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24 メカジキ 南大西洋

Swordfish

Xiphias gladius

                                                                                   
PIC

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最近一年間の動き

2012年度は南大西洋のメカジキの資源評価は行われていない。最新の資源評価は大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)メカジキ資源評価会議で2009年に実施され、本系群は乱獲状態にはないことが示された。2012年の科学委員会は、データ不足による不確実性を低減する十分な調査研究が実施されるまでは、本資源の年間漁獲量を前回推定されたMSY(15,000トン)以下に抑え、小型個体の漁獲量制限を継続するよう勧告を出した。2013年に南大西洋のメカジキの資源評価が行われる予定である。


図1

図1. 漁法別漁獲量の年推移(1950〜2011年)(ICCAT 2012)


表1

表1. 近年の国別漁獲量


図2

図2. 国別漁獲量の年推移(1950〜2011年)(ICCAT 2012)


図3

図3. 大西洋における漁法ごとのメカジキの累積漁獲量(2000〜2009年の合計)の分布図(ICCAT 2012)
青がはえ縄漁法、白がその他の漁法による漁獲量を示す。円の大きさは漁獲量の相対的な比を表す。南北の系群は北緯5度(太線)で仕切られている。


図4

図4. 日本の大西洋でのメカジキ漁獲量(1950〜2011年)(ICCAT 2012)


図5

図5. プロダクションモデルのベースケースについて推定された相対的資源量(B/BMSY:赤線)及び相対的漁獲死亡率(F/FMSY:青線)(ICCAT 2009)


図6

図6. 非平衡プロダクションモデル解析におけるバイオマスの将来予測(ICCAT 2012)
TACを10,000〜17,000トンに設定した時のバイオマスの変化予測。


図7

図7. Catch onlyモデル解析におけるバイオマスの将来予測(ICCAT 2012)
漁獲量を固定した場合(y軸)にB>BMSY、F<FMSYとなる確率を各年について示すコンター図。コンターは上から50%、75%、90%の確率を意味する。

漁業の概要

メカジキは南大西洋では、1980年代末まで主に日本・台湾・韓国のはえ縄の混獲として漁獲されており、総漁獲重量は10,000トン未満と少なかった(図1、図2)。1989年からメカジキを目的にはえ縄の浅縄操業を行うスペインの船団が参入し、総漁獲量は1995年に21,930トンへと急増した。これは、スペインの漁場が徐々に北大西洋及び他の大洋から南大西洋へとシフトしたことによるが、加えて、ブラジル、ウルグアイ等の沿岸国が漁獲を伸ばしたことも影響している。近年はこれらの国々のメカジキの漁獲量は減少傾向にある。大西洋における2000〜2009年のメカジキ累積漁獲量の分布図を図3に示す。1995年以降は、規制の導入、努力量の他の大洋への移動及び主対象魚種の変更により漁獲量は減少している。2011年の漁獲量は1995年の42%減の12,763トンであり、前年の漁獲量(12,655トン)とほぼ同等である。ただし、2011年の報告漁獲量は現時点での暫定値であり、おそらく実際の漁獲量はこれより多いと予想される(表1)。

大西洋で行われる我が国の漁業において、メカジキは主に熱帯・亜熱帯域で操業するメバチを対象としたはえ縄操業の混獲物である。1995年以降メバチの漁場がそれまでの南大西洋から徐々に北大西洋に移行したため、南大西洋の我が国のメカジキ漁獲量も減少した(図4)。この結果、2005年の漁獲量は480トンと過去最低を記録した。2006年には1,090トン、更に2007年には2,155トンと増加したが、その後減少している。


