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62 日ロ浮魚・底魚類(総説)



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最近一年間の動き

第25回日ロ漁業委員会の決定に従い、以下の諸活動を行い、共通資源について最新の情報を交換し資源状態に関する見解をとりまとめた。2009年9月に新潟市において「さんま、まさば、まいわし、かたくちいわし、いか及びすけとうだらの生態学及び現存量に関する意見交換会」を開催し、サンマ、スルメイカ、スケトウダラ等の研究課題を報告し、議論を行なった。2009年11月にウラジオストック市において「第23回日ロ漁業専門家・科学者会議」を開催し、共通資源などに関する資料および意見の交換を行い、共通資源に関する見解案と2010年の調査協力計画案を作成した。2009年11〜12月にモスクワにおける「第26回日ロ漁業委員会」で上記見解案と調査協力案を検討し採択した。


はじめに

日ロ間には、北西太平洋の生物資源の保存及び最適利用を考慮し、相互の200海里水域で他方の国が漁業を行うために、日ソ地先沖合漁業協定(通称:日ロ地先沖合協定)が締結され、これに基づき日ロ漁業委員会が設置されている。日ロ漁業委員会では、日ロ両国水域に共通に存在する主要な魚種系群(共通資源)の種類(7魚種)について合意し、これら魚種の資源状態について、日ロ漁業委員会の前に開催される日ロ漁業専門家・科学者会議において両国科学者が協議し報告を作成している。

ここでは、ロシアとの関係が深い我が国漁業の歴史と共に、2009年の日ロ漁業専門家・科学者会議で検討され、日ロ漁業委員会で採択された両国水域の共通資源(ストラドリングストック)の資源状態及びその他の重要な魚種について資源の現況を述べる。


図1a 図1b

図1. ロシア水域における我が国漁船に対する漁獲割当量の経年変化(下は近年の拡大)


図2a 図2b

図2. ロシア水域における我が国漁船の漁獲量の経年変化(下は近年の拡大)


ロシアと我が国漁業の歴史

我が国の北洋漁業、特にロシア沖における漁業として、日露戦争の結果による領土の拡大に伴う漁場の広がりもあり、大正時代には母船式カニ漁業、帆船タラ漁業等が興った(斉藤 1960)。昭和初期には、母船式さけ・ます漁業、トロール漁業も含め発展したが、第2次世界大戦によってこれら漁業は大きな被害を受けた。第2次世界大戦後、マッカーサーラインによって我が国漁船の漁場は著しく狭められていたが、1952年にラインが撤廃されるとともに、ソ連邦沖公海新漁場の開発が積極的に進められた(北野 1980)。1953年に北方四島周辺太平洋岸漁場、1956年にサハリン東岸タライカ湾、1957年にサハリン西岸タタール海峡で調査が行われ、スケトウダラ、ホッケ、カレイ類等の底びき網漁場が開発された(北野 1980)。1956年には日ソ漁業条約、1969年には日ソかに取決、1972年には日ソつぶ取決が結ばれた。我が国漁船のソ連沖での漁獲量としては、1975年には北海道沖合底びき網が38.9万トン、北転船がカムチャッカ半島周辺で73.3万トン等であった(北野 1980)。

一方、ソ連漁業による日本沖での漁獲量は、1975年にはサバ13.3万トン、マイワシ12.2万トン、スケトウダラ13.4万トン、イトヒキダラ10.6万トン等、合計52.7万トンであった(北野 1980)。1976年12月にソ連は漁業管理法を制定し、200海里漁業水域を設定したが、我が国も1977年3月に同漁業水域を設定した。1977年には日ソ・ソ日漁業暫定協定、1978年には日ソ漁業協力協定が結ばれ、相互に他の200海里水域で自国の漁船が操業できるようになった。1978年にソ連漁業水域内で我が国漁業に与えられた漁獲割当量(漁獲枠)は、スケトウダラ34.5万トン、イカ14.64万トン、イカナゴ6.52万トン、マダラ4.47万トン、サンマ6.86万トン等、合計85万トンであり、200海里以前の漁獲量に比べかなり減少した(北野 1980)。同年の日本漁業水域内におけるソ連漁業への漁獲割当量は、マイワシ・マサバ31.8万トン、スケトウダラ8.0万トン、イトヒキダラ13.8万トン等、合計65.0万トンであり、200海里以前の漁獲量とそれほど差はなかった(北野 1980)。

