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08 ビンナガ 南太平洋

Albacore

Thunnus alalunga

                                                                                   
PIC

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最近一年間の動き

2011年の南太平洋の漁獲量は7.3万トン(暫定値)と過去最大であった2010年(8.9万トン)の約82%であった。2011年に引き続き、2012年8月に中西部太平洋まぐろ類科学委員会(WCPFC SC)第8回会合で資源評価が実施され、2011年と比較すると楽観的であった。MSYは99,085トン(2011年:85,130トン)、BMSYは840,000トン(同:610,000トン)と推定された。BMSYに対する現在の資源量の比率(同:B2007-2010/BMSY)は1.51(同:1.26)、SSBMSYに対する親魚量の比率(SSB2007-2010/SSBMSY)は2.58(同:2.25)、初期親魚量SSB0に対するSSBMSYの比率(SSBMSY/SSB0)は0.23(同:0.26)であった。また、現在のF(F2007-2010/FMSY)は、0.21(同:0.26)と低い結果となった。以上の結果から、南太平洋のビンナガ資源の現状は、過剰漁獲でもなく、乱獲状態にも陥っていないと判断された。2012年8月のWCPFC SC第8回会合で、大型魚を漁獲対象とするはえ縄漁業による漁獲量や努力量が増加しないよう言及し、経済的に可能であれば、はえ縄漁業の漁獲死亡率を減少させることを勧告した。


利用・用途

主に缶詰など加工品の原料として利用されてきたが、近年では小型魚を中心に刺身による消費が増加している。


図1

図1. 南太平洋ビンナガ国別漁獲量(データ: WCPFC 2012b)


表1

表1. 南太平洋のビンナガ国別漁獲量(データ:WCPFC 2012b)


図2

図2. 南太平洋ビンナガ漁法別漁獲量(データ: WCPFC 2012)


図3

図3. 南太平洋ビンナガの分布域と主な漁場


図4

図4. 南太平洋ビンナガの年齢と体重の関係


図5

図5. 南太平洋ビンナガの漁獲分布(1960〜2011年)と海区区分(D:流し網、T:ひき縄、L:はえ縄を表す)


図6

図6. 南太平洋ビンナガの加入量推定値


図7

図7. 南太平洋ビンナガの総資源量推定値


図8

図8. 南太平洋ビンナガの推定された漁獲係数Fの経年変化


図9

図9. 南太平洋ビンナガに関するF/FMSYとB/BMSY


漁業の概要

南太平洋のビンナガは1950年代初めから漁獲が始まり、1960年代までの漁業国は日本、韓国、台湾であった。年間の総漁獲量は1960年から現在まで約2.2〜8.1万トンの範囲を増減している。過去5年間(2007〜2011年)の漁獲量は5.9〜8.9万トンで、これまでで最も高い水準となり、2011年(暫定値)は7.3万トンで、過去最大であった2010年(8.9万トン)の82%であった(表1)。近年の漁獲量の急激な増大に対して、南太平洋諸国からの懸念が高まっている。

主な漁業は、遠洋漁業国(日本、中国、韓国、台湾)及び島嶼国(フィジー、サモア、仏領ポリネシア)のはえ縄、ニュージーランド沖及び亜熱帯収束域(南緯40度付近)のひき縄(ニュージーランド、米国)で、竿釣りによる漁獲は僅かである(図1、表1)。1990年代には、はえ縄によって1.9〜3.8万トン、ひき縄によって3,400〜7,800トンが漁獲された(図2)。2000年代に入り、はえ縄の漁獲量は6万トン台に増加したが、ひき縄の漁獲量は6,500トン(2000年)から3,100トン(2011年、暫定値)と減少している。

近年、遠洋漁業国のはえ縄漁獲が減少し、島嶼国のはえ縄漁獲が増加しつつある。WCPFC科学委員会第1回会合(2005年8月ニューカレドニア)報告書によれば、2002年のはえ縄による漁獲量のうち、島嶼国による漁獲が約50%に達した(WCPFC 2005a)。国別で見ると、1967年から2005年まで台湾のはえ縄による漁獲量が最も大きく、1967〜1995年には1.0〜2.7万トンであった。同年代の日本のはえ縄による漁獲量は1.1千〜1.5万トンであるが、1950年代終盤から1960年代半ばには1.7〜3.5万トンの漁獲があり、全体の漁獲の大半を占めたが、1960年代終盤に減少した。漁獲量の大部分は、メバチを対象とした東太平洋のはえ縄での混獲物であり、南太平洋のビンナガ漁場で漁獲されたものは少ない。はえ縄漁場は南太平洋に幅広く分布するが、漁獲の大部分は西経130度以西の中西部海域で行われる。近年、台湾のはえ縄船は、一部の操業を北太平洋温帯域のビンナガあるいは中西部太平洋赤道域でのメバチ対象に移行したため、台湾による南太平洋でのビンナガの漁獲量が減少した。なお、近年は島嶼国の水揚量が急増し、特にフィジーの水揚量は一時1万トンを超え、2006年には台湾の漁獲量を上回った。また、中国のはえ縄による漁獲は0.5万トン(2007年)から2.2万トン(2009年)に急増し、これが最近年の全体の増加の主な要因となっている。

