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11 ビンナガ 南大西洋

Albacore

Thunnus alalunga

                                                           
PIC

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図

図1. 南大西洋ビンナガの漁法別漁獲量(ICCAT 2012)


表

表1. 南大西洋ビンナガの国別漁獲量(トン)


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図2. 大西洋のビンナガの分布と主な漁場


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図3. 南大西洋ビンナガの年齢と尾叉長(cm)の関係
太線はLee and Yeh(2007)、細線はBard and Compean-Jimenz(1980)。最新の資源評価では前者が使用された。


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図4. 標準化されたCPUE。各国のはえ縄は親魚を漁獲し、南アフリカの竿釣りは未成魚を漁獲する。(ICCAT 2011)


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図5.上:ASPICモデル及びBSPモデルから得られたMSYレベルを1.0としたときの資源量(赤)と漁獲係数(青)の相対値。実線は点推定値(ASPICモデル)もしくはメジアン(BSPモデル)、点線は50%信頼区間。下:ASPICモデル及びBSPモデルから得られた資源状態を表すMSYを基準とした相対漁獲計数(F/FMSY)と相対資源量(B/BMSY)との間の位置関係(いわゆるKobeプロット、実線)ならびに2009年の推定値まわりのばらつきの度合い。(ICCAT 2011)


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図6.将来予測の結果、資源量及び漁獲係数がKobeプロットにおけるグリーンゾーンに落ちる確率を年と将来の漁獲量水準の軸に対して等確率線であらわしたもの。確率は8つのシナリオすべてを用いて推定された。(ICCAT 2011)


最近一年間の動き

2012年10月に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)科学委員会(SCRS)が開催され、各国から2011年の漁獲量が報告された。2011年の漁獲量は2.4万トンで、過去5年平均より高い漁獲量となった。


利用・用途

主として缶詰原料となっている。また、日本のはえ縄船が高緯度域で漁獲したものの一部は刺身用に利用されているようである。


漁業の概要

南太平洋のビンナガの開発は日本のはえ縄の大西洋への進出とともに、1950年代後半から始まった。1960年代には、日本に続き、韓国や台湾のはえ縄が参入した。沿岸諸国の表層漁業による漁獲量の記録は1960年代から見られる。南大西洋のビンナガは開発当初からはえ縄による漁獲の割合が大きく、1970年代までは9割以上を占めた(図1)。遠洋漁業国のはえ縄が対象種をビンナガから他の魚種に転換したことと、沿岸国の竿釣りによる漁獲量の増加により、はえ縄による漁獲の割合は減少し、1980年代後半以降は6〜7割となっている。このように、南大西洋のビンナガは主としてはえ縄によって漁獲されており、北大西洋とは対照的である。

南大西洋のビンナガの総漁獲量は1960〜1970年代にはおよそ2.0〜3.5万トンの範囲で推移していたが、その後1980年代後半〜2000年代の初めごろには2.6〜4.0万トンとより高い水準となった(表1)。その後総漁獲量はかなり急激に減少し、2005年に過去20年で最低となる1.9万トンとなり、その後は1.9〜2.4万トンの範囲で推移している。2000年代中頃からの総漁獲量の変動は主として、表層漁業の年々の漁獲量の変動によるものである。2011年の総漁獲量は前年から約5千トン増加し、2.4万トンとなった。主要漁業国では台湾、ブラジル、ナミビアが過去5年平均の漁獲量を上回った。

南大西洋のビンナガは、台湾のはえ縄及び南アフリカの竿釣りによって主として漁獲されており、ブラジル、ナミビアがこれに次ぎ(表1)、これら4か国で漁獲量の8割を占める。また、熱帯域のまき網によってわずかな混獲がある。

台湾ははえ縄で本資源を漁獲しており、最大の漁獲国となっている。1973年以降では総漁獲量の6〜9割を占めてきた。台湾のはえ縄は伝統的にビンナガを主対象として亜熱帯から温帯域の広い海域で周年操業しており、1970〜1980年代には1.2〜2.9万トン、1990年代には1.6〜2.3万トンを漁獲した。2000〜2003年の漁獲量は1.6〜1.7万トンと安定していたが、その後やや減少し0.9〜1.3万トンとなった。台湾船のかなりの隻数は熱帯域でメバチを主対象とした操業をしているが、南大西洋でビンナガを主対象とした操業も依然として続けられている。ブラジルの2004年の漁獲量は2003年の2.6千トンから500トン台へと大きく減少しており、これは台湾との合弁船が撤退したことや、ブラジルのはえ縄がその対象をメカジキやメバチに集中させたことによる。その後も漁獲量は600トン以下の低いレベルのままとなっていたが、2011年には1,269トンと増加した。これは竿釣り及び熱帯性まぐろ類を対象としたはえ縄による混獲による。

