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17 メバチ 中西部太平洋

Bigeye Tuna

Thunnus obesus

                                                                               
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最近一年間の動き

太平洋におけるメバチの漁獲量は1980年代初頭のおよそ12万トンから徐々に増加し、2000年以降25万トン前後で推移している。2011年の太平洋における本種の漁獲量は最近10年間で最低の235,266トンであり、そのうち中西部太平洋(WCPFC条約水域)での漁獲は159,479トン(太平洋全体の約68%)であった。本海域におけるメバチの包括的な資源評価が2011年に行われた。MSYレベルを確保するには、2006〜2009年漁獲死亡レベルの30%の削減が必要である。現在の資源状態の評価結果(ベースケース)によれば、Bcurrent/BMSYが1.25、親魚資源量ではSBcurrent/SBMSYが1.19といずれも1を上回っており、乱獲状態にはない。また、もし小型魚の死亡が減少すれば、MSYは増加し、現在よりも多くの漁獲が許容されると考えられる。


利用・用途

1970年代半ばまでは、キハダが主に缶詰や魚肉ソーセージの原料として重要であったが、急速冷凍設備の普及によって、刺身材料、寿司ネタとしてのメバチの需要・価値が高まった。まき網で漁獲される30〜60 cmを主体とする小型のメバチの大部分は、缶詰をはじめとする加工用として消費される。


図1

図1. 中西部太平洋におけるメバチの漁法別漁獲量年変化(スピルサンプリングデータを用いての補正済み)


表1

表1. 中西部太平洋メバチの各年齢時体長


図2

図2. 主要漁業によるメバチの漁獲量分布(1990〜2010年)及び2010年の資源評価に用いられた海区区分(Williams and Terawasi 2012)
緑がはえ縄、青がまき網、黄がその他の漁業を表す。


図3

図3. 中西部太平洋におけるメバチの国別漁獲量年変化(スピルサンプリングによる補正なし)


図4

図4. 中西部太平洋におけるメバチの漁法別漁獲サイズ(Williams and Terawasi 2012)
横軸は体長、縦軸は漁獲重量(トン)で示す。黄緑がはえ縄、黄色がフィリピン・インドネシアの漁業、水色がまき網付群れ、濃い青がまき網素群れ操業を表す。


表2

表2. 中西部太平洋メバチの体長(尾叉長cm)と体重(kg)


図5

図5. 太平洋におけるメバチの分布


図6

図6. 太平洋におけるメバチの標識放流、再捕結果(Schaefer and Fuller 2002)
長距離再捕のみを示す


図7

図7.超音波発信機から得られた東部太平洋におけるメバチ(体長120 cm)の遊泳水深(宮部 1998)
赤は水温20°C以上を黄色は15〜20°C、水色は15°C以下を、縦線は夜間を表す。


図8

図8. 中西部太平洋メバチの年齢と成長
矢印はほぼすべての個体が成熟する体長(尾叉長120 cm)を示す。


図9

図9. Multifan-CLで推定された海区別加入の傾向(Davies et al. 2011)
左下が全体の加入量及びその95%信頼限界を表す。


図10

図10. Multifan-CLで推定された海区別総資源量の傾向(Davies et al. 2011)


図11

図11. Multifan-CLで推定された各漁業の中西部太平洋メバチ総資源量に対するインパクト(Davies et al. 2011)
縦軸は漁業が資源を減少させた割合(%)で、初期資源量に対して示したもの。緑がはえ縄、青がまき網素群、水色がまき網付群れ、黄がフィリピン・インドネシアの漁業、赤がその他を表す。


図12

図12. B/BMSYとF/FMSYの経年的プロット(Davies et al. 2011)


図12 図12 図12 図12

付表1. 中西部太平洋メバチの年別国別漁獲量(単位:トン)


漁業の概要

以下の記述における漁獲量統計は、WCPFCの2011年版Year book(WCPFC 2012h)の値を参照している。SPCによる、過去に遡ったまき網漁獲量の改定により、本誌昨年版までの統計値とは相違が生じている。

