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06 大西洋クロマグロ 西大西洋

Atlantic Bluefin Tuna

Thunnus thynnus

                                                           
PIC

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最近一年間の動き

2011年の大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)への報告漁獲量は約2,000トンであった。ICCATでは2012年9月に資源評価を更新した。資源評価では、数理モデルへの入力データに最近2年間分の漁獲情報・資源指数を追加するに留め、モデルの詳細は前回(2010年)の資源評価での設定を踏襲した。資源評価の結果、親魚資源量は1980年代から近年まで1970年代初頭の25〜36%で比較的安定しており、2006年以降は増加傾向にあると推定された。前回(2010年)の資源評価では高水準と評価されていた2003年級の加入量は、最新の資源評価では前回よりも低く見積もられ、当該年級が2002・2003年級の両方で構成されるとの結果となった。しかし、これは漁獲物の年齢組成を推定する際に隣り合う年級群の判別が高齢になるにしたがって不鮮明になる技術的な問題によるものであり、現実には2003年級の加入水準は高かったと認識された。2013年の総漁獲可能量(TAC)は、2012年と同様の1,750トン(日本は302トン)である。なお次回の資源評価は、資源評価モデルや生物学的データを抜本的に見直した上で、2015年に実施する予定である。


利用・用途

ほぼすべてが刺身やすし用途に用いられている。


図

図1. 大西洋クロマグロの分布域(赤)と主要漁場(青)、産卵場(黄)
索餌場は産卵場を除く海域。縦太線は東西の系群の区分。


図

大西洋クロマグロ(西系群)の年別漁法別漁獲量(上)と年別国別漁獲量(下)(ICCAT 2012)
漁獲量には投棄分も含まれる。


図

図3. 大西洋クロマグロ(西系群)の成長曲線(ICCAT 2011a)
赤は2010年の資源評価で更新された成長曲線、青は更新前を示す。図中の矢印は成熟体長を表す。


図

図4. 大西洋クロマグロ(西系群)の親魚資源量の経年変化(ICCAT 2012)
上下の点線間は80%信頼範囲。


図

図5. 大西洋クロマグロ(西系群)の加入量(1歳の尾数)の経年変化(ICCAT 2012)
上下の点線間は80%信頼範囲。最近年(2009〜2011年)は信頼性が低いためマークを変えた。


図

図6. 大西洋クロマグロ(西系群)の親仔関係(ICCAT 2012)
赤と青線は、将来予測に用いた2つの仮定を示す。


表

付表1. 大西洋クロマグロ(西系群)の国別暦年漁獲量(1970〜2011年)
(※漁獲量には投棄を含む;単位はトン)(データ:ICCAT 2012)


表

付表2. 大西洋クロマグロ(西系群)の各年齢時体長(cm)と体重(kg)(ICCAT 2011a)


漁業の概要

主な漁業国は、米国、日本及びカナダである。日本の漁獲は、すべてはえ縄によるものであり、米国及びカナダではRod and ReelもしくはTended Lineと呼ばれる釣り漁業が主体である。小型魚を漁獲する漁業は米国のスポーツフィッシングのみで、他の漁業はすべて中・大型魚を漁獲する。大西洋クロマグロを対象とした我が国のはえ縄漁業は、大西洋の熱帯域であるカリブ海からブラジル沖で1963年頃から開始され、年間数万トンの漁獲量に達したが数年でこの漁場は消滅した。その後はメキシコ湾が主要な漁場であった。1970年代の中頃からはニューヨークからカナダのニューファンドランド沖合(北米沖)が漁場に加わり、1982年にメキシコ湾が操業禁止となって以来主要な漁場となっている(図1)。漁期はメキシコ湾が1〜5月、北米沖が11〜3月である。米国の漁期は主に7〜11月で、カナダの漁期はやや遅れて8〜11月である。

