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40 ネズミザメ 北太平洋

Salmon Shark

Lamna ditropis

ニシネズミザメ 北大西洋・南半球の亜寒帯域

Porbeagle

Lamna nasus

                                                  PIC PIC
                                                        ネズミザメ                                                             ニシネズミザメ

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最近一年間の動き

ネズミザメは我が国の水揚量は2001年頃までは緩やかに増加したが、その後は横ばい状態である。2011年の水揚量は震災の影響により前年の60%減の1,136トンであった。ニシネズミザメについては、2012年に資源評価は行われていないが、みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)の生態学的関連種作業部会会合において、ミナミマグロ漁場で混獲されるニシネズミザメの資源状態に関する議論が行われた。同会合において、南半球のニシネズミザメの資源評価に向けた取り組みを行うことが合意された。2013年3月、ワシントン条約(CITES)第16回締約国会議において、ニシネズミザメを付属書Uに掲載する提案がEUを始めとする国々によって提出され可決された。


利用・用途

肉はソテーやみそ漬け、鰭はフカヒレ、脊椎骨は医薬・食品原料、皮は革製品として利用されている。


図1

図1. 日本の主要漁港へのネズミザメ水揚量


図2

図2. ネズミザメ(左)とニシネズミザメ(右)の分布(Compagno 2001)


図3

図3. ネズミザメの年齢と成長 (田中 1984、Goldman and Musick 2006)


図4

図4. ニシネズミザメの年齢と成長(Aasen 1963、森信 1996、Natanson et al. 2002、Francis et al. 2007)


図5

図5. 北太平洋における日本のはえ縄漁業データをもとに標準化したネズミザメのCPUE


図6

図6. ミナミマグロ漁場において、日本の科学オブザーバーが収集したデータを基に標準化したニシネズミザメのCPUE(松永ら 2012)


漁業の概要

ネズミザメは北太平洋の亜寒帯域に生息し、沿岸から外洋まで出現する。主としてはえ縄や流し網によって漁獲され、その多くが宮城県の気仙沼港を中心とした東北地方に水揚げされている。さめ類の中では肉質が良好で比較的商品価値が高く、鰭だけでなく、肉や内臓(一部)は食用として利用されている。また、これと近縁種であるニシネズミザメは北大西洋及び南半球の亜寒帯域に生息し、日本のまぐろはえ縄漁船が北大西洋と南大西洋の亜寒帯域で年間数十トン混獲しているが、持ち帰る程の価値はないようで、多くは海外の港に水揚げされているようである。一方で、北大西洋の沿岸諸国においては本種を主要漁獲対象種とする漁業が存在しているが、北資源は乱獲状態にあると推定されたため、TACの設定により管理されている。日本の主要漁港へのさめ類の種別水揚量については、水産庁の日本周辺クロマグロ調査委託事業(平成4〜8年度)及び日本周辺高度回遊性魚類資源対策調査委託事業(平成9年度以降)で調査されている。それによると1992〜2011年におけるネズミザメのはえ縄及び流し網による日本の主要漁港への水揚量は、それぞれ290〜2,930トン、280〜1,590トン、全体では1,140〜4,410トンであった。水揚量は2001年頃までは緩やかな増加傾向が見られ、その後2009年までは増減を繰り返しながら横ばい状態であった(図1)。2011年は、東日本大震災の影響で水揚げ量は大幅に減少して1,136トンであった。さめ類の合計値に占めるネズミザメの割合は15〜26%であり(2002〜2011年)、ヨシキリザメに次いで多かった。