本種ははえ縄、まき網、竿釣りの主要まぐろ漁業で漁獲される(図1)。主要な漁業はまき網とはえ縄であり、主に赤道域で漁獲されているが、はえ縄の場合にはある程度の漁獲を亜熱帯域(例えば日本東方及びオーストラリア東方沖)でも漁獲している(図2)。また、多くの小型魚がフィリピンとインドネシアの小型まき網やひき縄等によって漁獲されている。全太平洋におけるメバチの漁獲量は1980年代初頭のおよそ12万トンから徐々に増加し、12〜29万トンの間で推移している(Williams and Terawasi 2012)。2011年の太平洋における本種の漁獲量は過去10年間で最低の235,266トンであり、そのうち中西部太平洋(WCPFC条約水域)での漁獲は159,479トンで、過去10年のほぼ平均レベル(太平洋全体の約65%)であった。


【はえ縄漁業】

我が国のはえ縄を中心とする漁業は第2次大戦以前から本種を漁獲していたが(岡本 2004)、1952年のマッカーサーライン撤廃以降漁場は急速に拡大し、赤道はその年のうちに越えるとともに東方へも順次拡大した。熱帯域を中心とし、1960年には南アメリカ大陸沿岸にまで達した。その後、南北両半球の温帯域にも操業域を広げ、1960年代は地理的に最も広い水域をカバーした。1970年代の初めまではキハダ、ビンナガを中心に缶詰等の加工品原料を供給してきたが、その後刺身需要の増加と冷凍設備の改善によってメバチへの嗜好が強まった。韓国、台湾のはえ縄も歴史が長く、前者は1958年から、後者は1964年から漁獲報告がある。

日本のEEZ内だけで操業を行う届け出船及び10トン未満のはえ縄船を除き、2010年に中西部太平洋では主に近海船からなる200トン未満が345隻、遠洋船の主体をなす200トン以上が110隻、操業を行ったと推定される(WCPFC 2012a)。韓国(WCPFC 2012b)は中・大型船のみで、中西部太平洋では1991年の220隻から減少し近年150〜180隻が操業を行ってきたが、2002年の184隻から2008年には108隻に減少し、2011年には124隻に回復したと報告されている。台湾(WCPFC 2012c)は大型船が当初ビンナガ操業主体に南太平洋の温帯域で操業していたが、その後熱帯域へも進出した。2009年に本水域で操業した100トン以上の漁船数は75隻であり、2004年の137隻から大きく減少したが、2011年には95隻に回復している。台湾の100トン未満の小型船も多く、台湾近海及び公海で操業を行っており、2011年には1,376隻がWCP-CA海域で稼動したもようである。1980年代の後半に、中国のミクロネシア水域への進出も定着し(1994年に最大457隻)、これらアジア極東の小型はえ縄船による生鮮まぐろの日本市場への空輸事業がグアムやパラオ他を水揚地として盛んに行なわれたが、近年は我が国の景気停滞と漁獲の減少によりかなり減少した。2004年には中西部太平洋において約212隻の中国のはえ縄船が操業し、同じレベルで近年推移してきたが、2006年には157隻に減少し、2007年にはさらに86隻にまで減少したものの近年再び増加に転じ、2008年、2009年には199隻及び219隻が操業している(WCPFC 2012d)。2010年における中国のはえ縄船の操業隻数は244隻(2011年には275隻)であり、このうち氷蔵船が155隻、急速冷凍船が89隻であった。この他に、漁獲量は少ないもののオーストラリア、米国、南太平洋諸国(フィジー、ソロモン諸島、ニューカレドニア、仏領ポリネシア等)、ベトナム、エクアドルもはえ縄に加わり、日本へ主として生鮮まぐろを供給している。

漁場は広範囲にわたるが、東西方向に帯状に形成される(図2)。中心となるのは赤道を挟んだ南北15度までであり、これらの漁場位置は南赤道流及び北赤道流域の水温躍層が100〜200 mの水深に相当する部分である。はえ縄漁具の設置水深と魚群分布域が重なる部分で釣獲率が高いと推察されているが、餌生物やメバチの摂餌水深との関連もあると思われる。さらに南北30〜35度付近の温帯域にもそれぞれの冬場を中心にメバチの好漁場が形成されるが、魚体は小さく成熟の程度も低いため摂餌回遊にあるものと見なされる。最近は西経120〜160度の間の漁獲が多くなり、西経120度以東の漁獲が少なくなっている。中西部太平洋におけるはえ縄によるメバチの漁獲は2006年の9.6万トンを例外として1998年以降7〜9万トンで推移しており、2011年におけるはえ縄の漁獲は7.6万トンであった(図1、WCPFC 2012h)。