西大西洋クロマグロの漁獲量は、1981年までは5,000トン前後の水準にあったが、1982年以降厳しい漁獲規制が行われ、1983年以降はほぼ2,500トン前後となっている(図2、付表1)(ICCAT 2012)。2002年に、1982年以降で最大の3,319トンに達した後、漁獲量は減少し続け、2007年に1,638トンとなった。その後1,900トンから2,000トンの間で推移し、2011年の漁獲量は1,986トンであった。2003年以降の漁獲量の減少は、米国漁業の不漁が原因である。カナダの漁獲量は安定しているが、セントローレンス湾で漁獲される魚の平均サイズが小さくなっていること、また近年のCPUEが著しく増加したことが報告されている。日本の漁獲量も安定的だが、2003年に前年までの漁獲枠超過分の調整として57トンに一時的に減少した。2011〜2012年のTACは、1,750トンに削減され、我が国の漁獲枠も、301.64トンまで減少した。日本はこの漁獲枠管理に、8月〜翌7月の漁期年を用いている。


生物学的特徴

本系群の成長は、これまで標識放流結果から推定されていた(Turner and Restrepo 1994)が、2010年の科学委員会において、体長組成データ及び耳石の輪紋から推定した、より成長の遅い成長曲線(Restrepo et al. 2009)に更新された。成長曲線と各年齢の体長を図3と付表2に示す。本種は、大型個体では性別による体長の差が認められ、尾叉長255 cm以上の個体の60〜70%程度が雄である(Maguire and Hurlbut 1984)。最大体長(尾叉長)は3 m以上、寿命は32歳(Nielsen and Campana 2008)と考えられている(ICCAT 2011b)。

本種の卵は分離浮性卵で、受精卵の直径は約1 mmである。産卵場はメキシコ湾にあり、5〜6月が産卵期である。成熟年齢に関する生物学的知見は不足しており、生殖腺と硬組織を用いた正確な成熟年齢の調査の必要性が指摘されている。なお、資源評価ではメキシコ湾での漁獲個体の体長に対応する年齢を便宜的に成熟年齢として用いている。前回(2010年)の資源評価では、成長曲線の更新にともない、仮定される成熟年齢が8〜9歳に引き上げられた(ICCAT 2011a)。この仮定は、本種の東系群の成熟年齢(4〜5歳)よりもかなり高齢である。2012年の科学委員会では、米国近海において5歳の成熟魚が分布することが報告され(Knapp et al. 2012)、西系群の成熟年齢が想定よりも早い可能性が示唆された。産卵数は、体長200〜250 cmの成魚で約3,400万粒と報告されている。主な分布域は北緯30〜45度の海域であり、他のまぐろ類に比べてやや沿岸性が強い(ICCAT 2003)。

メキシコ湾で孵化した稚魚は、沿岸に沿って北へ移動し、夏にはコッド岬あたりに達する。その後、季節ごとの水温変動に応じて北米沿岸からやや沖合域に分布し、冬期には南下(南限はおおよそ北緯30度)、夏期には北上(北限は北緯50度)する。標識放流の結果から一部個体(数%)が、東大西洋(ヨーロッパ沿岸、ノルウェー沖合)・地中海へ渡洋回遊することが知られている。アーカイバルタグ、ポップアップタグ等の電子標識を用いた移動・回遊行動の研究により、従来考えられていたよりも東西の移動が頻繁に生じていることが示されているが、正確な移動率の算出には至っていない(ICCAT 2002)。

本種の胃内容物には魚類や甲殻類、頭足類等の幅広い生物が見られ、特定の餌料に対する嗜好性はないようである(Ortiz de Zarate and Cort 1986、Eggleston and Bochenek 1990、Uotani et al. 1990)。仔稚魚期には、魚類に限らず多くの外敵がいるものと思われるが、あまり情報は得られていない。遊泳力が付いた後も、まぐろ類を含む魚食性の大型浮魚類により捕食されるが、50 cm以上に成長すると、外敵は大型のかじき類、さめ類、歯鯨類等に限られるものと思われる。