生物学的特徴

【分布】

ネズミザメは北太平洋の亜寒帯域の沿岸から外洋まで広く分布し(図2)、亜寒帯域出現種と考えられている(中野 1996)。ニシネズミザメは北大西洋及び南半球の亜寒帯域に分布している(図2、Compagno 2001)。系群構造については、ネズミザメについては北太平洋内において1系群とする説と東西2系群とする説があるが、まだ結論は出ていない。ニシネズミザメは繁殖周期が大洋の南北で逆になることと、南半球における分布が連続していると想定されることから、南北で別系群と考えるのが妥当であろう。北大西洋・南大西洋・インド洋(ミナミマグロ漁場)において収集されたニシネズミザメの標本を分析した分子遺伝学的研究によれば、北大西洋はその他の2つの海域とは明瞭に分かれるものの、南大西洋とインド洋の標本間の遺伝的な差は小さいことが示されている(Kitamura and Matsunaga 2008)。一方で、はえ縄で同じく混獲されるヨシキリザメやアオザメに比べると沿岸性が強く(Pade et al. 2009)外洋域での分布密度が小さくなる点から、大西洋では東西に分かれているとの見方も存在し、ICCATにおいては南北とともに東西に分けた資源評価が行われている。しかし、近年の研究では、広範囲な移動を示す個体がいること(Saunders et al. 2011)、南半球において本種は外洋域を含めて広く分布すること(谷津 1995、Semba et al. 2012)が報告されており、詳細については今後の研究を待つ必要がある。


【産卵・回遊】

両種の繁殖様式は卵食・共食い型の非胎盤型胎生であり(Wourms 1977)、産仔数の範囲と出生時の体長はネズミザメがそれぞれ4〜5個体、約70 cm(尾鰭前長)(田中 1980a)、ニシネズミザメはそれぞれ4個体、58〜67 cm(尾叉長)(Francis and Stevens 2000、Jensen et al. 2002)と報告されている。ニシネズミザメについては、妊娠期間が北大西洋・南太平洋ともに8〜9か月と推定されており、北大西洋の研究では繁殖周期は1年であることが示唆されている。回遊については両種とも季節的な南北移動が示唆されている(田中 1980a、谷津 1995)。また、ネズミザメの場合、幼魚は亜寒帯境界付近を生育場にしていると推測されている(中野 1996)。交尾場、出産場等についての知見は乏しいが、出産期はネズミザメが3〜5月(田中 1980a)、ニシネズミザメが春〜夏 (北大西洋では4〜6月、南太平洋では6〜7月;Francis and Stevens 2000、 Jensen et al. 2002)で、北大西洋のニシネズミザメについては、交尾期が9〜11月と推定されている。


【成長・成熟】

両種ともに脊椎骨に形成される輪紋から年齢が推定されており、ネズミザメについては田中(1980a)、Goldman and Musick(2006)がそれぞれ北西太平洋、北東太平洋の個体群について成長式を推定している(図3)。ニシネズミザメについては、Aasen(1963)、Natanson et al.(2002)が北大西洋、Francis et al.(2007)が南太平洋、森信(1996)がインド洋(ミナミマグロ漁場)のニシネズミザメ個体群の成長式を推定している(図4)。ネズミザメについては、東西の違いは小さいが、ニシネズミザメについては北大西洋個体群と南太平洋個体群の成長曲線は大きく異なっており、インド洋の個体群の成長式は両者の間に位置している。成熟体長と年齢は、ネズミザメは北西部では雌180 cm(尾鰭前長)で8〜10歳、雄140 cm(尾鰭前長)で5歳、北東部では雌165 cm(尾鰭前長)で6〜9歳、雄124 cm(尾鰭前長)で3〜5歳と推定されている(田中 1980a、Goldman and Musick 2006)。またニシネズミザメでは北大西洋では雌212〜218 cm(尾叉長)で13〜14歳、雄174〜175 cm(尾叉長)で7〜8歳と報告されている(Campana et al. 1999、Jensen et al. 2002)。南太平洋では雌165〜180 cm(尾叉長)で15〜18歳、雄140〜150 cm(尾叉長)で8〜11歳と報告されている(Francis and Stevens 2000)。寿命は、ネズミザメの場合、雌が20年、雄が25年以上(田中1980a, Goldman and Musick 2006)、ニシネズミザメは北大西洋で20〜46年(Aasen 1963、Campana et al. 2002、Natanson et al. 2002)、南太平洋で最大65年(Francis et al. 2007)と推定されている。