【まき網漁業】

まき網の漁場は熱帯太平洋の西部と東部に存在し、中央部では漁獲が少なかったものの最近やや多くなりつつある(図2)。まき網ははえ縄より歴史が浅く、特に中西部熱帯域でのまき網は1960年代の後半に我が国によって試験的に開始された。1980年代には米式まき網を採用した台湾と韓国が参入するのとほぼ同時に米国も東部太平洋でのエル・ニーニョによる不漁を機会に漁場を移動し、操業が本格化した。

主要な遠洋漁業国の2011年における中西部太平洋での総トン数200トン以上の操業隻数は、日本が37隻(WCPFC 2012a)、台湾34隻(WCPFC 2012c)、韓国28隻(WCPFC 2012b)であった。米国は2005年には1999年以降21隻減の15隻であり減少傾向にあったが、近年、新船建造により急増し2010年以降37隻となっている(WCPFC 2012e)。太平洋島嶼国のまき網船はこの20年間に徐々に増加し、2011年には87隻となっている(Williams and Terawasi 2012)。その他フィリピンの遠洋船が27隻(500トン以上、WCPFC 2012e)、ニュージーランドが7隻(遠洋操業5隻、近海操業2隻)(WCPFC 2012g)、中国12隻(WCPFC 2012d)となっている。

中西部太平洋では元来自然流木が多く、これを利用した漁法が我が国により行われてきた。その後、米国が人工浮魚礁(FADs)を導入したのに追随して、1990年代前半にFADsの利用が我が国を含め台湾・韓国の漁船に急速に普及し、それにともない小型メバチの漁獲量が急増した。しかし、まき網で漁獲された小型メバチは、水揚地においてキハダと機能的に区別されていないことも多く、また漁獲成績報告書でもキハダと区別して記録されていないことが多いため、我が国や米国を除いてその漁獲量は不正確である。さらに、このまき網におけるメバチ漁獲量の推定において、オブザーバーデータや主要水揚港でのポートサンプリングデータなどが利用されてきたが、その測定標本採集手法や漁獲物の漁艙の移し替え等などの要因により、その漁獲はかなり過小評価されているのではないかと指摘された(Lawson 2008)。その後、オブザーバーにより抽出方法ごとのサイズや種組成に関する情報が蓄積され(Lawson 2012)、過去にわたってまき網の各魚種漁獲量が修正された(WCPFC 2012h)。2011年のまき網による漁獲量は72,424トンとなっており、1998年の過去最大の漁獲量76,908トンには及ばないものの非常に高いレベルとなっている(WCPFC 2012h)。


【竿釣り及びその他の漁業】

中西部太平洋における竿釣りによるメバチ漁獲量はこの10年、年間4,600〜9,800トンで推移している。また、手釣り漁業も1990年代半ばから5,000トン前後の漁獲をあげていたが、近年の漁獲は3,000トンほどに減少している。“その他の漁業”としては、フィリピン、インドネシアの小型船によるリングネット、ひき縄及び日本の様々な沿岸漁業が、近年およそ2,000〜4,000トンの漁獲をあげている(図1)。フィリピン、インドネシア漁業の場合、パヤオと呼ばれる固定式FADsを利用し、非常に小型(20 cm程度)のものから成魚までを漁獲している。フィリピン近海では、小型のまき網及びリングネット船が160隻ほど操業を行っている模様であるが、これら漁業の規模が零細であるのと、非常に多くの水揚地があることから漁獲量のモニタリングが十分ではなく、特にインドネシアの推定漁獲量は不確定要素が大きいと考えられる。


【国別漁獲量の動向】

国別に近年の漁獲量変化を見ると(図3、付表1)、我が国の漁獲は全体の約3分の2以上を占めていた1980年代半ばから徐々に減少し、1990年には50%に、1996年以降は20%台に、2008年以降には20%を下回り、2011年には12%に低下した。日本の漁獲量自体はかつての4〜5万トン台から、2008年には2.7万トン、2010年には2.0万トンに減少しておりこの海域ではかろうじて世界第1位を占めていたが、2011年には1.9万トンに減少し、1位、2位を台湾(2.3万トン)、韓国(2.2万トン)に明け渡した。近年、インドネシア、中国及び米国が1〜1.8万トンへと漁獲量を増大させている。フィリピンは1996〜2006年には1万トン前後の漁獲をあげていたが、2010年には6,000トン、2011年には4,000トンへと減少している。