現在まで20年以上にわたり、大西洋クロマグロは西経45度線で東西2つの区域の別系群として分けて管理されてきた。しかし、1990年代に行われた通常標識や電子標識の放流再捕結果から、若齢魚の移動範囲は狭いが、高齢になるにつれ回遊域が広がり、東西系群は北大西洋において混合して広く回遊を行うことが示された(Block et al. 2005)。さらに、耳石中心部分の酸素の安定同位体比を用いた研究(Carlsson et al. 2007、Boustany et al. 2007)によると、地中海で漁獲された大型のクロマグロのほぼすべては地中海生まれの東系群であった一方、西系群の漁場とされる米国東岸沖の索餌場で漁獲された未成魚(69〜119 cm)の62%は地中海生まれの東系群であり、大型魚(>250 cm)のほぼすべてはメキシコ湾生まれの西系群であったことが報告されている(ICCAT 2011b)。また、2012年に発表された研究では、標本数が限定的ではあるが、西大西洋での漁獲物(2〜6歳魚)に占める西系群の割合が年々低下していることが示された(Secor et al. 2012a)。これらの結果は、西大西洋での漁獲物には東系群の魚が含まれている可能性を示唆しており、西経45度で東西2つの系群に分けて管理する方法の妥当性に疑問を呈している。


資源状態

本系群の資源評価は、ICCATの科学委員会(SCRS)において、加盟国の研究者の共同作業で実施される。前述のとおり、近年の標識放流や耳石中心部分の安定同位体比の研究結果は、西経45度線で西大西洋(大西洋クロマグロ西系群)と東大西洋・地中海(大西洋クロマグロ東系群)に分けたICCATにおける管理に対する疑問を投げかけているが、漁獲魚をより正確に東西系群に分ける方法が確立されていないため、最新(2012年)の資源評価でも従来の西経45度線で東西系群に分ける方法を踏襲した。資源評価手法として、年齢別漁獲尾数を基本データとし、資源量指数をチューニングに用いるADAPT VPAが主に用いられている。2012年9月に実施した最新の資源評価では、ADAPT VPAを引き続き使用し、モデルの詳細は前回(2010年)の資源評価での設定を踏襲した。近年2年間のデータを追加して、1970年から2011年までの年齢別漁獲尾数(1〜16+歳)と、はえ縄CPUE等12種類の資源量指数を入力データとし、ICCATで公認されたVPAプログラムであるVPA-2BOX(Porch 2003a)を用いて資源評価を実施した。なお、成長曲線の更新(2010年)にともない、プラスグループの仮定は10〜16歳に変更された。

推定された親魚資源量と加入尾数(1歳魚)をそれぞれ、図4と図5に示す(ICCAT 2012)。親魚資源量は1970年代に大幅に減少した後、1980年代より近年まで1970年代初頭の25〜36%で比較的安定していたと推定された。2006年以降、親魚資源量に増加傾向が見られ、2011年の親魚資源量は約18,000トン(1970年の36%)と推定された。加入量は、1970年代初頭には高い水準にあったが、1976年以降、2003年を除き、低い水準で推移している。前回(2010年)の資源評価では高水準と評価されていた2003年級の加入量は、最新の資源評価では前回よりも低く見積もられ、当該年級が2002・2003年級の両方で構成されるとの結果となった。しかし、これは漁獲物の体長組成から年齢組成を推定する際、6歳以上の個体では隣り合う年級群の判別が高齢になるほど不鮮明になる技術的な問題によるものであり、現実には2003年級の加入水準は高かったと認識された。2012年に発表された耳石を用いた資源構造解析結果は、西大西洋に分布する卓越した2003年級には西系群が貢献(49.2% ± 13.2% SD, N=39)していることを支持している(Secor et al. 2012b)。以上の結果から、現在の資源水準は低位、資源動向は、2003年卓越年級群が今後の資源を下支えすると予想されていることから、増加傾向と評価された。

資源評価で推定された加入尾数は、1976年を境に比較的高い水準から低い水準に移行している。1976年前後は親魚資源量が大幅に減少した時期と一致しており、親魚資源量が多い場合に加入量が増加する親仔関係の存在を示唆している。しかし、1976年以降も親魚資源量が減少し続けているにもかかわらず、加入量に親魚資源量との相関が全く見られない(図6)ことから、本資源における親仔関係の存在には疑問も呈されている。このため、1) 親魚資源量の増減に関わらず加入尾数は1976年以降の低いレベルで一定、2)親魚資源量が増加した場合、加入尾数は1976以前のレベルまで増加する、という2つの再生産関係の仮定(図6)に基づきMSYを推定している。推定されたMSYは、仮定する再生産関係に大きく依存し、1)の親仔関係を仮定した場合、2008〜2010年の平均漁獲死亡係数FはFMSYの0.61 [0.49-0.74] 倍で、現在の親魚資源量はSSBMSYの1.40 [1.14-1.72] 倍となる(括弧内は80%信頼区間を示す)。一方、2)の親仔関係を仮定した場合、2008〜2010年の平均FはFMSYの1.57 [1.24-1.95] 倍で、現在の親魚資源量はSSBMSYの0.19 [0.13-0.29] 倍となる。なお、2つの親仔関係を仮定した場合のF0.1についても併記され、2008〜2010年の平均Fは0.92 [0.77-1.12] 倍であった。

