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15 キハダ 大西洋

Yellowfin Tuna

Thunnus albacares

                                                                                 
PIC

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最近一年間の動き

2011年の総漁獲量は10.0万トン(予備集計)で前年の93%であった。資源評価は2011年9月に行われ、MSYは14.5(11.4〜15.8)万トンと推定され、2010年当初の資源量はMSYレベルより小さい(B2010/BMSY=0.85(0.61〜1.12))と見られる。資源評価時の最近年(2010年)の漁獲圧は、MSYレベルより小さい(F2010/FMSY=0.87(0.68〜1.40))と推定された。資源管理措置は、将来にわたる持続的利用を確実にするため、新たにTAC(11万トン)が設定された。また、メバチ・キハダの幼魚が多く生育するギニア湾における浮き魚礁を利用するまき網の禁漁期、禁漁区域の拡大や、大型漁船の厳密な隻数規制の導入が決定された。


利用・用途

刺身、すし、缶詰などに利用され、はえ縄漁獲物は主として刺身、すしに利用される。外国では、缶詰に利用される比率が高くなっている。


図1b

図1. 大西洋におけるキハダの漁獲量の変遷(上:漁法別、下:国別)2011年は暫定値


表1

表1. キハダの年齢ごとの体長及び体重


図2

図2. 大西洋におけるキハダの漁場(漁獲分布、2000〜2009年)(ICCAT 2012)
青:はえ縄、赤:竿釣り、黄:まき網、白:その他。凡例の丸は146,057トン。


図3

図3. 大西洋におけるキハダの分布域.


図4

図4. 大西洋におけるキハダの産卵場と産卵期(月)(ICCAT 2001)
卵巣標本を収集し、組織学的観察により確認されたもの。地図上の範囲は、標本採集場所を表す。


図5

図5. 大西洋キハダの成長


図6

図6. 大西洋キハダの資源解析結果(ICCAT 2011を改変)
非平衡プロダクションモデルとVPA(2-BOX)による最新年(2010年)の資源状態。中央値は黄色丸で示してある。


図7

図7. 将来予測(ICCAT 2012)
漁獲量一定(縦軸。6〜14万トン)で将来のB/BMSY 1.0を上回る確率(0.5、0.6、0.7)で示している。


付表1

付表1. 大西洋キハダの年別、国別漁獲量 (単位トン)


付表2

付表1. (続き)


漁業の概要

大西洋におけるキハダ漁業は1950年頃にはじまり、1955年頃からは竿釣り及びはえ縄が開始した。当初は、はえ縄が主体であったが、最近年は、全漁獲量のうち70%がまき網、11%が竿釣り(大部分が東部大西洋)、16%がはえ縄で漁獲されている(図1)。1980年以降、漁獲量は10〜19万トンの間で変動し、2011年は10.0万トン(予備集計)であった。なお、本稿で用いる漁獲量は特に断りのない限り、執筆時点でのICCATホームページ(http://www.iccat.int/en/accesingdb.htm)の統計値を集計したものである。

主漁場は熱帯域で(図 2)、約80%が東大西洋で漁獲される。東大西洋にはギニア湾に大規模なまき網があり、その漁獲は全体の約60%(東大西洋の約80%)に達する。はえ縄は、大西洋のほぼ全域で行われており、2011年には16%(1.6万トン)を占める。米国及びメキシコ船(メキシコ湾)、ベネズエラ船(一部の季節のみ)は、はえ縄でキハダを対象としているが、日本船及び台湾船は熱帯域においてメバチを主対象として操業している場合が多い。まき網船は1991年以来、東部大西洋(主としてギニア湾)において流れ物付き操業を発達させており、その結果、カツオ、メバチ及びキハダの小型魚等の漁獲が増大し、漁場が西方及び赤道以南にまで拡大した。この流れ物の利用による漁獲効率の向上により、総努力量の減少が相殺され、実質的な努力量は安定していると考えられている。

漁獲物のサイズは、30〜170 cmまでと幅広く、小型魚は表層に多い。竿釣りでは2〜30 kgと変動が大きい。はえ縄では、日本船の漁獲物のモードは約140 cm(約53 kg)で、メキシコ湾(米国、メキシコ)では平均重量が32〜39 kgで、大西洋南西部(ウルグアイ)はモード110 cmである。まき網は、東部で平均重量9.4 kg(FAD付き3.1 kg、素群れ30.4 kg)、西部大西洋では40 cmである(ICCAT 2011)。

