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26 ニシマカジキ 大西洋

White marlin

Tetrapturus albidus

                                        
PIC

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最近一年間の動き

2010年までのデータを使って資源評価が実施され、その結果を基に新たな管理方策が策定された。


利用・用途

刺身、寿司、切り身(ステーキ)、マリネ。


図

図1. 国別漁獲量


表

表1. 近年の国別漁獲量(2011年の値は暫定値)
漁獲量には、いずれもラウンドスケール スピアフィッシュが混入していると考えられる。


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図2. 海域別・漁業種類別漁獲量の年推移


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図3. 1990年代(左)及び2000年代(右)の漁業種別CPUE分布図
青:はえ縄漁業、灰色:その他の表層漁業


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図4. ニシマカジキの分布


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図5. 漁業別資源量指数
破線は個々の資源量指数を、黒実線はそれらを1つに併せた資源量指数を示す。


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図6. 推定された資源量(青)及び漁獲死亡係数の歴史的推移
上図はプロダクションモデルの、下図は統合モデルの結果を示す。資源量及び漁獲死亡係数はMSY水準に対する相対値として示してある。資源量は、プロダクションモデルでは漁獲可能資源量、統合モデルは産卵親魚量の推定値。


漁業の概要

本種を主対象で漁獲している漁業は米国、ベネズエラ、バハマ、ブラジル等のスポーツフィッシングとカリブ海諸国やアフリカ西岸諸国の沿岸零細漁業であるが、漁獲量の大部分は台湾、日本、ブラジル等まぐろ類やメカジキを対象としたはえ縄の混獲によるものである。近年、カリブ海諸国やブラジルの零細漁業の漁獲が増えている(図1、表1)。日本の漁獲は、1990年代上旬までは100トンを上まわっていたが、それ以降減少を続け、近年では30〜40トン前後となっている(表1)。

最近本種に外見が極めてよく似たラウンドスケール スピアフィッシュ(roundscale spearfish, Tetrapturus georgii)という新種の存在が確認され、ニシマカジキの報告漁獲量の中に本種の漁獲が含まれていることがわかった。今後はニシマカジキとラウンドスケール スピアフィッシュの漁獲を分けて報告することがICCATで奨励されている。しかしながら、ICCATのニシマカジキの漁獲統計は現在までのところこの2種を一緒に計上している。

本種の総漁獲量は1960年代中旬に5,000トンまで達した後、1970年代に2,000トン前後に急減した。その後総漁獲量は緩やかな減少傾向を示し、近年は500トン前後で増減していたが、2010年は431トンに減少し、2011年は暫定値ながら、更に404トンに減少している(表1)。本種の漁獲の大半ははえ縄漁業によるものであり、1980年代中旬以降は南大西洋での漁獲が、北大西洋を上回っている(図2)。


生物学的特徴

本種は主として西大西洋の熱帯・亜熱帯域及びそれに隣接する水域に広く分布している(図3、図4)。本種は、インド・太平洋に分布しているマカジキとは、外部形態が明確に異なっており、平均漁獲サイズは20〜30 kgでマカジキよりも小型である。大西洋の熱帯・亜熱帯域に分布するクチナガフウライ及びラウンドスケール スピアフィッシュとは外部形態が極めてよく似ているが、これら3種は、吻の長さ、胸鰭の形状及び肛門の相対的な位置で区別される(ICCAT 2006)。ラウンドスケール スピアフィッシュは2006年に新種として記載されたため、これ以前に行われた本種の生物学的研究は、ラウンドスケール スピアフィッシュの標本混入により歪められていると考えられる。

産卵は西太平洋熱帯域で、北半球域では4〜7月に、南半球域では12〜3月に行われている。外洋の表層混合層内が主たる分布水深帯であるが、100〜200 m層への潜水行動を頻繁に行うことが確認されている。潜水行動には、深層域に一定時間止まるU字型と、すぐ浮上するV字型が認められるが、どちらの潜水行動をより多く行うかということについては、個体や海洋環境による変異が大きく特定の傾向は認められていない。


