--- 総説 ---

41 その他外洋性サメ類 北太平洋

ヨゴレ Oceanic Whitetip Shark

Carcharhinus longimanus

クロトガリザメ Silky Shark

Carcharhinus falciformis

ハチワレ Bigeye Thresher Shark

Alopias superciliosus

ミズワニ Crocodile Shark

Pseudocarcharias kamoharai

                                                    PIC PIC
                                                        ヨゴレ                                                             ハチワレ
                                                    PIC PIC
                                                        クロトガリザメ                                                             ミズワニ
                                                   
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まえがき

谷内(1997)は、日本のまぐろはえ縄で混獲されるサメ類として26種を挙げ、よく漁獲される種をミズワニ、アオザメ、バケアオ、ハチワレ、ヨシキリザメ、クロトガリザメ、ヨゴレの7種としている。中野(1996)は、太平洋の地方公庁船の調査資料からサメ類15種の漁獲組成を報告している。漁獲組成で1%以上を占める種類は、ヨシキリザメ、アオザメ、ミズワニ、ヨゴレ、クロトガリザメ、ハチワレの6種であった。また、松永・中野(1996)は、海洋水産資源開発センター調査資料と地方公庁船調査資料から25種をあげている。このうちヨシキリザメ、アオザメ、ネズミザメについては本編とは別に検討していることから、本編ではヨゴレ、クロトガリザメ、ハチワレ、ミズワニの4種をまぐろはえ縄で頻繁に漁獲される種として検討の対象とする。


最近一年間の動き

WCPFCで主要サメ類と位置付けられているヨゴレ、クロトガリザメの資源解析がSPCで実施され、いずれの種も悲観的な資源評価結果が示されると共に、捕獲自体を避けるための回避措置の導入と主対象魚種とは異なる管理基準の設定が勧告された。またヨゴレの船上保持を禁止する規制が可決されている。


利用・用途

ヨゴレ、クロトガリザメ、ハチワレの鰭はフカヒレスープの原料に、皮は皮革製品、肉は生肉や干し肉、練製品として人間の食用になる他、家畜餌用のフィッシュミールにもなる。肝油は工業用、化粧品用等に利用される。ミズワニは利用されていない(Compagno 2001)。


図1

図1. 外洋性サメ類の分布(Last and Stevens 1994)


表1

表1. 水産庁調査委託事業で収集された主要港におけるサメ類種別漁獲量(単位:トン)


表2

表2. 栄養補給から見た板鰓類の繁殖様式


表3

表3. まぐろはえ縄漁業で漁獲されるサメ類4種の繁殖様式、産仔数、出生時の体長


表4

表4. まぐろはえ縄漁業で漁獲されるサメ類4種の体長測定部位間の換算式


漁業の概要

水産庁では、まぐろはえ縄等における主要水揚港のサメ類の種別水揚量を調査している(表1)。それによると、まぐろはえ縄等で漁獲される主要な種類とそれぞれ1992〜2011年の合計値に占める割合は、ヨシキリザメ(70.2%)、ネズミザメ(17.2%)、アオザメ(6.0%)、オナガザメ類(2.2%)、メジロザメ類(0.2%)、ヨゴレ(0.2%)であった。日本におけるサメ類水揚げの主体は近海まぐろはえ縄で、特に宮城県の漁港へはほとんどのサメ類を持ちかえることから、漁獲に占める種組成をある程度正確に反映していると考えられる。ただし、商品価値のないミズワニは水揚げされていない。またクロトガリザメは、種査定の問題でメジロザメ類か、その他のサメ類として集計されていると考えられる。


生物学的特徴

【分布】

まぐろはえ縄で混獲される外洋性サメ類4種の分布図を以下に示す(Last and Stevens 1994)(図1)。ミズワニ、ヨゴレ、クロトガリザメ、ハチワレは三大洋の熱帯海域に主に分布する。またLast and Stevens(1994)の分布図では、クロトガリザメの分布が局所的であり、またハチワレ、ミズワニの分布に多くの疑問符が付されているが、水産庁及び国際水産資源研究所の調査によれば、これらの種は熱帯域に広く分布している。外洋性サメ類の系群については、ほとんど知られていない。外洋性サメ類の分布及び生態から考えると、主に熱帯域に分布するミズワニ、ヨゴレ、クロトガリ、ハチワレは太平洋、大西洋、インド洋でそれぞれ単一の系群と考えるのが妥当であろう。外洋性サメ類の系群については、分布、回遊、標識放流、遺伝形質の解析等が必要である。


