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14 キハダ インド洋

Yellowfin Tuna

Thunnus albacares

                                                           
PIC

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最近一年間の動き

2012年10月に開催されたIOTC(インド洋まぐろ類委員会)第14回熱帯まぐろ作業部会で資源評価が実施され、資源は乱獲及び過剰漁獲ではないと推定された。2011年のキハダ総漁獲量は30万トンで、2010年と同程度の低い漁獲量となった。この原因は、ソマリア沖海賊の活動によりまき網船・はえ縄船(特に後者)が操業を自粛し他の海洋へ移動したためである(図1)。そのため、キハダ資源は回復傾向にある。


利用・用途

刺身や缶詰原料などが主な利用用途である。


図 図

図1. ソマリア沖海賊問題がまぐろ漁場に与える影響
(a) 上図:まき網漁場 (b) 下図:はえ縄漁場図
(a) EUまき網漁獲量分布図(青:カツオ、黄:キハダ、赤:メバチ)(セーシェル水産局提供)
左:海賊問題がなかった2000〜2007年の平年図
右:海賊問題が深刻化し海賊回避のためソマリア沖500海里以上で操業がなくなった2008年の状況
(b) まぐろはえ縄漁場の変化(2002〜2006及び2010、2011年)(IOTC 2012b)


表

表1. 資源評価で使用された体長−体重関係


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図2. インド洋キハダ国別漁獲量(1950〜2011年)(IOTC データベース:2012年9月)


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図3. インド洋キハダ漁法別漁獲量(1950〜2011年)(IOTC データベース:2012年9月)


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図4. インド洋キハダFAO海域別漁獲量(1950〜2011年)(IOTC データベース:2012年9月)
西インド洋(FAO海域51)、東インド洋(FAO海域57)


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図5. 主要漁法(黒:はえ縄、白:まき網、水色:竿釣り)によるインド洋キハダ漁獲量の分布(IOTC 2004)


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図6. インド洋キハダ漁法別漁獲重量組成


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図7. インド洋キハダ国別漁獲重量組成


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図8. 日本のインド洋まぐろはえ縄漁業におけるキハダの四半期別平年漁況(1994〜2002年)(西田ほか 2010)
【HSI: Habitat Suitability Indexによる推定】


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図9. インド洋西部EUまき網漁業におけるFADs操業と素群れ操業で漁獲されるキハダの体長分布(1982〜2001年)(Fonteneau et al. 2002を一部改変))


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図10. 正のダイポール現象(右)とダイポール現象がない場合(normal year)(左)における水温躍層水深・クロロフィル量(+ 増加、- 減少)の状態及びそれぞれのキハダ分布変動
負のダイポール現象は、現象のない場合の海況がより顕著化したもの(Marsac and Nishida 2007)


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図11. 気候変動(正負ダイポール現象・エルニーニョ現象)が、西インド洋のまぐろはえ縄・まき網漁業のキハダ漁況に与える影響(Marsac and Nishida 2007)


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図12. 西部熱帯インド洋においてキハダ大量漁獲があった2003〜2006年に、大量発生した2種の餌生物(左:シャコ類と右:ワタリガニ類の一種で、それぞれまき網・はえ縄で漁獲されたキハダの胃内容物に多く見られた)


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図13. インド洋におけるキハダの主要な分布域


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図14. 第13回熱帯まぐろ作業部会(2012)に資源評価で使用された成長曲線(Fonteneau 2008)


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図15. 第13回熱帯まぐろ作業部会(2011)に資源評価で使用された年齢別自然死亡率(M)(実線)と推定値(点線)(X軸は四半期スケール)(Langley 2012)


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表2. Fと産卵親魚資源量(B)に関するリスク解析結果(神戸II :マトリックス)
(2010年の漁獲量を増減させた場合3・10年後にF・Bの各MSYレベルを維持できなくなる確率)



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図16. Multifan-CLに使用された5海域(右下)における四半期別標準化CPUE(IOTC 2012a)
台湾(海域1:LL1)と日本(海域2–5:LL2 – LL5)


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図17. ASPM(左)及びMultifan-CL(右)による資源評価結果(神戸プロット)(IOTC 2012b)


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附表1. インド洋キハダ漁法別漁獲重量(1950〜2011年)(トン)(IOTCデータベース:2012年9月)


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附表2. インド洋キハダ国別漁獲重量(1950〜2011年)(トン)(IOTCデータベース:2012年9月)


