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04 クロマグロ 太平洋

Pacific Bluefin Tuna

Thunnus orientalis

                                                         
PIC
写真の太平洋クロマグロの尾叉長は、左から順に約250 cm、60 cm、20 cm。

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最近一年間の動き

2011年の総漁獲量は約1.8万トンで(暫定値を一部含む)、過去5年間(2006〜2010年)の平均漁獲量2.2万トンを約20%下回った。日本の漁獲量は、2011年にまき網の漁獲量が2009年並みの8,400トンに回復し、それ以外の漁法も含めると約1.3万トンになった。日本以外の2011年の漁獲量は、メキシコは前年の8,000トンから2,700トンまで減少した。韓国は700トンで、2006〜2010年の平均(1,300トン)の約半分、台湾は300トンで、2006〜2010年の平均(1,000トン)の約3分の1に減少した。米国は2002年以降で3番目に多い600トンであった。資源評価は2012年11月に北太平洋におけるまぐろ類及びまぐろ類似種に関する国際科学委員会(ISC)によって行われ、近年の親魚資源の減少、未成魚を中心に漁獲圧が増加していること、資源評価の最近年(2010年)の親魚資源量が評価期間(1952〜2010年)の最低レベルに近いとされた。将来予測は、漁獲圧の削減と中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)、全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)の管理措置の確実な実施及び日本の自主的な漁獲制限の継続により親魚増大が期待されるとした。日本は、2010年に国が公表した「太平洋クロマグロの管理強化についての対応」及びWCPFCの保存管理措置に基づき、さまざまな管理措置を実施している。内容は、大中型まき網のクロマグロ総漁獲量の制限、クロマグロを採捕するひき縄、釣り等の従来の自由漁業の届出制の導入と漁獲実績の報告義務づけ、クロマグロ養殖場の登録と養殖実績報告、クロマグロ養殖場の数やいけすの規模の拡大の制限並びに韓国産とメキシコ産輸入クロマグロの漁獲情報等の報告の取組みである。


利用・用途

「本まぐろ」とも呼ばれ、主に寿司や刺身用の高級食材として利用されている。また、0〜1歳の若齢魚は「めじ」または「よこわ」と呼ばれ、主に刺身用食材として、クロマグロ商材の中では比較的安価に流通している。外国による漁獲の多くは日本向けに輸出されている。


図1

図1. 日本周辺における太平洋クロマグロの主な漁場分布


表1

表1. 太平洋クロマグロの国別漁獲量(トン、国際水産資源研究所推定値)


図2

図2. 太平洋クロマグロの国別漁獲量の推移(1952〜2010年)


図3

図3. 太平洋クロマグロの漁法別漁獲量の推移(1952〜2010年)


漁業の概要

日本沿岸を回遊する太平洋クロマグロは縄文時代から利用されてきた(Kishinouye 1911, 1923、渡辺 1973)。公式な統計としては、「まぐろ類」として一括された漁獲量が水産事項特別調査(1891年)や農商務統計表(1894年)に掲載されており(Muto et al. 2008、岡本 2004)、漁獲の大半が沿岸漁業であることを考えると、その多くが太平洋クロマグロであると推測される。1920年代からは、北海道南東沖で流し網による漁獲が盛んになり、多い年で1万トン以上の漁獲を記録している(川名 1934、Muto et al. 2008)。東部太平洋では1918年から記録があり、1935年には1万トンを超えたが、その後は急速に衰退した(Bayliff 1991)。台湾沖では1930年代から第二次大戦中まで本種を対象としたはえ縄があり、3,000トンを超える漁獲があった(台湾総督府農商局水産課 1945、中村 1939、Muto et al. 2008、矢崎 1943)。

