--- 要約版 ---

39 アブラツノザメ 日本周辺

Spiny Dogfish

Squalus suckleyi

                                                                          
PIC

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図

アブラツノザメ類の分布(阿部 1986を改変)
オレンジ色: Squalus suckleyi
ピンク色: S. acanthias


図

アブラツノザメの雌雄別海域別年齢−全長関係(Ketchen 1975より作成)


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さめ類漁獲量から推定したアブラツノザメの漁獲量


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沖合底びき網漁業による本資源の海区別漁獲量(1971〜2011年、太平洋の2004年以降は未提出分を提出率で引き延ばした暫定値)


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太平洋北区における沖底(かけまわし漁法)の標準化CPUE(標準化CPUEは1が平均値となるように基準化、破線は95%信頼区間の上限値と下限値)


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津軽海峡内で操業を行う底はえ縄のノミナル CPUEと標準化CPUE


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沖合底びき網漁業による太平洋北区におけるアブラツノザメが漁獲された操業日の網数(有漁網数)及び日本海区における有効努力量(太平洋の2004年以降は未提出分を提出率で引き延ばした値)


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青森県主要港(三厩)における底はえ縄によるアブラツノザメの延べ操業隻数



アブラツノザメ(日本周辺)の資源の現況(要約表)

資源水準 悪い水準ではない
資源動向 増加(近年の漁獲量は持続可能)
世界の漁獲量
(最近5年間)
-
我が国の漁獲量
(最近5年間)
3,293〜4,576トン※
平均:3,919トン(2007〜2011年)
※漁獲量は全国のさめ類漁獲量と過去のさめ類に占めるアブラツノザメの平均的な割合から推定した値(2011年は暫定値)

管理・関係機関
なし

最近一年間の動き
2011年の我が国周辺のアブラツノザメの推定漁獲量は3,300トンで2010年よりやや減少している。沖合底びき網漁業(以下、沖底)による漁獲量は太平洋北区では減少、日本海では2010年の2倍近くに増加した。沖底及び底はえ縄の標準化CPUEは近年増加傾向にある。

生物学的特性
  • 寿命:60歳以上
  • 成熟開始年齢:雌23歳、雄14歳
  • 繁殖期・繁殖場:2〜5月、繁殖場は調査中
  • 索餌期・索餌場:調査中
  • 食性:魚類、頭足類
  • 捕食者:調査中

利用・用途
第2次世界大戦前後は、ビタミンA、肝油の原料としてかなりの需要があったが、合成ビタミンAの普及により衰退した。東北地方では刺身や煮物、照り焼きなどで食されるほか、ちくわ等の練り製品原料として利用される。また、近年は、肝油やサメ軟骨エキスなど健康補助食品の原料の一つになっている。

漁業の特徴
北日本や日本海ではかなり古い時代から漁獲されていたが、漁獲対象として注目されるようになったのは、明治30年代末頃からであり、北海道、青森、秋田、石川県などで当初はマダラなどを対象とした底はえ縄漁船の兼業として、これを対象とする漁業が行われた。その後昭和初期に機船底びき網で漁獲されるようになった。太平洋戦争後は食糧増産政策に伴い、主に機船底びき網により積極的に漁獲され、漁獲量が増加した。近年は沖底による漁獲のほか、青森県では底はえ縄や一本釣り、刺網等による漁獲があるが、漁獲量は昭和30年以前と比較して大きく減少している。

漁業資源の動向
資源密度の指標値として1972年以降の沖底漁獲成績報告書から集計した太平洋北区のCPUEと主要な漁場である津軽海峡における1979年以降の青森県の底はえ縄による延べ操業隻数と漁獲量から求めたCPUEを利用して資源動向を検討した。なお、季節や海域等の特異的な影響を除去した資源状態の年トレンドを抽出するため、一般化線形モデル(GLM)を用いて各CPUEの標準化を行った。
太平洋北区の沖底では3つの漁法による操業が行われているが、アブラツノザメの漁獲が多いのは襟裳西〜尻屋崎海区で操業する青森県のかけまわしである。近年のかけまわしによるCPUEは1970年代前半の約60%程度、分布域の中心にある津軽海峡内の底はえ縄では、CPUEが1980年代後半の約120 %の水準を示しており、本資源が2000年代中期から明確な回復傾向にあることを示唆している。さらに、底はえ縄CPUEは、漁獲量が多かった1954〜1956年と1979〜2011年との間で大きな差は認められない。
以上のように漁獲量、沖底及び底はえ縄のCPUEの動向から、日本周辺におけるアブラツノザメ資源は比較的安定した状態で、2004年以降は増加傾向にあると考えられる。

資源状態
本種の漁獲努力量と漁獲量は、1950〜1960年代の合成ビタミンAの普及による国際取引の減少とそれに伴う魚種単価の下落により急激に減少した。現在、本種の漁獲は大部分を混獲で漁獲する沖底と本種を漁獲対象とする底はえ縄漁業により行われており、さめ類全体の漁獲量より推定した漁獲量は1990年以降3,000〜4,600トンで比較的安定的に推移している。これらで漁獲された本種は大部分がすり身の原材料となり、生鮮魚は地元で消費される。また、本種は釣り漁業や刺網漁業などでも混獲種として漁獲される。アブラツノザメ漁獲量の増減は、努力量の質的変化や操業パターンの変化によるものと思われるが、上述のように1950年代までは、ビタミンAの原材料として肝油を得るためにかなり積極的に本種が漁獲されてきたが、その後、合成ビタミンAの普及、価格低下などにより、需要は大きく減少した。近年、本種は大部分が混獲種として漁獲されるが、一部の地域では小規模漁業が漁獲対象種として操業を行っている。本種を対象に主要漁場の津軽海峡で操業する青森県の底はえ縄漁業のCPUE、太平洋北区の沖底CPUEから、本資源は悪い状態にあるとはいえず、現在の漁獲量水準は持続可能であると判断される。

管理方策
我が国周辺水域における本種資源の主分布域は我が国EEZ内の北部にあり、我が国全体の資源変動はこの海域の影響を受ける。本種の資源状態は近年悪い水準ではなく、漁獲量は持続可能であると判断されるが、信頼性の高い資源評価結果を得るまでは漁獲死亡を現在よりも高めるべきではない。板鰓類は一般的に再生産性が低いことから、漁獲圧に対して弱いと考えられている。漁獲量が比較的多い青森県三厩の底はえ縄漁業者は、小型魚や出産への貢献度が高いと考えられる高齢魚を再放流したり、漁獲量の上限を設定するなど、資源保存に向けた取り組みを行っている。なお、2010年のワシントン条約第15回締約国会議において、スウェーデンから附属書Uへの掲載が提案されたが採択されず、第16回締約国会議へ向けた掲載提案も行われなかった。

資源評価まとめ
  • 漁獲量は1950年代に比べ大きく減少している。
  • 需要の減少も漁獲量減少の要因の一つと考えられる。
  • 1970年代以降の漁獲量は減少、最近5年は増加
  • 近年の沖底及び底はえ縄のCPUEは増加傾向
  • 日本海区では漁獲努力量が減少

資源管理方策まとめ
  • 寿命が極めて長いため、資源の回復には長期的な取り組みが必要
  • 漁獲努力量を現在よりも増加させない