--- 詳細版 ---

16 メバチ 東部太平洋

Bigeye Tuna

Thunnus obesus

                                                                               
PIC

[HOME] [詳細版PDF] [要約版PDF] [要約版html] [戻る]

最近一年間の動き

2011年の総漁獲量は8.2万トン(予備集計)で前年の87%であった。2012年の資源評価では、MSYは8.2万トンと推定され、2011年の漁獲量とほぼ同値。現状の総資源量、産卵資源量はMSYレベルより大きく(Brecent/BMSY=1.06、Srecent/SMSY=1.12、recentは2012年第一四半期時点)、近年の漁獲死亡係数はMSYレベルより大きい(F2009-2011/FMSY=1.05(Fmultiplier=0.95))。しかしながら、親子関係、最大体長及び親魚の自然死亡係数の仮定、解析に用いるデータ期間等の設定に対して資源評価結果が頑健でないことも示唆された。将来予測は、努力量が現状と同レベルで推移すれば産卵資源量はMSYレベルを下回ることが示唆された。資源管理措置は、2012年と同様の保存管理措置を2013年にも導入することが合意された。すなわち、まき網(我が国漁船の操業なし)は全面禁漁措置(62日間)、沖合特定区での禁漁措置(1か月間)。はえ縄はメバチに対して漁獲量の上限(我が国は32,372トン)が設定された。


利用・用途

はえ縄の漁獲物は生鮮(刺身)、まき網漁獲物は缶詰をはじめとする加工品として主に利用される。


図1

図1. 太平洋におけるメバチの分布域
赤色と緑色を合わせた海域が索餌域(分布域)。赤色が産卵域(年平均表面水温24℃以上)。


表1

表1. 東部太平洋におけるメバチの尾叉長(cm)と体重(kg)の関係



図2

図2. 東部太平洋におけるメバチの漁法別漁獲量(上図)、国別漁獲量(下図)


図3

図3. 太平洋における漁場図(上:はえ縄、下:まき網)
上図:赤色がメバチ、橙色がキハダ。凡例の丸は2,300トン。
下図:青色がイルカ付き群れ、緑色が素群れ、橙色が流木操業。凡例の丸は9,200トン。


図4

図4.東部太平洋におけるメバチの年齢と尾叉長(cm)の関係
黒実線(信頼限界:点線)が2010年の資源評価(Aires-da-Silva and Maunder 2010)で推定された成長曲線。青矢印は雌の50%が成熟する体長。


図5

図5. 東部太平洋におけるメバチの尾叉長(cm)と体重(kg)の関係


図6

図6. 東部太平洋におけるメバチのSBRの推移
大きな黒丸が現状。2012年以降は予測値。灰色は95%信頼限界。破線(SBR=0.20)はMSYを達成できるSBR。


図7

図7. 東部太平洋におけるメバチの加入量(相対値)の推移
灰色は95%信頼限界。1.0は平均値。


図8

図8. 東部太平洋におけるメバチの産卵魚資源量と各漁業のインパクトの推移
黒実線が実際の産卵魚資源量、緑色、橙色及び青色はそれぞれはえ縄、流れもの操業、投棄部分の漁獲の影響を示す。


図9

図9. 東部太平洋におけるメバチのF/FMSYとS/SMSY(上図)及びB/BMSY(下図)の推移
青いクロスが現状と95%信頼限界。


図10

付表1. 国別漁獲量


図10

付表1. 国別漁獲量(続き)


漁業の概要

全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)の管理する東部太平洋は南北緯度50度未満、西経150度以東と南北アメリカ大陸の海岸線に囲まれた海域である(図1)。この海域でメバチは主にはえ縄とまき網によって漁獲される。1975〜1993年までは、はえ縄による漁獲が大部分(88 %)を占めていたが、1993年にFADs操業が導入されると、まき網の漁獲が急増すると共にはえ縄の漁獲が減少し、1996年に逆転した。2011年の漁法別の漁獲量割合はまき網が69%、はえ縄が31%、竿釣りは0.1%未満であった。総漁獲量は1986年に10万トンに初めて達し、その後、7.3〜12.5万トンを推移し、2000年に14.3万トンの最高値を記録したのち、減少傾向となり、2011年は前年の87%にあたる8.2万トンであった(図2)。なお、本文と図表は特に断らない限り2012年6月の第83回IATTC年次会合で発表された資料(IATTC 2012)とそれに先立つ資源評価部会(2012年5月)における資料(Aires-da-Silva and Maunder 2012)に基づく。統計値は執筆時点の最新値によるもので、資源評価時と若干異なる場合がある(IATTCホームページ、http://www.iattc.org/Catchbygear/IATTC-Catch-by-species1.htm)。