現在は、日本の沿岸と太平洋の沖合で、様々な漁法で漁獲されている(図1)。沿岸では、ひき縄や定置網により周年にわたり未成魚が、沖合ではまき網により夏季から秋季に未成魚と成魚が漁獲されている。また、春季の台湾東沖から奄美諸島周辺域にかけて、はえ縄で成魚が漁獲されている。1990年以降、まき網による未成魚の漁獲が東シナ海から日本海南西部で増加している。東部太平洋ではメキシコが5〜10月にまき網で漁獲しており、そのほとんどが養殖原魚となっている。

太平洋における本種の年間総漁獲量は0.9万トンから4万トンの間で変動している(図2)。近年では1981年に3.5万トンを記録した後、1988年に0.9万トンまで落ち込んだ。漁獲の多くはまき網やひき縄が漁獲する未成魚なので、加入変動が要因の一つと考えられる。東部太平洋では、好漁のときにクロマグロを狙った操業が集中したことも一因と考えられる。

2000年代以降の漁獲量は1.8〜2.9万トンの間で変動している(図2)。2007〜2011年の漁獲量は、北西太平洋で1〜2万トン、東部太平洋で0.3〜0.8万トンと推定されている。2000年代以降の安定した漁獲は、加入の水準が比較的高かったことと、メキシコ及び日本での養殖の発展等による需要の増加に支えられ、クロマグロを狙う努力量が安定して増加したことが原因であると推測される。

各国の漁業概要は以下のとおりである。


【日本】

まき網、はえ縄、ひき縄、竿釣り、定置網、一本釣り等により漁獲している。1993年以前には公海域で流し網でも漁獲していた。1952年以降、年間漁獲量は0.6〜3.4万トンの間を変動しているが、ここ10年は1.1〜2.4万トンであり、その内の約6割はまき網により漁獲されている(図3)。まき網の主な漁場はかつては夏期の三陸沖であったが、1980年代初頭より日本海南西部でも成魚の漁場が形成され、2000年代後半からは、まき網による漁獲の大半は日本海で漁獲されている。2000年代半ばからまき網の漁場は、日本海北東部で6月初旬から、主に3、4歳魚を中心として操業し、6月下旬以降は日本海南西部で、5歳以上を含んだ成魚を漁獲している。1990年代初頭からは、東シナ海北部から日本海西部の海域にかけて1歳魚を中心とした未成魚も漁獲している。また、2000年以降は、ひき縄による養殖原魚用の0歳魚の漁獲が増加している。


【韓国】

主にまき網で済州島から対馬にかけて漁獲しているが、表中層トロールでもわずかに漁獲している。漁獲量は1982年以降報告されており、2000年以降、600〜2,400トンで変動しており、最大は2003年の2,600トンである。


【台湾】

台湾東沖に広がる産卵場で小型はえ縄漁船が200 cm以上の産卵親魚を漁獲している。過去には、まき網でも稀に混獲されていた。近年の漁獲量は減少傾向で、1999年の3,100トンから2008年には1,000トンを下回り、2010年、2011年には、それぞれ400トン、300トンまで減少している。以前は日本へも輸出していたが、近年はほとんどが台湾で消費されている。


【米国】

近年は漁獲量が大きく落ち込んでいる。これは、1980年代にメキシコが排他的経済水域を導入したことで、カリフォルニア半島沿岸から米国船が閉め出されたことが原因である。近年の漁獲量は、1994年級群に支えられた1996年のピーク(4,700トン)以来減少し、2007年には58トンになった。それ以後増加し、2009年には566トンの漁獲があったが、この漁獲の増加は偶発的なものであると説明されている。この漁獲はカリフォルニア南部からカリフォルニア半島にかけてのまき網によるもので、メキシコに蓄養種苗を供給している。1990年後半から2000年初頭にかけては遊漁による漁獲が増加し、年間100〜700トンの漁獲があった。