はえ縄以外では、ニュージーランドのひき縄による漁獲が最も多く、1980年代が400〜4,400トン、1990年代には1,800〜5,300トンであった。遠洋漁業国の大規模流し網は1983年頃から始まり、漁獲量は1987年までは1,000〜2,000トン程度であったが、1989年には2.2万トンを記録してピークに達した。その後、1990〜1991年には大きく減少し、さらに国連決議によって、公海における大規模流し網は1991年7月を最後に消滅した。


生物学的特徴

南太平洋のビンナガは、およそ赤道〜南緯45度の豪州東岸から南米大陸西岸にかけての広い海域に分布する(図3)。南太平洋のビンナガ資源は、単一系群により構成され、仔魚の分布が赤道域を挟んで北半球と南半球で不連続になっていること、標識放流の結果では北半球と南半球の間での移動が殆ど見られなかったこと、南北間の形態学的差異により、南太平洋のビンナガは北太平洋とは別系群であるとされる(Murray 1994)。ビンナガを対象としたはえ縄漁場(南緯10〜30度、東経150度〜西経150度の中・西部熱帯・亜熱帯海域)では、尾叉長80 cm以上の産卵群(成魚)が漁獲される。ひき縄の漁場は南緯35〜45度、東経160度〜西経110度で、尾叉長80 cm以下の索餌群(未成魚)が漁獲される。

仔魚の出現から推定した主産卵場は、南緯10〜20度の豪州北東沖〜西経120度付近までの中・西部熱帯・亜熱帯海域である。仔魚分布密度の季節変化及び生殖腺の成熟状況から推定した主産卵期は、南半球の春・夏季にあたる10〜2月と考えられている(上柳 1969)。産卵域の物理環境的な特徴は、表層混合層が厚く表面から水深250 m付近まで水温躍層が見られない高水温域である(水深50〜60 mでの水温24℃以上、250 m付近での水温15℃以上)。ビンナガの性比は、90 cm未満の未成熟魚ではほぼ1:1であるが、成熟魚では雄の比率がかなり高くなる。

南太平洋系群の成長については、Labelle et al.(1993)が、脊椎骨の輪紋読み取り結果から
      L(t)=121.0(1-e-0.134(t+1.922)
           L: 尾叉長(cm)、t: 年
を示している(図4)。成熟開始年齢は、満6歳、尾叉長約80 cmである。本種の寿命は、少なくとも12年以上と見られる。また、最近、Farley and Clear(2008)により、耳石及び背鰭棘の年輪に基づく年齢査定結果が報告され、Labelle et al.(1993)によるものより成長が早く推定され、Multifan-CLにより推定された成長にかなりよく近似した。

ビンナガの主要な餌生物は魚類(小型浮魚)・甲殻類・頭足類である。餌生物に対する選択性は弱く、生息環境中に多い餌を捕食するため、胃内容物組成は海域や季節によって変化する。索餌場は、主として中緯度(南緯30〜45度)の外洋域で、索餌期は南半球の夏季である。ビンナガの捕食者は、大型の外洋性浮魚類(まぐろ類、かじき類)、さめ類、海産哺乳類が知られている。


資源評価

南太平洋のビンナガを対象とした資源評価は、これまでSCTB(まぐろ・かじき常設委員会)の第13回会合(2000年7月ニューカレドニア)以来、統合モデルMultifan-CL(Fournier et al. 1998)を用いて行われてきたが、2005年からWCPFC科学委員会がその役割を担うこととなった。2011年8月に行われたWCPFC第7回科学委員会において、資源評価が委託されているSPCから、2009年の資源評価(Hoyle and Davies 2009)に改良を加えた解析結果が2011年に提出された(Hoyle 2011)。2012年の資源評価では,はえ縄CPUEと年齢別漁獲量データが更新されて実施され(Hoyle et al. 2012)、評価結果の検討及びそれに基づく資源管理上の勧告が作成された(WCPFC 2012a)。

