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10 ビンナガ 北大西洋

Albacore

Thunnus alalunga

                                                           
PIC

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最近一年間の動き

2012年10月に大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)科学委員会(SCRS)が開催され各国から2011年の漁獲量が報告された。2011年は竿釣り、ひき縄及びはえ縄の漁獲量が前年よりやや減少したものの、中層トロールによる漁獲がやや増加したため、2010年と同程度の2.0万トンとなった(ICCAT 2012)。


利用・用途

主に缶詰原料となっているほか、近海で漁獲されたものは鮮魚としても販売される。また、日本のはえ縄船が高緯度域で漁獲したものの一部は、日本において刺身用として利用されているようである。


図

図1. 北大西洋ビンナガの漁法別漁獲量(ICCAT 2012)


表

表1. 北大西洋ビンナガの国別漁獲量(トン)(ICCAT 2012)


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図2. 北大西洋のビンナガの分布と主な漁場


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図3. 北大西洋ビンナガの年齢と尾叉長(cm)の関係(Bard and Compean- Jimenz 1980より)


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図4. 北大西洋ビンナガの資源評価に用いられた各国漁業のCPUE(ICCAT 2009b)


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図5. Multifan-CLモデルから得られた北大西洋ビンナガの1930〜2007年の加入量(1歳魚)(上)及び親魚資源量(下)(ICCAT 2009b)
図では示されていないが、近年における加入量推定値の不確実性は、それ以前と比べ高くなっていることに注意が必要である。


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図6. 北大西洋ビンナガのMSYを基準とした相対親魚資源量(SSB/SSBMSY)及び相対漁獲係数(F/FMSY)の時系列(上)
資源状態を表すSSB/SSBMSYとF/FMSYとの間の位置関係、1930〜2007年(下)。下図の赤Xは2007年における位置を示す。(ICCAT 2009b)


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図7. 北大西洋ビンナガの2007年における資源状態を表すMSYを基準とした相対親魚資源量(SSB/SSBMSY)と相対漁獲係数(F/FMSY)との間の位置関係(黄四角)及びその推定誤差としてのばらつきの度合い(ICCAT 2009b)


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図8. 北大西洋ビンナガ資源について毎年一定量の漁獲(20,000〜35,000トン)を行った場合の将来予測
MSYレベルが図中に点線で示されている。この結果より、年間漁獲量が28,000トンを下回れば2020年に資源はMSYレベルに回復する。(ICCAT 2009b)


漁業の概要

北大西洋のビンナガは、ビスケー湾周辺の海域でスペインのひき縄及び竿釣りによって、またアゾレス海域でスペイン及びポルトガルの竿釣りによって古くから漁獲されてきた。はえ縄による漁獲は表層漁業による漁獲よりも小さく、台湾が多くを占める(図1)。これら伝統的な漁法以外にも、1980年代後半以降から、新しい表層漁業である流し網や中層トロールによっても漁獲されるようになった。

北大西洋における年間の総漁獲量は1960年代中頃(約6万トン)をピークに、短い周期の増減を繰り返しながら徐々に減少してきている(図1)。これらの減少は主としてひき縄、竿釣り及びはえ縄といった伝統的な漁法の努力量の減少による。総漁獲量は1999〜2002年にかけてかなり減少し2.3万トンまで減少した。その後、表層漁業による漁獲量が増加して、総漁獲量は2006年に3.7万トンにまで回復した。しかし、2007年から表層漁業及びはえ縄の両方の漁獲量が大きく減少し、2009年には15,386トンとなった。これは1950年以降最低である。2010年には竿釣り、ひき縄及びはえ縄による漁獲の増加によりやや回復し、漁獲量は19,651トンとなった。

スペインは北大西洋ビンナガの最大の漁獲国であり(表1)、古く(1950年代以前)からひき縄及び竿釣りで利用してきた。かつての勢力ほどではないが現在も活発に漁業を行っており、1950〜1980年代に1.5〜3.5万トン、1990年代には1.3〜2.5万トンを漁獲した。その後漁獲量はさらに減少し、2002年には過去25年間で最低の0.9万トンとなったが、2003年からは回復がみられ、2005年には10年ぶりで2万トンを超え、2006年には近年のピークである2.5万トンとなった。その後、再び減少傾向に転じ、2009年には9,617トンとなった。これは1950年以降で最低である。2010年には竿釣り、ひき縄による漁獲の増加により、12,989トンとやや増加したものの、2011年には再び漁獲が減少し、1950年以降において最低の漁獲となった。フランスのひき縄及び竿釣りは、かつてはスペインと同程度を漁獲していたが、漁獲量は徐々に減少し、1970年代には約1万トンになり、1990年代にはごくわずか(多い年で100トン)になった。フランスは1990年以降それら漁業の代替として流し網及び中層トロールを行い、それぞれ2〜3千トンを漁獲した。さらに1998年からはまき網の試験操業を始めた。それでも漁獲量はさらに減少を続け2004年には合計で2千トンとなった。しかし、2005年には漁獲量は大きく増加し7千トンと過去25年間で最高となったが、その後は減少している。アイルランドは1998年以降流し網から中層トロールへ漁法を転換して、約4千トンを漁獲したが、その後減少し、2003年以降は2か年の例外を除き漁獲量は1千トン以下で継続していたが、2011年には3.5千トンを記録した。

