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09 ビンナガ インド洋

Albacore

Thunnus alalunga

                                                           
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最近一年間の動き

2012年8月にIOTC(インド洋まぐろ類委員会)第4回温帯まぐろ作業部会において資源評価が実施された。その結果、資源状態はMSYレベルに近く、近年の漁獲はMSYを超えている状態であり、過剰漁獲に歯止めをかけるには最低でも漁獲努力量を20%削減する必要があると算定された。


利用・用途

刺身及び缶詰として利用されている。


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図1. インド洋ビンナガ国別漁獲量(1950〜2011年)(IOTCデータベース2012年9月)


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図2. インド洋ビンナガ漁法別漁獲量(1950〜2011年)(IOTCデータベース2012年9月)


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図3. インド洋ビンナガ海域別漁獲量(1950〜2011年)(IOTCデータベース2012年9月)
東インド洋(FAO海域57)、西インド洋(FAO海域51)


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図4. インド洋ビンナガの分布とはえ縄漁場


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図5. 台湾、日本、韓国のはえ縄標準化CPUEの年変動(1966〜2011年)(IOTC 2012a)


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図6. ASPIC、ASPM及びSS3による資源評価(KobeIプロット)の結果の比較(Matsumoto et al. 2012; Nishida et al. 2012; Kitakado et al. 2012)


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図7. 資源量に関するリスク解析結果
(現状の漁獲量を増加、減少させた場合、2011〜2020年において資源量がMSYレベルを下回る確率)


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図8. Fに関するリスク解析結果 (現状の漁獲量を増加、減少させた場合、2011〜2020年においてFがMSYレベルを上回る確率)


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附表1. インド洋ビンナガ国別漁獲量(1950〜2011年)(IOTCデータベース2012年9月)


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附表2. インド洋ビンナガ漁法別漁獲量(1950〜2011年)(IOTCデータベース2012年9月)


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附表3. インド洋ビンナガ海域別漁獲量(1950〜2011年)(IOTCデータベース2012年9月) 西インド洋(FAO海域51)、東インド洋(FAO海域57)

漁業の概要

本資源の漁業は、1950年代前半、日本のはえ縄船により開始された。その後、台湾・韓国のはえ縄が、1954・1965年からそれぞれ参入した(図1、附表1)。また、1982〜1992年の11年間、台湾は流し網を行ったが、国連の公海大規模流し網漁業禁止決議により1992年末で停止した。本資源の漁業では、流し網の行われた11年間と1950〜1951年を除き、漁獲量の9割以上ははえ縄による。台湾のはえ縄の漁獲量は1970年以来、流し網のピーク(1986〜1991年)及び最近年(2003〜2011年)を除き、総漁獲量の5〜9割を占める(図1〜2、 附表1〜2) 。

はえ縄の総漁獲量は操業開始以来緩やかに増加し、1958年までは1万トン以下、1997年までは1〜3万トンであった。1982〜1992年の11年間は、台湾の流し網で最大2.6万トン漁獲され総漁獲量は3.5万トンまで達したが、流し網を停止した翌年(1993年)には総漁獲量は1.9万トンに減少した。その後、はえ縄の漁獲量が徐々に増加し、2001年には4.4万トンに達したがその後減少し、2003年には2.6万トンになった。2004年から総漁獲量は、再び増加し2008年には4.4万トン(過去最大)となり、その後も高水準で推移したが、2011年には3.9万トンとやや減少した(図2、附表2) 。また1983年からは西インド洋でまき網漁獲が始まり、1992年に最大3,300トンの漁獲があった(附表1)。

西インド洋(FAO海域51)と東インド洋(FAO海域57)における漁獲量の平均的割合は、およそ4:6である(図3、附表3)。


生物学的特徴

【分布】

インド洋ビンナガの分布範囲は、5°N〜40°Sである。メバチやキハダが赤道海域を中心に分布するのに対し、本種の主要分布域は中緯度海域で、5°N〜25°Sが成魚分布域、10〜25°Sに産卵域、30〜40°Sに索餌海域があり、魚群の密度が高い。分布の南限や北限は季節によってやや異なる(図4)。

海流は、大きな空間スケールでビンナガの分布や漁場形成を左右する最も重要な要因と考えられている。赤道反流の南10°S付近に一種の収束線が形成され、ビンナガ好漁場の北の境界となっている。


【回遊】

ビンナガはよく発達した胸鰭を持ち、索餌または産卵のために大規模な回遊をする。インド洋における回遊の研究は皆無で、経路などは不明である。


【形態】

体は紡鍾形で肥厚し、完全に鱗でつつまれている。胸鰭は著しく細長くてリボン状を呈し、その先端は第2背鰭の基底の下方よりもさらに後方に達する。鰓耙数は30本以下、体の背面は黒青色、腹面は銀白色である。


【食性】

ビンナガも他のまぐろ類と同様に、魚類・甲殻類・頭足類を主な餌として、生息環境中に多い餌生物を、主として昼間に無選択的に捕食する。したがって、胃内容物組成は海域や季節によってかなり変化する。西部インド洋では、ギマ科・ミズウオ科・ホウネンエソ科・アジ科・クロタチカマス科・ヒシダイ科などが主に捕食される(Koga 1958)。