国別の漁獲量(図 1、付表 1)は、フランスとスペインが従来から多く、近年ガーナの比率が高くなっている。2011年はこれら3か国で全体のおよそ6割を占めた。以下、ケープベルデ、日本、ベネズエラなどが続いており、日本の漁獲量は、年変動はあるものの2003年以降は若干の増加傾向にある。


生物学的特徴

キハダは熱帯域から温帯域にかけて広く分布する(図3)。産卵は水温24℃以上の水域で行われ、主産卵場(産卵期)は1〜3月にかけてのギニア湾赤道域、5〜8月にかけてのメキシコ湾、7〜9月にかけての南カリブ海が知られている(ICCAT 2001)(図4)。1回当たりの産卵数(Batch fecundity)は尾叉長132 cmで約120万粒、142 cmで約400万粒と推定されている(Arocha et al. 2001)。生物学的最小型は尾叉長60 cm程度との報告もあるが、はえ縄漁獲物を用いた卵巣の重量及び断面の肉眼観察によると、120 cmないしそれ以上になるまで成熟していないと推定される(Matsumoto and Miyabe 2000、Matsumoto et al. 2003)。産卵は夜間にほぼ毎日産卵すると考えられている(Schaefer 1996)。

雄は雌より大型になると考えられ、120 cm程度から雄の割合が高くなり150 cm程度になると大部分が雄である。成長式はGascuel et al.(1992)、体長−体重関係はCaverivière et al.(1976)によって推定され、式はそれぞれ以下の通りである。これらによると、1歳で48 cm(2.2 kg)、2歳で78 cm(9.3 kg)、3歳で120 cm(32.8 kg)に達し、成熟年齢は満3歳と推定される(図5、表1)。


L = 37.8 + 8.93t + (137.0 - 8.93 t)[1 - exp(-0.808 t)]7.49    Gascuel et al.(1992)

W = 2.1527 * 10-5 L2.976    Caverivière et al.(1976)

    L : 尾叉長(cm)

    W : 体重(kg)

    t : 年齢

本種の寿命は正確にはわかっていないが、年齢査定の結果や成長が速いことから、メバチより短く7〜10年であろうと考えられている。自然死亡係数Mは若齢魚の方が成魚より高いと推定されている。

本種の胃中には魚類や甲殻類、頭足類等幅広い生物がみられる。仔稚魚時代には、魚類に限らず多くの外敵がいるものと思われるが、あまり情報は得られていない。遊泳力が付いた後では大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に外敵は限られるものと思われる。

大西洋におけるキハダの系群構造は、以前は南北の2つの系群が想定されていたが、南北間(及び東西間)の魚群に交流がある事が標識放流によって確かめられたことから(Ortiz 2001)、大西洋全体で単一の資源を成すものと考えられている。


資源状態

最近の資源評価は2011年に行われた。資源評価に必要なCPUEはまき網、はえ縄、竿釣り及び遊漁から得られているものの、漁獲の大部分を占めるまき網のCPUEは漁業の技術革新による漁獲効率の上昇を数値として取り扱うのが難しく、CPUE標準化が困難な状況となっている。当座の措置として、まき網の漁獲効率が年率3%あるいは7%上昇などと仮定してEUのCPUEは標準化された。また、はえ縄(日本、米国・メキシコ(メキシコ湾)、米国(大西洋)、ブラジル、ウルグアイ、台湾、ベネズエラ)、竿釣り(ダカール基地のヨーロッパ、カナリア諸島、ブラジル)、遊漁(米国)から得られた。年齢別標準化CPUE(1965〜2010年の中で、利用可能なもの)が、VPA(2-BOX)及び非平衡モデルのプロダクションモデル(ASPIC)による解析に使用された。これらの資源評価手法、設定の詳細は資源評価会合の報告書を参照のこと(ICCAT 2011)。

MSYはASPICで14.0万トン(11.4〜15.0万トン)、VPAで14.9万トン(14.0〜15.8万トン)と推定され、資源評価時の最新年(2010年)の漁獲量10.8万トンを上回った。2010年当初の資源量はMSYレベルより小さい(B2010/BMSY=0.85(0.61〜1.12))と見られる。最近年(2010年)の漁獲圧は、MSYレベルより小さい(F2010/FMSY=0.87 (0.68〜1.40))と推定された。資源は乱獲状態にある(図6)。前回(2006年)の資源評価より悲観的な資源状態である。努力量の増加は、資源量を減らす危険性があり、キハダとともに漁獲される種(特にメバチ)に悪影響を与える懸念がある。将来予測を行うと、11万トンの漁獲量で2016年に51%の確率で資源量がMSYレベルを上回り、FがFMSYレベルを下回る。14万トン以上ではその確率は33%になった(ICCAT 2012)(図7)。


