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29 カツオ 東部太平洋

Skipjack

Katsuwonus pelamis

                                                           
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最近一年間の動き

太平洋全域のカツオは主に中西部太平洋で多く漁獲される。2011年の中西部太平洋の漁獲量が約156万トンであるのに対し、2011年の東部太平洋におけるカツオの総漁獲量は27.9万トンと中西部太平洋の約2割弱程度である。1980年以降の東部太平洋のカツオ最大総漁獲量を見ても2006、2008年の29.8万トンにとどまっている。2012年東部太平洋のカツオ資源状態は、異なる4つの手法(a. 漁業・生物学的指標値;b. 標識データ解析; c. サイズ組成資源評価モデル;d. 空間資源動態モデルSEAPODYM)に基づいた結果を比較・検討して評価された。しかし、これらの方法による結果に不確実性がともなうため、8つの指標値(漁獲量、流れ物操業CPUE、素群操業CPUE、標準化努力量、平均漁獲個体体重、相対資源量、相対加入量、相対資源利用率)の傾向から資源状態を評価した。その結果、東部太平洋におけるカツオ資源の現状は不確実であり、カツオ資源に危機が迫るような明確な証拠はない、との結論に達している。


利用・用途

本資源は、主に缶詰原料として利用されている。


図

図1. 東部太平洋における漁法別カツオ漁獲量(データはIATTC 2012)


表

表1. 東部太平洋におけるカツオの国別漁獲量(単位:トン)(IATTC 2012)


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図2. 2011年東部太平洋におけるまき網操業別カツオ漁獲量(5度×5度の統計値)(IATTC 2012)


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図3. 2006〜2011年東部太平洋でまき網及び竿釣りで漁獲されたカツオ体長組成(IATTC 2012)


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図4. 東部太平洋におけるカツオの分布と漁場(Matsumoto et al. 1984、Schaefer 2001)


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図5. 東部太平洋におけるカツオの成長(Matsumoto et al. 1984)


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図6. 東部太平洋におけるカツオ資源指数(Maunder 2012bを改変)
(a) まき網による漁獲量、(b) 流れ物操業努力量、 (c) 素群れ操業努力量、 (d) 標準化努力量、(e) 平均重量(kg)、(f) 相対生物量、(g) 相対加入量、(h) 相対資源利用率(CPDF:Catch per days fished)


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図7. 東部太平洋におけるサイズ組成を考慮したカツオ資源評価のために定義された海域(Maunder 2012a)


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図8. サイズ組成評価モデルで推定されたRegion Bの月毎の生物量(Maunder 2012a)


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図9. 空間資源動態モデルSEAPODYMによって推定された東部太平洋における体長30 cm以上のカツオの生物量(Maunder 2012a)


漁業の概要

2011年の東部太平洋におけるカツオ総漁獲量は約27.9万トンと推定された(表1:IATTC 2012)。東部太平洋のまき網では、漁獲物の一部が投棄されることがあり、1996〜2010年のカツオの平均投棄割合は約8%で(IATTC 2012)、この投棄量を加えると2011年のカツオ総漁獲量は28.5万トンとなる。図1に1950〜2011年までの漁法別カツオ漁獲量を示す。国別の漁獲量ではエクアドルの漁獲量が全体の約半分を占め、パナマ、ベネズエラ、コロンビア等が続いている。日本は、本海域でカツオを主対象とした漁業を行っておらず、漁獲量ははえ縄によってまぐろ類に混じって漁獲される数10トン程度の極めて僅かな量のみである。本海域では、1950年代までは沿岸での竿釣りが主であったが、その後大型の竿釣り船がまき網船に転換し始め、1960年代からまき網による漁獲量が増大した。1978年に約17万トンとなってピークに達した後、1985年前後に5〜6万トン台まで減少したが、その後はほぼ右肩上がりに増加を続け、20〜30万トンレベルを維持している。漁場は沖合に広がり、現在では漁獲量のほとんどがまき網によるものである。