相互の他国200海里内での割当量の推移として、ロシア水域における我が国漁船に対する漁獲割当量の経年変化を図1に示した。1979〜1985年には、割当量は60〜75万トンの範囲であったが、1986年には15万トンへと大きく減少した。1987年にはそれまでの無償枠の他に、日本漁船に対してソ連水域で10万トンの有償枠が設けられるようになった。我が国漁業に対する割当量は、1988年には相互枠と有償枠を含めてスケトウダラ12.76万トン、サンマ約6.52万トン、イカ約7.48万トン等、合計31万トンとなった。1998年にはスケトウダラ約1.57万トン、サンマ約3.18万トン、イカ約4.1万トン等、合計10.6万トンとなり、20年前の1978年の8分の1となった。我が国漁業に対する割当量は、2004年にはスケトウダラ約0.79万トン、サンマ約4.14万トン、イカ約0.86万トン等、合計約6.19万トンとなり、1998年よりもさらに減少した。2005年は、スケトウダラ約0.79万トン、サンマ約3.45万トン、イカ約0.91万トン等、合計約5.67万トン(追加割り当て分を除く)、2006年は、スケトウダラ約0.79万トン、サンマ3.55万トン、イカ約0.91万トン等、合計約5.77万トン、2007年も、スケトウダラ約0.77万トン、サンマ3.55万トン、イカ約1.00万トン等、合計約5.73万トンとなった。2008〜2009年は、スケトウダラ約0.78万トン、サンマ3.55万トン、イカ約1.06万トン等、合計約5.72万トン(追加割り当て分を除く)であった。2010年は、前年とほぼ同様のスケトウダラ約0.78万トン、サンマ3.55万トン、イカ約0.98万トン等、合計約5.7万トンであった。漁業種類別には、さんま棒受網、いか釣り、沖合底びき網の順に割当が多い。

日本水域におけるロシア漁船に対する割当量は、1985年以降我が国漁船に対するロシアからの相互枠と等量で推移しており、1988年には21万トン、1998年には9.5万トンとなったが、2004年には5.43万トン、2005年は5.02万トン、2006年は5.13万トン、2007年は5.13万トン、2008年、2009年には5.20万トン、2010年は5.19万トンと、近年は5万トン台前半で、ほとんど変化していない。魚種としては、1980、1990年代はマイワシ・マサバが最も多かったが、2001年以降はイトヒキダラが最も多くなっている

ロシア水域における実際の我が国の漁獲量の推移を図2に示した。相互枠と有償枠を合わせて、我が国漁船の漁獲量は1979年の約54万トンが最も多く、スケトウダラが約5割を占めた。1986年には約7万トンに急減したが、1988年には約17万トンに回復した。その後は直線的に減少し、2002年には約1.2万トンとなったが、2004〜2006年には4.5〜5.1万トンに増加した。しかし、2007〜2008年には2.6〜2.8万トンに半減した。1980年代前半はスケトウダラ、その後はサンマが最も多く漁獲された魚種であった。割当量に対する漁獲量の割合は、1980年代は50〜70%であったが、90年代には20〜30%程度に低下し、2004〜2006年には再度70〜90%に上昇した。しかし、2007〜2008年には50%以下に低下した。

我が国水域におけるロシア漁船の漁獲量は、1985〜1992年には5〜15万トンで、マイワシとマサバが大部分を占めたが、1994年以降ほとんど漁獲されなくなった。最近はイトヒキダラが大部分を占め、2000年以降、2.4〜2.7万トンの漁獲があったが、2008年には約2万トンに減少した。

なお、日本漁船は、地先沖合協定の他に貝殻島昆布操業民間協定、北方四島安全操業協定に基づく操業も行っている。


日ロ両国水域における共通資源(ストラドリングストック)に関する資源評価

(1)サンマ

我が国では、さんま棒受け網漁業で主に漁獲され、1999〜2008年の10年間の漁獲量は13〜35万トンの範囲で、年間の平均は約24万トンであり、1999年以降、増加傾向にある。分布域は北西太平洋、オホーツク海であり、産卵は主に冬季に行われ、その産卵場は黒潮水域である。寿命は2年、成熟年齢は6ヶ月から1年である。我が国では、サンマの資源量は中層トロール調査によって推定され、2009年の資源量は350万トンであり、資源水準は高位で資源動向は横ばいである。ロシア側の見解によると、2008年のロシア漁船団による漁獲量は9.1万トンであり、2009年10月末までの漁獲量は3万トンであった。近年北西太平洋ではサンマの資源尾数とバイオマスの増大が起きている。サンマの相対豊度指標の変動はわずかである。双方は、サンマの資源は、現在高位状態にあり、2010年にも高位水準を維持することが予想できることで意見が一致した。