管理方策

本資源の管理はICCATにより行われている。現在、キハダのみを対象にしている有効な資源管理方策は「有効漁獲努力量は1992年レベルを超えない」である。将来にわたる持続的利用を確実にするため、新たにTAC(11万トン)が設定された。また、メバチ・キハダの幼魚が多く生育するギニア湾における浮き魚礁を利用するまき網の禁漁期、禁漁区域の拡大や、大型漁船の厳密な隻数規制の導入が決定された。


キハダ(大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(過去5年間)
10.0〜12.0万トン
平均:10.7万トン(2007〜2011年)
我が国の漁獲量
(過去5年間)
0.5〜0.9万トン
平均:0.6万トン(2007〜2011年)
管理目標 MSY:14.5(11.4〜15.8)万トン
資源の現状 B2010/BMSY:0.85(0.61〜1.12)
F2010/FMSY:0.87(0.68〜1.40)
管理措置 有効漁獲努力量は1992年レベルを超えない
TAC(11万トン)
メバチ・キハダの幼魚の保護(ギニア湾における浮き魚礁を利用するまき網の禁漁期、禁漁区域の拡大や、大型漁船の厳密な隻数規制の導入)
管理機関・関係機関 ICCAT

執筆者

かつお・まぐろユニット
熱帯まぐろサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

佐藤 圭介


参考文献

  1. Anon.(ICCAT)2001. Report of the ICCAT SCRS Atlantic yellowfin tuna stock assessment session (Cumaná, Venezuela, July 10 to 15, 2000). Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 52(1): 1-148. http://www.iccat.int/Documents/CVSP/CV052_2001/no_1/CV052010001.pdf (2012年11月6日)
  2. Anon.(ICCAT)2011. Report of the 2011 ICCAT yellowfin tuna stock assessment session (San Sebastián, Spain - September 5 to 12, 2011). 113 pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2011_YFT_ASSESS_REP.pdf (2012年11月6日)
  3. Anon.(ICCAT)2012. Report of the standing committee on research and statistics (SCRS) (Madrid, Spain, October 1-5, 2012) 303 pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/SCRS2012/2012_SCRS_REP_EN.pdf (2012年11月6日)
  4. Arocha, F., D.W. Lee, L.A. Marcano and J.S. Marcano. 2001. Update information on the spawning of yellowfin tuna, Thunnus albacares, in the western central Atlantic. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 52(1): 167-176. http://www.iccat.int/Documents/CVSP/CV052_2001/no_1/CV052010167.pdf (2012年11月6日)
  5. Caverivière, A., F. Conand and E. Suisse de Saint-Claire. 1976. Distribution et abondance des larves de thonidés dans l'Atlantique tropical oriental. Etude des données de 1963 a 1974. Doc. Sci. Cent. Rech. Océanogr. Abidjan. ORSTOM, 7(2): 49-70.
  6. Gascuel, D., A. Fonteneau and C. Capisano. 1992. Modélisation d'une croissance en deux stances chez l'albacore (Thunnus albacares) de l'Atlantique Est. Aquatic Living Resources, 5 (3): 155-172. http://www.iccat.int/Documents/CVSP/CV052_2001/no_1/CV052010285.pdf (2012年11月6日)
  7. Matsumoto, T. and Miyabe, N. 2000. Report of 1999 Observer Program for Japanese tuna longline fishery in the Atlantic Ocean. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 51(2): 729-750. http://www.iccat.int/Documents/CVSP/CV051_2000/no_2/CV051020729.pdf (2012年11月6日)
  8. Matsumoto, T., H. Saito, H. and N. Miyabe, N.. 2003. Report of observer program for Japanese tuna longline fishery in the Atlantic Ocean from September 2001 to March 2002. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 55(4): 1679-1718. http://www.iccat.int/Documents/CVSP/CV055_2003/no_4/CV055041679.pdf(2012年11月6日)
  9. Ortiz, M. 2001. Review of tag-releases and recaptures for yellowfin tuna from the U.S. CTC program. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 52(1): 215-221. http://www.iccat.int/Documents/CVSP/CV052_2001/no_1/CV052010215.pdf(2012年11月6日)
  10. Schaefer, K. 1996. Spawning time, frequency and batch fecundity of yellowfin tuna, Thunnus albacares, from Clipperton Atoll in the eastern Pacific Ocean. Fish. Bull., 94: 98-112.