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64 日本海の漁業資源(総説)


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図1

図1. 日本海の概要 (長沼 1992)


表1

表1. 新潟県沖合水域における底生生物群集構造(尾形 1980)


図2

図2. 日本海の日韓暫定水域


図3

図3. マイワシの分布


図4

図4. マイワシの漁獲量


図5

図5. マサバの分布


図6

図6. マサバの漁獲量


図7

図7. マアジの分布


図8

図8. マアジの漁獲量


図9

図9. ブリの分布


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図10. ブリの漁獲量


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図11. スルメイカの分布(秋季発生系群)


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図12. スルメイカの漁獲量(秋季発生系群)


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図13. ズワイガニの分布


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図14. ズワイガニの漁獲量


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図15. ベニズワイの漁場


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図16. ベニズワイの漁獲量


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図17. ホッコクアカエビの分布


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図18. ホッコクアカエビの漁獲量(大和堆をのぞく)


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図19. アカガレイの分布


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図20. アカガレイの日本海全漁獲量


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図21. ハタハタの分布(日本海西部)


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図22. ハタハタの漁獲量(日本海西部)


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図23. 大和堆の地形 (海洋水産資源開発センター 1989、1992)


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図24. トロール網による試験操業により推定した大和堆のホッコクアカエビの 資源量指数と沖合底びき網による漁獲量



日本海は太平洋の縁海であり、隣接する海とは対馬、津軽、宗谷及び間宮の4海峡で接続している。これらの海峡はいずれも比較的浅くて狭い。日本海の表面積は105.9万km2、全容積は168.2万km3である。最深部の水深は3,700 mを超え、平均深度は1,588 mで広さの割にはかなり深い海である。

隣接する海から日本海に流入する海水は、対馬海峡を通じて流入する対馬暖流が殆どであり、津軽、宗谷及び間宮海峡から流入する海水は微々たるものであると言われている。流入する暖流水は表層に薄く分布し、その下層には海域内で生成された日本海固有水といわれる1℃以下の海水が全容積の85%を占める形で分布している。

海底地形は南北両半域で著しく異なり、北半域の朝鮮半島北部及び沿海州に沿った水域では、狭くて単調な陸棚で縁どられ、陸棚に続く海底地形も概して変化に乏しい。これに対して南半域の中央部から本州にかけては、多数の堆、礁、島々が分布し、起伏に富んだ複雑な地形をしている。この地形的な特徴は底魚漁場としての意義だけでなく、表層の海況や漁況にも重要な影響を及ぼしている。また、沿岸漁場として有用な200 mより浅い陸棚の面積は、27.2万 km2で、日本海全体の約1/4を占めている(図1)。(以上、長沼(2000)から引用)


日本海の漁業資源と漁業

地形的な特徴と制約を受けて日本海の生物相は成立しているが、生物相は種数の面から貧弱であると言われている。魚類について見ると、日本海に分布する種数は全体で500種余であるが、西部の山陰沿岸海域で多く、北部で少ない傾向がある。

日本海の漁業資源は、日本列島沿いに北上する対馬暖流及び日本海の中深層に広く分布する日本海固有水中に生息する。その主な魚種は、マイワシ、マサバ、マアジ、ブリ、スルメイカ等の浮魚類、ヒラメ、マダイ、カレイ類、スケトウダラ、マダラ、ハタハタ、ズワイガニ、ベニズワイガニ、ホッコクアカエビ等の底魚類が挙げられる。日本海の底魚類は、水深200 mをおよその境界として、浅海域の「おか場」と深海域の「たら場」に区分され、それぞれに生息する魚種が特徴付けられる。すなわち、「おか場」には対馬暖流の影響下にある種類が、「たら場」には日本海固有水の影響下にある種類が分布している。それぞれの群集は、海水の特徴からさらに細分される(表1)。日本海には、1999年に発効した日韓漁業協定において定められた「日韓暫定水域」が設定されている(図2)。


日本海の浮魚類主要種の生物学的特徴と資源動向

【マイワシ】

日本海で漁獲の対象となっているマイワシは、対馬暖流系群であり、北海道日本海側の沿岸から九州鹿児島沿岸にかけて分布する。資源の高水準期には薩南海域をはじめとする広域で産卵場が形成されていたが、低水準期である近年では、局所的な産卵が見られるに過ぎない(図3)。産卵期は1〜5月、寿命は7年程度、成熟開始年齢は資源の低水準期では1歳、高水準期では2歳である。

