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37 ヨシキリザメ

Blue Shark

Prionace glauca

                                                                                   
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最近一年間の動き

2011年3月11日の東日本大震災により主要な水揚地であった気仙沼港が大きな被害を受けた。そのため2011年の水揚げは大幅に減少し、2011年の日本主要漁港への水揚量はおよそ5,100トンであり、過去最低を更新した。北太平洋ではISCによるヨシキリザメの資源評価に向けての準備が進められ、2013年4月に資源評価が行われる予定である。


利用・用途

肉はすり身など、鰭はふかひれ、皮は工芸品や医薬・食品原料、脊椎骨は医薬・食品原料などに利用されている。


図1

図1. 日本の主要漁港へのヨシキリザメ水揚量(1992年〜2011年)


表1

表1. まぐろはえ縄漁業によるさめ類漁獲量(トン)


図2

図2. ヨシキリザメの分布(Compagno 1984より)


図3

図3. ヨシキリザメの年齢と成長(中野 1994)


図4b

図4. 北太平洋海域において日本の近海遠洋まぐろはえ縄漁船により漁獲されたヨシキリザメの標準化CPUE(上:1976〜1993年、下:1994〜2010年)


表2

表2. ヨシキリザメの年齢と成長(尾鰭前長cm)(中野 1994)


図5b

図5. 大西洋におけるヨシキリザメの標準化されたCPUE(上:北大西洋、下:南大西洋、1957〜2009年)
実線は重量、破線は面積で重みづけを行った標準化CPUEを示す。


図6

図6. インド洋におけるヨシキリザメのCPUE
(上:1971〜1993年、下:1994〜2011年)



漁業の概要

ヨシキリザメは全世界の熱帯から温帯にかけて出現し、外洋性さめ類の中で最も資源豊度が高いと考えられている。本種はまぐろはえ縄漁業によって数多く漁獲されているが、混獲種であり、日本周辺の漁場を除き、遠洋水域で混獲されるヨシキリザメは外地で水揚げされるか放流されている。水揚げは加工設備が整っている気仙沼港を中心に行われ、肉、鰭、脊椎骨、皮が食用や工芸用に利用されていたが、東日本大震災により港・加工場ともに壊滅的な被害を受けた。2012年4月からは、水産庁事業「もうかる漁業創設支援事業」による船団操業が行われている。

農林水産省統計部発行の「漁業・養殖業生産統計年報」(農林統計)に記載されている、まぐろはえ縄漁業によるさめ類(種込み)の漁獲量を表1に示した。農林統計では、まぐろはえ縄漁業は1971年以降、遠洋・近海・沿岸の3種類に分類されており、それらの合計は、13,000〜33,000トンで推移している。90年代後半まで、減少傾向にあったが、近年増加傾向であり、2005年は近海はえ縄の増加が顕著で、初めて3万トンを上回った。2011年は近海及び沿岸まぐろはえ縄漁業の漁獲量が激減したが、東日本大震災の影響により操業が減ったことと、データそのものを消失したことが原因である。種別漁獲量は不明であるが、7〜8割程度を本種が占めているものと推定される(中野 1996)。

水産庁委託事業で、まぐろはえ縄漁業等による日本の主要漁港のさめ類の種別水揚量を調査している。それによるとヨシキリザメの水揚量は、1992〜2011年で5,100〜16,000(平均11,900)トンであり、2001年をピークに減少傾向で、2009年は少し回復したが2011年は過去最低を大きく更新した(図1)。2000年代の漁獲量の落ち込みは、本種を季節的に主対象として漁獲している気仙沼基地の近海はえ縄漁船数が減少したことと、2011年は東日本大震災の影響と考えられる。また漁法別に見ると、はえ縄の割合が徐々に減少している。


生物学的特徴

【分布】

本種は南北太平洋、南北大西洋、インド洋の熱帯から温帯域にかけて広く分布し(図2、Compagno 1984)、温帯域での分布豊度が高く、温帯域出現種と考えられている(中野 1996)。系群については、繁殖周期が大洋の南北で逆になるので、南北太平洋で2系群、南北大西洋で2系群と考えるのが妥当であろう。各漁業管理機関では、これらの4系群にインド洋1系群を加え、5系群が存在するとして資源評価及び管理を行っている。これまでWCPFCが管轄する中部太平洋で資源評価を行い、ICCATが管轄する大西洋で資源評価と管理を行っている。系群構造に関しては、赤道を越えて再捕された標識個体もあるので(Casey et al. 1989)、南北での交流も考えられる。太平洋ではISCが中心となってDNA分析による系群構造の解明作業が行われつつある。


