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32 カツオ 大西洋

Skipjack

Katsuwonus pelamis

                                                           
PIC

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最近一年間の動き

2012年10月に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)調査統計委員会(SCRS)が開催され各国から2011年の漁獲量が報告された。2011年の総漁獲量は、最近10か年では最も大きい20.9万トンであった(ICCAT 2012)。これは、東部大西洋のまき網による漁獲の増加と西部大西洋の竿釣りの好漁による。


利用・用途

主に缶詰など加工品の原料として利用される。


表

表1. 大西洋カツオの国別漁獲量(トン)


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図1. 東部及び西部大西洋のカツオ漁獲量の年変化(ICCAT 2012)


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図2. 大西洋のカツオの漁法別漁獲量の年変化(ICCAT 2012)


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図3. 大西洋のカツオの分布域と主産卵場・漁場


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図4. 大西洋のカツオの年齢と体長の関係(ICCAT 2004 一部改変)
A〜Gの曲線は各海域で報告されたカツオの成長を示す


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図5. 東部大西洋のまき網におけるカツオCPUE(1操業日あたり漁獲トン数)の経年変化(ICCAT 2007


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図6. 西部大西洋のブラジルの竿釣り及びベネズエラのまき網におけるCPUEの経年変化(ICCAT 2007)


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図7. 東部大西洋における漁業種類別カツオ平均重量の変化(ICCAT 2008)


漁業の概要

大西洋のカツオの漁場は東西に分かれ、両大陸側に接してそれぞれ分布している。主な漁場は、アフリカ大陸西岸中央部〜北西岸沖(北緯40度〜南緯20度、西経30度〜東経15度)とブラジル南東岸沖、ベネズエラ北岸沖である。東部大西洋の漁獲量の方が西部大西洋よりも大きく、1990年代以降はおよそ80%が東部大西洋で漁獲されている(図1)。主要な漁法は、東部大西洋ではまき網及び竿釣り、西部大西洋では竿釣りである。両海域ではひき縄やはえ縄でもわずかながら漁獲される。主要な漁業国は、東部大西洋ではスペイン、ガーナ、フランス、パナマ、西部大西洋ではブラジルである(図2、表1)。最近5年間の漁獲量はスペイン、フランス、ガーナは漁獲量を増加傾向、ブラジルは2011年は増加したものの、他の年では横ばいであった。大西洋でのカツオの年間総漁獲量は、1950年代から1961年までは6千トン未満であったが、1962年に初めて1万トンを超えた。その後1960代後半には2.3〜4.8万トン、1970年代には5.0〜11.7万トン、1980年代には11.1〜15.5万トンと年代とともに増加した(表1)。さらに、東部大西洋のまき網によるFADs(人工流木)操業の本格化と漁場の西側への拡大にともなって、1991年以降漁獲量が急増し、1991年には22万トン、1993年には20.6万トンを記録して過去最高レベルに達した。その後は、主としてまき網の漁獲量が減少し、大西洋での漁獲量は1990年代後半から2000年代にかけて11.7〜16.6万トンで推移していた。2010年に漁獲量は大きく増加(18.9万トン)し、2011年には過去2番目の漁獲量である20.9万トンとなった。2011年のヨーロッパ船によるカツオ漁獲量の増加は、カツオ浜値が高騰したことと関連があることが指摘された。また、カツオ漁業のトレンドを理解するうえで、マーケット価格の情報が重要であるため、事務局がその情報を収集、提供するべきという主張がEU研究者からなされ、検討されることとなった。なお、まき網による群れ付き操業及び東部熱帯大西洋の竿釣りでの小型魚の投棄(スペインのオブザーバープログラム及びフランスからの報告によれば、東部大西洋での2001〜2005年におけるまき網のFADs操業によるカツオの投棄率はカツオの水揚量1トン当たり42 kgと推定)、ならびにコートジボアールより「faux-poisson(false tuna)」(カツオ、メバチ、キハダ等を含む小型魚複数種の混獲物として水揚げされる漁獲物)として報告されている漁獲量(1988〜2007年の平均6,641トン/年)があることが問題となっていたが、これらの推定漁獲量は、ICCATの漁獲統計に、1982年以降のヨーロッパのまき網船の漁獲量として編入されている。