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附表3. インド洋キハダ海域別漁獲重量(1950〜2011年)(トン)(IOTCデータベース:2012年9月)
西インド洋(FAO海域51)、東インド洋(FAO海域57)


漁業の概要

インド洋キハダの国別・漁法別・FAO海域別漁獲量(1950〜2011年)を図2〜4及び附表1〜3に示した。インド洋におけるキハダの主漁場は、南緯10度以北、モザンビーク海峡付近及びアラビア海である(IOTC 2004;図 5)。西インド洋でフランス及びスペインのまき網漁業が本格的に開始される1983年までは、キハダ総漁獲量は最大9.4万トンであり、はえ縄による漁獲が50%以上であった(図 6)。まき網漁業が開始した1984年から総漁獲量は急増し、1988年には20万トンを超えた。1993年にはアラビア海で台湾による大量漁獲があったため40万トンに達し、その後2002年までは34〜38万トンと比較的高いレベルで推移した。また、2003〜2006年にかけて、西インド洋熱帯域において大量漁獲がまき網漁業(主に素群れ操業)、はえ縄漁業及び小規模漁業であり、2004〜2005年にはアラビア海で台湾のはえ縄漁業による2度目の大量漁獲があった。これにより、キハダの総漁獲量は、2003〜2006年に40〜50万トン台へと急増し、2004年に52万トン(最大漁獲量)を記録した。しかし、その後2009〜2011年には漁獲量が27〜30万トンへと急減し1992年以降最低レベルを記録した。この漁獲量の急減の主な原因は、ソマリア沖の海賊の活動範囲が拡大し、まき網船・はえ縄船が操業を自粛し他の海洋へ移動したためである(図 1)


【はえ縄漁業】

はえ縄漁業の漁獲量は1950年から徐々に増加したが、1991年までは9万トン以下であった。1992年に漁獲量が急増し13万トン台となった。1993年にはアラビア海における台湾船による大量漁獲で過去最大の20万トンを記録した。その後は漁獲量が急減し、1994〜2003年には8〜12万トンで推移している。西部熱帯インド洋で大量漁獲のあった2004〜2006年は12〜15万トンとなり2005年には過去2番目に高い15万トンとなった。しかし、2007年より急減し2010年には4.3万トンとなり1986年以来15年間で最低レベルとなった。2011年も4.5万トンと低水準であった(附表1)。

1952年から1968年までは日本のはえ縄漁業によるキハダの漁獲がインド洋全体の過半数を占めていた。その後の韓国、台湾のはえ縄船の台頭、1980年代後半からのインドネシア及びNEIはえ縄船の増加、さらに1984年からEUのまき網漁業及び1990年代から中近東の流し網漁業の台頭により、最近5年間の日本の漁獲量ははえ縄・まき網を含めて総漁獲量のわずか3.0% にまで落ち込んだ(図 7)。日本のはえ縄船によるキハダの四半期別平均釣獲率(1操業あたりの漁獲量)分布(1994〜2002年)を図8に示した。この分布は、種々の環境要因を取り入れたHSI(Habitat Suitability Index)により推定された(西田ほか 2010)。はえ縄漁業で漁獲されるキハダの体長範囲は、およそ80〜160 cmである。


【まき網漁業】

まき網の操業形態は大きく2つに分けられる。1つは主にFADs(人工集魚装置)についた魚群を対象とする操業であり、カツオやメバチ若齢魚と群れをなす30〜80 cm(体長組成のモードは50〜60 cm)の若齢魚及び80〜160 cm(体長組成のモードは110〜120 cm)の大型魚を漁獲する(図 9)。もう1つは素群れを対象とする漁法であり、自由に遊泳しているキハダ単一群もしくはカツオとの混合群を漁獲し、この漁法では80〜160 cm(モードは120〜130 cm)の大型のキハダが主に漁獲される(図 9)。1999〜2003年におけるFADs操業は全操業の50〜60%を占める。

インド洋における日本のまき網漁業は、1957年からまき網船(民間船)1〜2隻が1980年代半ばまで操業していた。1988年以降は、漁船数が増加し最大時には11隻(1991〜1994年)となり、キハダの漁獲量は1万トンを超えた。また、1977年より30年間以上にわたって、独立行政法人水産総合研究センター開発調査センター(旧:海洋水産資源開発センター)の調査船「(新・旧)日本丸」がインド洋全域で試験操業を行っている。1994年以降まき網漁船数は徐々に減少し、最近5年間(2007〜2011年)では日本丸の試験操業及び1〜2隻のまき網(民間)船のみで、キハダの漁獲量は350〜1,180トンで推移している。