【食性・捕食者】

ネズミザメの食性は、48°N以北の大型魚がさけ・ます類やいか類、48°N以南の小型魚が多獲性浮魚類(いわし類、サンマ等)やいか類を多く摂取している(川崎ほか1962、佐野1960、1962、田中1980b)。本種の摂餌行動については、はっきりとした日周性は報告されておらず、生息域に豊富にいる利用しやすい動物を食べる日和見食者であると考えられている(Kubodera et al. 2007)。ニシネズミザメも魚類・頭足類等を中心として摂餌する日和見食者と考えられているが、季節回遊に関連した食性の変化(春:表層の浮魚類、秋:深層の底魚類)が報告されている(Joyce et al. 2002)。また、捕食者については両種共に良く知られていない。


資源状態

【資源の動向】

ネズミザメについては、Nakano and Honma(1996)が提案した、まぐろはえ縄漁船の漁獲成績報告書から、さめ類混獲率(航海あたりのさめ類混獲日の割合)によって、信頼性の高いデータを選別する方法を用いてCPUEの標準化を行った。具体的には、1993〜2007年にかけてのまぐろはえ縄漁船の漁獲成績報告書から報告率80%以上のデータを抜き出し、一般化線形法(GLM)で標準化したネズミザメのCPUEを算出した。その結果は予備的ではあるが、1994〜1998年、2003〜2007年にかけて増減はあるものの、一定した傾向は認められなかったので、解析期間中にネズミザメの資源状態は大きく変化はしていなかったものと考えられる(図5)。

南半球のニシネズミザメ系群に関しては、南アフリカ沖やオーストラリア西岸沖のミナミマグロ漁場において、科学オブザーバー調査によって得られたさめ類混獲データから、GLMで標準化されたCPUEが得られている(松永ら 2012)。その結果をみると、1992〜2010年のCPUEは増減を繰り返していたものの、一定した傾向は見られなかった(図6)。また、Semba et al.(2012)は、南半球における日本のはえ縄漁業の漁獲成績報告書を用いて1994年から2011年の期間において本種のCPUEを標準化した。その結果、解析期間中、CPUEに顕著な増減傾向は見られなかった。一方で、南米ウルグアイ沖ではCPUEの減少傾向が報告され、資源の減少が懸念されている(Pons and Domingo 2009)。

大西洋のニシネズミザメに関しては、2009年に資源評価が行われ、大西洋の北西部、北東部、南西部、南東部の4系群を仮定した解析が行われた。北東系群は、利用の歴史が最も古いものの漁業最盛期の情報がないため、解析に際して大きな不確実性がともなう結果となった。予備的解析の結果、現在の資源量はBMSY以下であり、漁獲死亡率はFMSYより大きいことが示唆された。北西系群の資源状態を評価したカナダの報告によれば、資源量は一度BMSYを大きく下回ったが、近年の漁獲死亡率はFMSYを下回り、資源は回復傾向を示している。いずれの系群も、漁獲死亡を0にした場合でも、資源状態BMSYの状態まで回復するには20年以上を要すると推定された。南系群については、西部については資源は減少傾向にあり(BMSY以下でFMSY以上)、東部については1990年代まで安定したトレンドが示されたが、いずれにおいてもデータの量が非常に少ないため、資源水準についての結論は得られていない(ICCAT 2009)。特に、南西系群については、未報告の漁獲量が報告値に比べて非常に大きいことが示唆されており(ICCAT 2011)、データの収集が急務と考えられる。本種の日本漁船による漁獲は少なく、2011年の漁獲成績報告書のデータからは資源の傾向は明らかでない。

以上の結果をまとめると、北太平洋におけるネズミザメは、標準化したCPUEに顕著な増減傾向は認められず、この17年間で資源は安定的または漸増的に推移していたものと推定される。また、ミナミマグロ漁場におけるニシネズミザメの標準化したCPUEも顕著な増減傾向は認められないことから、1990年代〜2010年の期間中、同海域のニシネズミザメ資源は安定的に推移していたものと推定された。一方、北大西洋のニシネズミザメは資源が低位水準にある可能性を否定はできない。