【漁業別漁獲サイズ】

主な漁業による年間サイズ別漁獲重量を図4に示す(Williams and Terawasi 2012)。はえ縄は中西部太平洋における100 cm以上の大型メバチの大部分を漁獲している。このことは、はえ縄漁獲に加えてまき網の素群れ操業やフィリピンの手釣りなどによってもかなりの大型魚が漁獲されているキハダとは対照的である。中西部太平洋において大型メバチがまき網で漁獲されることは非常に稀であり、はえ縄を除くとフィリピンの手釣りによってわずかに漁獲されるに過ぎない。まき網で漁獲されるメバチは、ほぼすべてが付き物操業によって漁獲されるが、そのサイズは年によって、例えば2004年には50〜55 cm、2005年では70 cm付近とかなりの変動を見せる。成魚を主とするはえ縄漁獲物における本種のサイズは尾叉長の範囲で90〜190 cmであり、2011年には150〜160 cm付近にモードがあった。フィリピンやインドネシアの表層漁業では20〜60 cmの小型のメバチが漁獲されている。


生物学的特性

太平洋におけるメバチの分布は非常に広く、陸棚上やメキシコからコスタリカ沖の低酸素水域を除く南北両半球の緯度40度未満のほとんどの水域に分布する(図5)。熱帯もしくは夏季の亜熱帯や温帯で産まれた稚魚は海流と共に、もしくは遊泳しながら移動し、多くは熱帯や亜熱帯にとどまるものの、一部は温帯域へ索餌回遊を行い、成熟に達したら産卵に適した水温の高い水域に戻るのではないかと想定されている。しかし、標識放流の結果(図6)からは、他のまぐろ類、例えばビンナガやクロマグロほど明瞭な回遊の方向性は認められない。

メバチは他のまぐろ類より深層に分布することが知られており、網膜に光反射組織があって深層での遊泳に適応した構造になっている(川村 1994)。近年の超音波発信機による追跡調査やアーカイバル・ポップアップタグを用いた研究によると、成魚は特に深い水深に達するとともに日中は深く、夜間は表層に近い水深を遊泳することがわかってきた(図7)。また小型魚は流れ物や海山に付く習性があり、まき網で用いられているFADsに蝟集している場合には遊泳水深がより浅く、また体長が大型のものほど深い水深を遊泳することが知られている。

メバチの卵は分離浮性卵で油球が1個あり、受精卵の卵径は0.8〜1.2 mmである。船上で行われた人工受精によると、水温25.5〜29.0℃で孵化まで24〜30時間という記録がある(安武ほか 1973)。孵化後の全長は2.5 mmである。産卵は稚魚の分布から、熱帯・亜熱帯域の水温24℃以上のほとんどの水域でほぼ周年行われていると考えられている。ただ、場所によって産卵活動のピークが異なり、中西部太平洋では赤道の北側で4〜5月が、南側では2〜3月が、一方東部太平洋では赤道の北側で4〜10月が、南側で1〜6月が盛期である。メバチは多回産卵型で、産卵期にはほぼ毎日産卵し、産卵は夜間の7時から真夜中にかけて行われ、1回の産卵量はハワイ南西沖のサンプルから体長150 cmで約220万粒であるという結果が得られている(二階堂ほか 1991)。生物学的最小形は90〜100 cm、14〜20 kg(満2歳の終わりから3歳)と報告されており、120 cmを越えると大部分が成熟する。

成長と年齢についてはいくつかの研究があり、研究者間で合意されたものはないが、代表的なものを図8及び表1に示す。最近の統合モデルでは成長もモデルの中で推定する場合があることも、合意されていない原因である。行縄・薮田(1963)が鱗を用いて推定した式を改変したもの(Suda and Kume 1967)によると、1歳時が44 cm、2歳が76 cm、3歳が102 cm、4歳が123 cm、5歳で140 cmに達する。最近の耳石日輪を用いた研究によると(Lehodey et al. 1999、Matsumoto 1998)、成長率にはそれほど差は見られないが1歳時は約60 cmと推定され、上記の成長式とほぼ半年のずれが見られる。

寿命に関しては、オーストラリアのサンゴ海で15歳の雌及び12歳の雄が捕獲されており、これまでメバチの寿命と考えられていた8〜10歳よりも長く、15年以上である(Farley et al. 2004)。

体長体重関係式は、中西部太平洋、東部太平洋ともにNakamura and Uchiyama(1966)の

        W(kg)=3.661×10-5・L(cm)2.90182
が用いられている(表2)。

本種の胃中には魚類や甲殻類、頭足類等幅広い生物が見られ、それほど特異性はないようである。しかし、他のまぐろ類に比べてハダカイワシやムネエソ等の中深層性魚類が多い。稚仔魚時代には、魚類に限らず多くの外敵がいるものと思われるが、あまり情報は得られていない。遊泳力が付いた後も、まぐろ類を含む魚食性の大型浮魚類による被食があるが、50 cm以上に成長してしまえば、大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に外敵は限られるものと思われる。

