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25 マカジキ 中西部北太平洋

Striped Marlin

Tetrapturus audax

                                                                       
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最近一年間の動き

2012年4月のISCカジキ作業部会において、2011年12月に行った本種の資源解析結果を用いて将来予測を行った。将来予測を含む資源評価結果が、2012年8月に中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC科学委員会)に報告された。2011年の資源評価では、東部北太平洋の群が遺伝学的に中西部北太平洋の群と異なる可能性が高いことがDNA分析結果から示されたことより、中西部北太平洋と東部北太平洋の系群の境界線が西経140度にあるとして、ISCでは中西部北太平洋資源の資源解析を行った。資源解析の結果、本資源は低位水準にありかつ減少していると考えられた。将来予測の結果、FMSYまたは現状の漁獲圧(F)で漁獲した場合、産卵親魚量は2017年までに2012年より45〜72%または14〜29%増加すると予測され、楽観的な結果となった。なお本資源の資源回復方策は、2007年の資源評価結果をもとに、2010年のWCPFC年次会合で検討され、各国が2000年から2003年の最高漁獲量から、2011年は10%、2012年は15%、2013年以降は20%漁獲量を削減する措置が採択されている。


利用・用途

刺身、寿司で生食されるほか、切り身はステーキや煮付けとされる。


図1

図1. 北太平洋(赤道以北)の我が国の漁業種別漁獲量


表1

表1. 北太平洋の国別漁獲量(ISC集計分、トン)


図2

図2. 北太平洋の国別漁獲量(ISC集計分、トン)


図3

図3. 太平洋におけるマカジキの分布域(桃色)と主要漁獲域(青色)
マカジキを主対象とした漁業は、現在ごく小規模な沿岸漁業に限られているので、はえ縄によって主に漁獲される水域を青色で示した。


図4

図4. 中西部北太平洋のマカジキ資源評価に用いた資源量指数(Brodziak and Katahira 2011)
左図)日本の遠洋近海はえ縄。青:エリア1(北緯10度以南)、黒:エリア2(北緯10度以北かつ東経160度以西)、緑:エリア3(北緯10度以北かつ東経160度以東)。
右図)オレンジ:日本の沿岸はえ縄、紫:台湾の遠洋はえ縄、赤:ハワイのはえ縄。


図5

図5. 統合モデル(Stock Synthesis 3)で推定した産卵親魚量(ISC 2011)


図6

図6. 統合モデル(Stock Synthesis 3)で推定した中西部北太平洋マカジキの加入量(ISC 2011)


図7

図7. 統合モデル(Stock Synthesis 3)で推定した中西部北太平洋マカジキの産卵親魚(5才以上)に対する漁獲死亡係数(ISC 2011)


表2

表2. 漁獲方策別加入シナリオ別の2017年に予測される産卵親魚量(2012年の産卵新魚量比)。3つの加入シナリオを仮定;2004〜2008年または1994〜2008年の加入量をリサンプリング、Beverton-Holt再生産曲線を仮定。4000試行結果の5,25,50,75,95パーセント点を示す。赤色は2017年の産卵親魚量が2012年より小さくなった場合を示す。


漁業の概要

北太平洋(赤道以北)における我が国のマカジキの漁獲量は、1970年代には1万トンを超えていたが、その後減少を続け、近年は2,000トン前後に留まっている(図1)。漁獲の多くははえ縄によるが、一部は突きん棒や流し網、あるいはひき縄でも漁獲される。近年はえ縄による漁獲は減少しているが、流し網による漁獲は増加傾向にある。我が国のマカジキの漁獲のほとんどはまぐろ類を対象とした操業の混獲物だが、常磐沖、南西諸島などで、はえ縄、突きん棒及び流し網が季節的に本資源を主対象とした操業を行っている。

ISCが集計した北太平洋のマカジキの漁獲量を表1、図2に示した。北太平洋におけるマカジキの漁獲量は、1980年代までほとんどが我が国の漁獲量であった。1990年以降、漁獲量は減少傾向を示し、2010年には約2,400トンとなった。しかしながら、ISCが集計した北太平洋のマカジキの漁獲量には、中国やいくつかの中米諸国等の漁獲の情報が含まれていないので、今後更に整備を進める必要がある。なお、中西部北太平洋の漁獲量は、現在ISCによって集計されている。


生物学的特徴

太平洋に分布するマカジキは、大西洋のニシマカジキ(White Marlin, Tetrapturus albidus)とは別種である。太平洋におけるマカジキの分布は、はえ縄におけるCPUEの分布から、熱帯太平洋中西部海域を取り囲む馬蹄形をなすことが古くから知られている(図3)。

太平洋のマカジキには外部形態の比較から南北太平洋の2系群があるといわれていたが、近年のDNA解析から東部北太平洋と中西部北太平洋は別系群であることが示されている。主たる活動水深帯は表層混合層及びその直下の水温躍層部であり、それより深いところに潜ることは多くない。電子標識装着調査データの解析から、夜半から朝にかけては活動が極端に低下する時間帯があることが報告されている。体長(眼後叉長)組成の解析から1歳で64 cm、3歳で150 cm、5歳で200 cmに達し、寿命は10歳程度(最大体長290 cm)と推定されているが、正確な成長及び成熟年齢に関する情報は得られていない。160 cm前後(3〜4歳)で約50%の個体が成熟するものと考えられている。産卵場は、稚魚の採集地点の分布状況から北緯20度前後の海域であろうと推定されている。東部太平洋での卵稚仔の採集報告はないが、卵巣の成熟状態から一部の個体は産卵している可能性がある。産卵月は4〜6月である。


