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20 ミナミマグロ

Southern Bluefin Tuna

Thunnus maccoyii

                                                                            
PIC

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最近一年間の動き

みなみまぐろ保存委員会(CCSBT)は、第18回年次会合(2011年10月)において、科学委員会が開発した管理方式(漁獲データなどの資源指標からTACを自動的に計算するルール)の採用に合意し、ミナミマグロ資源についての管理方式の運用を開始した。これにより原則として、今後のTACの決定は3年ごとに実施される管理方式の計算結果をもとに行われることになった。第18回年次会合では、管理方式により、2012〜2014年漁期のTACを2011年のTAC(9,449トン)から1,000トン、1,500トン、3,000トンと段階的に増加させることが決定された。第19回年次会合(2012年10月)では、科学委員会(2012年8月)からの管理勧告を受けて、2013年漁期のTACを予定通り10,949トンとすることが合意された。


利用・用途

ほぼ全てが日本での刺身や寿司用途に用いられている。


図1

図1. ミナミマグロの国別漁獲量の推移(CCSBT 2012a)


表1

表1. ミナミマグロの年齢別の体長と体重の関係


図2

図2. ミナミマグロの緯経度5度区画別の漁獲尾数
2010年暫定値。1〜15はCCSBT統計海区。1海区の青丸はインドネシアによる位置不明の漁獲尾数。


図3

図3. ミナミマグロの分布(赤)、漁場(青)、産卵場(黄)


図4

図4. CCSBTで用いられているミナミマグロの成長曲線(体長は尾叉長)
体長の各年代の曲線はそれぞれの年代に生まれた年級群の成長に対応する。 1950年代及び2000年代の成長曲線は1960年代と1990年代のものにそれぞれ等しいと仮定している。


図5

図5. 2011年に資源評価モデルにより推定された加入量(上図)及び親魚資源量(下図)
中央値、四分位点、90%点を示す。将来部分は管理方式を用いてTAC設定を続けた場合の予測。(CCSBT 2011aの図を改変)


漁業の概要

主な漁業国は日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、台湾、インドネシアであるが、近年フィリピン、南アフリカ、EUからも漁獲が報告されている(図1)。現在用いられている漁法は主にはえ縄とまき網であり、まき網漁は蓄養用種苗を得るためにオーストラリアのみが行っている。現在の主な漁場は、はえ縄では南アフリカ沖、インド洋南東海域、タスマニア島周辺海域及びニュージーランド周辺海域、まき網ではオーストラリア大湾である(図2)。

ミナミマグロ漁業の歴史は1920年代にオーストラリアが沿岸で行っていた小規模なひき縄漁までさかのぼる(Hobsbawn et al. 2012)。本格的な商業漁業は、1950年代初期、日本船がインドネシア近海の産卵場で開始したはえ縄操業により始まった(新宮 1970)。1961年には日本漁船の漁獲量は最高の77,900トンに達した。その後、日本船は肉質の良い魚を求めて索餌域である西風皮流域(南緯35〜45度の海域)へ漁場を移し、1971年からは資源保護のため、産卵場及び小型魚が多獲される海域での操業を自粛している(新宮 1978)。これらの影響もあり、日本のはえ縄船の漁獲量は1961年以降漸減し、1985年には約20,000トンまで減少した。一方、オーストラリアの漁獲量(缶詰用)は、主要漁法が竿釣からまき網へと移り変わるとともに次第に増加し、1982年には21,500トンに達したが、その後、自主規制及び産業の衰退により減少した。しかし、1990年代半ばより蓄養漁業を発達させ、種苗を得るためまき網による漁獲を伸ばした。種苗は約3〜6か月間蓄養した後、年間ほぼ全量の6,000〜10,000トン程度を日本へ輸出している。ニュージーランド、韓国、台湾、インドネシアによるはえ縄漁業は1980年代から始まり、漁獲量は1999年には合計で6,000トン近くまで達したが、その後は2,500〜3,500トン程度で推移している(CCSBT 2012a)。

ミナミマグロの国際的な管理は、1982年に日本、オーストラリア及びニュージーランドにより組織された三国間会議に始まった(西田 1994)。1985年からは科学者会合での議論をもとに各国の漁獲割当量が決められることになり、1989年にはこれら三国のそれまでの漁獲実績を下回る漁獲枠が設定された。その後、三国間会議を公式化する形で1994年にCCSBT(みなみまぐろ保存委員会)が設立された。CCSBTの設立以降、2000年代半ばまで約15,000トンのTACが維持されてきたが、資源状態の悪化を受け、2007年漁期には約12,000トン(日本は3,000トン)に、2010〜2011年漁期には約9,500トン(日本は2,400トン)にまでTACが削減された(CCSBT 2006, 2009)。近年、これらの漁獲圧削減や加入増加などの効果により資源状態の好転が見られ、2012〜2014年漁期のTACはそれぞれ約10,500トン、11,000トン、12,500トン(日本は約2,500トン、2,700トン、3,400トン)と増加させることとなった(CCSBT 2011b)。