資源評価に適用したモデルは前回と同様、Multifan-CLである。モデルの設定は2011年の資源評価とほぼ同様だが、はえ縄CPUEと年齢別漁獲量(Catch at size)データが更新され、親仔関係を表すスティープネスは前回の0.75から0.80へ変更された。2009年に行われた資源評価では、新たに得られた成熟や成長の知見に基づいた年齢別成熟率や成長のパラメータが変更された(Hoyle 2008)。2012年資源評価では、成長が海域及び性別で異なると示されたが(Williams et al. 2012)、現実を反映していない可能性から雌雄をまとめた1つの成長曲線が適用された。

資源解析に利用したデータは四半期ごとの国別漁法別漁獲量、はえ縄努力量(100鈎数)と標識データ(図5)で、海区については、前回と同様、南緯25度及び経度180度、西経110度を境界とした6海区とした(図5;赤数字)。漁業区分については、前回と同じく30漁業(26のはえ縄、2つの流し網及び2つのひき縄)とした。漁獲量については、流し網(トン)を除いて漁獲尾数を用いた。漁獲努力量は、はえ縄については枝縄100本、ひき縄及び流し網については操業日数を用いた。自然死亡率は全年齢0.4とした。成熟年齢は4歳までが0(未成熟)、5歳で0.23、6歳で0.57、7歳で0.88、8歳で1.0(すべて成熟)と設定された。体長体重関係式は、Hampton(2002)が提示したものが適用され、成長はvon Bertalanffy成長曲線に近似するものとされた。

今回の資源評価に適用された標準化CPUEは、南太平洋のビンナガを対象としている利用可能なはえ縄漁獲量と努力量から各海区に1つの指標に置き換えられ、長期間かつ広い範囲をカバーしている台湾はえ縄について適用された(Bigelow and Hoyle 2012)。

推定された加入量(図6)の傾向は、前回の資源評価と比較すると明瞭ではないが、減少、あるいは横ばいの傾向を示した。推定された資源量は、加入と同様に明瞭な傾向は確認できないが、1980年以降、横ばいである(図7)。親魚のFは1970年代前半から1990年中頃まで低く推移し、その後増加した(図9)。未成魚のFは1989年から1990年にピークとなり、徐々に増加している(図8)。推定されたMSYは99,085トン(2011年:85,130トン)、BMSYは840,000トン(同:610,000トン)、BMSYに対する現在の資源量の比率(B2007-2010/BMSY)は1.51(同:1.26)、SSBMSYに対する親魚量の比率(SSB2007-2010/SSBMSY)は2.58(同:2.25)、初期親魚量SSB0に対するSSBMSYの比率(SSBMSY/SSB0)は0.23(同:0.26)であった。現在のF(F2007-2010/FMSY)は、0.21(同:0.26)と低い(図9)。漁業が資源に与える影響については、漁業によって異なるが10〜60%の範囲にあり、近年の漁業による南太平洋のビンナガ資源への影響が急激に増加している結果を示した。


管理方策

【管理にあたっての特記事項】

南太平洋のビンナガを多獲した1989年頃には、日韓台の流し網が、本種の資源に大きな影響を及ぼしているのではないかと考えられたが、SCTB第6回会合(1996年)において、流し網による資源への悪影響はみられなかったと結論づけられた。


【管理方策】

2005年のWCPFC年次会合では、南太平洋ビンナガを目的として操業する漁船隻数を現状より増加させないとの措置を採択した(WCPFC 2005b)。WCPFC第5回科学委員会では、親魚に対する現在の高いFは、はえ縄による親魚の漁獲率に影響を与える可能性があると指摘した。2009年、2011年、2012年の資源評価では、現状のFや漁獲量は過剰ではないと評価した。2012年8月のWCPFC SC第8回会合で、大型魚を漁獲対象とするはえ縄漁業による漁獲量や努力量を増加させないよう言及し、経済的に可能であれば、はえ縄漁業の漁獲死亡率を減少することを勧告した。


ビンナガ(南太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 高位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(過去5年間)
5.8〜8.9万トン
平均:7.3万トン(2007〜2011年)
我が国の漁獲量
(過去5年間)
3,000〜5,900トン
平均:4,500トン(2007〜2011年)
管理目標 検討中
目標値 未確定
資源の現状 資源解析に不確実性はあるものの乱獲や過剰漁獲にはなっていない
Bcurrent > BMSY
Fcurrent < FMSY
管理措置 南緯20度以南の漁船数を2005年または過去5年の平均以下に抑制
管理機関・関係機関 WCPFC、SPC

執筆者

かつお・まぐろユニット
かつおサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 かつおグループ

清藤 秀理


参考文献

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