【産卵・回遊】

本種の繁殖様式は胎盤型の胎生であり、産仔数の平均と範囲は25.6、1〜135(中野 1994、Gubanov and Grigor’yev 1975)、出生時の体長(尾鰭前長)は30〜43 cm(中野 1994)である。北太平洋においては回遊モデルが提唱されている(中野 1994)。それによると、本種は北緯20度付近の海域で初夏に交尾し、雌は約1年の妊娠期間後に北緯30度以北の海域で出産する。幼魚は北緯40度付近の亜寒帯境界を生育場とし、成熟すると温帯域に移動する。


【成長・成熟】

脊椎骨に形成される輪紋から年齢が推定されており、その結果に基づいてCailliet and Bedford(1983)、田中(1984)、中野(1994)が太平洋における成長式を雌雄別に報告している。成長には性差が認められ、雄が雌に比べて早く、大きく成長する。成熟に達する体長は、北太平洋では雌雄共に140〜160 cm(須田 1953、中野 1994)、北大西洋では雌が約165 cm、雄が160 cm(Pratt 1979)と報告されており、年齢に換算すると雌6歳、雄5歳と推定される。また寿命は20歳以上とされている(Compagno 1984)。

以下に北太平洋で求められた成長式を示す。

       Cailliet and Bedford(1983):全長
             雌:Lt=241.9(1-e-0.251(t-(-0.795)))
             雄:Lt=295.3(1-e-0.175(t-(-1.113)))
       田中(1984):尾鰭前長
             雌:Lt=256.1(1-e-0.116(t-(-1.306)))
             雄:Lt=308.2(1-e-0.094(t-(-0.993)))
       中野(1994):尾鰭前長(表2、図3)
             雌:Lt=243.3(1-e-0.144(t-(-0.849)))
             雄:Lt=289.7(1-e-0.129(t-(-0.756)))

【食性・捕食者】

多獲性浮魚類やまぐろ類、いか・たこ類が主な餌料である(川崎ほか1962、谷内1984、Strasburg 1958)。海域、成長段階等によって異なった物を摂餌しており、特に選択的ではなく、生息域に豊富にいる利用しやすい動物を食べる日和見的な食性を示している。成魚に対する捕食者は知られていないが、幼魚は大型さめ類や海産哺乳類に食べられている可能性がある(Nakano and Seki 2003)。


資源状態

【資源の動向】

資源評価には長期にわたって分布域の広範をカバーする漁獲統計資料が必要であるが、ヨシキリザメについてそのような資料は日本のはえ縄漁業以外にはない。しかし、本統計資料には2つの問題がある。1つは、1993年以前はさめ類として報告され種別データではないこと、もう1つは日本近海以外の漁場では混獲魚であり、漁獲成績報告書へ記載がない場合が多いことである。そこでNakano and Honma(1997)は、はえ縄漁船の漁獲成績報告書を分析し、さめ類の種組成とさめ類報告率(航海あたりのさめ類報告日の割合)の関係に基づき、報告率70%以上のデータがヨシキリザメのCPUE(1,000鈎当たりの漁獲尾数)の指標となり得ることを示した。Nakano and Clarke(2006)は、この方法の妥当性を大西洋のオブザーバーデータを使って検証し、報告率80%以上のデータを用いるのが最も適当であると判断した。このため、大西洋とインド洋では日本のはえ縄資料から報告率80%以上のデータを抽出して解析が行われている。一方、ISCでは、別の解決法が試みられた。1994年以降のデータからさめ類中のヨシキリザメの割合を推定するモデルを作成し、それ以前のヨシキリザメの漁獲尾数を推定した(Hiraoka et al. 2012)。また、ヨシキリザメの漁獲を正しく報告している船の抽出には、Clarke et al.(2011)が提唱した規準(船ごとの報告率94.6%以上)を適用した(Hiraoka et al. 2013)。