我が国のはえ縄を中心とする漁業は第2次大戦以前から本種を漁獲していた(岡本 2004)。1952年のマッカーサーライン撤廃以降、急速に拡大し、1960年には中央アメリカ沿岸に達した(Suzuki et al. 1978)。その後も南北両半球の温帯域に操業域を広げ、1960年代に地理的に最も広く操業が行われた。当初は缶詰等の加工品原料としてキハダとビンナガを漁獲していたが、刺身需要の増加と冷凍設備の改善によってメバチを漁獲するようになった。漁場は現在でも広範囲で、東西方向に帯状に形成される(図3)。中心となるのは赤道を挟んだ南北15度までである。南北30〜35度付近の温帯域にも、それぞれの冬期にメバチの好漁場が形成される。主として100 cm以上の中・大型魚を漁獲する。我が国の漁獲量は1960年の1.7万トン以降、年変動はあったものの、増加傾向を示し、1986年には9.2万トンの最高値を記録した。1991年までは6.6〜8.8万トンで推移した後、急落し、2011年は前年の80%にあたる1.3万トンであった。1960年以降のメバチ総漁獲量に対する我が国の占める割合は1993年までは71.7〜99.9 %の範囲にあったが、1994年以降急減し、2011年は15.3 %となった。1960年以降、台湾は1964年から、韓国は1975年から漁獲報告があり、中国、バヌアツ及びフレンチポリネシアなどが近年、はえ縄操業を行っている(図2)。

まき網漁船については、資源開発初期には米国船が多かったが、1970年代の終わり頃からメキシコ、ベネズエラ船が増加するとともに米国船が減少し、1990年代に入ると、エクアドルやバヌアツ等の漁船が増加した。伝統的にイルカ付き操業と素群れ操業が行われてきたが、1990年代に入るとFADs操業が発達した。まき網の1960〜1993年平均のメバチ漁獲量(魚種別割合)は0.6万トン(2.2 %)であったが、1993年頃からFADs操業が導入されるとメバチの漁獲量は増加した。FADs操業においてはキハダ、メバチ及びカツオの小型魚が漁獲の主体となっている。FADs操業が行われている漁場は北緯10度以南から南緯20度間のエクアドル沿岸から西経130度付近に広くみられ、ガラパゴス西方の水域が比較的豊かな漁場である(図3)。2011年の国別漁獲量(割合)はエクアドル3.3万トン(40.9%)、パナマ0.7万トン(8.6%)である。中西部太平洋でのFADs操業での漁獲物と異なり、この海域でのFADs操業では尾叉長80 cm以上の大型魚の漁獲も多くみられる。まき網の漁獲努力量(魚艙容量)は2011年には21.3万(m3)と、2000年の18.1万(m3)から17.7 %の増加となった。総操業数は2003年にピーク(32,328操業)を記録したのち減少傾向にある(2011年は26,465操業)。


生物学的特性

本種の寿命はオーストラリアのサンゴ海で放流後10年以上経過してから再捕された例から10〜15年であろうと考えられている。

生物学的最小型は90〜100 cm、14〜20 kg(満2歳の終わりから3歳)と報告されており、120 cmを越えると大部分が成熟する。仔魚の分布から、熱帯・亜熱帯域の水温24 ℃以上のほとんどの水域でほぼ周年産卵すると考えられている(図1)。海域によって産卵活動のピークが異なり、東部太平洋では赤道の北側で4〜10月が、南側で1〜6月が盛期である。なお、中西部太平洋では赤道の北側で4〜5月が、南側では2〜3月が盛期である。メバチは多回産卵型で、産卵期にはほぼ毎日産卵し、産卵は夜間の7時から真夜中にかけて行われ、一回産卵量はハワイ南西沖のサンプルから体長150 cmで約220万粒であると考えられている(二階堂ほか 1991)。