対馬暖流域におけるマイワシの漁獲量は、1983年には100万トンを越え、1991年まで100万トン以上だったが、その後急速に減少し、1999年には4万2千トン、2000年には7千9百トン、2001年から2003年には約1千トンであった。2004年以降の漁獲量はやや増加したが、2008年は約1万1千トンと前年より減少した(図4)。

日本の他に韓国及びロシアもマイワシを漁獲している。韓国の漁獲量は2001年以降多くないが2008年は100トンであった。ロシアの漁獲量は1991年まで20万トンを越えていたが、1992年には7万トンとなり、それ以降は漁獲されていない。

コホート解析によれば、資源量は1970年代から増加し、1988年には1千万トンに達した。その後減少し、1995年以降は100万トンを割り込み、1997年以降は10万トンを割り込み、2001年にはBban(資源量5千トン)を下回り、過去最低水準であったと推定される。2004年以降は増加傾向にあり2008年の資源量は2万3千トン(参考値)と推定された。資源水準は極めて低位にあり、動向は増加傾向と判断した。


【マサバ】

マサバ対馬暖流系群は、本州北部から山陰、九州、東シナ海に至る海域に広く分布する(図5)。産卵期は3〜5月、産卵場は山陰、九州沿岸、東シナ海中部、中国沿岸等であり、寿命は6年である。成熟開始年齢は1歳であり、餌生物はオキアミ、カタクチイワシ等である。

対馬暖流域でのマサバ漁獲量は、1970年代後半は約30万トンだったが、その後減少し、1990〜1992年には約14万トンと大きく落ち込んだ。1993年以降は増加傾向を示し、1996年には41万トンに達したが、1997年には21万トンと大きく減少し、2000〜2008年は8〜12万トンと低い水準にある(図6)。韓国は2008年に19万トン(多くはマサバ)、中国は2007年に34万トンのさば類を漁獲した。

資源量は1973〜1989年には88万〜126万トンで比較的安定していた。1987〜1990年にかけて減少した後、増加傾向を示し、1993〜1996年は110万〜137万トンの高い水準に達した。1997年以降、資源は急激に減少し2006年は51万トン、2008年は73万トンと増加したものの低い水準に留まっている。


【マアジ】

日本海の北部から山陰、九州、東シナ海南部に至る沿岸に広く分布する。産卵期は2〜6月で、南の海域ほど早く、盛期は3〜5月である。主産卵場は東シナ海にあるが、日本海にも産卵場が形成される(図7)。寿命は5歳で、1歳で一部の個体が成熟を開始し、2歳ではほとんどが成熟する。餌生物はオキアミ、アミ、魚類仔稚魚等の動物プランクトンである。対馬暖流域での我が国のマアジの漁獲量は、1970年代後半に減少し、1980年に4万トンまで落ちこんだ。その後は増加傾向を示し、1993〜1998年には約20万トンを維持した。1999〜2002年はやや減少したが、2003年、2004年は約19万トンに増加した。2005年以降は減少したが、2008年はやや増加し約13万トンであった(図8)。韓国は近年アジ類を数万トンを漁獲しており、2008年は約2万トンであった。

資源量は、1973〜1976年の25万〜33万トンから1977〜1980年の13万〜18万トンに減少した後、増加傾向を示し、1993〜1998年には51万〜56万トンの高い水準を維持した。1999年以降はそれよりやや低く、2001年には28万トンにまで減少したがその後増加し、2004年は54万トンであった。2005年以降は減少に転じたが2008年はやや回復して42万トンであった。


【ブリ】

北海道南部から九州に至る沿岸各地に回遊する。産卵期は2〜7月であり、東シナ海の陸棚縁辺部を中心に、九州から能登半島周辺以西及び伊豆諸島以西の沿岸各海域で産卵する(図9)。餌生物は主に魚類であり、寿命は7歳以上である。2歳で約半数が成熟し、3歳で全ての個体が成熟する。