南アフリカの竿釣りは同国西岸沖からナミビア沖にかけて操業している。1960年から漁業が始まり一時中断したものの1972年から再開され、1980〜1984年に1〜3千トン、1985〜2002年には4〜8千トンを漁獲し、その後はやや減少し3〜5千トンになった。また、南アフリカとほぼ同じ漁場で操業するナミビアの竿釣りの漁獲量は、漁獲が初めて報告された1994年以降増加傾向を示し、2006年には過去最高の5千トンとなった。その後漁獲量は年ごとに大きく変動し、1〜5千トンで推移している。

日本のはえ縄は、1960年代に2万数千トンまで漁獲を伸ばしたが、対象が刺身用のまぐろ類へと変化したためビンナガの漁獲量が急激に減少し、1973年以降は1千トン以下となった。同じ現象は北大西洋でも見られた。2008年以降は約1千トンを漁獲している。


生物学的特徴

大西洋のビンナガは、大型魚の漁獲される海域及び稚魚の分布海域が南北でかなり明瞭に分かれていること、また、標識放流結果においても南北をまたいだ記録がないことから、南北で別々の系群が存在すると考えられている。ICCATでは、北緯5度線を南北両系群の境界として、それぞれを資源管理しており、南大西洋ビンナガはおよそ赤道〜南緯40度付近の西風皮流域との潮境に当たる亜熱帯収束線の北側海域に分布している(図2)。

ビンナガを対象としたはえ縄の漁場は南緯10〜30度、西経35度〜東経15度で、ここでは尾叉長90 cm以上の産卵群が漁獲される。それよりも南側(南緯30度以南)では尾叉長90 cm以下の索餌群が主体となる。南アフリカ沿岸では、この魚群が竿釣りで漁獲される。産卵域ははっきりしないが、稚魚は南緯10〜25度の南米大陸寄りに多く出現している(西川ほか 1985)。産卵期は春から夏と考えられている。索餌域は南緯25度以南と考えられる。

捕食、被食に関してははっきりしないが、魚類、甲殻類、頭足類を捕食し、さめ類、海産哺乳類のほか、まぐろ類・かじき類によって捕食されているものと思われる。

南大西洋ビンナガの成長に関して、Lee and Yeh(1993)が報告したが、輪紋が一定の間隔で形成されるかの評価(Validation)がなされていなかったため、2003年の資源評価まではこれとは異なる成長式(Bard and Compean-Jimenz 1980、北大西洋ビンナガ)が用いられてきた。しかしLee and Yeh(2007)は自身の過去の研究を再度検討し、新たな成長式を提示したことから、2007年に実施された資源評価ではその成長式
     L(t)=147.5(1−e-0.126(t+1.89)
         L: 尾叉長(cm)、t : 年
が用いられることとなった(図3)。これによれば尾叉長は3歳で68 cm、5歳で86 cm、7歳で99 cmとなる。尾叉長90 cmで50%が成熟する。体長体重関係はPenney(1994)により
     w=1.3718×10-5 ×l3.0973
         w : 体重(kg)、l : 尾叉長(cm)
が示されている。寿命ははっきりしないが、少なくとも10歳以上と思われる。


資源状態

大西洋ビンナガの資源評価はICCATで行われてきており、ビンナガ南大西洋系群の最新の資源評価は2011年7月のビンナガ資源評価会合で行われた(ICCAT 2011)。この資源評価ではベイズプロダクションモデル(Baysian Surplus Production model:BSP)、ASPIC、年齢組成を考慮したプロダクションモデル(Age-Structured Production Model:ASPM)で解析が行われた。以下に、2011年10月のSCRS全体会合でとりまとめられた報告書(ICCAT 2011b)を中心として資源評価の内容を示す。


【資源評価】

解析には2009年までの漁獲量、努力量及びサイズデータが用いられた。主として親魚を漁獲するはえ縄の標準化されたCPUEには、初期に急激な減少がみられたものの、過去10年においては急激な減少は見られなかった(図4)。ブラジル及びウルグアイのCPUEは1990年代にかなりの減少が見られた。南アフリカの竿釣りCPUEは明瞭な傾向は見られなかった。CPUEの重み付け、初期資源量と環境収容力との比(B0/K)、再生産モデル(logisticもしくはFox)の仮定等を変えたシナリオをそれぞれのモデルに当てはめ、検討したところ、8つのシナリオが残った。それらは互いにかなり異なる結果であったが(図5)、客観的に判断する材料が乏しかったため、それらの中からより真実に近いシナリオひとつを選択できなかった。これら8つのシナリオから出力された各MSY推定値のメジアンは27,964トン(範囲23,296〜98,371トン)、B/BMSY推定値のメジアンは0.88(範囲0.55〜1.59)、F/FMSY推定値のメジアンは1.07(範囲0.44〜1.95)であった。これらの信頼限界の幅は広く、不確実性が大きいと考えられた。これら8つのシナリオから、過剰漁獲でありかつ乱獲状態である確率は54%、過剰漁獲もしくは乱獲状態である確率は10%、過剰漁獲ではなくかつ乱獲状態でもない確率は36%であることが示された。


