--- 総説 ---

33 さめ類の漁業と資源調査(総説)



[HOME] [詳細版PDF] [戻る]

図1

図1. 世界のさめ・えい類漁獲量(1947〜2010年)


図2

図2. 日本の漁業種類別さめ類漁獲量(1986〜2009年)


図3

図3. 外洋性さめ類漁の種別水揚量(1992〜2011年)


図4

図4. 日本のはえ縄漁獲努力量の経年変化(1952〜2010年)


図5

図5. 太平洋におけるはえ縄漁獲努力量の経年変化(1970〜2004年)



世界のさめ漁業

FAO漁獲統計資料で見ると世界のさめ・えい類漁獲量は1940年代の20万トン台から、1996年以降の80万トン台まで、ほぼ右肩上がりに増加していたが、2003年の約90万トンをピークに減少に転じ、2010年は約74万トンであった(図1)。最近の減少傾向から見て、一部の資源状況が悪化して来ている可能性がある。


日本のさめ漁業

日本のさめ・えい類漁獲量は1940年代から年々減少し、近年は2〜4万トンで推移している。これは主に底びき網を中心とする底生性のさめ・えい類の水揚量の減少が原因である。はえ縄による外洋性さめ類の漁獲量は、1980年代の2万トン台から1990年代の1.5〜2万トン台へと減少したが、2000年代に入って2万トン台に回復し、ヨシキリザメの水揚げが増加した2005年以降は3万トンを上回っている(図2)。はえ縄がさめ類漁獲量に占める割合は70〜90%であった。

日本の主要港における種別水揚量は、図3のとおり。2011年は震災の影響で特に少なかった。ヨシキリザメは、まぐろはえ縄によって数多く混獲されており、水揚量は、1992〜2011年において5,100〜16,000トンで、外洋性さめ類のなかで占める割合は60〜80%であった。最近年は主として漁獲努力量の減少により、水揚量の減少傾向が見られている。

アオザメは肉質が良いので商品価値が高く、遠洋はえ縄船も持ち帰る場合が多い。アオザメの漁獲量は、1992〜2011年において550〜1,500トンで、外洋性のさめ類漁獲量の中で占める割合は5〜8%であった。

ネズミザメはその多くが宮城県気仙沼を中心とした東北地方に水揚げされている。肉質が良好で商品価値が高く、肉、鰭や皮が食用や工芸用に利用されている。1992〜2011年のネズミザメの漁獲量は、はえ縄と流し網の合計で1,100〜4,400トンで、外洋性さめ類の漁獲量に占める割合は8〜26%であった。ニシネズミザメの漁獲は近年数十トン程度である。

その他の外洋性のさめ類(ヨゴレ、クロトガリザメ、ハチワレ、ミズワニ)のうちミズワニは鰭も含めて、まったく商業的には利用されていない。これらの漁獲量は、1992〜2011年の調査で、ヨゴレが2〜85トン、ハチワレを含むオナガザメ類は160〜700トン、クロトガリザメは十分に識別されていないと思われるので、メジロザメ類をそれと仮定すると、3〜130トンと考えられる(水産庁・水産総合研究センター 1994-2012)。

ジンベエザメ、ウバザメ、ホホジロザメの大型ザメ3種に関しては1960年代にウバザメを対象とした突きん棒が存在したが、現在これらの種を対象とした漁業はない。


資源管理

外洋性さめ類を漁獲するわが国のはえ縄の努力量は近年減少傾向にあり、特に太平洋で顕著である(図4)。しかしながら、漁業国全体の努力量の増減を見ると、太平洋全体では2000年代初めまで増加傾向にあり、特に90年代後半以降の伸びが著しいことがわかる(図5)。つまり、日本が努力量を減らす一方で、その他の国が漁獲努力量を増やしており、全体としては漁獲努力量は増加し、外洋性さめ類にかかる漁獲圧も増加する傾向にある。現在のところ、まぐろ漁業に関する国際漁業管理機関でさめ類資源の保護と管理のための漁獲規制などが一部で実施されているが、資源評価の結果によっては、将来的にさめ類保護のために一段と厳しい漁獲規制が実施される可能性も大きい。またFAOによるさめ類の保護と管理のための行動計画策定の呼びかけに応じて、わが国では水産庁の委託事業「サメ・海鳥保全管理プログラム作成調査事業」により、「さめ類資源の保護と管理のための国内行動計画」を策定した。この枠組みのなかで、国内専門家からなる専門家グループを1999年に設立し、サメ類の資源状態の評価を行うために定期的に会合を開いている。また、これに必要な情報の充実を図るために、各種のデータ収集あるいは調査を継続的に実施している。


現在・将来の問題点

  • さめ類の資源管理について、研究・行政など国内の対応組織を更に整備していく必要がある。
  • 精度が高い資源評価を行うことができる長期にわたる漁獲統計資料を整備していく必要がある。
  • 種類数が多いので、漁船から漁獲統計資料を収集する場合、種の誤査定を考慮した収集体制を検討する必要がある。
  • 外洋性さめ類は高度回遊性資源なので、資源解析には関係漁業国の協力が不可欠である。

執筆者

くろまぐろユニット
国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部 

中野 秀樹

かつお・まぐろユニット
混獲生物サブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 混獲生物グループ 

松永 浩昌

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

余川 浩太郎


参考文献

  1. 独立行政法人水産総合研究センター(編). 2002-2012. 平成13年度−平成22年度 日本周辺高度回遊性魚類資源対策調査委託事業報告書. 独立行政法人水産総合研究センター,横浜.
  2. 遠洋水産研究所(編). 2002-2005. 平成13−16年度国際資源調査等推進対策事業 混獲生物グループ報告書. 遠洋水産研究所,静岡.
  3. FAO Fishery Information, Data and Statistics Unit. 2010. Total production 1950-2008. FISHSTAT Plus - Universal software for fishery statistical time series [online or CD-ROM]. Food and Agriculture Organization of the United Nations. http://www.fao.org/fi/statist/FISOFT/FISHPLUS.asp (2011年11月25日)
  4. 農林水産省統計情報部. 1986-2003. 昭和61年−平成13年 漁業・養殖業生産統計年報. 農林統計協会, 東京.
  5. 農林水産省統計部. 2004-2011. 平成14年−21年 漁業・養殖業生産統計年報(併裁:漁業生産額). 農林統計協会,東京.
  6. 水産庁(編). 1993-1997. 平成4年度−平成8年度 日本周辺クロマグロ調査委託事業報告書. 水産庁,東京.
  7. 水産庁(編). 1998-2001. 平成9年度−平成12年度 日本周辺高度回遊性魚類資源対策調査委託事業報告書(まぐろ類等漁獲実態調査結果). 水産庁,東京.
  8. 水産庁 (編). 1998-2001. 平成9年度-平成12年度 日本周辺高度回遊性魚類資源対策調査委託事業報告書. (まぐろ類等漁獲実態調査結果). 水産庁, 東京.