【資源水準・動向】

ネズミザメの資源水準については不明である。ニシネズミザメの資源水準は、北大西洋の個体群はいずれも低位水準にあるが、北西系群については回復の兆しが指摘されている。南大西洋のニシネズミザメについては、西部についてはCPUEの変動の推移から減少傾向が指摘されているが、資源水準については東部も含めて不明である。ミナミマグロ漁業で混獲されるニシネズミザメの資源水準は不明であるが、CPUEを標準化した結果によれば、1994〜2011年の期間、CPUEに一定した増減傾向は確認されていない(Semba et al. 2012)。


管理方策

ネズミザメに関しては、現在管理方策は実施されていないが、宮城県気仙沼を中心として国内の水揚量・サイズデータの収集を行い、モニターを継続している。

資源の減少傾向が指摘されている北大西洋のニシネズミザメの漁獲死亡の多くは、ICCAT加盟国国内におけるニシネズミザメを対象とする漁業によるものと考えられており、これらの国に対しては、当該漁業への新規参入は禁止するとともに、漁業国が国内資源評価によって独自に設定しているTAC(北西大西洋:カナダ185トン・米国11.3トン、北東大西洋:EU 2010年より0トン)を遵守すること、漁獲量を正確に報告することが求められている。一方で、本種を混獲物として扱う漁業国においては、混獲回避手段や漁獲死亡率を低減するための調査研究の推進が求められている。また、資源評価のためには、種別漁獲量等の統計資料の充実に加えて、系群構造の科学的な解明、各系群の生物学的特性値の解明が必要であろう。

ニシネズミザメに関して、CITES第14回締約国会議(2007年)と第15回締約国会議(2010年)で相次いで附属書IIへの掲載が提案された。これらの提案はいずれも否決されたが、EU、クロアチア、ブラジル、コモロ、エジプトが同種を2013年3月、CITES第16回締約国会議において、ニシネズミザメを付属書Uに掲載する提案がEUを始めとする国々によって提出され可決された。

水産庁では1997年、まぐろはえ縄漁業における漁獲成績報告書の提出フォームを、6種のさめ類の漁獲量を報告する様式に変更した。2013年1月より、まぐろはえ縄漁船で漁獲されるさめ類の種別漁獲量や放流・投棄量を正確に推定するために、放流・投棄個体数についても記録する新様式が採用されている。オブザーバープログラム等も活用しながら引き続き種別漁獲量や体長データ等の資料収集を推進し、データの質・量ともにより一層の充実を図っていく必要がある。


ネズミザメ(北太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 調査中
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
調査中
我が国の漁獲量
(最近5年間)
1,140〜4,030トン
(水揚量)
平均:3,070トン
管理目標 検討中
資源の現状 検討中
管理措置 モニタリング
管理機関・関係機関 なし

ニシネズミザメ(北大西洋・南半球)の資源の現況(要約表)

北西大西洋 北東大西洋 南西大西洋 その他南半球
資源水準 低位 低位 調査中 調査中
資源動向 回復傾向 調査中 減少 横ばい
世界の漁獲量 70〜510トン
平均:320トン
調査中 調査中
我が国の漁獲量 調査中 調査中 調査中 調査中
管理目標 検討中 検討中 検討中 検討中
資源の状態 B2008/BMSY
:0.43-0.65
B2008/BMSY
:0.09-1.93
B2008/BMSY
:0.36-0.78
検討中
管理措置 TAC
(カナダ:
185トン、米国:
11.3トン)
TAC
(EU:
2010年より0トン)
モニタリング モニタリング
管理機関・関係機関 ICCAT、NAFO ICCAT、ICES ICCAT、CCSBT ICCAT、CCSBT

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

仙波 靖子・余川 浩太郎


参考文献

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