(2)マイワシ

我が国では、まき網漁業で主に漁獲され、最近10年間の漁獲量は太平洋系群では2〜31万トンの範囲で平均約9.4万トン、対馬暖流系群は1千トン〜4.1万トンの範囲で平均約9千トンであり、両系群とも2001、2002年まで減少し、その後は低い水準である。太平洋系群の分布域は北西太平洋であり、産卵盛期は2〜3月、産卵場は四国南岸を中心に関東沿岸まで広がる。対馬暖流系群の分布域は東シナ海北部から日本海南東部、産卵期は主に2〜4月、産卵場は薩南海域である。両系群とも、寿命は7歳、成熟年齢は1〜2歳である。太平洋系群の資源量については、我が国ではコホート解析によって推定され、2008年は19万トンで、資源水準は低位、資源動向は横ばいである。対馬暖流系群もコホート解析によって推定され、2008年の資源量は約2万トンで、資源水準は低位、資源動向は増加傾向である。ロシア側は、2001年以降の太平洋水域調査時にトロールによる漁獲物中にはマイワシは認められなかったことを報告した。2008年夏季、黒潮暖流の流入水域に設けられた1定点のみでマイワシが認められた。それと同時にマイワシは通常太平洋水域でのサンマ操業時に混獲物として出現する。2008〜2009年には混獲としてのマイワシの出現率は極めて低く、このことはマイワシ太平洋系群の資源状態は低迷していることを実証している。双方は、太平洋の資源は現在、低水準であること、日本海の資源が極めて低水準であることで、見解が一致した。


(3)マサバ

我が国では、まき網漁業で主に漁獲され、太平洋系群に対する最近10年間の漁獲量は5〜24万トンの範囲、平均約13万トンであり、2002年まで減少し、その後増加したが、2007、2008年には減少した。太平洋系群の分布域は北西太平洋、産卵期は冬〜春季、産卵場は伊豆諸島周辺海域、紀南や室戸岬沖である。寿命は7歳以上、成熟年齢は2〜3歳である。資源量はコホート解析によって推定され、2008年は約63万トンで、資源水準は低位、資源動向は横ばいである。ロシア側は、2009年夏季のトロール調査のでは、マサバは漁獲されなかったことを指摘した。双方の専門家は、2004年級群及び2007年級群の加入により親魚量の短期的な増加をもたらしたが、資源状況は依然低水準にあるということ、ただし、2000年代前半の著しい低水準は脱したと考えられるとの見解で一致した。


(4)カタクチイワシ

我が国では、まき網漁業で主に漁獲され、太平洋系群に対する最近10年間の漁獲量は17〜42万トンの範囲で、平均約28万トンであり、1998年と1999年に漁獲量は多かったが、その後減少し、2002年以降再度増加し、2003年には近年の最大漁獲量となったが、その後、減少した。太平洋系群の分布域は北西太平洋、産卵期は冬季を除くほぼ周年、産卵場は沿岸から沖合である。寿命は2〜3歳、成熟年齢は満1歳である。資源量はコホート解析によって推定され、2008年は62万トン、資源水準は中位、資源動向は減少である。ロシア側は、2008〜2009年のトロール調査のデータによると、太平洋水域でのカタクチイワシのバイオマスは低かった、と報告した。2008年6〜7月の索餌回遊開始時期のバイオマスは約6,150トンであり、2009年にはわずか100トンであった。各年にカタクチイワシがサンマ漁の混獲に大きな割合を占めていることを考慮すると、太平洋水域における資源尾数は充分高い水準にある。双方は、資源状態が中位水準にあることで意見の一致をみた。


イカ(スルメイカ及びアカイカ)

スルメイカは、我が国ではいか釣り漁業で主に漁獲され、最近10年間の漁獲量は19〜34万トンの範囲で、平均は約25万トンであり、2000年に多かったことと2006年に少なかったことを除くとほぼ安定している。冬季発生系群の分布域は東シナ海北東部、日本海東部、北西太平洋であり、産卵期は12〜3月、産卵場は主に東シナ海である。秋季発生系群の分布域は主に日本海であり、産卵期は10〜12月、産卵場は北陸沿岸から東シナ海である。両系群の寿命は1年、成熟には雄で生後約9ヶ月、雌で約11ヶ月を要する。冬季発生系群の資源量は小型いかつり漁船のCPUEの動向から推定され、2008年は約99万トンで、資源水準は中位、資源動向は横ばい、秋季発生系群の資源量は調査船による密度指標から推定され、2008年は約171万トンで、資源水準は高位、資源動向は横ばいである。ロシア側は、2008〜2009年夏季に太平洋で行ったトロール調査の結果によると、スルメイカ資源尾数は中位水準にあると指摘した。