2019年までの将来予測には、上述の2通りの再生産関係を仮定し、ICCAT公認プログラムであるPRO-2BOX(Porch 2003b)を使用した。1)の仮定の下では、2018年まで毎年2,500トン以下の漁獲を行った場合に、2019年の親魚資源量がSSBMSYを超える確率が少なくとも60%を超えると予測された。一方、2)の仮定の場合は、回復目標であるSSBMSYの値が高くなるため、たとえ漁獲を0にしたとしても、回復目標を達成することはないと予測された。


管理方策

1998年に、ICCATは2018年内に少なくとも50%以上の確率で最適な資源状態(SSBMSY)に回復させるという計画を決定した(ICCAT 1999)。しかし、前述したように、仮定する再生産関係によってSSBMSYの推定値が大きく異なるため、回復目標を達成するための許容漁獲量は0〜2,500トンとなり、非常に不確実性が高い。ただし、どちらの加入シナリオを用いた場合でも、現在の漁獲量(1,750トン)を維持することは、2003年の卓越年級群の保護や資源量の増加につながる。なお、漁獲量を2,000トン以上にすると、将来、2003年の卓越年級群が親魚資源量を下支えする可能性を阻害すると評価した。本種の西系群と東系群は混合している。東系群の資源量が西系群よりはるかに大きいため、今後の東系群の管理手段が西系群の回復に影響を与える可能性がある。

これらの結果に基づき2012年11月にアガディール(モロッコ)で開催されたICCAT年次会合で以下の規制が決定された。2013年のTACを1,750トンとした。我が国の漁獲枠は、301.64トンである。現在のTACは2013年に見直される。なお2013年に行政官と研究者の共同会合を開催し、1998年以降の科学的助言と管理措置のレビュー、東西混交の実態とそれを反映した資源評価手法の検討、東資源の過去10年の管理の西資源への影響評価、レジームシフト等を踏まえた親魚資源量及び加入の推定の見直しに関して検討する予定である。

他の規制として、科学委員会が、幼魚加入の急激な減少など、西大西洋クロマグロ資源の崩壊の危機を認めた場合、漁業停止の義務化を決定している。また115 cm(または30 kg)未満の漁獲量制限(国別に漁獲量の10%未満とすること並びに小型魚から経済的利益を得ない方法を開始すること)、産卵場(メキシコ湾)における産卵親魚を対象とした操業の禁止及び漁獲証明制度が実施されている。


大西洋クロマグロ(西大西洋)の資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 増加
世界の漁獲量
(最近5年間)
1,600〜2,000トン
平均:1,900トン
(投棄を含む)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
162〜578トン
平均:372トン
管理目標 2018年内に50%以上の確率で親魚資源量をMSYレベルに回復
MSY:2,634 [2,452-2,834]トン(低い加入)
    6,472 [5,736-7,500]トン(高い加入)
資源の状態 SSB2011/SSBMSY:1.40 [1.14-1.72](低い加入)
            0.19 [0.13-0.29](高い加入)
F2008-2010/FMSY:0.61 [0.49-0.74](低い加入)
            1.57 [1.24-1.95](高い加入)
F2008-2010/F0.1:0.92 [0.77-1.12]
管理措置 TAC:1,750トン(2013年)(日本枠:302トン)
115 cm(または30 kg)以下の魚の漁獲量制限(10%以下、国別)、漁場・漁期の制限(産卵場における産卵親魚の漁獲制限)、漁獲証明制度
管理機関・関係機関 ICCAT

執筆者

くろまぐろユニット
みなみまぐろサブユニット
国際水産資源研究所 かつお・まぐろ資源部 まぐろ漁業資源グループ

木元 愛

国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部 温帯性まぐろグループ

境 麿


参考文献

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