主に定置網及びまき網で漁獲される。2008年漁獲量の漁業種類別の比率は、まき網が46%、定置網が36%、釣り・延縄10%、刺し網6%であった。

漁獲量は1950〜1970年代中盤には2万7千〜5万5千トンであったが、1970年代終盤〜1980年代は漸減して2万7千〜4万5千トンとなり、1990年代に入って増加傾向になり4万3千〜6万2千トン、2000年代にはさらに増加して5万1千〜7万7千トンとなった。2008年の漁獲量は7万6千トンと2000年の7万7千トンに次ぐ値となった。韓国でも2008年の漁獲量は1万3千トンで2007年の7千トンより増加した(図10)。


【スルメイカ】

スルメイカは、日本の周辺に広く分布する。日本海で漁獲されるスルメイカは、発生期の異なる2群(秋季発生系群及び冬期発生系群)が主体であり、中でも秋季発生系群の漁獲が多い。秋季発生系群の産卵場は、北陸沿岸から山陰、東シナ海にかけての海域である。産卵期は10〜12月で、産卵場から成長しながら北上する。日本海沖が索餌域である(図11)。餌生物は小型魚類や動物プランクトンであり、海産ほ乳類や大型魚類に捕食される。

我が国のスルメイカ秋季発生系群の漁獲量は、1970年代半ばには約30万トンに達していたがその後減少し、1986年には約5万トンとなった。1987年以降は増加に転じ、1990年代以降は8万〜18万トンで推移している。韓国による漁獲も多く、1999年以降は日本を上回る漁獲量となっている(図12)。スルメイカ秋季発生系群の資源量は、1980年代は主に50万トン前後で推移、1986年には22万4千トンに減少した。1980年代後半以降は増加傾向となり、2000年前後には約150万〜200万トンとなった。2004〜2007年は100万トン前後に減少したが、2009年の資源量は149万トンに増加した。


日本海の底魚類主要種の生物学的特徴と資源動向

日本海の底魚資源を対象にした漁業は、底びき網、船びき網、刺網、はえ縄、一本釣り、かご網、定置網等の多種類にわたっているが、中でも底びき網が基幹漁業である。底びき網は、沖合底びき網漁業と小型底びき網漁業に区分される。底びき網の漁獲物の主要なものは、スケトウダラ、ホッケ、ハタハタ、アカガレイ、ソウハチ、ムシガレイ、ニギス、ズワイガニ、ホッコクアカエビ等である。


【ズワイガニ】

ズワイガニ日本海系群は、本州沿岸から朝鮮半島東岸の大陸棚斜面(水深200〜500 m)に分布する(図13)。水深250 m前後に産卵場があり、初産雌は6〜7月、経産雌は2〜3月に産卵抱卵し、初産雌では1年半余り後、経産雌では1年後の2〜3月にふ化する。寿命は10歳以上であり、成熟開始の年齢は脱皮の回数で雌11齢、雄9齢である。

ズワイガニの漁獲量は、1960年代には1万5千トンを超えたこともあったが、その後減少し1990年代初めには2千トンを下回るまでに減少した。その後増加傾向を示し、2008年の漁獲量は4,700(概数値)トンであった(図14)。

富山県以西のA海域では、1990年代後半から資源は回復傾向にあり、2000年代に資源水準は低位から中位に回復した。2009年の資源水準は中位・動向は減少傾向と判断された。新潟以北のB海域では中位、横ばいと判断された。


【ベニズワイガニ】

日本海の沖合域の水深500〜2,700 mに広く分布する(図15)。主産卵期は2〜4月であり、雌ガニは成熟後少なくとも4回程度産卵する。ベニズワイガニは水深800m以深でかごによって漁獲され、漁場の中心は水深1000〜1500mである。

ベニズワイガニの漁獲量は、1983年〜1984年には5万2千〜5万3千トンまで増加したが、以後は急速に減少した。1992年以降は2万2千〜2万6千トンでほぼ安定していたが、1999年以降は再び減少に転じ、2003年が1万5千トンで最低となり、その後はやや増加した。2008年の暫定漁獲量は1万7千トンである(図16)。


【ホッコクアカエビ】

北海道から鳥取県沿岸の水深200〜600 mに分布し、底びき網、かご網で漁獲される。日本海中央部の大和堆にも分布し、底びき網で漁獲される(図17)。産卵期は2〜4月であり、雄から雌に性転換し、雌の成熟は6歳である。寿命は11歳と推測される。餌生物は、小型甲殻類、貝類、多毛類等で、マダラ、スケソウダラ等の底魚類に捕食される。