【メキシコ】

キハダ、カツオを対象としたまき網がカリフォルニア半島沿岸でクロマグロも漁獲している。メキシコのまき網の全漁獲量に占めるクロマグロの割合は非常に小さいが、蓄養向けの需要が増加しており、相対的に重要度が増している。また、クロマグロの太平洋全体の漁獲量に対するメキシコの割合は近年大きくなっている。漁獲量は1980年代は120〜680トンであったが、1989年以降0〜9,800トンと大きく変動している。2000年以降は、キハダの不漁にともない、蓄養種苗向けにクロマグロを対象とする操業が増加している。メキシコの漁獲量は、東部太平洋への来遊量に左右され、2005〜2009年で3,019〜9,806トンと、3倍以上の変動が見られた。2012年は好漁であり、6,551トンの漁獲量を記録した(IATTC暫定値)。


図4

図4. 太平洋クロマグロの分布と回遊の概念図


図5

図5. 太平洋クロマグロの産卵場の概念図


図6

図6. 太平洋クロマグロの尾叉長・体重と年齢との関係
現在の資源評価では0歳時点の体長を21.5 cmに固定して再推定した成長式(ISC 2012)を用いている。


図7b

図7. 資源評価で仮定した年齢別の自然死亡係数と成熟率


図8b

図8. 2012年の資源評価で使用された太平洋クロマグロの資源量指数(CPUE)
それぞれのCPUEは標準化ののち、標準化CPUEの平均値で割って正規化してある。日本の沿岸・近海と台湾のはえ縄のCPUE (左)は高齢魚、五島周辺・対馬海峡のひき縄CPUE(右)は0歳魚を中心とする若齢魚の資源量指数として用いられている。資源評価モデル内で予測された推定値(モデルによる推定値)も示した。


図9

図9. 太平洋クロマグロの親魚資源量(上図)と加入量(下図)のトレンド
縦軸は、1952〜2009年までの推定された産卵親魚量(単位:万トン)と加入量(単位:100万尾)。赤色の実線が最尤法による点推定値、マーク付の実線、上下の点線がパラメトリックブートストラップ法により計算した結果の中央値と90%信頼区間の端点。


図10c

図10. 資源評価で推定された太平洋クロマグロの親魚資源量(横軸)と加入量(縦軸)の関係


図11

図11. 1990年以降の0〜5歳魚の漁獲死亡係数


図12

図12.資源評価モデルで推定された年齢別の漁獲尾数の経年変化(上図)と、1960年代と2000年以降の年齢別漁獲尾数の年平均の違い(下図)


図13

図13.WCPFC、IATTCの管理措置及び日本の自主的な追加の管理措置が導入される前の漁獲死亡係数(漁獲圧、2007〜2009年の平均)が、将来続いた場合の将来予測結果(上図)。漁獲死亡係数(漁獲圧)を2002〜2004年の平均まで削減した上でWCPFC、IATTCの管理措置及び日本の自主的な追加の管理措置を将来継続した場合の将来予測結果(下図)。図中の黒太実線及び黒破線はそれぞれ親魚資源量の中央値と90%信頼区間の端点を表す。X軸に平行な2本の黒実線と赤実線は、上から、資源評価期間(1952〜2010年)のSSBの中央値、下から25パーセンタイル、過去最低水準を表す。将来予測の期間の灰色の線は、6,000回の将来予測のシミュレーションの中から無作為に20回のシミュレーション結果を抽出して重ね書きしている。


生物学的特徴

【分布と回遊】

太平洋に分布するクロマグロThunnus orientalisは、かつては大西洋に分布する大西洋クロマグロThunnus thynnusの地理的亜種とされていたが、現在では分子遺伝学的研究等により両種を別種とする意見が多い(例えばCollette 1999)。漁業資源としても両者には地理的な交流が認められないことから、ISC、IATTC及びFAOにおいては、前者をPacific Bluefin Tuna(太平洋クロマグロ)、後者をAtlantic Bluefin Tuna(大西洋クロマグロ)と呼称し、別種として扱っている。