資源状態

2011年の資源評価では、東部北太平洋の群が遺伝学的に中西部北太平洋域の群と異なる可能性が高いことがDNA分析結果から示されたことより、ISCでは2011年12月に中西部北太平洋と東部北太平洋の系群の境界線が西経140度にあるとして、中西部北太平洋資源の資源解析を行った(ISC 2011)。

最新の中西部北太平洋の資源評価では、統合モデル(Stock Synthesis Version 3.20b)が適用され、雌雄混合・四半期ベースで、1975年から2010年の資源解析が行われた。資源解析には、各国の1975年から2010年の漁獲量、中西部北太平洋の標本から得られた新たな成長曲線及び体長体重関係(Sun et al. 2011)やsteepness=0.87が用いられた。

資源解析に使用した資源量指数は、日本の遠洋近海はえ縄(3エリア、エリア1:北緯10度以南、エリア2:北緯10度以北かつ東経160度以西、エリア3:北緯10度以北かつ東経160度以東)、日本の沿岸はえ縄、台湾の遠洋はえ縄(1995年以後))及びハワイのはえ縄の標準化CPUEであった(図4)。これらのうち、日本の遠洋近海はえ縄(3エリア)、日本の沿岸はえ縄及びハワイのはえ縄の5つの資源量指数すべてにおいて、1990年代後半から2000年代中頃に資源量指数の減少が認められ、この時期に資源量が大きく減少したことを示唆しているものと考えられる。

以上のデータを用いて資源解析を行い、推定された産卵親魚量(図5)は、1975年から1980年にかけ5,000トンから2,000トンに大きく減少し、その後1990年代半ばまで3,500トン前後で推移していた。1990年半ば以降、産卵親魚量は数年で大きく減少し、1,500トン前後で近年まで推移している。推定された加入量(図6)は1975年から1990年半ばまで、大幅な範囲(250〜1,700千尾)の変動を繰り返した。その後加入量は、近年まで500千尾以下と卓越した加入群が出現していないと推定された。

1990年代半ばに産卵資源量が大幅に減少し、その後1980年代の水準に回復しなかった原因は、漁獲死亡係数の増加(図7)及び加入量の減少であると考えられる。2009年の産卵親魚量は、1980年代と比較して約1/3と推定された。したがって、SS3による資源解析結果は中西部北太平洋マカジキ資源が、近年低位水準にありかつ減少していることを示している。

2017年までの将来予測では、将来の加入レベルが低い場合(近年と同レベル)と高い場合(1975年以降の再生産関係)を仮定した(表2)。FMSYまたは現状の漁獲圧(F)で漁獲した場合、産卵親魚量は2017年までに2012年より45〜72%または14〜29%増加すると予測された。2001〜2003年の平均のFで漁獲した場合、産卵親魚量は短期的には2012年より2%減少するが、2017年には6%増加すると予測された(ISC 2012)。なお北委員会の要請により、将来の加入レベルが近年(2004〜2008年)の最も低い場合を仮定して追加計算を行った結果、将来予測結果は上記2つの加入シナリオより悲観的になった。


管理方策

ISCでは、2007年に行った北太平洋マカジキの資源評価結果の信頼性が低く、また管理基準が明確になっていないといった問題が有ることを認めつつも、資源状態が悪化しているのは事実であり、本資源の漁獲死亡率を近年のレベル(2003年あるいはそれ以前の水準)よりも減少させるべきであると勧告した。2007年の資源評価結果をもとに、2010年12月に開催されたWCPFC年次会合では、各国が2000〜2003年の最高漁獲量から、2011年は10%、2012年は15%、2013年以降は20%削減する措置が採択された。

2011年12月にISCが新たに実施した資源解析結果では、中西部北太平洋マカジキ資源は、近年低位水準にありかつ減少していると推定された。一方、本種の成長は早く、生産性の高い資源であると考えられており、将来予測の結果は現在のF、FMSYで漁獲した場合、資源は増加すると予測された。ISCは、これらの結果をもとに、現在の漁獲死亡率を減少させると、産卵親魚量の増加に繋がり、将来高い加入量が得られる確率が高まると勧告した。なお、現在の中西部北太平洋マカジキ資源は減少しているため、東部北太平洋系群との境界(西経140度)付近の漁獲量を注視すべきとした。


マカジキ(中西部北太平洋)資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
2,200〜3,500トン
平均:2,900トン(2006〜2010年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
1,700〜2,500トン
平均:2,200トン(2006〜2010年)
管理目標 検討中
資源の状態 資源評価結果の信頼性が低いものの、近年の資源水準が低位であると考えられる。
管理措置 各国が2000〜2003年の最高漁獲量から、2011年は10%、2012年は15%、2013年は20%漁獲量を削減。
管理機関・関係機関 WCPFC、ISC

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

木元 愛・余川 浩太郎


参考文献

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