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07 ビンナガ 北太平洋

Albacore

Thunnus alalunga

                                                           
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最近一年間の動き

2011年6月にISCで資源評価が実施され、資源状態は健全で、現状(2006〜2008年)の漁獲圧は過剰ではないとされた。2011年の漁獲量は8.3万トン(暫定値)で前年の120%であった。資源評価の精度向上のため、漁業の情報、CPUE、生物学的情報(成長等)の改善が必要であるとされた。


利用・用途

日本において、本資源は生鮮及び加工品として利用されている。生鮮用ビンナガの中で特に脂がのったものを「ビントロ」や「とろびんちょう」と称して販売されている場合がある。生鮮以外では、缶詰や生節に加工される。ビンナガの肉はホワイトミートと呼ばれ、カツオやキハダよりも高級な缶詰材料となる(魚住 2003)。米国の場合、ビンナガは缶詰原料として古くから「海の鶏肉(シーチキン)」として賞味されている(久米 1985)。


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図1. 北太平洋ビンナガの漁法別漁獲量(上図)、国別漁獲量(下図)


表

表1. 北太平洋ビンナガの国別漁獲量(トン)


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ビンナガの分布と主な漁場(久米 1985、西川ほか 1985、上柳1957)


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図3. 北太平洋ビンナガの年齢と尾叉長(cm)の関係


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図4. 各漁業の標準化したCPUE(ISC 2011aを改変)
日本の竿釣りのFishery 4は南部、5,6は北部を、日本のはえ縄のFishery 6,8はそれぞれ北部、南部を表す。


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図5. SS3で推定した総資源量(ISC 2011a)


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図6. SS3で推定した親魚資源量(ISC 2011a)


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図7. SS3で推定した加入量(ISC 2011a)


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図8. SS3で推定した漁獲死亡係数(ISC 2011a)


漁業の概要

これまでに日本の竿釣り、はえ縄、流し網及び米国の曳き縄が北太平洋ビンナガを漁獲してきた。北太平洋ビンナガの総漁獲量は1950年代〜1960年代に約5〜9万トンであったが1970年から増加し、1976年に最大(12.7万トン)となった。その後、漁獲量は減少し、1991年には3.7万トンまで減少した(表1、図1)。この減少は主として日本の竿釣り及び米国の曳き縄の漁獲量の減少によるものであった。その後、著しい増加に転じ、1999年には12.6万トンに達し、史上2位を記録した。その後は、年変動はあるものの、減少傾向にあり、2011年の漁獲量は8.3万トン(暫定値)で前年の120%であった。なお、本文と図表は特に断らない限り、2011年6月のISCビンナガ資源評価会合の資料(ISC 2011b)と2012年7月のISCビンナガ中間会合における資料(ISC 2012)に基づく。

北太平洋ビンナガの主要漁業は、日本の竿釣り及びはえ縄、ならびに米国の曳き縄である。日本の竿釣りの漁獲量は、1999年に過去20年間で最高の漁獲量5.0万トン、2002年にも同2位の4.8万トンを記録し、近年は年変動が大きく、2011年は2.9万トンであった。日本のはえ縄の漁獲量は1990年代始めから増加し1997年(3.9万トン)にピークを迎えた後、2004年には1.7万トンまで減少した。2005年以降は2万トン前後で推移し、2011年は2.2万トンであった。米国の曳き縄の漁獲量は、1990年代初めから増加し始め1996年(1.7万トン)にピークを迎えた。その後は0.8万トンから1.4万トンの間で変動し、2011年は1.1万トンであった。

主要漁業に次ぐ漁業は、台湾のはえ縄及びカナダの曳き縄である。台湾のはえ縄の漁獲量は1995年に急増し(0.4万トン)、その後増加を続け1998年にはピークの0.9万トンで、その後は、操業の主体が熱帯域のメバチ主対象へシフトしたため、減少し、2011年には0.3万トンとなった。カナダの曳き縄の漁獲量は1980年代には数百トンだったが、1990年代中頃から着実な増加傾向を示し、2004年には0.8万トンで史上最高を記録した。その後も0.5〜0.6万トンを維持し、2011年には0.5万トンとなった。