生物学的特徴

メカジキの資源構造については、1990年代中期から2000年代中期にかけて分子遺伝学的手法による研究が精力的に行われ、2006年にはICCATでメカジキの資源構造に関するワークショップが開催された(ICCAT 2006a,b)。これまでの研究結果は、ミトコンドリアDNA・核DNAの塩基配列の違いに基づき、地中海、北大西洋、南大西洋、太平洋の4つの独立した系群の存在を示唆している。大西洋におけるメカジキの南北の境界線については、便宜的に北緯5度線が境界として定められているが(Miyake and Rey 1989)、この境界よりも北であるとの指摘もあり(Chow and Takeyama 2000)、さらにChow and Nohara(2002)は、本系群はアフリカ沿岸では北緯15度付近まで分布する可能性を示唆している。2006年のワークショップでは、同様な指摘が複数報告されたが、どの研究もカバーする水域や時期が限られており、境界を変える判断を下すに不十分であるとされた。その後、北緯10〜20度において広く標本が収集・分析され、境界線が北緯15度付近にあることが示されているが(Chow et al. 2007)、資源評価には反映されていない。

メカジキの産卵場は熱帯及び亜熱帯域にあり、成長したメカジキはアフリカ沿岸方面やウルグアイ沖合水域に摂餌のために回遊すると考えられている。南大西洋のメカジキの年齢、成長、成熟に関して本格的な研究はまだ行なわれていない。


資源状態

資源評価は、2009年に開催されたICCATメカジキ作業部会において更新された。2009年のメカジキ作業部会では、非平衡プロダクションモデル解析(ASPIC)に、日本(2005年まで)、台湾(2003年まで)、スペイン、ブラジル、ウルグアイ(2種類)のはえ縄の資源量指数を使用した。日本と台湾については前回の資源評価に提出した標準化CPUEを、ブラジル、スペイン、ウルグアイについては本作業部会に提出された標準化CPUEが、合計5か国6つのはえ縄の標準化したCPUEを使用したものをベースケースとした。これらの資源量指数のうち、混獲である日本と台湾のCPUEは減少傾向を示す一方で、主対象魚種としてメカジキを漁獲している国々の資源量指数は、ブラジル・スペインは増加傾向を示し、ウルグアイでは減少を示した。このように、資源量指数のトレンドは1990年代中期以降国により異なる傾向を示している。この原因として、漁業国と混獲国の操業海域の違いや漁業間の操業様式の違いが考えられ、それぞれが資源の異なる部分の変動を示している可能性も考えられる。ただし、これらはあくまで作業仮説であるため、どの指標がより正確に資源の状態を反映しているかを判断するには、今後のデータ収集及び解析によってさらに検証する必要がある。

ベースケースで推定した南大西洋のメカジキの資源量は、1980年代はじめまでは安定しているものの、その後1990年代終盤まで減少し、2003年頃再び緩やかに増加する傾向を示した(図5の赤線)。本系群の資源状態に関しては、近年のFはFMSYよりも低く(F2008/FMSY=0.75)、近年の資源量はBMSYよりも上にあり(B2009/BMSY=1.04)資源は乱獲状態でないことが示された(図5)。将来予測について、漁獲量一定にして資源量の変化を10年間にわたって推定した(図6)。その結果、14,000トン以下であれば資源量は増加、15,000トンであれば安定、16,000トン以上であれば減少傾向を示すことが予測された。

上述の解析結果には不確実性が大きくともなうことから、ASPICで推定された結果とCatch only modelによる解析結果を併せて本種の資源評価を行うこととなった。

漁獲量データに含まれる情報のみを用いるCatch only Modelによる解析を行った結果、F2008/FMSY<1となる確率は77%、B2009/BMSY>1となる確率は82%となった。この推定値は非平衡プロダクションモデルの結果を支持しており、資源は乱獲状態にはないとされた。資源量の将来予測を行うに当たり、漁獲量を10,000〜17,000トンまで1,000トンずつ増加させながら(8つの予測結果が得られる)、10年間の変化を調べた。2009年の漁獲量を2006〜2008年の漁獲量の平均値として8つの漁獲量水準で将来予測を行った結果、漁獲量を15,000トンにした場合、予測期間の80%はB >BMSYとなり、17,000トンにした場合は67%の確率でB>BMSYとなることが示された。図7に漁獲量を一定にした際にB>BMSY、F<FMSYとなる確率の経年変化の推定結果を示す。