生物学的特徴

【分布・回遊】

これまで行われた調査で、ミナミマグロの稚仔魚は例外なく、インド洋東部のインドネシア南岸とオーストラリア北西岸で囲まれた扇形水域(東経100〜125度、南緯10〜20度)で採集されていることから、産卵場はこの海域にあると考えられている(西川ほか 1985, 図3)。また形態的(岩井ほか 1965、新宮・藁科 1965)及び遺伝的(Grewe et al. 1997)に地理的変異が見られないため、単一系群として管理が行われている。産卵期は9月から翌年4月までの約半年間に及ぶ(Farley and Davis 1998)。1回の産卵数は体重1 kg当り5.7万粒で、産卵雌個体はほぼ連日産卵する。幼魚はオーストラリア西岸沖を南下したのち、オーストラリア南岸沖を東へ移動すると考えられているが(Caton 1994、西田 1994)、一部の若齢魚は南アフリカ沖でも見られる(Farley et al. 2007)。標識放流調査により、オーストラリア南岸の若齢魚はインド洋中央部や南アフリカ沖に季節回遊することが分かっている(Takahashi et al. 2004、Polacheck 2008)。その後、成長にともない次第に南緯35〜45度の西風皮流域全体に広く分布、回遊するようになる(新宮1978、Caton 1994)。ただし、東太平洋で見られることは稀である。


【成長・成熟】

ミナミマグロの体長(尾叉長)、体重はそれぞれ200 cm、150 kgに達する(新宮 1978)。漁獲個体の現時点での最大報告体長は210 cmである。寿命は少なくとも25年以上と考えられ、耳石の解析から得られている最高齢は45歳である。成熟開始体長は約150 cm(年齢は約8歳に相当)だと考えられているが、産卵魚の多くは15〜25歳魚が占める(Farley et al. 2007)。ポップアップアーカイバルタグを用いた標識放流調査の結果から、本種の成熟魚は必ずしも毎年産卵するわけではない可能性が示唆されている(Evans et al. 2012)。現在、CCSBT科学委員会の資源評価では、成熟年齢を10歳と便宜上仮定して解析を行っている。

成長式は耳石の年齢査定、漁獲物の体長頻度データ、標識放流調査の結果を統合して算出されている。ミナミマグロには、若齢魚から成魚への移行期に成長過程の変化が見られるため(Hearn and Polacheck 2003)、CCSBT科学委員会では、von Bertalanffyモデルに移行期の成長変化を考慮した成長式が用いられている(CCSBT 2011a)。また、若齢期の成長が1970年代以前に比べて1980年代以降に早くなったと考えられており(Hearn and Polacheck 2003)、成長式は1950〜2000年代の10年ごとの年級群に対して求められている。体長−体重関係はいくつか求められているが、日本のはえ縄漁獲物に対してCCSBT科学委員会では以下の式から体重を推定している(体長と体重の単位はそれぞれcmとkgである)。下記は内臓等を除かない重量であり、セミドレス重量は1.15で除して求めている。

            130 cm未満の魚 体重=0.0000313088体長2.9058
            130 cm以上の魚 体重=1.15×0.000002942体長3.3438            

こうして得られた年齢別の体長・体重を図4及び表1に示した。

胃内容物分析から、オーストラリア沿岸域に分布するミナミマグロは主に魚類を(Itoh et al. 2011)、外洋域に分布する体長約90 cm以上の魚は、主に頭足類と魚類を捕食していることが分かってきている。本種の捕食者は、他のまぐろ類と同様、かじき・まぐろ類、さめ類、海獣類などであると考えられているが、詳細は不明である。


【捕食・被食関係】

胃内容物分析から、オーストラリア沿岸域に分布するミナミマグロは主に魚類を(Itoh et al. 2011)、外洋域に分布する体長約90 cm以上の魚は、主に頭足類と魚類を捕食していることが分かってきている。本種の捕食者は、他のまぐろ類と同様、かじき・まぐろ類、さめ類、海獣類などであると考えられているが、詳細は不明である。