日本の漁業による本資源の漁獲量は他国漁業の漁獲量を大きく上回り、総漁獲量の6〜9割を占める。上述の竿釣りとはえ縄のほかに、流し網、まき網及び曳き縄がある。流し網による漁獲量は1980年代に1万トンを超えたが、国連決議による公海操業の停止により、1993年以降はおおむね数十から数百トンとなった。まき網による漁獲量は年変動が大きく、近年は数百トンから0.7万トンで推移している。曳き縄は数百から0.1万トン前後で推移している。


生物学的特徴

太平洋においてビンナガは、北緯50度から南緯45度の広い海域に分布する(図2)。この海域には、北太平洋と南太平洋の2系群が存在するとされている。その証拠として太平洋の南北間で形態学的な差異があること、太平洋の赤道付近ではビンナガがほとんど漁獲されず赤道の南北をまたぐ標識再捕がほとんどないこと、産卵場が地理的に分離すること及び産卵盛期が一致しないこと、があげられる。

北太平洋のビンナガは高緯度域において東西を渡洋回遊することが標識放流調査によって実証されている。漁獲の大部分はおよそ北緯25度以北の海域(索餌域に相当)でなされる。はえ縄は、冬季には北緯30度の東西に広がる帯状水域で中・大型魚(尾叉長70 cm以上)を漁獲対象としている。同漁業は、北緯10〜25度の海域では大型魚を漁獲しているが、それは産卵に関与する魚群で量的には多くない。本種は春から秋の期間は北西太平洋で日本の竿釣り、北東太平洋で米国の曳き縄の対象となる。竿釣りが対象とするのは小型・中型(尾叉長45〜90 cm:2〜5歳)である。

上柳(1957)は、卵巣の成熟状態を調べ、成熟卵巣の発達した卵粒数が1個体(体長95〜103 cm)当たり80〜260万粒であること、雌の最小成熟体長は尾叉長約90 cm(5歳)であろうと述べている。

産卵は、台湾・ルソン島付近からハワイ諸島近海において水温が24℃以上の水域で周年(4〜6月盛期)行われていると推定されている(西川ほか 1985)。

北太平洋ビンナガの主要な餌生物は魚類、甲殻類及び頭足類である。そのほかにも尾索類、腹足類など多くの生物種が胃内容物として出現しており、ビンナガは日和見的な摂餌をしているものと考えられている(Clements 1961)。ただし、胃内容物組成の重量比では魚類が卓越する場合が多く、海域や季節によって異なるが、カタクチイワシ、マイワシ、サンマ及びサバなどを主に摂餌していると思われる。捕食者についてははっきりしないが、サメ類、海産哺乳類及びまぐろ・かじき類によって補食されているものと思われる。Watanabe et al.(2004)は2001〜2003年に漁獲したビンナガの胃内容物を調べた結果、カタクチイワシが多く出現したこと、その原因が近年のカタクチイワシ資源の増加であることを報告した。

北西太平洋のビンナガの成長については、須田(1966)が鱗に表れる輪紋を解析した薮田・行縄(1963)の結果を用いて下のvon Bertalanffyの成長式を推定している(図3)。
      L(t)=146.5(1-e-0.15(t+0.86))
           L: 尾叉長(cm)、t: 年齢

最近、Wells et al.(2011)が、耳石年輪を用いて以下の成長式を推定した。これは、従来の成長式と比べ、若齢側で大きく、高齢側で小さく推定されているが、漁獲物のサイズを考えると、より現実的であると考えられる。
      L(t)=120.0(1-e-0.184(t+1.945))

体長体重関係については、Watanabe et al.(2006b)らが北太平洋をほぼカバーする日本、米国及び台湾のデータ (1989〜2004年)を用いて約40年振りに次式のように体長体重関係式を更新した。
      w=0.87×10-4×l2.67    (1月1日における各年齢時の体長と体重)
      w=2.20×10-4×l2.48    (産卵親魚量対象)
           w:体重(kg)、l:尾叉長(cm)

寿命については、長期の標識再捕記録から、少なくとも16歳以上であると考えられる。


資源状態

北太平洋におけるまぐろ類及びまぐろ類似種に関するISCビンナガ作業部会資源評価会議(2011年6月)では、北太平洋ビンナガの資源評価が最新のデータを用いて行われた(ISC 2011a)。以下にその概要を示す。