【最近5年間における漁業の特徴】

以下は最近5年間 (2007〜2011年)の記述である。漁法別漁獲量は、35%がEU(主にスペイン・フランス)によるまき網漁業(西部インド洋)、18%が台湾、インドネシア、日本によるはえ縄漁業、26%が流し網漁業(主にイラン、オマーン、スリランカ)、5%が竿釣り漁業(主にモルディブ)、そしてその他の漁業(便宜置籍船などによる)が15%となっている(図 6)。また、総漁獲量の約半分(45%)が、沿岸国・島嶼国における小規模漁業(流し網・竿釣りなど)で漁獲されている。1994年以来、中近東諸国(イラン、オマーン、イエメン、パキスタン)のまき網及び流し網による漁獲量が増加している(総漁獲量の18〜20%で最近5か年平均は19%)(図 6、附表2)。海域別では、西インド洋(FAO海域51)と東インド洋(FAO海域57)における平均漁獲量の割合は72%及び28%である(図 4、附表3)。


【気候変動がキハダ漁況へ与える影響】

インド洋において気候変動を引き起こすものの一つにダイポール現象(Marsac and Nishida 2007)がある。正のダイポール現象が発生すると、インドネシアのスマトラ沖で東風が強まり、インド洋東部の表層付近にある暖かい海水が西に運ばれ、それを補うように下層から表層に冷たい海水が上昇し、東部で海水温が低くなり、西部で高くなり東西で温度差が大きくなる(図 10右)。負の場合には、これと逆の海況(海水温が高くなる)となり、平年の場合(図 10左)に似たような状況になるが、その傾向がより顕著になる。正のダイポール現象が発生した場合、西インド洋における表面水温は平年より高く水温躍層が深くなり、基礎生産量(クロロフィル量など)が少なくなる。キハダ漁場は東部へ移動するため、西インド洋のまき網漁業のキハダ漁況が悪化する(図 11)。一方ダイポール現象がない時には、インド洋西側では水温躍層は浅く、キハダ(まき網+はえ縄)の好漁場となる。負のダイポールモード現象の場合には、それらの傾向がさらに顕著化し水温躍層がより浅く好漁場が形成される。また、Marsac and Nishida(2007)によると、一般に気候変動(ダイポール現象及びエルニーニョ・ラニーニャ現象)は、漁具の深さを調整できるはえ縄(キハダ・メバチ)には影響が少ないが、まき網の場合にはその影響が大である(図11)。さらに、Marsac and Nishida(2007)は、インド洋では、過去120年間にダイポール現象とエルニーニョ現象が同時に出現したり一方のみが独立して出現したりして、両者は不規則に発生しおり、その因果関係は未詳であるとしている。最近のIzumo et al.(2010)による研究では、エルニーニョ・ラニーニャ現象は、20か月前に発生したインド洋ダイポールモード現象(負・正)にそれぞれ関係している可能性が高いことを示唆している。


【2003〜2006年の大量漁獲について】

2003〜2006年の西部熱帯インド洋域及びアラビア海におけるキハダ大量漁獲の原因としては、次の4点が考えられ、それらが複合的に絡みあって発生したとみられる(Nishida et al. 2005、西田ほか 2006)。(a)強い季節風により特定の海域で湧昇流が強くなり、基礎生産量(クロロフィル量)が急増し、キハダの餌生物(まき網ではシャコ類、はえ縄ではワタリガニ類など)(図 12)が大量に発生した。(b)湧昇流によりその海域の水温躍層が浅くキハダが浅い水深に集中した。(c)情報を入手したはえ縄、まき網船が集中した(過剰な漁獲努力量)。(d)卓越年級群による加入量が増加した。しかし、最近の研究では、卓越年級群の影響は少ないとしている(藍ほか 2007)。


【IOTC-OFCF統計改善事業】

インド洋におけるキハダ総漁獲量の半分近くが発展途上国の小規模漁業(流し網及び竿釣り)で漁獲されている。多くの沿岸国・島嶼国では小規模漁業の漁獲統計収集システムが不明なものが多く、その正確な漁獲情報を把握することは困難である。そこで、2002年よりIOTCとOFCF(海外漁業協力財団)が共同で、インド洋まぐろ漁業統計共同改善事業を5年間実施した。特に、インドネシア、スリランカ、タイ、モルディブなどでサンプリングプログラムや統計収集システムの改善を実施し、成果を挙げている。本事業は、2006年で5年間の第1期事業が終了したが、各作業部会、科学委員会、年次会合及び加盟国の強い要請で3年間延長され2007〜2009年度に第2期事業が終了した。さらに2010年より最大3年間(2012年)第3期事業として延長された。