本種は主に北緯20〜40度の温帯域に分布するが、熱帯域や南半球にもわずかながら分布がみられる(図4)。産卵場は、南西諸島周辺を中心とした日本の南方〜台湾の東沖で4〜7月、日本海南西部で7〜8月と考えられている(米盛 1989)(図5)。0〜1歳魚は日本海または太平洋側の日本沿岸を夏季に北上し、冬季に南下する(Inagake et al. 2001、Itoh et al. 2003)。2〜3歳魚は北西太平洋を主な分布域とし、春季に黒潮続流域を西進、夏季に三陸沖を黒潮分派に沿って北上、秋季に親潮前線に沿って東進、冬季に日付変更線付近で黒潮続流域に向かって南下、という海洋構造に応じた時計回りの回遊パターンを示すことがアーカイバルタグ調査から示された(Inagake et al. 2001)。しかし、個体によっては日付変更線付近まで移動しない場合や、半年〜数年間沿岸の同一箇所に滞在し続ける場合もあり、個体ごとの回遊パターンに大きな違いが認められる。未成熟魚の一部には、太平洋を横断して東部太平洋に渡り、北米西岸を南北に回遊をしながら数年滞在した後、産卵のために西部太平洋へ回帰するものがあることも知られている。親魚は、主に南西諸島周辺〜台湾東沖または日本海南西部で産卵する。親魚の多くは、産卵後に北太平洋北部の沖合に索餌回遊する。一部の親魚は、産卵後に、さらに南方、あるいは黒潮沿いに東方へ移動することがポップアップタグによる調査で示されている(伊藤 2006)。


【成長と成熟】

年齢と成長に関する知見は、耳石を用いた近年の研究により高齢魚の年齢推定の部分で大幅に改善された (Shimose et al. 2008、Shimose et al. 2009)。本種は5歳までは急激に成長して尾叉長150 cmに達するが、それ以降の成長速度は鈍くなり、9歳で200 cm、13歳で極限体長の90%である225 cmに成長する(図6)。尾叉長200 cm以上の大型魚の中には20歳以上の個体も含まれることから、寿命は少なくとも20歳以上と考えられる。漁獲物の最大体長は300 cm以上に達する。成長式から計算された若齢魚の体長が漁獲物体長組成のモード(最頻値)と一致していないことが多く(Ichinokawa 2008)、サンプル数を増やして成長式を更新するたびに4、5歳までの平均体長が違って推定されるので、5歳前後までの成長についてはさらなる改善が必要である。その原因の一つは、主要な産卵場が2か所存在し、それぞれの海域での産卵期が異なるという本種の生態の特性に起因するものが大きいとみられる。

産卵期は日本の南方〜台湾東沖で4〜7月、日本海南西部で7〜8月と考えられている(米盛 1989)(図5)。本種は卵を一産卵期に数回産む多回産卵魚であり、卵は直径約0.7〜1 mmである。産卵数は体長にともなって増加する(Chen et al. 2006)。個体ごとの産卵継続期間や産卵回数などは不明であるが、本種の産卵間隔は台湾近海では平均3.3日(Chen et al. 2006)、日本海では平均1.2日(Tanaka 2011)と報告されている。まぐろ類は約24℃以上で産卵することが知られており、仔魚が採集される水温から産卵水温は23〜24℃以上と推測されている。台湾近海では、産卵期の表層水温が26〜29℃であると報告されている(Chen et al. 2006)。一方、日本海における産卵開始水温は20℃前後(Tanaka 2011)と既知の水温より低いことが報告されている。成熟サイズについて、日本海では産卵期に漁獲された体重30 kg程度(約3歳魚に相当)の標本の約8割が成熟していた(Tanaka 2006)。一方、日本の南方〜台湾東沖で漁獲されるのは、ほとんどが体重60 kg以上(5歳以上に相当)の成熟個体である。日本海で早く成熟して産卵を行う親魚は本種全体の一部であると考えられるが、産卵・回遊生態はあまり明確になっていない。現時点の資源評価で用いられている成熟割合は、3歳で20%、4歳で50%、5歳以上で100%である(図7)。資源評価に直結する再生産パラメータに関する更なる研究が必要である。