ニシン

北海道・サハリン系群の分布域は北海道北部日本海、オホーツク海、サハリン沿岸であり、産卵期は春季、産卵場は北海道北部日本海、オホーツク海、サハリン沿岸のごく沿岸である。寿命は10歳以上、成熟開始年齢は3歳である。我が国による北海道・サハリン系群の資源評価は漁獲量の経年変化から行われたが、ニシンの漁獲量には複数の系群が含まれるため、資源水準は低位であるが、資源動向は不明である。ロシアの見解によると、8〜9月にニシンの魚群の形成がみられなかったので2009年にはロシア船による漁獲は行われなかった。伝統的な産卵場では成熟魚の弱い来遊が認められた。双方は、サハリン・北海道系ニシンの資源は何らの増加の兆候もないまま極めて低い水準にあるということで意見が一致した。


スケトウダラ

我が国では、沖合底びき網漁業によって主に漁獲されるが、根室海峡では刺し網等の沿岸漁業で主に漁獲される。1999〜2008年の10年間の平均漁獲量は、太平洋系群が約16万トン、北部日本海系群が約3.5万トンであった。日本海北部系群の分布域は北部日本海、産卵盛期は12〜3月、産卵場は檜山沿岸、岩内湾、石狩湾、雄冬沖、武蔵堆、利尻・礼文島周辺である。根室海峡スケトウダラの分布域はオホーツク海と推測され、産卵期は1〜4月、産卵場は根室海峡である。オホーツク海南部スケトウダラの分布域はオホーツク海、産卵盛期は3〜5月、産卵場は北見大和堆から宗谷地方沿岸及びテルペニア湾周辺である。太平洋系群の分布域は銚子から択捉島の太平洋岸、産卵盛期は12〜3月、産卵場は主に噴火湾周辺であり、各系群の寿命は10歳以上、成熟開始年齢は3歳(オホーツク海南部のみ4歳)である。日本海北部系群の資源量はコホート解析によって推定され、2008年度の資源量は約12万トン、資源水準は低位で資源動向は減少である。根室海峡スケトウダラの資源評価は漁獲量とCPUEの経年変化から行われ、資源水準は低位、資源動向は横ばいである。オホーツク海南部スケトウダラの資源評価は漁獲量とCPUEの経年変化に基づいて行われ、資源水準は低位、資源動向は増加である。太平洋系群の資源量はコホート解析によって推定され、2008年度の資源量は約80万トン、資源水準は中位(判定法を変えたため低位から中位に変化)で資源動向は減少である。ロシア側は、2009年の調査結果により、太平洋水域のバイオマスは約42万トンであり、2008年より若干低い値であることを指摘した。西サハリン水域のスケトウダラ資源は極めて低い水準のままである。(スケトウダラのより詳細な生物学、資源状況については別途総説を参照されたい。なお、北方四島水域において、卓越した2005年級群が漁獲対象となり、ロシアが設定した「南クリル」水域のTACが急増している。)


ロシアからの割り当てに関係するその他の重要資源に関する情報

ロシアから入手可能なマダラ、キチジ等の重要資源に関する情報は少ない。ロシアは、これら魚種についても資源調査を基にTACを設定しているため、これらのTACは基本的に資源動向を反映していると考えられる。ここでは、これら魚種に関する生物学的情報(我が国周辺の資源評価から引用)とともに、ロシアが設定したTAC数量等の情報から、これら魚種に関する資源状況を解析した。


(1)マダラ

北海道周辺に分布するマダラでは、産卵期が12〜3月、産卵場が津軽海峡の北海道側と陸奥湾、噴火湾、礼文堆と武蔵堆、十勝〜根室地方の沿岸等である。寿命は不明であり、成熟開始年齢は3歳である。2001年7月にユジノサハリンスクでマダラ資源に関する日ロ科学者の意見交換会を行った際、ロシアは「南クリル」水域でトロール調査を行いマダラの現存量を推定した結果、近年、現存量が急減しているとの情報を提供した。日本への割当がある「北クリル」及び「南クリル」水域のTACは、2010年はそれぞれ9,000トンと4,200トンで、「北クリル」では2009年の8,100トンより増加し、「南クリル」では2009年と同じ値であった(2008年はそれぞれ8,100トンと4,200トン、2007年は3,700トンと3,200トン、2006年は5,200トンと3,760トン、2005年は5,200トンと3,560トン)。