資源状態

ミナミマグロの資源評価はCCSBT科学委員会の下で行われている。本種は長寿命・世代時間が長いという生活史特性を持つことから、親魚資源が急激に変動することはあまりないと考えられている。そのため、科学委員会は数理モデルを用いた詳細な資源評価をおよそ3年に1回実施し、その他の年は、CPUEなどの漁業指標及び科学調査結果から得られた情報を総合的に検討することにより、資源の現況を判断している。

CCSBT科学委員会では、管理方式(後述)の開発のために作成されたオペレーティングモデルが資源評価モデルとしても用いられている。このモデルは単一系群を前提とした年齢構造モデルであり(空間構造は考慮されていない)、漁法別漁獲量、はえ縄CPUE、漁獲物の体長・年齢組成データ、航空機目視調査による加入指数などの観測データや成長式などの生物情報から、漁獲死亡率、加入量、資源量などを推定する。CCSBTが独自に開発したプログラムを使用しているが、複数の情報を統合して解析するという意味で統合モデルと呼ばれるものの1つである(「2. 漁業資源の変動と資源評価について」も参照)。資源評価を行う際は、資源に関わる不確実性をより適切に把握するために、再生産関係や自然死亡率には複数の仮説を置き、それぞれの仮説に基づいた解析結果を重み付けの方法により1つにまとめ、これをベースケースとして評価を行っている。

数理モデルを用いた資源評価は2011年に行われたため、2012年の科学委員会会合では、2011年の結果に漁業指標及び科学調査による加入量指標の最新情報を加えて総合的な検討がなされ、資源状態が次のように評価された(CCSBT 2012a)。現在の親魚資源量は依然極めて低い水準にあり、これは最大持続生産量(MSY)を産出する資源量(BMSY)の20%程度である(図5)。しかし、同時に資源の将来展望に好ましい次のような兆候もある。(1)近年の報告総漁獲量は減少を続けている、(2)現在の漁獲死亡率はMSY水準を与える漁獲死亡率(FMSY)以下に減少した、(3)管理方式によって決定される現在及び将来の漁獲水準で、資源は増加すると期待される、(4)2007年以降のはえ縄CPUEが上昇している。ただし、航空機目視調査による加入量指数は近年上昇傾向にあったが、2012年に大きく低下した。この低下に関しては、2013年の科学者会合において、指数に影響を与える要因をさらに検討することになっている(航空機調査指数は管理方式への入力データでもあり、非常に重要な資源指標の1つである)。

2012年の科学者会合では、遺伝的手法でミナミマグロの親魚資源量を推定した結果も報告された(CCSBT 2012a)。この方法は、産卵場で漁獲された親魚とオーストラリア大湾で漁獲された若齢魚の親子関係を遺伝子型解析によって特定し、得られた親子ペア数の情報から標識再捕法の考え方を用いて親魚資源量を推定する。漁獲情報やCPUEデータに依存しないことが大きな特徴である。会合では、現状の資源評価モデルから得られている資源量に比べ、この方法によってより高い資源量が推定されたことが示された。科学委員会は、この方法による推定結果の有用性を認めた上で結果が予備的であることを考慮し、その解釈を定性的なものにとどめた(CCSBT 2012a)。


管理方策

本種の資源管理はCCSBTの下で行われている。CCSBTでは、管理方式(後述)の導入に合わせ、2035年までに70%の確率で、漁業開始以前の親魚資源量の20%水準まで資源を再建するという中間管理目標を定めている(CCSBT 2011b)。最終的な管理目標は親魚資源量をBMSY水準まで回復させ、MSYによる管理を行うことであるが、目標達成までの期間や確率の具体的な数値は決まっていない(CCSBT 2009, 2010)。

管理方式(MP:Management Procedure)とは、CPUEなどの資源量指数や科学調査結果から、事前に定められた手続きによりTACを自動的に計算するルールのことである(Kurota et al. 2010;「2. 漁業資源の変動と資源評価について」を参照)。管理方式は、明確な数値目標の下、その時々の資源量指数の動向に応じてTACを増減させるフィードバック制御によって資源崩壊を回避しつつ漁獲を継続させ、目標を達成する(目標達成度や不確実性に対する頑健性は、管理方式を開発する段階で、資源に関する様々な不確実性や将来シナリオを想定した膨大な数の予測シミュレーションを行うことにより検討される)。管理方式を用いた管理は、将来の資源状態に大きな不確実性がある状況でも資源を安全に管理するために非常に有効である。資源の状況をモニタリングしながら、その状態変化に応じて方策を変えることによって管理失敗のリスクを低減するこのような管理を「順応的管理(Adaptive management)」と呼ぶ(Walters 1986、松田 2008)。順応的管理において重要な点は、状態変化に応じた方策の変え方を予め定めているところにある。管理方式を採用していることは、TAC決定の手続きそのものを事前に約束していることであり、管理方式によって決定されたTACには、それが仮に低いTACであったとしても従わなければならない。