生物学的特徴

【分布】

キハダはインド洋の熱帯及び亜熱帯域に広範に分布するが、はえ縄漁獲データを見る限り、西インド洋においては南緯40度付近にまで分布しているようである(図 13)。通常は大きな魚群を形成しており、30〜50 cmの若齢魚はカツオや若齢のメバチとの混合群を形成し、熱帯域の表層に分布が限られているのに対し、90 cm以上の個体はより広い海域の表層から水温躍層付近にまで分布する。50〜80 cmの個体は公海域におけるまき網やはえ縄で漁獲されることは稀であり、その生態は明らかになっていない。しかし、この体長幅(50〜80 cm)の個体がアラビア海の小規模漁業で多く漁獲されることが知られていることから(Ariz et al. 2002)、アラビア海がそのような中型個体の索餌域ではないかと推測され、標識放流やオマーンなどでの体長測定により本種の回遊経路が解明されつつある。

キハダの分布水深に関して、インド洋では直接的な観察例が海洋水産資源開発センター(1985〜1988年)、Mohri and Nishida(2002)、Xu et al.(2006)ほかにより報告されており、表層及び水温躍層付近に多く分布し、また溶存酸素濃度2.0 ml/Lがその分布の限界となっていると推定された(Marsac 2002、Romena and Nishida 2001) 。


【系群構造】

インド洋における本種の系群構造は明らかではない。はえ縄漁業情報の解析によると、本種はインド洋の東西で統計的に有意な差があるが(Morita and Kato 1970、Nishida 1992)、DNA解析では別系群の存在を示す証拠は得られていない(Nishida et al. 2001)。資源評価を行う際には、単一系群として扱われている。


【産卵】

キハダの産卵は12〜1月に赤道域(赤道〜南緯10度)で行われるが、主な産卵海域は東経50〜70度の間であろうと推測されている。初回成熟体長は110 cmと推定されており、当歳魚はまき網による流れ物操業で7月に漁獲され始める。キハダでは大型の個体で雄の比率が高くなることが知られているが、インド洋では150 cm以上でその傾向が認められる。


【食性】

食性に関し本種の胃中には魚類や甲殻類、頭足類等幅広い生物が見られ、それほど嗜好性はないようである。稚仔魚時代には、魚類に限らず多くの外敵がいるものと思われるが、あまり情報は得られていない。遊泳力が付いた後も、まぐろ類を含む魚食性の大型浮魚類による被食があるが、50 cm以上に成長すれば、大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に外敵は限られるものと思われる。1990年代後半を境にまき網で漁獲されるキハダなど表層まぐろ類・小型浮魚類の食性が魚類からNatosquilla investigatorisへと大きく変化した(Poiter et al. 2007)。

Natosquilla investigatoris(図 12左)は、シャコの一種で、2003〜2006年に西部熱帯インド洋海域でキハダ大量漁獲があった時に大量に発生し、まき網で漁獲されたキハダの胃中に多く発見された。一方、はえ縄で漁獲される成魚まぐろ類の胃中にも同様な傾向が見られるが、その程度は低い。はえ縄で漁獲されたキハダの胃内容物には、ワタリガニの一種であるCharybdis edwardsiがむしろ多くみられた(図 12右)(Nishida et al. 2005、西田ほか 2006)。日本のはえ縄漁師の話では、ワタリガニが大量発生して漁具、漁船にまで付着したほどであったという。同じ漁場でも、まき網、はえ縄で漁獲されるキハダの餌生物の種類は異なっていたと理解できる。その理由は、それぞれの餌生物の遊泳水深が異なるためと考えられる。まき網でも、素群れとFADs(LOG)操業で漁獲されたキハダの胃内容物は異なり、後者は空胃の状態が多い。これはキハダがFADsを離れてから索餌行動するのでFADs周りでは索餌しないためと見られる。


【成長・寿命】

成長に関して、2008年の第10回熱帯まぐろ作業部会で標識再捕データから推定された成長式の拡張モデルをもとにした成長曲線が新たに推定され(Fonteneau 2008)、同年及び2012年の資源評価に使用された(図 14)。また、2012年の第14回熱帯まぐろ作業部会では耳石日輪及び標識データに基づく新たな成長式も報告された。本種の寿命は正確にはわかっていないが、年齢査定の結果や成長が速いことから、メバチより短い7〜10年であろうと考えられている。