南北30〜35度付近の温帯域に、それぞれの半球の冬期に漁場が形成されるが、魚体は小さく、未成熟であるため、摂餌回遊とみなされる(図1)。胃内容物からは魚類や甲殻類、頭足類等、幅広い分類群が出現し、種特異性はないようである。しかし、他のまぐろ類に比べてハダカイワシやムネエソ等の中深層性魚類が多い。仔魚期、稚魚期には多くの捕食者がいると思われるが情報は少ない。さらに遊泳力が付いた後は大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に外敵は限られてくるものと思われる。

太平洋における分布は非常に広く、陸棚上やメキシコからコスタリカ沖の低酸素水域を除く南北両半球の緯度40度未満のほとんどの水域に分布する(図1)。熱帯もしくは夏季の亜熱帯や温帯で生まれた仔稚魚は海流と共に、もしくは遊泳しながら移動し、多くは熱帯や亜熱帯に留まるものの、一部は温帯域へ索餌回遊を行い、成熟に達したら産卵に適した水温の高い水域に戻るのではないかと想定されている。しかし、95 %の標識放流魚が放流点から1,000マイル以内で再捕されている点、東部太平洋と中西部太平洋を超えて再補された例は非常に少ない点から、この回遊パターンは他のまぐろ類、例えばビンナガやクロマグロほど明瞭な方向性があるものではないと思われる。

成長と年齢については行縄・薮田(1963)が鱗を用いて推定した式を改変したもの(Suda and Kume 1967)によると、1歳が44 cm、2歳が76 cm、3歳が102 cm、4歳が123 cm、5歳で140 cmに達する。最近でも耳石日輪や標識放流結果を用いた研究(Lehodey et al. 1999、Matsumoto 1998、Schaefer and Fuller 2006)で、過去の成長式と異なる結果が得られており、資源評価ではRichards の成長式にフィットさせた(図4)。体長体重関係式(表1、図5)は、Nakamura and Uchiyama(1966)のW(kg)= 3.661×10-5・L(cm)2.90182 が用いられている。

大西洋とインド−太平洋間には遺伝的な違いが報告されているが、太平洋での複数の系群の存在は知られていない(Chow et al. 2000)。このことは、太平洋において、はえ縄の漁場分布が地理的に連続することや、魚の計数形質にあまり差が見られないことと一致している。


資源状態

資源評価モデルStock Synthesis(Version 3)を用いて、IATTCにより資源評価が実施された。これらの資源評価手法、設定の詳細は資源評価会合の報告書を参照のこと(Aires-Da-Silva and Maunder 2012)。なお、2012年の資源評価は昨年の資源評価の設定を用いて、漁獲データのみ更新して実施された。

漁業がない場合の産卵親魚量に対する親魚量の割合(SBR)(図6)を示した。最近年の加入量は平年並みと推測されているものの、信頼限界が大きいため正確なレベルは不明である(図7)。各漁業が親魚資源量に与える影響は、まき網の影響がはえ縄の影響より大きい(図8)。MSYは8.2万トンと推定され、2011年の漁獲量とほぼ同値であった。現状の総資源量、産卵資源量はMSYレベルより大きく(Brecent/BMSY=1.06、Srecent/SMSY=1.12、recentは2012年第一四半期時点)、近年の漁獲死亡係数はMSYレベルより大きい(F2009-2011/FMSY=1.05(Fmultiplier=0.95))(図9)。しかしながら、親子関係、最大体長及び親魚の自然死亡係数の仮定及び解析に用いるデータ期間等の設定に対して資源評価結果が頑健でないことも示唆された。将来予測は、努力量が現状と同レベルで推移すれば産卵資源量はMSYレベルを下回ることが示唆された。


資源管理方策

2012年6月の第83回IATTC年次会合において、2012年と同様の保存管理措置を2013年にも導入することが合意された。すなわち、まき網(我が国漁船の操業なし)は全面禁漁措置(62日間)、沖合特定区での禁漁措置(1か月間)。はえ縄はメバチに対して漁獲量の上限(我が国は32,372トン)が設定された。


メバチ(東部太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(過去5年間)
8.2〜10.8万トン
平均:9.6万トン(2007〜2011年)
我が国の漁獲量
(過去5年間)
1.4〜1.6万トン
平均:1.5万トン(2007〜2011年)
管理目標 MSY
資源の状態 Brecent/BMSY=1.06
Srecent/SMSY1.12
recent:2012年第一四半期時点
F(2009-2011)/FMSY=1.05
(Fmultiplier=0.95)
管理措置 2012年と同様の保存管理措置を2013年にも導入することが合意された。すなわち、まき網(我が国漁船の操業なし)は全面禁漁措置(62日間)、沖合特定区での禁漁措置(1か月間)。はえ縄はメバチに対して漁獲量の上限(我が国は32,372トン)が設定された。
管理機関・関係機関 IATTC

