスクジラ 南極海―南半球

Blue Whale

Balaenoptera musculus

                                                       

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図

通常型(青色)、ピグミーシロナガスクジラ(桃色)の分布図(Kato et al. 1995を改変)


図

通常型シロナガスクジラ資源低下とクロミンククジラの性成熟年齢の経年的低下(加藤 1998)


図

シロナガスクジラとピグミーシロナガスクジラの鼻孔形態の亜種間比較(Kato et al. 2002)



シロナガスクジラ(南極海・南半球)の資源の現況(要約表)

資源水準 極めて低位
資源動向 増加
世界・日本の捕獲量
(最近5年間)
なし(商業捕鯨モラトリアムが継続中)


管理・関係機関
国際捕鯨委員会(IWC)

最近一年間の動き
国際捕鯨委員会(IWC)科学委員会による本種の包括的資源評価が2008年の同年次会議において合意を得て終了、その後、本種をめぐる大きな動きはない。2012年のIWC科学委員会では、IWCによるSOWER調査(南大洋鯨類生態系総合調査)が2009/10年で終了したのを受け、今後の南極海における資源動向のモニタリング方法や写真個体識別データ拡充の必要性などについて継続協議された。

生物学的特性
  • 世界に3亜種:南北の各半球の通常型、南半球の矮小型ピグミーシロナガスクジラ
  • 寿命:110〜120歳
  • 成熟開始年齢:10歳頃
  • 繁殖期・繁殖場:冬、低緯度海域
  • 索餌期・索餌場:夏、南氷洋
  • 食性:オキアミなど
  • 捕食者:シャチ

利用・用途
刺身、鯨油など

漁業の特徴
本種は、近代捕鯨成立以後の主要対象種で、1904〜1965年まで南半球の各国基地に加え捕鯨工船の考案によって誕生した母船式捕鯨によって多く捕獲された。これらの捕鯨業の管理は、第二次世界大戦以後は国際捕鯨委員会(IWC)によって行われ、資源状況の悪化に伴い1964/65年漁期から本種の捕獲を禁止した。我が国は同委員会に1981年に加盟した。IWCは1982年に採択した商業捕鯨のモラトリアムによって、それ以降の商業捕鯨も停止している。

漁業資源の動向
1904年、ノルウェーが近代式捕鯨を南氷洋海域で開始したことによって本海域の本種の捕獲が開始された。本種は開始当時からの主要鯨種であり、IWCが初期に導入していたBWU単位制度もこの鯨種の産油量を基準に定められていた。南氷洋捕鯨は1920年代に最初の隆盛期を迎え、この時期に南氷洋での通常型シロナガスクジラの捕獲頭数は年間2万頭を超えるようになり、1930/1931漁期には史上最高5か国41船団が出漁し、これも史上最高の29,410頭を捕獲した。しかし、この時期以降、第二次世界大戦中の休漁期はあるものの、通常型シロナガスクジラの資源は減少を続けた。1959年からは亜種のピグミーシロナガスクジラの捕獲を始めたものの、資源状況の悪化は著しく、1964/1965年漁期からは南半球全域において捕獲が禁止され、現在においても捕獲は再開されていない。

資源状態
南半球産シロナガスクジラは最も資源が減少している系群の一つである。最新のデータ解析によれば、通常型の1997年の資源量は2,280頭で、年率6.4%で資源が回復に向かっていることがIWCで合意された。もっとも、現在資源レベルは初期資源量の1%以下に過ぎない。この要因には生態的競合種のクロミンククジラの台頭もあると考えられており、シロナガスクジラの回復に向け、鯨種間の競合関係を更に明らかにする必要がある。

管理方策
IWCは商業捕鯨のモラトリアムを行う一方で、対象資源の包括的資源評価を実施している。現在、その評価は南半球産ひげ鯨類について進行中で、2006年から開始された国際捕鯨委員会(IWC)科学委員会における本種の包括的資源評価が2008年6月にサンティアゴで開催された同年次会合において終了した。また、IWCにおいて1996年から実施されてきた本種を含む大型鯨類を対象とした南大洋鯨類生態総合調査(SOWER)による目視調査が、2009/10年の調査をもって終了した。IWC科学委員会では、同調査終了後、いかにして南極海から情報を収集し資源動向をモニタリングしていくかについて協議が続けられている。

資源評価まとめ
  • 資源量は2,280頭
  • 年率6.4%で増加
  • 初期資源量の1%以下

資源管理方策まとめ
  • さらに資源回復をすれば、低水準資源からの回復と利用と保護の両立の実例となりうる
  • 生態的に競合する鯨種間の関係の解明がさらに必要
  • 資源動向モニタリングの継続が必要