【産卵】

インド洋においては詳しい知見がない。以下、参考として太平洋のビンナガについて述べる。西部太平洋のビンナガは、卵巣が200 g以上になると産卵すると考えられ、その最小体長は87 cmである。雄では精巣重量150 g以上のものが成熟個体とみなされるので、その最小体長は97 cmである。卵巣卵の直径は成熟期では0.6 mm以上となり、卵巣重量は100〜200 gが普通だが、大型の成熟したもので200 g以上になる。体重20 kg前後の魚体で、1尾の抱卵数は180〜210万粒である(上柳 1955)。1産卵期中に複数回の産卵が推定される。成熟に達する年齢は5歳あるいはそれ以上である。


【系群】

太平洋とインド洋のビンナガの分布はオーストラリアの南側で、インド洋のビンナガと大西洋のビンナガの分布はアフリカ南端で連続しており、一部交流する可能性もあるが(古藤 1969)、血清学的見地からはそれらはかなり異質で、別系群であると示唆されている(鈴木 1962)。また、体長組成、仔稚魚、分布の特性から、インド洋は単一系群とみられている(Hsu 1994)。


【体長・体重関係】

以下の体重(W: kg)・体長(尾叉長 L: cm)の関係式が報告されている。
     Lee and Kuo (1988)
         雄 W=(3.383×10-5) L2.8676
         雌 W=(4.183×10-5) L2.8222


【年齢・成長式】

インド洋ビンナガは、Huang et al.(1990)の鱗による研究によると、8歳まで確認されている。以下3つの成長式の報告がある。L:尾叉長(cm)、t:年齢とする。
         Huang et al. (1990) 鱗
             Lt(cm)=128.13[1-e-0.162[t-(-0.897)]]
         Lee and Liu (1992) 脊椎骨
             Lt(cm)=163.7[1-e-0.1019[t-(-2.0668)]]
         Hsu (1991) 体長組成解析
             Lt(cm)=136[1-e-0.159[t-(-1.6849)]]


【自然死亡係数】

以下2件の報告がある。
         Lee et al. (1990)
             M=0.206    Pauly (1980)の方法により推定。
         Lee and Liu (1992)
             M=0.2207    はえ縄データを用い、Z=q*F+Mより推定。


資源状態

2012年8月に開催されたIOTC第4回温帯まぐろ作業部会において、台湾、日本、韓国の3国からはえ縄漁業の標準化CPUEが資源量指数として提示された。台湾の資源量指数は全体に穏やかな減少傾向である一方で、日本と韓国のそれは2000年頃から増加傾向である(図5)。このような相反する資源量指数の解釈には、ビンナガ資源やそれに対する漁業の空間的構造や漁獲ターゲットの変遷を考慮すること、指数を引き出すコアエリアを設けること、3国のデータを統合した解析の実施などが推奨された。本年度の資源評価は安定した動きをみせている台湾と日本の資源量指数を基に実施した。

資源評価は2010年までのデータを基に、シンプルな余剰生産モデルであるASPIC(Matsumoto et al. 2012)、年齢構成モデルのASPM(Nishida et al. 2012)、そして統合型モデルのSS3(Kitakado et al. 2012)という3手法を使用した(図6)。これら3つの方法による結果はいずれも同等であると判断されたが、資源状態の要約には3つの結果の中間的な値を示し、かつ将来のリスク解析を提示している理由からASPMの結果を利用することで合意した。ASPMの結果では、Fratio=1.33(80%信頼区間:0.90〜1.76)、SSBratio=1.05(0.54〜1.56)及びMSY=3.3万トン(3.1〜3.6万トン)(2007〜2011年の平均漁獲量:4.2万トン)であった。これらの推定値から、インド洋ビンナガ資源は漁獲圧がFMSYレベルを超えた軽度の乱獲状況となっていることが示唆された。また、現状の漁獲量がこのまま続くと2020年には資源量がBMSYレベルを下回る確率が80%以上となる。一方で、現状の漁獲量を20%削減した漁獲が2020年まで継続するとBMSY以下の資源レベルとなる確率を10%程度まで下げることが可能となる(図7〜8)。


管理方策

2012年12月の第15回IOTC科学委員会は、同年8月に実施された資源評価を基に漁獲圧をFMSYレベル以下にするため漁獲努力量を20%以上削減するよう勧告した。


ビンナガ(インド洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
(2007〜2011年)
3.9〜4.4万トン
平均:4.2万トン
我が国の漁獲量
(最近5年間)
(2007〜2011年)
2,400〜5,300トン
平均:4,000トン
管理目標 MSY=3.3万トン(80%信頼区間:3.1〜3.6万トン)
資源の状態 ASPMに基づく結果によれば、Fratio=1.33(80%信頼区間:0.90〜1.76)、SSBratio=1.05(0.54〜1.56)及びMSY=3.3万トン(3.1〜3.6万トン)(2007〜2011年の平均漁獲量:4.2万トン)であり、漁獲圧がFMSYレベルを超えた軽度の乱獲状況。現状の漁獲量がこのまま続くと2020年には資源量がBMSYレベルを下回る確率が80%以上となるが、現状の漁獲量から20%削減した漁獲を2020年まで継続した場合にはBMSY以下の資源レベルとなる確率を10%程度まで下げることが可能。
資源管理措置 資源をMSYレベルに保つため、今後漁獲を少なくとも20%削減。
管理措置(共通項目) はえ縄・まき網ログブック(最低情報収集項目の義務化)、統計データ提出強化、オブザーバープログラム(2010年7月より)、漁獲努力量(漁船数)規制、公海における大規模流し網漁業の禁止、海賊対策など
管理機関・関係機関 IOTC
(*) 2010年までの情報を用いた資源評価結果に基づく

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット 国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

松本 隆之

東京海洋大学 海洋科学部 生物資源学科

北門 利英

国際水産資源研究所 業務推進課

西田 勤


参考文献

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