執筆者

かつお・まぐろユニット
熱帯まぐろサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

佐藤 圭介


参考文献

  1. Aires-da-Silava, A. and Maunder, M.N. 2010. Status of bigeye tuna in the eastern Pacific Ocean in 2009 and outlook for the future. Document SAC-01-08a, adopted at the 1st Scientific advisory committee. August 31 - 3 September, 2010. La Jolla, USA. 113 pp. http://www.iattc.org/Meetings2010/PDF/Aug/SAC-01-08a-BET-assessment-2009.pdf(2011年12月17日)
  2. Aires-da-Silava, A. and Maunder, M.N. 2012. Status of bigeye tuna in the eastern Pacific Ocean in 2011 and outlook for the future. Document SAC-03-06, adopted at the 3re Scientific advisory committee. May 15-18, 2012. La Jolla, USA. 12 pp. http://www.iattc.org/Meetings/Meetings2012/May/PDFs/SAC-03-06-BET-assessment-2011.pdf (2012年11月7日)
  3. Anon.(IATTC)2012. Tunas and billfishes in the eastern Pacific Ocean in 2010. Document IATTC-83-05, adopted at the 83rd Meeting of the IATTC. June 25-29, 2012. La Jolla, USA. 111 pp. http://www.iattc.org/Meetings/Meetings2012/June/PDFs/IATTC-83-05-Tunas-and-billfishes-in-the-EPO-2011.pdf (2012年11月7日)
  4. Chow, S., Okamoto, H., Miyabe, N., Hiramatsu, K. and Barut, N. 2000. Genetic divergence between Atlantic and Indo-Pacific stocks of bigeye tuna(Thunnus obesus)and admixture around South Africa. Mol. Ecol., 9: 221-227.
  5. Lehodey, P., Hampton, J. and Leroy, B. 1999. Preliminary results on age and growth of bigeye tuna(Thunnus obesus)from the western and central Pacific Ocean as indicated by daily growth increments and tagging data. Working Paper BET-2, presented to the 12th Meeting of the Standing Committee on Tuna and Billfish. Papeete, French Polynesia. June 1999. 21 pp.
  6. Matsumoto, T. 1998. Preliminary analyses of age and growth of bigeye tuna(Thunnus obesus)in the western Pacific Ocean based on otolith increments. IATTC Special Report, 9: 238-242.
  7. Nakamura, E.L. and Uchiyama, J.H. 1966. Length-weight relations of Pacific tunas. In Manar, T.A. (ed.), Proceedings of the Governor's Conference on Central Pacific Fishery Resources. State of Hawaii, Honolulu. 197-201 pp.
  8. 二階堂英城・宮部尚純・上柳昭治. 1991. メバチThunnus obesusの産卵時刻と産卵多回性. 遠洋水産研究所研究報告, 28: 47-73.
  9. 岡本浩明. 2004. 太平洋戦争以前及び終戦直後の日本のまぐろ漁業データの探索. 水産総合研究センター研究報告, 13: 15-34.
  10. Schaefer, K.M. and Fuller, D.W. 2006. Estimates of age and growth of bigeye tuna(Thunnus obesus)in the eastern Pacific Ocean, based on otolith increments and tagging data. Inter-Amer. Trop. Tuna Comm. Bull. 23: 33-76. http://www.iattc.org/PDFFiles2/Bulletins/Bulletin-Vol.-23-No-2-ENG.pdf (2010年12月1日)
  11. Suda, A. and Kume, S. 1967. Survival and recruitment of bigeye in the Pacific Ocean, estimated by the data of tuna longline catch. Nankai Reg. Fish. Res. Lab. Rep., 25: 91-104.
  12. Suzuki, Z., Tomlinson, P. K. and Honma, M. 1978. Population structure of Pacific yellowfin tuna. Bull. IATTC, 17(5): 277-441.
  13. 行縄茂理・薮田洋一. 1963. メバチの成長と年令. 南海区水産研究所報告, 19: 103-118.