(2)コマイ

日本への割当がある「南クリル」水域のTACは、2010年は2,046トンで、2009年の1,715トンより増加し(2008年は420トン)、2005〜2007年の2,100トンに近い値になった。


(3)ホッケ

北海道太平洋岸、根室海峡、北方四島に分布するホッケの産卵期は9月中〜10月下旬(知床半島先端)、産卵場は日高沖、根室海峡である。寿命は不明であり、成熟開始年齢は2歳である。日本への割当がある「北クリル」及び「南クリル」水域のTACは、2010年はそれぞれ47,000トンと2,000トンで、2009年と同じであった(2008年はそれぞれ41,000トンと2,000トン、2007年は26,900トンと2,000トン、2006、2005年は28,000トンと3,500トン)。


(4)メヌケ類

日本への割当がある「北クリル」及び「南クリル」水域のTACは、2010年はそれぞれ2,327トンと100トンであり、2009年の2,527トンと150トンに比べ両水域とも減少した(2008年はそれぞれ2,527トンと150トン、2005〜2007年は1,827トンと150トン)。


(5)キチジ

オホーツク海、北海道太平洋岸、根室海峡に分布するキチジの産卵期は2〜5月、産卵場は明確でない。寿命は不明、成熟開始年齢も不明である。「北クリル」水域のTACは2005〜2010年は242トンと不変で、「南クリル」水域のTACは、2010年に130トンで、2009年の105トンより増加した(2008年は85トン、2007年は100トン、2006年は112トン、2005年は159トン)。


(6)カレイ類

カレイ類のうち、マガレイ北海道北部系群の分布域は北海道日本海岸、オホーツク海沿岸であり、産卵期は5〜6月、産卵場は苫前沖〜利尻・礼文島周辺である。寿命は雄で10歳、雌で12歳と推定され、成熟開始年齢は雄で1歳、雌で2歳である。また、ソウハチ北海道北部系群の分布域は北海道日本海沿岸とオホーツク沿岸であり、産卵期は4〜7月、産卵場は増毛〜留萌沖、美国〜古平沖である。寿命は5歳以上であり、成熟開始年齢は2歳である。日本への割当がある「北クリル」水域のTACは、2010年は2009年と同様に設定されなかった(2005〜2008年は2,600トン)。「南クリル」水域のTACは、2010年に1,220トンで、2006〜2009年の840トン、2005年の1,000トンより増加した。


(7)タコ類

「南クリル」水域のTACは、2010年には240トンで、2009年と同じであった(2008年は490トン、2007年は590トン、2006年は380トン)。


まとめ

共通資源については、サンマの資源水準は高位であり、スルメイカは高位から中位、カタクチイワシは中位であるが、マイワシ、マサバ、ニシン、スケトウダラは低位である(スケトウダラ太平洋系群は判定法を変えたため中位に変化)。なお、スケトウダラについては、北方四島で卓越した2005年級群が漁獲対象となり、「南クリル」水域のTACが急増している。資源の減少に伴いマイワシとマサバの生息域は南に縮小し、北方四島以北の太平洋水域へはほとんど回遊しなくなっている。共通資源以外の重要種については、資源状態に関する情報は少ないが、公表されているロシアのTAC数量から、多くの魚種の資源水準は基本的に低位と推測される。また、ロシアとの交渉により日本漁船が割当を得ている魚種は、2009年にはサンマ、イカ、スケトウダラ、カレイ、キチジ・メヌケ類、マダラ、ホッケ・アイナメ類、コマイ、カジカ類、カスベ、タコ、カタクチイワシ、ソコダラ、ニシンの14種(種群)であった。これらの資源のうち、重要種であるスケトウダラについては、系群構造についての見解が日ロ双方で異なっている。また、スケトウダラ、サンマ、スルメイカ等については、ロシア水域での分布や資源状態に関する情報が、それらの適切な資源評価のために重要であり、これらの情報収集に一層努める必要がある。


執筆者

北西太平洋グループ
東北区水産研究所 八戸支所

水戸 啓一


参考文献

  1. 北野裕. 1980. 北海道海域底魚資源. In 青山恒雄(編), 底魚資源. 恒星社厚生閣, 東京. 204-228 pp.
  2. 斉藤市郎. 1960. 遠洋漁業.恒星社厚生閣, 東京. 318 pp.