東部大西洋では、スペイン、フランス、ガーナによるまき網が主要な漁業であり、ガーナ、スペイン、フランス等の竿釣りがそれに続く。2004年以降パナマによる漁獲が急激に増加し、ポルトガルと同等か多い漁獲量を示すようになった。東部大西洋における2011年の漁獲量は17.1万トンと過去5か年の中で最も高い値となり、スペイン及びガーナによる漁獲が総漁獲量の63%を占めた。

西部大西洋では、ブラジルによる竿釣りが漁獲の大半を占め、漁獲量第2位のベネズエラ(主な漁法はまき網)を大きく引き離している。2010年までの西部大西洋における年間漁獲量は、2.2〜3.3万トン(過去20年間)で推移しており、大きな変動はなかった。2011年はブラジルの総漁獲量が3.1万トンと好漁であったことから、過去において最も漁獲があった1984年(4.0万トン)に匹敵する漁獲量を記録した。ブラジルの竿釣り船による漁獲努力量は、1985〜1996年の間に半分に減少したが、その後は比較的安定しており、2011年においても漁獲努力量が上昇したことは報告されていない(ICCAT 2012)。

大西洋において、カツオを主対象とした日本の漁業は現在行われておらず、はえ縄にて特大サイズのカツオがわずかに混獲されるのみである。過去においては、1990年代前半まで東部大西洋で現地水揚げの竿釣りが行われ、1976〜1981年のピーク時における年間漁獲量は1.2〜1.7万トンに達していた。


生物学的特徴

本種は熱帯から亜熱帯にかけて幅広く分布する(図3)。産卵場は表面水温24℃以上の海域で、アフリカ大陸西岸中央部沖(ギニア湾〜東経30度)及びブラジル沖の赤道を中心とした熱帯・亜熱帯域に広く分布する(仔魚の分布からの推定)。産卵活動はこれらの海域で1年中広範囲に行われていると考えられ、赤道から高緯度海域に向かって産卵期間が短くなると考えられる。産卵盛期は、ギニア湾などの赤道域では11〜3月とされるが、北東部熱帯大西洋のケープヴェルデ諸島周辺では7〜9月に産卵すると考えられる。成熟開始年齢は満1〜2歳で、成熟開始時の体長は東部大西洋ではオス45 cm、メス42 cmであるが、西部大西洋ではオス52 cm、メス51 cmと東部よりも大きく、この違いが海域差かその他の要因によるものかは明らかではない。成長は季節や海域により異なることが報告されており(図4)、年間成長率はブラジル沖で8 cm、アフリカ沖で9〜19 cm、ベネズエラ沖で16 cmである。個体の成長率に関しては考慮すべき不確実性が残されており、今後より正確で信頼性の高い年齢査定技術の確立が必要である。本種の寿命は、少なくとも6歳以上と考えられる。大西洋でのカツオの主要な餌生物は魚類、甲殻類、頭足類で、朝から夕方にかけての日中に摂餌活動を行う。捕食者としては、まぐろ・かじき類のほか、カマスサワラ類、外洋性のさめ類、海鳥類が知られている。

近年のFADs操業の増大とともに、これらの設置によるカツオの回遊生態や魚群行動の変化と生物学的特性への影響を指摘する報告がICCATに提出された。カツオは浮き物付き魚群の主構成魚種であるが、素群れとFADsでの摂餌活動を調べたところ、FADs群は素群れに比べて空胃率が高く胃内容物量も少なかったことなどから、FADsに付いたカツオ群の餌環境条件は素群れより劣ると考えられた。また、FADsにカツオ群が集まることにより、大型まぐろ類による被捕食率の増大や、漁獲による死亡率上昇の可能性が指摘された。FADs操業では、通常カツオとともにまぐろ類の小型魚が混獲され、漁獲物の典型的な魚種組成は、カツオ63%、キハダ20%、メバチ及びその他のまぐろ類17%であることが報告されている。