【自然死亡係数】

本種の自然死亡係数は若齢魚で高く、その後低下すると考えられている。しかし、0歳魚の自然死亡係数について通常標識から若干の知見が得られている他は、信頼できる推定値がない(Takeuchi and Takahashi 2006)。そのため、資源評価で用いられる自然死亡係数は、生活史が類似している他魚種の値や経験式から推定した値が用いられている。若齢魚の自然死亡係数は、通常標識による推定値(0歳魚、Takeuchi and Takahashi 2006)、同様の水温帯に分布するミナミマグロで通常標識を用いて推定された値(1〜3歳魚、Polacheck et al. 1997、ISC 2008b) が用いられた。高齢魚の自然死亡係数は、Pauly(1980)の経験式から推定した値(0.25、図7、ISC 2008b)が用いられている。


【食性】

後期仔魚は、かいあし類 (卵、ノープリウス幼生を含む)を主な餌とするプランクトン食性である。主に日中に摂餌し、夜間は摂餌を休止するという、顕著な日周変動がみられる(米盛 1989、Uotani et al. 1990)。全長5 mm未満の仔魚はかいあし類のノープリウス幼生を主に摂餌するが、全長5 mm以上では遊泳力の向上にともなってより大型のかいあし類を摂餌するようになる(Uotani et al. 1990)。20〜60 cmの当歳魚は、日本海ではホタルイカモドキからキュウリエソに、太平洋では甲殻類幼生からいわし類へと、成長にともなって食性を変化させる(Shimose et al. 2012)。成魚の胃袋からは、いか類の他、とびうお類、きんときだい類、カツオなど魚類が多く見られる。いずれにしても特定の魚種を選択的に捕食するのでなく、その海域に多い生物を機会に応じて捕食 (opportunistic feeding)していると考えられている(山中1982)。一方で、本種を漁獲している漁業者の中には、本種が季節的にスルメイカやサンマ等特定魚種の群れを追って回遊しているとする声もある。また幼魚のときには他のまぐろ類に捕食され、大型魚はごく稀にシャチやさめ類に捕食される(山中 1982)。


資源状態

【資源解析】

ISCが2012年11月に本種の資源評価を実施した。資源評価では、統合モデルのStock Synthesis(SS、Methot 2000, 2010)を用いている。資源評価の概要はISC(2012c)で報告されており、以下に示す結果もこれらの文献からの引用である。

使用したデータは、漁期年で1952年(1952年7月)から2010年(2011年6月末)までの四半期別・漁業別漁獲量、各漁業による漁獲物の体長頻度データ及び標準化された資源量指数である。資源評価では漁期年(7月〜翌6月)が使用されている。資源量指数は、大型魚として日本の南西諸島水域の沿岸のはえ縄 CPUE(1993〜2010年)、日本の近海はえ縄CPUE(1952〜1992年)、台湾のはえ縄 CPUE(1998〜2010年)、0歳魚について五島周辺・対馬海峡で漁獲が行われるひき縄 CPUE(1980〜2010年)が使用された(図8)。生物学的パラメータは、成長式(ISC 2012)と体長・体重関係式(Kai 2007)(図6)、年齢別の自然死亡係数や成熟率(図7)等を使用している。SSでは、漁獲物の体長頻度分布から漁業別の選択曲線を推定し、それに既与の成長式を適用して年齢別漁獲尾数を推定している。そして、資源量指数やモデル内で推定された年齢別漁獲尾数を基に、年齢別の個体群動態式等から最尤法により資源量などを推定する。