【体重-体長関係】

熱帯まぐろ作業部会では、表1にある漁具別銘柄別体長−体重関係(IOTC 2007)が資源評価などに用いられている。本関係と上記成長式により、体長・年齢別漁獲量が推定され年齢(体長)別資源評価の基礎情報として用いられている。


【自然死亡率(M)】

インド洋における本種成魚(2歳以上)の自然死亡係数(M)に関し、西田(1991)はHeincke(1913)の方法により0.725と推定した。年齢別のMについて、2012年の第14回熱帯まぐろ作業部会では標識データにより推定されたもの及びMultifan-CLにより推定されたものが用いられたが、Multifan-CLにより推定されたものは高い値になっていた(図 15)。


資源評価

2012年の第14回熱帯まぐろ作業部会では、統合モデルのMultifan-CL、ASPM、SS3を用いて資源評価が行われた。Multifan-CLでは、漁業(fleet)は25種類(はえ縄、まき網付き物操業、まき網素群れ操業及びその他の沿岸漁業をそれぞれ細分化)とした。資源量指数は、海域1が台湾の標準化CPUE、海域2〜5が日本の標準化CPUE(四半期別)が使用された(図 16)。

資源評価では、はえ縄選択曲線をフラットトップ型、自然死亡率を推定、標識混合期間(標識魚が非標識魚と混合する期間)を1年、steepnessを0.8とした。その結果、資源量はほぼ一貫して減少していたが2008〜2009年を境にやや増加に転じている。MSYは34.4万トン(範囲:29.0〜45.3万トン)(前回35.7万トン)と推定された。F2010/FMSYは0.69(0.59〜0.90、前回は0.84)、SSB2010/SSBMSYは1.24(0.91〜1.40、前回は1.61)と推定された。Multifan-CLの神戸プロット(stock trajectory:資源状況変遷図)を図 17右 に示した。なお、2012年には統合モデルのSS3、プロダクションモデルのASPMによる解析も行われ、結果はMultifan-CLによるものと類似していた。ASPMによる結果では、F2011/FMSYは0.61(0.31〜0.91)、SSB2011/SSBMSYは1.35(0.96〜1.74)と推定された。ASPMによる資源評価では、2003〜2006年の大量漁獲を反映(大量漁獲時は資源が悪化傾向、その後は回復、図 17左)していることから、2012年の第15回科学委員会では両方の結果を管理勧告に用いた。

資源評価の要約を示す。資源(2010年)は漁獲圧、資源量ともにMSYレベルの手前にある。漁獲量は、2003〜2006年の大量漁獲の影響に加え、ソマリア沖の海賊の影響で、急減傾向にあり、最近5年間の平均漁獲量は30 万トンである。現状(2010年)の漁獲量を継続すると、3年後にそれぞれSSBMSY(乱獲)、F>FMSY(漁獲過剰)になる確率はそれぞれ1%未満、58%と予測され、10年後にはそれぞれ8%、83%と予測された(表2)。


管理方策

キハダ資源に関し、2012年のIOTC第15回科学委員会は、Multifan-CL及びASPMにより実施された資源評価結果から、近年は漁獲圧が減少しMSYを下回っているので、特段の管理は必要ないとした。


キハダ(インド洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 微増
世界の漁獲量
(最近5年間)
(2007〜2011年)
27〜32万トン
平均:30万トン
我が国の漁獲量
(最近5年間)
(2007〜2011年)
0.4〜2.0万トン
平均:0.9万トン
管理目標 MSY:34.4万トン(範囲:29.0〜45.3万トン)(Multifan-CL)
MSY:32.0万トン(範囲:28.3〜35.8万トン)(ASPM)
資源の状態 SSB2010/SSBMSY:1.24(範囲:0.91〜1.40)
(Multifan-CL)
SSB2011/SSBMSY:1.35(範囲:0.96〜1.74)(ASPM)
F2010/FMSY:0.69(範囲:0.59〜0.90)
(Multifan-CL)
F2011/FMSY;0.61(範囲:0.31〜0.91)(ASPM)
資源状況は回復傾向にあり、漁獲圧・資源量共にMSYレベルの手前にある。
管理措置 できるだけ早く国別TACを設定する。オブザーバープログラム(2010年7月より)、漁獲努力量(漁船数)規制、公海における大規模流し網漁業の禁止。共通漁業管理措置についてはインド洋メバチを参照。
管理機関・関係機関 IOTC

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

松本 隆之

国際水産資源研究所 業務推進課

西田 勤


参考文献

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