資源状態

2012年5月に行われた資源評価では、まずICCATのニシマカジキ水揚げ統計に混入しているラウンドスケール スピアフィッシュの情報を取り除く手法の検討が行われた。本種の分布の中心である西大西洋域では、季節や水域で変化するものの全体としては、漁獲の1/4程度の混入があることが判明した。その一方で東大西洋域では情報が少なく、混入率の推定はできなかった。このため、ICCATに報告されているニシマカジキの漁獲を用いて資源評価を行うこととした。

2010〜2011年にICCATカジキ類作業部会には多くの資源量指数が報告されたが、これらをICCAT解析手法作業部会で新たに合意されたCPUE標準化のガイドラインに照らして、7つの標準化CPUEを資源量指数として資源解析に用いた(図5)。これらのCPUEは全般的に、1961〜1991年の間は大きく減少しているがその後は比較的安定したトレンドを示している。資源解析はプロダクションモデルと統合モデル(Stock Synthesis 3)を用いて行ったが、資源解析に用いた漁獲量には、他種情報の混入という問題に加えて、2002年から導入された、生きて漁獲された個体の放流という規制措置によって、これら生存放流個体が報告されなくなったことにより、漁獲量が2002年以降減少するという問題があることが判明した。報告漁獲量の減少は、2002年以降の漁獲死亡係数の減少という結果を導くが、生存放流個体の一部は放流後に死んでしまい、これらの死亡が資源解析結果に反映されないと考えられるので、資源解析結果は2002年以降の死亡率を低く見積もっている可能性が高いと推測される。

上記に示されるように不確実性が高いものの、資源解析の結果は、資源がこれまで高い漁獲圧で乱獲状態されていたが、現在は漁獲圧も減少し乱獲状態にさらされてはいないであろうことを示すものであった(図6)。漁獲死亡係数は10年前から減少しており、現在の漁獲死亡係数の水準はFMSYよりも低くなっている可能性が高いが、資源量はいまだにBMSYよりも低くなっていると考えられる。また、プロダクションモデル解析と統合モデルでは資源の生産性の推定値が異なり、後者の方が前者と比べて資源の回復が早いという結果になったが、現有の情報ではどちらの結果も同程度の確率で起こりうるということしか考察できない。これらの資源評価の結果は、報告された漁獲量がニシマカジキの漁獲死亡を正しく反映しているという仮定によっているが、感度解析の結果は、もしほとんど報告されていない生存放流個体の死亡率が高かったと仮定した場合は、推定される資源状況はもっと悲観的になり、現在でも乱獲状態が継続中になるということを示している。


管理方策

新しく行われた資源評価結果を受けて、大西洋ニシマカジキ資源に対しては、2013〜2015年の間のTACを400トンとすることが合意された。この間の日本の割り当て漁獲量は年間35トンである。また、これまで義務づけられていた、生きて漁獲された個体をできるだけ放流後の生存率が高くなるように放流することを可能な限り実施することが勧告された。同時に、今回資源解析・評価の実施に当たって問題となった生存放流及び死亡投棄個体の推定方法について、各国からの報告の提出とそれらの内容の吟味も併せて勧告された。また、ニシマカジキは、はえ縄やまき網といった規模の大きな漁業の他に、スポーツフィッシングや沿岸漁業によっても漁獲されているので、これらに関しては別途資源保護のための規制と、モニタリング態勢の強化が勧告されている。


ニシマカジキ(大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 恐らく若干の上昇傾向
世界の漁獲量1)
(最近5年間)
400〜660トン
平均:545トン
我が国の漁獲量1)
(最近5年間)
20〜40トン
平均:35トン
管理目標 MSY
目標値 874〜1,604トン
資源の現状 恐らくB2010<BMSY
恐らくF2010<FMSY
管理措置 2013〜2015年のTACを400トンとする(日本の割当量は各年とも35トン)
管理機関・関係機関 ICCAT
1): 漁獲量には、いずれもラウンドスケール スピアフィッシュの漁獲が混入していると考えられる。

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

余川 浩太郎


参考文献

  1. ICCAT. 2006. Blue and white marlin. ICAAT SCI-027,4p.
  2. Prince E, C. Rivero, J.E. Serafy, C. Porch and G. P. Scott. 2002. An update of the tag release and recapture files for Atlantic white marlin. SCRS/02/070, 19p.