まき網漁場はバハ・カリフォルニアからペルー南部まで広がるが、メキシコ南部沖では漁獲量は比較的少なく、赤道海域では漁場は西経150度付近の沖合まで達している(図2)。付き群れ操業(漂流物とFADsが含まれる)は主に中米から北部南米沖で行われており、沖合にも広がっている。素群れを対象とする操業は、バハ・カリフォルニア、中米、北部南米沖で行われている。なお、イルカ付き群ではわずかなカツオしか漁獲されない。まき網によって漁獲されたカツオの体長は30〜80 cmで、年によって漁獲組成のモードが異なる傾向があるが、概ね40 cm半ばと60 cm半ばにモードが確認できる(図3)。

竿釣り漁船は、南カリフォルニアからチリ北部にかけた距岸約250海里以内の海域と沖合の島嶼周りで操業を行っていたが、現在ではエクアドル、メキシコ、米国籍のわずかな数しか残っておらず、エクアドル、メキシコ、南カリフォルニアの比較的沿岸近くで操業している。


生物学的特徴(Matsumoto et al. 1984、Schaefer 2001)

カツオは3大洋すべての熱帯〜温帯水域、概ね表面水温15℃以上の水域に広く分布する(Matsumoto et al. 1984)。適水温帯の分布にあわせて、東部太平洋における分布域は中西部太平洋に比べて南北に狭くなっている(図4)。太平洋内については単一系群とする説と複数系群とする説があるが(鈴木 2010)、資源管理上は東部太平洋と中西部太平洋に分けて資源評価が行われる場合が多い。

産卵は表面水温24℃以上の海域で広く行われ、東部太平洋においても南北アメリカ大陸沿岸から西経130度、北緯15度から南緯10度付近の適水温帯で産卵が行われる。成熟体長は45 cm程度とされ、性比は1:1で、キハダやメバチで確認された高齢魚におけるオスの比率の増大は見られない。

成長は、耳石日輪の計数から得られた結果と標識放流・再捕データを組み合わせて、満1歳で尾叉長40 cm台後半、満2歳で60 cm台後半、満3歳で70 cm台と推定されている(図5)。体長体重関係は、W=5.5293×10-6L3.336等(Wは体重(kg)、Lは尾叉長(cm))が用いられ、40 cmで1.2 kg、50 cmで2.6 kg、60 cmで4.7 kgとなる。寿命は6歳を超えると推定される。

餌生物は他の海域同様、魚類・甲殻類・いか類で、選択性は低くその海域で主要なものが主たる餌となっていると考えられている。また、捕食者も他大洋と同様、カツオ自身を含めた高度回遊性魚類のまぐろ類・かじき類、その他の魚食性魚や海鳥であると考えられる。


資源状態

全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC) は、2004年にA-SCALAを用いた資源評価を実施し(Maunder and Harley 2004)、2006年には追加・更新したデータを用いて解析が行われた(IATTC 2007)。2012年には、異なる4つの手法(a. 漁業・生物学的指標値; b. 標識データ解析;c. サイズ組成資源評価モデル;d. 空間資源動態モデルSEAPODYM)を用いて東部太平洋の資源評価が実施された。各方法による結果の概要を以下に示す。


a). 漁業・生物学的指標値

東部太平洋におけるカツオ資源指数がデータとモデルベースで8つ示された。それらは、(a) まき網による漁獲量、(b) 流れ物操業CPUE、(c) 素群れ操業CPUE、(d) 標準化努力量、(e) 平均重量(kg)、(f) 相対生物量、(g) 相対加入量、(h) 相対資源利用率、である。まき網による漁獲量は1985年以降増え続け、2003年以降は高い水準で推移している(図6 (a))。流れ物CPUEは1990年以降、1999年を除いて平均レベルで変動し、2011年は高かった(図6 (b))。素群れCPUEは2003年以降高く推移し、2008年に最も高かった(図6 (c))。資源利用度の指標となる標準化努力量は1991年から2000年中頃まで増加傾向で、2009年以降減少傾向である(図6 (d))。相対的な資源量、加入量、資源利用率は20年以上増加傾向を示し、2011年の資源量と加入量は高い(図6 (f), (g), (h))。