日本のはえ縄は1960年代に1万数千トンを漁獲したがすぐに大きく減少し、1970年以降はクロマグロやメバチの混獲として数百〜1千トンを漁獲しているに過ぎない。台湾のはえ縄も同様で、1970〜1980年代に1〜2万トンを漁獲したが、対象種の変化により減少し、1990年代は3〜6千トン、2000年代に入っても減少傾向は止まらず2007年以降は1千トン程度となった。日本・台湾以外に、米国やベネズエラのはえ縄によってそれぞれ数百トン程度が漁獲されている。


生物学的特徴

大西洋のビンナガは、大型魚の漁獲される海域及び稚魚の分布海域が南北でかなり明瞭に分かれていること、また、標識放流結果においても南北をまたいだ記録がないことから、南北で別々の系群が存在すると考えられている。ICCATでは、北緯5度線を南北両系群の境界として、それぞれを資源管理しており、北大西洋のビンナガはおよそ赤道〜北緯50度の広い海域に分布している(図2)。表層漁業(ひき縄、竿釣り、流し網)は、夏季にビスケー湾を中心とした海域及びアゾレス諸島海域で、索餌群(尾叉長50〜80 cmが多い)を対象としている。これらの魚群は、夏季に表層域を北東方向又は北方へ回遊し、冬季には南西方向へ回遊する。近年ビンナガを主対象としたはえ縄は行われていないが、かつては北緯15〜25度で産卵群を周年、北緯25〜40度で索餌群を秋冬季に漁獲していた。産卵域ははっきりしないが、西部では北緯25〜30度で、中部から東部では北緯10〜20度で稚魚が出現している(西川ほか1985)。なお、地中海でも産卵が見られる。索餌域は北緯25度以北と考えられる。

食性に関しては、胃内容物から魚類、甲殻類が多く出現しており、そのほかに頭足類も出現しているという報告がある(Ortiz 1987)。捕食者についてははっきりしないが、さめ類、海産ほ乳類のほか、まぐろ・かじき類によって捕食されているものと思われる。

資源評価には、第一背鰭切片に見られる年輪を用いた年齢査定(Bard and Compean- Jimenz 1980)によって得られた成長式
     L(t)=124.7(1−e-0.23(t+0.9892))
         L: 尾叉長(cm)、t: 年
がよく用いられる(図3)。これによれば3歳で尾叉長75 cm、5歳で93 cm、7歳で104 cmに達する。尾叉長90 cmで50%が成熟するとされている。体長体重関係はSantiago(1993)により
     w=1.339×10-5×l3.107
         w: 体重(kg)、l :尾叉長(cm)
が示されている。

寿命ははっきりしないが、少なくとも10歳以上と思われる。


資源状態

本資源の資源評価はICCATで行われている。ビンナガ北大西洋系群の最新の資源評価は2009年7月の資源評価会合で行われた(ICCAT 2009a)。以下に、2009年10月のSCRS全体会合でとりまとめられた報告書(ICCAT 2009b)を中心として資源評価の内容を示す。


【資源評価】

資源評価は、前回2007年に行われた時と同様Multifan-CLモデルを用い、1930年からのデータを用い、1つの海域、10種類の漁業区分を設定して解析を行った。前回と異なる点は、データを2007年までに更新したこと、用いたMultifan-CLモデルは最新のバージョンに変更したことであった(ICCAT 2009a)。

表層漁業のいくつかの漁業間でCPUEのトレンドは必ずしも整合してはいなかった(図4)。スペインのひき縄の2歳のCPUEは2004年及び2005年に、それまでの低いレベルから大きな増加(卓越年級群が加入と考えられる)が見られた。しかし、3歳のCPUEでは、2歳で見られたほど高くはなかったことから、これらの年級が本当に卓越年級群だったのかは判断が難しかった。はえ縄のCPUEは全般的に見て減少傾向を示すが、近年のCPUEの傾向が船団によって異なっていた。それは、2000〜2002年の日本及び米国のCPUEはかなり増加したが、台湾のCPUEが低迷したことや、米国のCPUEが2006年には増加したが、日本及び台湾のCPUEは減少を示しているという点に表れている。このようなCPUEトレンドの不整合について、どちらのCPUEがより資源を反映しているかという判断ができなかった。