【用いたモデル】

統合モデルSS3をメインで使用し、前回(2006年)資源評価で用いたVPA-2BOXも比較のため使用した。以下、特に断りがなければSS3におけるデータ及び設定である。


【漁獲量およびサイズ】

日本(はえ縄、竿釣り等)、米国(はえ縄、曳き縄)、台湾(はえ縄)等の漁獲量(重量または尾数)及びサイズデータ(データが利用可能な漁業について)を用いた(いずれも四半期別)。


【CPUE】

日本の竿釣りとはえ縄(それぞれ南北に分けた)、米国とカナダの曳き縄、米国のはえ縄及び台湾のはえ縄について、それぞれ標準化した年齢込CPUEが提示され、SS3モデルに使用したが、信頼性に応じて、CVの値により重み付けを調整した。日本の竿釣りのCPUEは、2003年以降減少傾向である(図4)。一方、日本のはえ縄のCPUEは2001年以降急激に減少したが、2005年以降、北部はわずかに増加、南部はやや減少した。米国のはえ縄のCPUEは、2001年以降減少傾向を示した。一方、米国とカナダ曳き縄CPUEは、2000年以降、大きな変動をともなった増加傾向である。


【漁業の選択率】

大型魚を漁獲している日本のはえ縄(南部)及び米国のはえ縄(一部の年代)はFlat top、それ以外の漁業はDome shapeとした。


【SS3モデル】

成熟(上柳 1957)、自然死亡係数0.3、体長体重関係式 (Watanabe et al. 2006b)は前回の資源評価同様で、成長式は、モデル内で推定とし、なおかつWells et al.(2011)による年齢査定生データを入力した。

総資源量(図5)及び親魚量(図6)推定値は増減を繰り返し、親魚量は1971年と1999年にピークがあり、1999年以降減少しているが、2003年以降はほぼ横ばいで、なおかつ、比較的高い(歴史的にみて中位の)水準である。加入(図7)は、1990年以降、頻繁に増減を繰り返しているものの、高いレベルで、2005年以降はやや低い水準であったが、2009年に増加した。漁獲死亡係数(基準年は2006〜2008年)は、3歳で最も高く、高齢側で低くなっていた。前回資源評価時の基準年(2002〜2004年)におけるFと比べて、1〜4歳魚で低く、5歳魚以上でほぼ同じであった(図8)。将来予測では、SSBは歴史的レベルの中間値に近い水準で、ほぼ横ばいで推移すると推定された


【資源の現状及び管理勧告】

現状のF(2006〜2008年)はFssb_ATHL(将来25年の間に過去最小から10番目までのSSBの平均を下回らない確率が50%を上回るようにするという暫定管理目標に基づくFの値)の0.71倍に相当し、暫定管理基準値を下回っている(達成している)ことが示された。産卵資源量は40万トン程度と推定された。しかしながら、将来の加入が過去の加入が低い期間(1978〜1987年)と同レベルであった場合は、現状のFがほぼFssb_ATHLレベルとなり、今後の加入によってはSSBが過去最小から10番目までの平均を割り込む可能性が示唆された。これらの結果から、現状の管理方策を継続する(Fをこれ以上高くしない)ことが勧告された(ATHL:Average level of its Ten Historically Lowest points)。


管理方策

資源状態が健全であるとの2011年のISC報告を踏まえ、中西部太平洋ではWCPFCが、東部太平洋ではIATTCが2005年に採択した保存管理措置(漁獲努力量を現状より増加させない)により、継続して管理している。


ビンナガ(北太平洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 中位
資源動向 横ばい
世界の漁獲量
(最近5年間)
6.5〜9.3万トン
平均:7.8万トン(2007〜2011年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
4.1〜6.7万トン
平均:5.1万トン(2007〜2011年)
管理目標 産卵親魚量が歴史的な産卵親魚量の下位から10番目までの平均値を下回らないこと
資源の現状 SSB2009:40.6万トン
F2006-2008/FSSB-ATHL:0.71
管理措置 漁獲努力量を2002-2004年水準より増加させない
管理機関・関係機関 ISC、WCPFC、IATTC

執筆者

かつお・まぐろユニット
熱帯まぐろサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

佐藤 圭介


参考文献

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