【産卵・回遊】

板鰓類(サメ・エイ類)の繁殖様式は多様であり、卵生と胎生に大別される。谷内(1988)は母体からの栄養補給の面から、繁殖様式を定義している。それによると、胎生はさらに偶発胎生と真正胎生に分かれ、真正胎生は卵黄依存型と母体依存型に2分される。母体依存型はさらに、卵食性・共食い型、胎盤類似物型、胎盤型の3つに分けられる。谷内(1988)によるサメ類繁殖様式の定義を表2に示す。

まぐろはえ縄で混獲される外洋性サメ類4種の繁殖様式は、ヨゴレ、クロトガリザメが胎生、胎盤型、ミズワニ、ハチワレが胎生、卵食・共食い型である。それぞれの産仔数は、ミズワニは4尾(Compagno 1984)、ヨゴレは1〜15尾(平均6.2尾)(Seki et al. 1998)、クロトガリザメは1〜16尾(平均6.2尾)(Oshitani et al. 2003)、ハチワレは2〜4尾(Compagno 1984)である(表3)。

出生時の体長は、ミズワニが41 cm(全長)(Compagno 1984)、ヨゴレが40〜55 cm(Seki et al. 1998)、クロトガリザメが48〜60 cm(Oshitani et al. 2003)、ハチワレが60〜140 cm(全長)(Compagno 1984)である。なお体長について、特に説明がない場合は、尾鰭前長を表す


【成長・成熟】

まぐろはえ縄で漁獲される外洋性サメ類4種については、ミズワニを除き成長式が推定されている。しかし、体長測定部位が研究者によって、尾鰭前長、尾叉長、全長とまちまちであるので、これまで公表されている測定部位間の換算式を、以下に引用する(表4)。

ヨゴレの成長式はSeki et al.(1998)が太平洋について、クロトガリザメはBranstetter(1987)とBonfil et al.(1993)が大西洋について、Oshitani et al.(2003)が太平洋について、それぞれ報告している。ハチワレは、Liu et al.(1998)が太平洋について報告している。ミズワニの成長について公表されている資料はない。


資源状態

【資源の動向】

Taniuchi(1990)は、太平洋及びインド洋における日本の地方公庁船の漁獲成績報告書を分析し、1973〜1985年の間で、まぐろはえ縄調査で漁獲されるサメ類のCPUEがほぼ一定であったと報告している。また1992〜2005年の地方公庁船データから北太平洋におけるクロトガリザメとハチワレで標準化CPUEが求められているが、期間中、両種共に顕著な増減傾向は認められなかった(Matsunaga et al. 2006)。一方、IATTC海域の米国まき網データを解析した結果から、クロトガリザメの標準化CPUEが減少傾向にあると報告されている(Minami et al. 2006)。最近、WCPFCで主要サメ類と位置付けられているヨゴレ、クロトガリザメ、オナガザメ類の資源解析がSPCで実施され、ヨゴレとクロトガリザメの標準化CPUEが減少傾向にあることが示された(Clark et al. 2011a、Clark et al. 2011b、Clark 2011)。


管理方策

クロトガリザメについてはICCATで、ヨゴレはICCATとIATTC、WCPFCで、ハチワレはICCATとIOTCでいずれも船上保持を禁止する規制が可決された。ミズワニについては、資源状態を表す資料がほとんど存在しないため、今後検討していく必要がある。

また、資源評価のための種別漁獲量の統計資料の充実を図っていく必要がある。水産庁では1997年、まぐろはえ縄における漁獲成績報告書の提出フォームを変更し、6種のサメ類の漁獲量を報告するようになっているが、まぐろはえ縄漁船で漁獲されるサメ類の種類及び放流量を正確に推定するためには、オブザーバープログラム等の漁業に依存しない方法での資料収集の推進を含め、資料収集方法の改善を検討していく必要があろう。


その他外洋性サメ類(北太平洋)の資源の現況(要約表)

種名 ヨゴレ クロトガリザメ オナガザメ類 ミズワニ
資源水準 調査中 調査中 調査中 調査中
資源動向 減少 横ばい 横ばい 横ばい
世界の漁獲量 調査中 調査中 調査中 調査中
我が国の漁獲量
(最近5年間)
4〜40トン
平均:14トン
1〜12トン
平均:8トン
160〜380トン
平均:240トン
約10,000尾/年程度
管理目標 検討中 調査中 調査中 調査中
資源の現状 調査中 調査中 調査中 調査中
管理措置 船上保持禁止 船上保持禁止 船上保持禁止 モニタリング
管理機関・関係機関 CCAT、IATTC、WCPFC ICCAT、WCPFC ICCAT、IOTC、WCPFC なし

執筆者

くろまぐろユニット
国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部

中野 秀樹

かつお・まぐろユニット
混獲生物サブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 混獲生物グループ

松永 浩昌

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

余川 浩太郎


参考文献

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