現在、太平洋のメバチに複数の系群の存在は知られていない。しかし、インド‐太平洋群と大西洋群間には遺伝的な差異が報告されている(Chow et al. 2000)。このことは太平洋において、はえ縄の漁場分布が地理的に連続することや、魚の計数形質にあまり差が見られないことと一致している。


資源状態

資源評価はMultifan-CL(Fournier et al. 1998、Hampton and Fournier 2001)による解析が行われており、以下はこのモデルを用いて2011年に行われた最新の資源評価結果(Davies et al. 2011)を要約したものである。

40の四半期齢、6海区(図2)、漁獲量、努力量、サイズ組成データ、タギングデータ、25漁業区分を用いて、1952年から2010年について資源評価が行われた。2010年資源評価(Harley et al.2010)からの変化としては、キハダと同様に、これまで主要はえ縄CPUEの算出には、日本のはえ縄の緯度5度、経度5度、月、一鉢あたりの枝縄数のストラータに集計されたデータが用いられてきたが、今回は日本のはえ縄の操業毎データが用いられた点である。前回、親子関係は推定値(h=0.98)がベースケースとして用いられたが、今回は0.65、0.80、0.95の3種類が試みられた。2011年の科学委員会において、コミッションに示すベースケースとして、0.80を用いたモデルが用いられることが決定された。その他の主要変更点としては、1)まき網のサンプリングバイアスを考慮したまき網体調データの修正(1996年以前は未修整)、6)spill samplingデータを用いたまき網漁獲量の修正(海区3のまき網付き物操業の2009年漁獲量がおよそ10%減少)、7)東経130度以西及びarchipelagic海域の外側水域でのフィリピン、インドネシアまき網船に新たな漁業定義を与えるなど、それら漁業の改変、8)近年の大規模標識放流事業(PTTP)の結果の活用、などがあげられる。

感度テストとしては次の項目が実施された。1)以前のgrab-samplingのデータを用いて推定されてきた漁獲及びサイズ組成を使用、2)誕生から第8四半期までの自然死亡を高く仮定、2)steepnessを0.65、0.95に設定、3)大規模胸式放流(PTTP)の結果を使わない、その他、日本のはえ縄CPUEやサイズデータの取り扱いについて変化させた、等。

資源評価の結果、推定された近年の(高い)加入傾向は他のデータ、とりわけCPUEと漁獲及び一部のサイズデータの矛盾から導かれていると思われる。すべてのケースで加入は以前の結果と同じく、1995〜2005年に高く推定された(図9)。最近年の加入量は長期平均レベル近くにまで減少しているが最近年の推定は不確かさが大きいと思われる。総資源量及び親魚資源量は漁業開始からから1970年代半ばまでにおよそ半分に減少し、総資源量はその後比較的一定レベル(FMSY/B0は0.44)であるが、親魚資源では減少が続いている(SBcurrent/SB0は0.35)(図10)。成魚と幼魚の漁獲死亡はまぐろ漁業の開始から解析期間を通して継続的に増加傾向にある。漁業ごとの資源へのインパクトの大きさを比較すると、まき網及び他の表層漁業の影響は現在の資源量レベルにおいては、はえ縄と等しいかそれより大きいことが示された(図11)。まき網及びインドネシアとフィリピンの沿岸漁業は、Region3において、またそれよりも弱いがRegion4においても、大きなインパクトを持つ。日本の沿岸竿釣りとまき網もまた日本近海では有為な影響を示す。少ないまき網漁獲(従来のs_best統計)のシナリオにおいては、はえ縄のほうが大きなインパクトを示す。近年の漁獲は明らかにMSYレベル、74,993 mtを大きく上回っているが、これは平均よりも高い加入と高い漁獲死亡の組み合わせによるものである。近年の加入レベルを仮定して近年の漁業状況のもとにMSYを再計算すると、それでもなお漁獲量は再推定されたMSY(131,400 mt)を7%ほど上回っており、長期的に持続利用可能なものではないと結論される。