2012年の資源評価結果では、近年の日本のはえ縄CPUEの不確実性の解釈、最尤推定を行う際のCPUEと体長頻度データ間の重み付けの違い、選択曲線の推定手順の違いに基づく20のシナリオを検討し、1個のシナリオを代表的な結果(the Representative Run、一種のベースケース)として資源状態を記述した。


【資源状態】

親魚資源量は、1960年前後、1970年代後半、1990年代中ごろにピークを迎える周期的な変動傾向を示した(図9)。親魚資源量が歴史的に最大となったのは1960年代で、日本沿岸のはえ縄の資源量指数をよく説明している(図8)。ここ10年の資源量と親魚資源量は、1990年代中ごろのピークから2010年まで徐々に減少している。最近年(2010年)は、資源量と親魚資源量はそれぞれ約5.3万トン及び2.3万トンまで減少しており、評価期間(1952〜2005年)の最低値に近いレベルとなっている。加入量は親魚量とは独立に年変動し(図9下)、親魚資源量が減少した現在も連動した減少傾向は認められていない(図10)。

漁獲圧は、未成魚(0〜2歳)が歴史的に高く、1990年代以降、これらの若齢魚に対する漁獲圧が増加傾向あるいは高いレベルのまま横ばいとなっている(図11)。漁獲尾数の95%以上を2歳以下の魚が占めていると推定されている(図12)。また、2歳魚以下の未成魚の漁獲尾数は1991年以降増加している。

2012年の資源評価では、本種の資源状態を以下のように要約した。(1)最近年の漁獲圧(2007〜2009年)は、基準年(2002〜2004年)の漁獲圧に比べて、0歳魚で4%、1歳魚で17%、2歳魚で8%、3歳魚で41%、4歳魚以上で10 %増加した。(2)最近年の漁獲圧は、検討したすべての管理基準を上回っている。(3)現在(2010年)の資源状態は、1952〜2010年に推定された資源量の最低レベルに近い。

保存管理措置は、WCPFCとIATTCでそれぞれ2011年と2012年から実施されている。日本は、追加で自主的なまき網の漁獲制限を2011年から実施している。これらを踏まえ、今後の資源の動向を以下の4個のシナリオで検討した。

(1) 2007〜2009年の漁獲圧が今後も継続した場合。これは、資源管理を導入しなかった場合に相当する。

(2) 将来の漁獲圧を2002〜2004年のレベルまで減らした場合。

(3) 2007〜2009年のレベルの漁獲圧を継続するが、まき網については、WCPFC、IATTCの管理措置及び日本が自主的な漁獲制限を適用した場合。

(4) 漁獲圧を2002〜2004年のレベルまで下げ、まき網については、WCPFC、IATTCの管理措置及び日本が自主的な漁獲制限を適用した場合。

シナリオの検討では以下のことが示唆された。親魚資源量について(1)2007〜2009年の漁獲圧が継続すれば、現在の水準からの増加は見込めない。(2)漁獲圧を2002〜2004年のレベルまで減らした場合は、2030年までに約4.1万トンまで増加することが期待される。(3)2007〜2009年の漁獲圧を継続するが、WCPFC、IATTCの管理措置と、日本が自主的な漁獲制限を適用した場合、2030年までに親魚資源量は平均して約5万トンまで増加すると期待される。(4)将来の漁獲圧を2002〜2004年のレベルまで減らした上で、WCPFC、IATTCの管理措置を確実に実施し日本が自主的な漁獲制限を継続した場合、2030年までに親魚資源量は実際の将来の加入変動により幅はあるが平均して8.3万トンまで増加すると期待される。一方、漁獲圧が2007〜2009年のレベルのままでは、親魚資源量が過去最低水準を下回るリスクがあった。これは加入が良ければ管理措置が漁獲圧を更に減らす効果があるが、加入水準が低い場合、特に3、4歳魚が少ない場合には、管理措置が漁獲圧を削減する効果が薄いことに起因する。ISCは以下の保存勧告を提言した。(1)WCPFC、IATTCの現在の管理措置と日本の自主的な漁獲制限が適切に実施されれば、本種の資源状態の改善につながる。(2)WCPFC、IATTCの管理措置及び日本の自主的漁獲制限は、毎年の加入水準が良好な場合に将来の親魚資源量を効果的に増加させる。(3)加入水準が悪い年が続く場合には、漁獲圧を一定率削減する方が、資源のさらなる減少を食い止める上ではより効果的である(ISC 2012a)。