日本海全体の漁獲量は、1982年の4,155トンをピークに減少傾向が続いたが、1995年以降は2.0千〜2.2千トン台で推移していたが、2008年は2.6千トンと増加傾向を示した(図18)。


【アカガレイ】

北海道から島根県の沿岸に広く分布する。水深150〜700 mに分布し、産卵場は佐渡北方、京都府の経ヶ岬西部、隠岐諸島東部等に形成される(図19)。産卵期は2〜4月であり、雌は25 cm、雄は17 cmで半数が成熟する。餌生物はオキアミ、ホタルイカモドキ、クモヒトデ等である。

漁獲量の推移を見ると、新潟県以西では、1995年以降3,000トン台で安定していた。近年は卓越年級の加入により増加傾向にあり、2008年は過去15年間で最高の約5,500トンであった。海域全体の動向は新潟県以西の海域と同様な傾向を示し、2008年の漁獲量は5,550トンであった。(図20)。


【ハタハタ】

日本海に分布するハタハタには、秋田県の産卵場を中心とする日本海北部系群と山陰から朝鮮半島東岸にかけて分布する日本海西部系群がある(図21)。

日本海西部系群の産卵場は韓国東岸が中心であり、12月に産卵する。日本の山陰沿岸は索餌場となっており、餌生物は端脚類やオキアミである。寿命は5歳であり、成熟を開始するのは1歳からである。

日本海西部系群の漁獲量は、変動を繰り返しながら過去50年ほどは5,000トン前後の水準を維持してきた。1990年代中頃からは漸増傾向を示している。2008年には2歳魚(2006年級群)に支えられ9,258トンと豊漁となった(図22)。


大和堆の漁業資源

大和堆は日本海のほぼ中央に位置し、北緯39度20分、東経135度を中心として、全体的に東北東−西南西の方向を持ち、長さ約230 km、中央部の幅は約55 kmの長い紡錘状の形を呈している(図23)。水深400 m付近から頂部平坦面がみられ、最浅部は246 mに達する。水深1,000 m以浅の地域の面積は約7,900 km2である(海洋水産資源開発センター 1992)。

大和堆では、いかつり漁業によるスルメイカ、ベニズワイガニ篭漁業によるベニズワイガニ及び沖合底びき網漁業によるホッコクアカエビの漁獲が多い。この海域では、ズワイガニは全面的に禁漁とされている。

大和堆におけるホッコクアカエビの漁獲は、底びき網により夏季を中心に行なわれている。1996-2003年での大和堆におけるホッコクアカエビの推定資源量はほぼ横ばいであった。近年は本州沿岸でホッコクアカエビが好漁であるために、2001年以降大和堆への出漁が減少傾向にある。その結果、大和堆での漁獲量および資源量指数は減少傾向にあるが、漁獲圧の低下によって資源は高い水準で維持されていると推定される(図24)。

この他、大和堆の底魚類としては、アカガレイ、ヒレグロ等が漁獲されている。なお、近年、スケトウダラはほとんど漁獲されなくなった。


執筆者

北東アジアグループ
日本海区水産研究所 日本海漁業資源部

浅野 謙治


参考文献

  1. 海洋水産資源開発センター. 1989. 昭和63年度沖合漁場総合整備開発基礎調査日本海大和堆海域報告書(本文編).
  2. 海洋水産資源開発センター, 東京. (2)+4+269 pp.
  3. 海洋水産資源開発センター. 1992. 平成3年度沖合漁場総合整備開発基礎調査報告書(総括編)日本海大和堆海域. (3+5)+125 pp.
  4. 長沼光亮. 1992. 日本海の成り立ちと海況. In 新潟大学放送公開講座実行委員会(編), 新潟の生物誌-海から山まで. 新潟大学放送公開講座実行委員会, 新潟. 1-13 pp.
  5. 長沼光亮. 2000. 生物の生息環境としての日本海. 日本海区水産研究所研究報告, 50: 1-42.
  6. 尾形哲男. 1980. 日本海海域底魚資源. In 青山恒雄 (編), 底魚資源. 恒星社厚生閣, 東京. 229-244 pp.