【将来予測】

将来予測の結果はシナリオによってかなり異なった。8つのシナリオの中からより真実に近いかを客観的に判断する材料が乏しかったため、8つのシナリオすべてを用いて、異なる将来の漁獲水準で漁獲した場合、親魚資源量がMSYレベルより大きくなる確率を示した(図6)。これまでのTAC(29,900トン)で漁獲した場合、資源はより悪化するが、近年の漁獲量で漁獲した場合、資源量は5年後には50%、10年後には60%の確率で資源量がMSYレベルを上回ると推定された。


【勧告】

上記の結果から、コミッショナーへ次のような勧告がなされた。資源評価及び将来予測における漁獲水準別の資源量の推定については、かなり大きな不確実性がある。おそらく資源は過剰漁獲でありかつ乱獲状態であろう。これまでのTAC(29,900トン)で漁獲した場合、資源はより悪化するだろう。しかし、近年の漁獲量水準(約2万トン)で漁獲した場合、資源量は5年後には50%、10年後には60%の確率で資源量が回復すると推定された。より踏み込んだ削減をすれば、回復の確率は大きくなる。漁獲量を2.4万トン以上にした場合は2022年までに資源が回復する可能性は50%を上回ることはない。


管理方策

1995年から主要漁獲国(台湾、南アフリカ、ブラジル及びナミビア)は漁獲量を1989〜1993年の平均漁獲量の90%以下(=およそ2.2万トン)にする管理措置が初めて実施され、その後の2001年からは総漁獲量の規制が始められた。

2011年のICCATの年次会合では、それまで29,900トンだったTACを減少させ、2012〜2013年のTACを24,000トンとする決定をした。日本についての漁獲量は南大西洋(北緯5度以南)におけるはえ縄によるメバチ漁獲量の4%以下になるよう努力するというこれまでと同様の規制が課せられた。また、漁獲国には事務局への迅速な漁獲実績の通報が義務づけられた。


ビンナガ(南大西洋)資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
平均:2.1万トン
(2007〜2011年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
238〜1,370トン
平均:946トン
(2007〜2011年)
管理目標 MSY:27,964トン(23,296〜98,371トン)1
資源の現状 SSB2009/SSBMSY 0.88(0.55〜1.59)
F2009/FMSY 1.07(0.44〜1.95)2
管理措置 漁獲量規制:24,000トン
日本については漁獲量を南大西洋におけるはえ縄によるメバチの漁獲量の4%以下とする
管理機関・関係機関 ICCAT
12011年資源評価結果より。8つの各シナリオからの推定値の範囲。
22011年資源評価結果より。8つのシナリオの結果全部から推定した80%信頼区間。

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

芦田 拡士

国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部

魚ア 浩司


参考文献

  1. Anon. (ICCAT) 2011. Report of the 2012 ICCAT south Atlantic and Mediterranean albacore stock assessment sessions (Madrid, Spain - July 25-29, 2011). 86pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/Docs/2011_ALB_ASSESS_EN.pdf(2012年10月23日)
  2. Anon. (ICCAT) 2012. Albacore. In ICCAT (ed.),Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain, October 1-5, 2012). 300pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/SCRS2012/2012_SCRS_REP_EN.pdf(2013年1月25日)
  3. Bard, F.X. and Gompean-Jimenez, G. 1980. Consequences pour l'evaluation du taux d'exploitation du germon Thunnus alalunga. Nord Atlantique d'une courbe de croissance debuite de la lecture des sections de rayons epineux. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 9(2): 365-375. http://www.iccat.es/Documents/CVSP/CV009_1980/no_2/CV009020365.pdf (2005年11月10日)
  4. Lee, L. K. and Yeh, S.Y. 1993. Studies on the age and growth of South Atlantic albacore (Thunnus alalunga) specimens collected from Taiwanese longliners. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 40(2): 354-360. http://www.iccat.es/Documents/CVSP/CV040_1993/no_2/CV040020354.pdf (2005年11月10日)
  5. Lee, L. K. and Yeh, S. Y. 2007. Age and growth of South Atlantic albacore -- a revision after the revelation of otolith daily ring counts. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 60(2): 443-456.
  6. 西川康夫・本間 操・上柳昭治・木川昭二. 1985. 遠洋性サバ型魚類稚仔の平均分布, 1956-1981年. 遠洋水産研究所Sシリーズ12. 遠洋水産研究所, 静岡. 99 pp.
  7. Penney, A.J. 1994. Morphometric relationships, annual catches and catch-at-size for South African caught South Atlantic albacore (Thunnus alalunga). Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 42(1): 371-382. http://www.iccat.es/Documents/CVSP/CV042_1994/no_1/CV042010371.pdf (2005年11月10日)