カツオ資源の懸案事項は、断続的に利用率が増加していることであるが、近年は減少傾向に転じている。2009年の平均重量が近年の最低値を記録しており、過剰な利用の結果と考えられたが、近年の加入が過去よりも多いこと、あるいは小型カツオで占められた海域への漁業の拡大などがその要因として示唆された。漁獲量とCPUEの減少とともに平均的な体長の継続的な減少も懸案であり、これらはカツオ資源の利用度がMSYに近づいている、あるいは超えていることを示唆するものである。


b). 標識データ解析

放流時期が異なる2つの標識調査(1973〜1981年、2000〜2006年)で得られたデータを分析した(Maunder 2012b)。評価モデルの特徴は、タグによる初期死亡率と脱落率を1つのパラメータ、長期間の死亡率と脱落率を1つのパラメータ、報告率、非混在率を含めていることである。海域AとCのみの推定値が利用可能である。漁獲率の推定値は不確実である。


c). サイズ組成資源評価モデル

サイズ組成資源評価モデルはMaunder(2012d)によって開発されたモデルで、キハダ、メバチに適用されたSSモデルとは異なる。カツオの年齢データは不十分であるために、タグデータから成長を算出した。このモデルを適用するにあたり、東部太平洋を6つの海域に区分し、それぞれの海域を個々に解析した。CPUEと体長組成データに不確実性がともなうために、海域Bのみで信頼できる推定値が得られた。海域Bにおける資源量の推定値は、1999年に特に高くなり、1980年以降、増加傾向を示した(図8)。


d). 空間資源動態モデルSEAPODYM

SEAPODYMでは、魚類の資源動態に影響のある水温、流れ場、溶存酸素、基礎生産といった海洋環境要因を組み込み、かつお・まぐろ類の環境への応答を考慮した年齢別(体長別)のかつお・まぐろ資源の時空間分布を予測・推定する。さらに、複数漁業種(竿釣りやまき網)による実際の漁獲努力量あるいはその推定値を利用して、漁獲量や漁獲効率、その体長組成の時空間分布を予測・推定する(Lehodey et al. 2011)。今回の解析では、(1)海洋データにSODAを適用、(2)MFCLによる年齢別体長を適用、(3)MFCLで推定されたWCPOの加入と死亡係数をスケーリング、(4)まき網選択率に非対称正規分布関数を適用した。推定された資源量は、180〜235万トンであった(図9)。

過去に実施された資源評価結果(Maunder and Harley 2005)では、(1)まき網のCPUEが資源量に対して比例しているかどうか不明であり、(2)サイズが大きいカツオ資源が漁業に対して強い影響を与えている可能性があり、(3)中西部太平洋のカツオ資源との関連が不明であるために予備的な結果にとどまっており、これらの問題は今回の資源評価でも同様に言える。

以上の結果から、東部太平洋におけるカツオ資源の現状は不確実であるが、カツオ資源に危機が迫るような明確な証拠はない。


管理方策

2007年まではまき網を対象とした年間42日間の禁漁を中心とした資源管理方策がとられていたが、2008年6月の第78回IATTC年次会合において、2008年以降の東部太平洋における保存管理措置が合意に至らなかったため、2008年は各国の自主規制を除いていかなる規制も実施されていない状況にある。しかしながら、資源評価の結果が前回の結果と一致していること、流れ物操業に関連するメバチ漁獲量とカツオの関係は認められないことから、本資源の管理に関する懸念はないと判断された(IATTC 2007)。その後実施された資源評価においても本資源の資源管理に関しては同様の判断が支持されている(IATTC 2010)。

カツオの保存管理措置は採択されていないが、まき網漁業については、2012年6月の第83回IATTC年次会合において、全面禁漁措置(62日間)、沖合特定区(96W〜110W、4N〜3S)での禁漁措置(9月29日〜10月29日までの1か月間)という、2012年と同様の保存管理措置を2013年にも導入することが同意されており、結果的にカツオに対する努力量も削減される。