産業的まぐろ漁業の開始以来、親魚及び若齢魚の漁獲死亡Fは増加を続けてきたと推定される。すべてのモデルにおいて、Fcurrent/FMSYは1をかなり上回る。グリッド中央値では1.42と推定され、これは漁獲死亡をMSYレベルにまで減少させるためには、2006〜2009年のFを30%削減、2004年レベルの39%、2001〜2004年レベルの28%削減する必要があることを示している。今回の結果から、メバチ資源にはOverfishingが生じていると結論される。

今回の結果では、MSYは74,993 mtと推定され、近年の漁獲量はそれを大きく上回っている。近年の漁獲レベルは近年の高い加入を仮定しても、長期間維持することはできないと結論される。Fcurrent/FMSYはすべてのケースで1を上回っており、MSYレベルを確保するには、起こりえそうなモデルとして選択されたモデルにおける結果の中央値を参照するならば、1.42と推定され、2006〜2009年漁獲死亡レベルの30%の削減が必要である。現在の資源状態の評価によればFMSY/BMSYが1.34、親魚資源量ではSBcurrent/SBMSYが1.37といずれも1を上回っており、親魚資源がMSYレベルを下回っている確率は13%と推定され、乱獲状態にはない(乱獲状態に近づいていると著者は考えている)(図12)。また、もし小型魚の死亡が減少すれば、MSYは増加し、現在よりも多くの漁獲が許容されると考えられる。


管理方策

2012年12月に開催されたWCPFC本会合において、我が国等がメバチの幼魚を多量に混獲する熱帯域の大型まき網漁船の管理強化を求め、協議の結果、2013年から2017年の5年間でメバチの過剰漁獲を解消し、資源回復を行う計画を来年中に作成することで合意した。また、2013年の保存管理措置は、次のとおり採択された。

(a) まき網漁業

集魚装置を用いた操業の4か月間(7〜10月)禁止またはそれに相当するFADs使用制限

(b) はえ縄漁業

メバチの漁獲量を2001〜2004年の平均値から30%削減


メバチ(中西部太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
13.7〜15.8万トン
平均:15.1万トン(2007〜2011年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
1.9〜3.4万トン
平均:2.5万トン(2007〜2011年)
管理目標 資源の長期保存と継続利用
資源の状態 MSY=7.5万トン
F/FMSY=1.46*1
B/BMSY=1.25*1
Bcurrent/Bcurrent, F=0=0.29*1
YF_current/MSY=0.89*1
管理措置 2012年12月に開催されたWCPFC本会合において、我が国等がメバチの幼魚を多量に混獲する熱帯域の大型まき網漁船の管理強化を求め、協議の結果、2013年から2017年の5年間でメバチの過剰漁獲を解消し、資源回復を行う計画を来年中に作成することで合意した。また、2013年の保存管理措置は、次のとおり採択された。
(a) まき網漁業
集魚装置を用いた操業の4か月間(7〜10月)禁止またはそれに相当するFADs使用制限
(b) はえ縄漁業
メバチの漁獲量を2001〜2004年の平均値から30%削減
管理機関・関係機関 WCPFC、SPC
*1レファレンスケースの値

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

岡本 浩明


参考文献

  1. Anon.(WCPFC)2012a. Japan: Annual report to the commission part1: Information on fisheries, research, and statistics. Working paper AR CCM-09, presented to the 8th Meeting of the Scientific Committee of the WCPFC. Busan, Republic of Korea. 7-15 August 2012. 35 pp. http://www.wcpfc.int/system/files/documents/meetings/scientific-committee/8th-regular-session/annual-report-part-1/AR-CCM-09-Japan.pdf
  2. Anon.(WCPFC)2012b. Korea: Annual report to the commission part1: Information on fisheries, research, and statistics. Working paper AR CCM-11, presented to the 8th Meeting of the Scientific Committee of the WCPFC. Busan, Republic of Korea. 7-15 August 2012. 12 pp. http://www.wcpfc.int/system/files/documents/meetings/scientific-committee/8th-regular-session/annual-report-part-1/AR-CCM-11-Korea-Rev-1.pdf
  3. Anon.(WCPFC)2012c. Chinese Taipei: Annual report to the commission part1: Information on fisheries, research, and statistics. Working paper AR CCM-22, presented to the 8th Meeting of the Scientific Committee of the WCPFC. Busan, Republic of Korea. 7-15 August 2012. 15 pp. http://www.wcpfc.int/system/files/documents/meetings/scientific-committee/8th-regular-session/annual-report-part-1/AR-CCM-22-Chinese-Taipei-6July.pdf
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