資源状態

【CPUEの動向】

東部大西洋のまき網のCPUEは(図5)、1991〜1993年にピークを示し、その後減少したものの、近年は特にFADsを利用した操業において高位安定傾向にある。ただし、このCPUEには操業機器の発達などによる漁獲効率の改善を加味していないため、資源豊度を示す数値としての直接的な判断材料とはならないであろう。西部大西洋の主要な漁業であるブラジルの竿釣り及びベネズエラのまき網のCPUEは(図6)、ブラジルの竿釣りについては概ね安定して推移している。これに対して、ベネズエラのまき網のCPUEは2005年において非常に低いものとなったが、同様なCPUEの低下がキハダでも見られていることから、同国周辺の海洋環境と関連した変動であることが理由として指摘されており、このCPUEの低下と資源状態との関連性は低いものと思われる。


【資源評価】

大西洋におけるカツオの資源状態については、ICCATの科学委員会において検討されてきた。本種の持つ下記のような生物学的特性及び漁業の特徴が現状の評価モデルでの解析を困難にしており、信頼できる資源評価結果は得られていない。

  1. 加入が年間を通じて連続的に起こり、しかも時期と海域により不均質であることにより、個々の年級群の判別とモニタリングが不可能である。
  2. 海域間での顕著な成長差の存在が体長頻度分布の解釈と年齢組成への変換を不可能にしている。
  3. 多様で多数のまき網船と竿釣り漁船の存在が、東部大西洋のカツオ資源に対する有効な努力量の推定を困難にしている。
  4. 漁業に関する情報不足により、まき網に見られる近年の操業方法の変化(流れ物付き操業の開始)は、今のところ解析に組み込むことができない。

ICCATにおけるカツオの資源評価は、1999年に実施された資源解析以降2007年まで更新されなかったが、2008年に新たな解析が行われた(ICCAT 2008)。近年のICCAT年次会合では、漁獲物の平均体重が過去30年間でわずかに小型化していることや(図7)、漁獲がかなり狭い水域に集中していることから、地域的な乱獲の可能性が指摘されてきた。資源評価の結果を見る限り、東部大西洋、西部大西洋ともに漁獲係数はMSY水準より低く、親魚量はMSY水準より高いものと見なされ、近年の漁獲はMSYを上回っていないと考えられた。

これまでの経緯を総合的に判断すると、漁獲量等の漁業に関する情報や本種の漁業生物学的特性(短寿命、速い成長、漁獲が成熟魚に限られる、漁業が対象としている年齢群が少ない、高い自然死亡率)を考慮すれば、資源全体が乱獲にある可能性は低いと考えられる。


管理方策

これまでのところ、本種に対する特段の管理方策は設定されていない。

2011年のICCAT年次会合にて、メバチやキハダの小型魚の漁獲圧を低下させる目的で、1〜2月にギニア湾(沿岸〜南緯10度、西経5度〜東経5度で囲まれる海域)におけるFADs操業の禁止が勧告された。これは、メバチの資源管理措置の全面的な改定にともなうもので、これまでの表層漁業の漁期海区禁漁に変わるものである。

まき網によってメバチやキハダとともにカツオが漁獲されることから、カツオ資源の増減についても若干の影響を与えている可能性があるものの、実際に受ける影響の度合いは不明である。


カツオ(大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近の5年間)
13.9〜20.9万トン
平均:16.6万トン(2007〜2011年)
我が国の漁獲量
(最近の5年間)
0〜1トン
平均:1トン(2007〜2011年)
管理目標 MSY
資源の現状 悪化の兆候は認められない
管理措置 勧告されていない
管理機関・関係機関 ICCAT

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

芦田 拡士

国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部

魚崎 浩司


参考文献

  1. Anon. (ICCAT) 2004. Report of the 2004 meeting of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain 4-8 October 2004). ICCAT, Madrid, Spain. 189 pp. http://www.iccat.es/Documents/SCRS/SCRS 2004 ENG.pdf (2004年12月9日)
  2. Anon. (ICCAT) 2007. Report of the 2007 meeting of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain 1-5 October 2007). ICCAT, Madrid, Spain. 213 pp. http://www.iccat.es/Documents/SCRS/SCRS 2006 ENG.pdf (2007年11月1日)
  3. Anon. (ICCAT) 2008. Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain - September 29 to October 3, 2008). 40-53. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2008_SCRS_ENG.pdf (2009年1月5日)
  4. Anon.(ICCAT)2012. Skipjack tuna .In ICCAT (ed.) Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain – October 1-5, 2012). 300pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/SCRS2012/2012_SCRS_REP_EN.pdf(2013年1月25日)