カツオ(東部太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
14.9〜29.8万トン
平均:23.7万トン(2006〜2010年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
17〜82トン
平均:43.4トン(2006〜2010年)
管理目標 MSY
資源の現状 MSYに近いか、MSYを超えている可能性
管理措置 まき網漁業は62日間の全面禁漁及び特定区での1か月の禁漁措置がとられている。
管理機関・関係機関 IATTC

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

清藤 秀理


参考文献

  1. Anon.(IATTC) 2007. THE FISHERY FOR TUNAS AND BILLFISHES IN THE EASTERN PACIFIC OCEAN IN 2006. IATTC. 1-160 pp. http://www.iattc.org/PDFFiles2/FisheryStatusReports/FisheryStatusReport5ENG.pdf (2010年11月30日)
  2. Anon.(IATTC)2012. Fishery Status Report 10 - TUNAS AND BILLFISHES IN THE EASTERN PACIFIC OCEAN IN 2011. IATTC. 1-162 pp. http://www.iattc.org/PDFFiles2/FisheryStatusReports/FisheryStatusReport10ENG.pdf (2012年7月10日)
  3. IATTC. 2012. Catch Reports and Data. http://www.iattc.org/CatchReportsDataENG.htm.(2012年9月)
  4. Lehodey, P., Senina, I., Calmettes, B., Hampton, J., Nicol, S., Williams, P., Molina, J., Ogura, M., Kiyofuji, H. and Okamoto, S. 2011. SEAPODYM working progress and application to Pacific skipjack tuna population and fisheries. WCPFC-SC7-2011/EB-WP 06 rev1.
  5. Matsumoto, W.M., R.A. Skillman, and A.E. Dizon (1984): Synopsis of biological data on skipjack tuna, Katsuwonus pelamis. NOAA Tech.Rep. NMFS Circ., (451): 1-92.
  6. Maunder, M.N. and S.J. Harley. 2005. Status of skipjack tuna in the eastern Pacific Ocean in 2003 and outlook for 2004. In IATTC (ed.), Status of the tuna and billfish stocks in 2003. 109-167pp. http://www.iattc.org/PDFFiles2/SAR5%20_SKJ_ENG.pdf (2005年10月14日).
  7. Maunder, M.N. (2012a) Status of skipjack tuna in the eastern pacific ocean in 2011. IATTC Scientific Advisory Committee (SAC-03-07a). 1-29pp. http://www.iattc.org/Meetings/Meetings2012/May/PDFs/SAC-03-07a-SKJ-assessment-2011.pdf (2012年5月7日)
  8. Maunder, M.N. (2012b) Updated indicators of stock status for skipjack tuna in the eastern pacific ocean. IATTC Scientific Advisory Committee (SAC-03-07b). 1-4pp. http://www.iattc.org/Meetings/Meetings2012/May/PDFs/SAC-03-07b-SKJ-indicators.pdf (2012年5月7日)
  9. Maunder, M.N. (2012c) Preliminary analysis of historical and recent skipjack tuna tagging data to explore information on exploitation rates. IATTC Scientific Advisory Committee (SAC-03-07c). 1-24pp. http://www.iattc.org/Meetings/Meetings2012/May/PDFs/SAC-03-07c-SKJ-tag-analysis.pdf (2012年5月7日)
  10. Maunder, M.N. (2012d) A length based meta-population stock assessment model: application to skipjack tuna in the eastern Pacific Ocean. IATTC Scientific Advisory Committee (SAC-03-INF). 1-24pp. http://www.iattc.org/Meetings/Meetings2012/May/PDFs/SAC-03-INF-A-Length-based-meta-population-stock-assessment-model-DRAFT.pdf (2012年5月17日)
  11. Schaefer, K. M. 2001. Assessment of skipjack tuna (Katsuwonus pelamis) spawning activity in the eastern Pacific Ocean. Fish. Bull., 99: 343-350.
  12. 鈴木伸明. 2010. カツオ系群構造研究−系群構造に関しては現段階で確固たる結論は無い−.遠洋水産研究所リサーチ&トピックス.