Kleiber et al.(2001)は、北太平洋のヨシキリザメ資源に関して各国の漁獲量を推定し、現行の漁獲量がMSYのどの割合にあるかを算定した。その結果、90年代後半の漁獲量はモデルで見積もられたMSYの1/4から1/2程度であり、当面ヨシキリザメ資源が著しく減少するような急激な変化は考えられないとしている。さらにKleiber et al.(2009)は、1971〜2002年における資源状態は80年代に減少傾向が見られたが、その後に回復して元のレベル以上になったと推定している。ISCでは、前述の手法により整備されたデータを用いた標準化CPUEや推定漁獲量が算出され(Takahashi et al. 2012、Hiraoka et al. 2013)、これらの情報をもとにベイジアンサープラスプロダクションモデルを用いて資源解析を行う予定である。2010年の日本とSPCの共同研究による標準化CPUE(Ckarke et al. 2011)は、近年の近海浅縄のターゲット変化を考慮していないためバイアスを含むと指摘されているため、ISCでは、バイアスを修正した日本のはえ縄の標準化CPUEを資源量指数とした。この指数は、1970年代から1990年まで減少、2000年代には増加、その後やや減少して、2009〜2010年には元のレベルとなっている(図4)。南太平洋に関しては、データが少ないためこれまで資源評価が行われていないが、WCPFCが行う予定である。

南北大西洋の系群に関しては、日本、米国、ブラジル、台湾、ベネズエラ、スペイン、アイルランド、ウルグアイ、カナダと多くの国のまぐろはえ縄漁船の標準化CPUEが得られている(ICCAT 2008)。図5はこれらをまとめたもので、いずれも北太平洋の場合と同様に緩やかな増減を繰り返し、顕著な増減傾向は見られなかった。また様々なモデルを使った資源解析が試みられており、多くの場合、現在の資源量は南北共にMSYのレベル以上であり、漁獲死亡率もMSYレベル以下であるとされた(ICCAT 2008)。しかし、データが充分でないため多くの仮定に基づいており、明確な結論を出すことは困難であった。1971〜2009年における日本のCPUEを算出した結果では、南北両系群とも近年のCPUEに顕著な増減傾向は見られなかった(Hiraoka and Yokawa 2011)。ICCATでは本種の資源評価は2008年以降行われていないが、大西洋のヨシキリザメは、この約40年間比較的安定している。

インド洋に関しては、日本のまぐろはえ縄の標準化CPUEの経年変化を検討したが、他の海域と同様にCPUEは増減を繰り返していた(図6、Hiraoka and Yokawa 2012)。南アフリカ沖やオーストラリア沖のミナミマグロ漁場の日本のオブザーバー調査から得られたCPUEは、1992年から2007年にかけて変動が見られるものの、顕著な増減傾向は示さなかった(松永・余川 2009)。これらから、インド洋の資源は安定していると考えられる。


【資源水準・動向】

北太平洋では資源水準は中位であると考えられるが(Kleiber et al. 2009)、2013年4月に行われる資源評価により更新される予定である。大西洋及びインド洋では顕著な増減傾向が見られないことから、資源動向は横ばいであると推測される。


管理方策

資源に顕著な変化は観察されていないので、保護・管理に対する勧告は特に必要ない。ただし、資源状態は引き続き観察していく必要がある。また、資源評価を行うための種別漁獲統計の充実を図っていく必要がある。水産庁では近年、まぐろはえ縄漁業における漁獲成績報告書の提出様式を変更し、6種のさめの漁獲量及び投棄量を報告するようにしたが、この精度を検討するためにオブザーバープログラム等、資料収集方法を検討する必要がある。


ヨシキリザメ(全水域)の資源の現況(要約表)

北太平洋 南太平洋 北大西洋 南大西洋 インド洋
資源水準 中位 調査中 調査中 調査中 調査中
資源動向 横ばい 増加 横ばい 横ばい 横ばい
世界の漁獲量 調査中 調査中 1.2〜3.7万トン(平均:2.8万トン) 1.7〜2.8万トン(平均:2.2万トン) 調査中
我が国の漁獲量
(最近5年間)
0.4〜0.9万トン
(水揚量)
平均:0.7万トン
調査中 1,700〜2,500トン
(平均:2,000トン)
800〜1,800トン
(平均:1,300トン)
調査中
管理目標 検討中
資源の状態 検討中 検討中 B2007/BMSY
:1.87-2.74
B2007/BMSY
:1.95-2.80
検討中
管理措置 モニタリング
管理機関・関係機関 IATTC, WCPFC WCPFC ICCAT ICCAT IOTC, CCSBT

執筆者

くろまぐろユニット
みなみまぐろサブユニット
国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部 温帯性まぐろグループ

平岡 優子

かつお・まぐろユニット
混獲生物サブユニット 国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 混獲生物グループ

松永 浩昌


参考文献

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