管理方策

現在のWCPFCによる保存管理措置は、2012年の資源評価結果が遅れたため、2012年のWCPFC年次会合では、現行の保存管理措置を1年間継続することが合意された。このため、前年の保存管理措置を持ち越しており、2013年に見直しが実施される。現在の管理措置は、努力量が2002〜2004年レベルを下回るよう管理すること(零細漁業を除く)、特に未成魚(0〜3歳)に対する漁獲量が2002〜2004年の平均レベルを下回るように管理すること(韓国を除く)、韓国については未成魚の漁獲を規制するために必要な措置をとることとしている(水産庁 2010a)。2012年に開催されたIATTC年次会合では、東部太平洋の漁業に対して2012年、2013年の2年間の合計で10,000トンの漁獲枠が設定され、2012年単年では5,600トンの漁獲枠が設定された。

国内では、水産庁が2010年5月に、太平洋クロマグロの管理強化を図るため、未成魚の漁獲を抑制・削減し、大きく育ってから獲ること、親魚資源量が中長期的に適切な範囲内に維持され、これまでの最低水準を下回らないよう管理することを方針とする「太平洋クロマグロの管理強化についての対応」を公表した(水産庁 2010b)。これに基づき、2011年4月から、大中型まき網のクロマグロ総漁獲量を制限する取組及びクロマグロを採捕するひき縄、釣り等の沿岸漁業を対象に自由漁業の届出制の導入と漁獲実績の報告が義務づけられたほか、2011年1月からクロマグロ養殖場の登録及び2011年2月からメキシコ産輸入クロマグロの漁獲証明制度の導入が開始された。さらに、2012年10月から養殖場の数やいけすの規模を現状以上に拡大しないこととされた(水産庁 2011a, b)。


クロマグロ(太平洋)資源の現況(要約表)

資源水準 低位
資源動向 減少
世界の漁獲量
(最近5年間)
約18,000〜25,000トン
平均:平均:約20,000トン(2007〜2011年)
我が国の漁獲量
(最近5年間)
約9,000〜17,000トン
平均:約14,000トン(2007〜2011年)
管理目標 国際的に管理目標はまだ合意されていない。暫定目標は漁獲死亡率を2002〜2004年レベル以上に増加させないこと。
資源の状態 2010年の親魚資源量は、1952〜2010年の親魚資源量に対して最低水準に近い。2007〜2009年の漁獲圧は2002〜2004年に比べて増加しており、2007〜2009年の漁獲圧が続く場合、将来の資源水準が現在の低い水準から増加する可能性は低いが、WCPFC、IATTCの管理措置の確実な実施及び日本の追加の漁獲制限が継続すれば、中長期的には資源は増加が期待される。
管理措置 中西部太平洋では2013年において、努力量を2002〜2004年平均レベルを下回るよう、また、未成魚の漁獲量を2002〜2004年平均レベルを下回るよう管理する。東部太平洋では、2012年及び2013年の漁獲量の合計を1万トンを上限とし、2012年単年においては、5,600トンを上回らないようにする。
管理機関・関係機関 WCPFC、ISC、IATTC

執筆者

くろまぐろユニット
くろまぐろサブユニット
国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部 くろまぐろ資源グループ

竹内 幸夫・大島 和浩
国際水産資源研究所 くろまぐろ資源部 くろまぐろ生物グループ

阿部 寧・大河内優美

参考文献

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