Multifan-CLの結果では、1930年代から親魚資源量は減少し、現在ではピーク時(1940年代)の3分の1となっている(図5)。加入量は変動するものの1950〜1960年代は高く、その後2007年まで減少傾向を示した。しかし2005年級は、1960年代に見られたものと同程度の高い加入であったと推定された。親魚資源量は1960年代以降MSYレベルを下回っており、現状ではMSYレベルのおよそ68%であった(図6)。漁獲圧は近年MSYレベルを上回っており、現状ではMSYレベルの105%であった。2007年における漁獲係数推定値及び資源量推定値の不確実性は図7のとおりであった。結論として、近年の漁獲圧は過剰漁獲であり(F/FMSY>1)、親魚資源は乱獲状態にある(SSB/SSBMSY<1)。

将来の漁獲量を一定とした将来予測を行ったところ、28,000トンを超える漁獲を続けると資源は回復しないと推定された(図8)。


【勧告】

2007年までのTACは34,500トンであった。2005年及び2006年の漁獲量はこのTACを超過したが、2007年の漁獲量はTACをかなり下回った。2007年の年次会合では[Rec. 07-02]により、2008年及び2009年のTACを30,200トンに削減することとし、資源の回復を図った。しかし将来予測結果からは、このTACでは、2020年までに資源を回復させるためには不十分であり、漁獲量が28,000トンを超えない水準が必要である。


管理方策

1998年までは努力量規制やTACによる規制等の管理措置は講じられてこなかったが、1998年の年次会合では1999年から当該資源を対象とする漁船を登録し、入漁隻数を1993〜1995年の平均隻数に制限することが決められた。さらに2000年の年次会合からTAC及び国別クォータが設定されるようになった。2009年の年次会合では、乱獲状態にあるという資源評価の結果を受けて、2010年及び2011年のTACはそれまでより2,200トン少ない28,000トンと決定された。2012年及び2013年のTACも2010年、2011年と同様の漁獲量が継続された。日本については、ビンナガを目的とした操業を行なっていないので、漁獲量が大西洋全体におけるはえ縄によるメバチの漁獲量の4%以下になるよう努力するというこれまでと同様の規制が課せられた。なお、1998年の漁獲能力をこれ以上上げないとする勧告は継続されている。


ビンナガ(北大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
1.5〜2.2万トン
平均:1.9万トン
(2007〜2011年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
288〜525トン
平均:400トン
(2007〜2011年)
管理目標 MSY:29,000トン
資源の状態 SSB2007/BMSY 0.62 [0.45〜0.79]
F2007/FMSY 1.05 [0.85〜1.23]
管理措置 入漁隻数の制限
TAC:28,000トン
日本については漁獲量を大西洋全体におけるはえ縄によるメバチの漁獲量の4%以下とする
管理機関・関係機関 ICCAT
資源の状態における[]は95%信頼限界を示す。

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

芦田 拡士

国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部

魚ア 浩司


参考文献

  1. Anon. (ICCAT) 2009a. Report of the 2009 ICCAT albacore stock assessment session. (Madrid, Spain - July 13 to 18, 2009). 97pp. http://www.iccat.es/Documents/Meetings/Docs/2009_ALB_ASSESS_ENG.pdf(2012年10月22日)
  2. Anon. (ICCAT) 2009b. Albacore. In ICCAT (ed.)Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain – October 5-9, 2009). 344pp. http://www.iccat.int/Documents/BienRep/REP_EN_08-09_II_2.pdf(2012年10月22日)
  3. Anon. (ICCAT) 2012. Albacore. In ICCAT (ed.),Report of the Standing Committee on Research and Statistics (SCRS) (Madrid, Spain, October 1-5, 2012). 300pp. http://www.iccat.int/Documents/Meetings/SCRS2012/2012_SCRS_REP_EN.pdf(2013年1月25日)
  4. Bard, F.X. and Compean-Jimenez, G. 1980. Consequences pour l'evaluation du taux d'exploitation du germon Thunnus alalunga. Nord Atlantique d'une courbe de croissance debuite de la lecture des sections de rayons epineux. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 9(2): 365-375. http://www.iccat.es/Documents/CVSP/CV009_1980/no_2/CV009020365.pdf (2005年11月10日)
  5. 西川康夫・本間 操・上柳昭治・木川昭二. 1985. 遠洋性サバ型魚類稚仔の平均分布, 1956-1981年. 遠洋水産研究所Sシリーズ12. 遠洋水産研究所, 静岡. 99 pp.
  6. Ortiz de Zarate, V. 1987. Datos sobre la alimentación del atún blanco (Thunnus alalunga) juvenil capturado en el Golfo de Vizcaya. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 26(2): 243-247. http://www.iccat.es/Documents/CVSP/CV026_1987/no_2/CV026020243.pdf (2005年11月10日)
  7. Santiago, J. 1993. A new length-weight relationship for the North Atlantic albacore. Col. Vol. Sci. Pap. ICCAT, 40(2): 316-319. http://www.iccat.es/Documents/CVSP/CV040_1993/no_2/CV040020316.pdf (2005年11月10日)