CCSBTは、2011年10月の委員会年次会合において、科学委員会が開発した管理方式の採用に合意し、ミナミマグロ資源での管理方式の運用を開始した(CCSBT 2011b)。これにより、今後CCSBTでは、原則として管理方式を用いて3年ごとにTACの計算を実施し、向こう3年間の漁獲枠を決定することになった(次回は2015〜2017年漁期のTACのために2013年に実施)。管理方式による資源管理は、マグロの地域漁業管理機関では世界初となる画期的な試みである。

2011年の委員会年次会合では、管理方式から計算されたTACをもとに、2012〜2014年(3年間)漁期のTACは2011年漁期の9,449トンからそれぞれ10,449トン、10,949トン、12,449トンと段階的に増枠することが合意された(CCSBT 2011b)。ただし、2013年に管理方式により計算される2015〜2017年のTACが12,449トンより低かった場合には、2014年漁期のTACもこれと置き換える。TACを段階的に増枠した理由は、親魚資源量の将来の増加は予測されているものの、予防的アプローチの立場から現状では資源が低水準であることを考慮したためである。2012年10月の委員会年次会合では、科学委員会(2012年8月)からの管理勧告を受けて、2013年漁期のTACを予定通り10,949トンとすることが再確認された(CCSBT 2012b)。加盟国への2013年漁期の割当ては、日本2,689トン、オーストラリア4,698トン、ニュージーランド830トン、韓国及び台湾945トン、インドネシア707トンとなっている。協力的非加盟国へは、フィリピン45トン、南アフリカ80トン、EU 10トンが割当てられた。南アフリカに関しては、昨年の割当に比べ40トンの増加となっているが、CCSBTへの加盟が増枠の条件となっており、加盟が遅れた場合は40トンとの差は残りの加盟国に再配分される。

日本は2005年まで、漁場ごとに漁獲開始日と上限漁獲枠を設定し、漁獲状況に応じて漁獲終了日を決定することで自国はえ縄船の操業を管理してきたが、2006年以降、漁獲枠の個別割当て制度や、漁獲したミナミマグロ全個体への識別標識の装着制度などの導入により漁獲管理を強化した。また、CCSBTでは、すべての国を対象とした監視取締措置として、2008年10月より人工衛星を用いて漁船の位置をモニターする漁船位置監視システムを導入し、2010年1月からは漁獲から水揚げ、貿易までの過程を書類及びタグを用いて監視する漁獲証明制度も開始した。2011年10月には、委員会で決定された保存管理措置の確実な実施を促進するCCSBT遵守計画が策定された。

2006年以来、オーストラリアのまき網漁業の漁獲管理において、蓄養生簀で漁獲量推定のために行うサンプリング法がバイアスを生じさせている懸念があり、それによって漁獲量が過少報告されている可能性が指摘されている(CCSBT 2006)。この指摘を受けて、オーストラリアでは、水中ステレオビデオカメラを用いて活け込み原魚の魚体サイズの測定と尾数の計数を行うことで、より正確に漁獲量を推定する手法を開発・試験してきた(CCSBT 2012b)。同手法による魚体サイズの測定精度は良好であることが確認されたが、計画の立案から6年以上が経っているにもかかわらず、いまだ漁獲量管理のための商業生け簀への導入には至っていない。


ミナミマグロの資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 親魚資源量は近年、横ばい。未成魚は増加しており、親魚資源量も今後増加の可能性が高い。
世界の漁獲量
(過去5年間)
9,296〜11,395トン
平均:10,355トン(2007〜2011年)
我が国の漁獲量
(過去5年間)
2,223〜2,952トン
平均:2,639トン(2007〜2011年)
管理目標 中間目標は初期親魚資源量の20%水準を2035年までに70%の確率で達成
最終的な目標は親魚資源量をBMSY水準まで回復させ、MSYによる管理を行うこと(達成期間及び確率は未決定)
資源の状態 親魚資源量は31,022〜72,700トン
管理措置 TACの設定:2013〜2014年漁期のTACは各10,949トン、12,449トン(日本各2,689トン、3,366トン)
CCSBT登録漁船以外の漁獲物の輸入禁止
管理機関・関係機関 CCSBT、ICCAT、IOTC

執筆者

くろまぐろユニット
みなみまぐろサブユニット
国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部 温帯性まぐろグループ

高橋 紀夫・伊藤 智幸・境 磨

西海区水産研究所 資源海洋部 資源管理グループ
(国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部 温帯性まぐろグループ 併任)

黒田 啓行


参考文献

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