管理方策

資源評価に使用したデータは、不明な点が多く、それを明らかにできる十分な調査・研究が行われない限り、漁獲量は現状の漁獲量レベルが維持できると期待されるMSY(約15,000トン)を超えるべきではないと勧告された。

現在、大西洋全域について、@下顎叉長125 cm以下の魚の混獲率を15%以下に抑える、A下顎叉長119 cm以下の魚の混獲率を0%とする(投棄量の評価含む)、という2段階の最小体長規制がある。2006〜2008年の大西洋全体で水揚げされた125 cm以下の個体の割合は24%(尾数)と推定されている(北系群では28%、南系群では20%)。

漁獲量規制の導入にともなって、混獲されるメカジキの水揚量を調節するために、生きて漁獲されたメカジキを放流する動きが出てきたが、一部の国では放流個体数等についての情報収集が十分にされていないこと、過少報告の可能性があることが指摘されている。データの質・量の低下は資源評価の信頼性を落とすことに繋がるので、今後の改善が必要である。


メカジキ(南大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
(2007〜2011年)
12,546〜15,630トン
平均:13,255トン
我が国の漁獲量
(最近5年間)
(2007〜2011年)
912〜2,155トン
平均:1,464トン
管理目標 MSY
目標値 15,000トン
資源の現状 おそらくB2009/BMSY > 1
おそらくF2008/FMSY < 1
管理措置
  • 2010〜2013年のTACを15,000トン(日本の割り当ては901トン)とする。国別割り当てについて、割り当て分を超過もしくは余った場合には、2年以内であれば差し引き・上乗せを行い調整することができる。ただし、調整分は割り当て量の50%を超えない範囲とする。
  • 小型個体(下顎叉長125 cm/体重25 kg未満)の水揚量を15%以下に抑えるか、下顎叉長119 cm/体重15 kg未満の水揚量を0%にする(投棄量の評価含む)。
管理機関・関係機関 ICCAT

執筆者

かつお・まぐろユニット
かじき・さめサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

仙波 靖子・余川 浩太郎


参考文献

  1. Chow, S., and Takeyama, H. 2000. Nuclear and mitochondrial DNA analyses reveal four genetically separated breeding units of the swordfish (Xiphias gladius). J. Fish Biol. 56:1087-1098.
  2. Chow, S. and K. Nohara. 2003. Further implication on boundary between north and south Atlantic stocks of the swordfish. SCRS/2002/141. ICCAT Col. Vol. Sci. Pap., 55: 1719-1722.
  3. Chow, S. Clarke, S. Nakadate, M. and Okazaki, M. 2007. Boundary between the north and south Atlantic populations of the swordfish (Xiphias gladius) inferred by a single nucleotide polymorphism at calmodulin gene intron. Mari. Biol. 152:87-93.
  4. ICCAT. 2006a. 8 Executive summaries on species. 8.8 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, October 2 to 6, 2006). PLE-014/2006. 83-91 pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/PLE-014%20EN.pdf (2008年10月31日)
  5. ICCAT. 2006b. Report of the 2006 Atlantic swordfish stock assessment session (Madrid, September 4 to 8, 2006). SCRS/2006/015. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/SCI-040%20EN.pdf (2008年10月31日)
  6. ICCAT. 2009. Report of the 2009 Atlantic swordfish stock assessment session (Madrid, September 7 to 11, 2009). SCRS/2009/016. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2009_SWO_ASSESS_ENG.pdf
  7. ICCAT. 2012. 8 Executive summaries on species..8.9 SWO-ATL-Atlantic swordfish. In ICCAT (ed.), Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, October 1 to 5, 2012). 142-159 pp.
  8. Miyake, P. M., and Rey, J. C. 1989. Status of Atlantic broadbill swordfish stocks. In Stroud R. H. (ed.), Planning the Future of Billfishes Part I 115-136 pp. National Coalition for Marine Conservation Incorporation, Athens, Georgia., USA.